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日英NPOフォーラム-共生のコミュニティにおける民間非営利組織の役割と経営-

パネルディスカッション_2

■萩原 第2セッションをそろそろ始めたいというふうに思います。皆さん、ぜひお席にお着き下さい。よろしいですか。
 午後の第1セッションが終わりまして、イギリス側のお2人からいろいろ第1セッションでのお三方のお話が大変スティームレイティブといいますか、刺激的といいますか、イギリス側なりにいろいろなヒントを承ったということで、それに対してレスポンスをしていただくことになりました。それで、最初にこれは時間を限りませんので16時45分にここをあけなくてはいけないものですから、少し時間が予定したものよりも15分ばかり短くなりました。それで、6人の方にいろいろ闇達な意見交換をお願いしたいので、その辺はそれ老れを1回の話を5分から長くても7~8分程度にまとめていただいて、順送りにいろいろお話を伺っていきたいというふうに思います。
 最初にエサリントンさん、それからミラーさん、それから山岡さんに、午前、午後の第1セッションの話を聞かれた上でのご意見を賜っていきたいと思います。  それではエサリントンさん、まずご発言の方をよろしくお願いします。

■エサリントン はい。わかりました。  私からのコメントですけれども、きよう午後のお話について、それから4年前に日本に来たときの経験からも少しお話ししたいと思うのです。それがちょっと重要な体験だったものですから。
 まず、市民社会というものに対して、あるいはNPOに対して、非常に関心が高まっているということは事実だと思います。つまり、人々が参加をした組織ということ、これは一つの現象だと思いますね。それからまたこの問題、つまり、この市民社会組織、NPOというようなものが大きくなっていくということ、そして、ほとんどいろいろな国でこういうことが取り上げられているということだと思います。日本の場合は特にこの4年間私が来た以来、非常に迅速に移り変わっていると思うのですね。その当時は、NPOの需要性というのが余り認識されておりませんでした。それから非常に大きな移り変わりがあったと思います。
 まず、法律的な枠組みが変わったという事があると思いますし、それから2つ目は、市長のお話にもありましたように、4年前に、例えば日本の議員の方がこういったお話をしたということは、私はその当時はあまり見聞しなかったわけですけれども、非常に、前向きに変わってきたというふうに言っていいと思います。
 また、いわゆるそういった意味では、NPOというのが今、盛りを迎えていると言ってもいいと思います。4年前から比べるとそうだったわけですから、今後5年、10年ということで、大きく前進すると思います。新井さんからもお話しがありましたけれども、本当におっしやるとおりだと思うんですね。まだ日本でいろいろないものがある。特にノンプロフィットセクターを強化していくという部分ですけれども、日本でもまだ足りないものがたくさんある。イギリスでもまだ完ぺきではないんですね。何が必要かというと、社会基盤が必要なわけですね。そして、傘となるものが必要です。NPOの活動を支援する傘となるもの、トレーニングとかリーダーシップ、リーダーを育てるということ、あるいはそれを開発して育てていくということが必要だと恐います。そういった効果的な組織があって、 NPOが育っていくということだと思うのですね。
 それから、税金のどの部分がNPOにいくのかということ。それがどのようにして使われるのかということ。そして、その傘の元でそういった傘となる組織がそれをキャンペーンしていかなければいけません。それから、もう1つおっしやったのは資金の流れとおっしやいましたね。それは政府から政府ということではなくて、その資金というのがNPOがプロセスに入っていないとこの資金の額は確保できないというわけです。NPOの活動が増してきた理由の一つ一一これはイギリスにおいてですけれども一一には、ほとんどの新しい資金の流れというのが、ここ2年ほど、政府によってもたらされております。これがNPOが参加をするということが条件になっているわけですね。ですから、ボランティアのNPOが参加していないとその資金が得られないということになっております。そういう意味でNPOの活動が非常に伸びてきているわけです。政府からの資金の流れを得るためにはNPOというのが、あるいはボランティア団体というのが参加することが必須になっております。
 それから、お話の中にロールモデルというのがありましたね。政府との関係性にっいて、そこにおいてのリーダーシヅプというのは非常に重要だと思います。前提条件として必ず必要なのは、健全なボランティアセクターを育てるためにということですけれども、ノンプロフィットを引退してプライベイトな貢献をするということですね。これは、個別の政府からくる資金というのもありますし、また、政府が何と言おうと政府にある意味では頼り過ぎてしまうということもあるわけですね。ですから、個人による慈善としての寄付というもの、これをいかにして刺激していくのかというのが1つだと思います。同じような問題がイギリスにもあるわけですけれども、個人による寄付というのが一つあるわけですね。
 あと、私がびっくりしたのは、私は協約、協定の話を朝いたしましたね。これは、原則的な同意ということになるわけですけれども、これは、活用できたら日本にも大変役に立つのではないかなと思うわけです。国際的な、利害というのがあるわけです。来年の春にこの国際会議というのが協定についてあるわけですけれども、カナダとかオーストラリア、それから、スウェーデンそのほかも含まれて会合があります。こういうのが国際的な流れになってきているわけですね。そして、地元の公共協約のガイドラインのコピーを多摩市長に差し上げたいと思いますのでこれをご参考にいただきたいと思います。これを例として今後つくっていっていただければいいと思いますけれども。  こういうふうにして、いろいろなものが動いてきているわけです。そして、次のステップがどうなるのかということなわけですけれども、先ほどステュアートさんが言っていましたように、社会的な企業を起こすということですけれども、ここでいわゆるリーダーシップというのが非常に重要なわけですね、これらの動きにおいては。いいリーダー、つまり有給のお金を払っているスタッフ、そして、それを管轄していくところ。ここでのリーダーシップが求められております。そして、NPOにおける振る舞いというものを確立していかなければいけません。つまりこの時点では、何かスキャンダルがあるとすると、つま り、何かNPOで悪いことがあると、例えばだれかが不正をしたとかですね、詐欺を働いたとかいうことになりますと、これはすべての苦労が無に帰してしまうわけです。イギリスでも、NPOは信頼できないよというようなことになってしまうわけですね。非常にNPOというのはだんだんと、社会の中で信頼を得てきているわけですから、まず、NPOとしての振る舞い、行い、そういったようなものをきちんと確立していかなければいけないというのがあると思います。
 最後に、私は非常にこれはおもしろい動きだと思うんですね。この3~4年間、日本において非常に大きな流れが生まれたということ、これはすばらしいと思います。

■萩原 4年前に日本にお見えになっていらっしやるようで、それからの動きというものの早さといいますか、整備、いろいろな法制度を含めて整備の早さに大変感心をなさっているように伺いました。  それではミラーさん、コメントをお願いします。

(.*?) こんにちは。いろいろお話を聞かせていただいております。いろいろな日本のお話をいろいろと伺っていますと、まず大事なのは、キャンペーンをするということだと思うんですね。そして、幅広い範囲を対象にすることができるようになるということ。グレートストハウスの例を申し上げましたけれども、たくさん高齢者のためのホームがあるわけですね。自分の家にはもう住めなくなった人のための家、病院に入らなければいけない人、そういったような人を対象にして、公共団体が準備をした家があるわけです。それから、スポーツセンターというのもあります。ここではレジャーですとか、スポーツというイベントがあるわけです。そして、車いすでのエアロビクスなどもありますし、また、高齢者のためのエクササイズというのもあるわけですね。高齢者も出来る限り健康を維持していくためということです。また、ほかの日にはその地域でのアーティストというのが高齢者に対してのアートについて、講義をするというようなこと、あるいは絵をかくというようなこと、あるいはいろいろな芸術について話しをすると。例えば、グラスコーにあるギャラリー美術館を見に行ったりというツアーも企画しています。それからまた、メンバーにとってはこのようなトレーニングの機会を設けるというのも重要なわけです。例えば職業に結ぴつくようなトレーニング、これによりまして人々の能力を最大限に活用することができるようにするということ。4カ所から5カ所の就職あっせんのため、これは学生も対象としたものもありますし、また、失業者を対象にしたものがあるわけです。
 2つ目の点というのは、パブリックファンディングという話が市長からありましたけれども、つまり資金を提供するということで余り多くの制約、あるいはルールをキセナイようにするということですね。ある程度の柔軟性をもって資金を運用していただくことができるようにするということも大事だと思います。これによって、パブリックファンディングにあまりにも頼りすぎないという環境を整えるということ。中央の政府、あるいは地方の政府がある程度の資金を出すわけですけれども、そこには、きちんとした戦略があって、5年という中期ではなくてもっと長い目で見たものが必要なわけです。そして、それだけではなくて、そのほかの財源の確保ということも必要になってきます。非常に初期の段階からそういったことをやっていくということ。中央の政府がほかのグループからもっと切迫した需要があったときに、自分のプロジェクトが続かなくなってしまうということでは困るわけですから、そういったようなこともイギリスでは過去にあったことがあります。つまり、公的資金だけに頼っているということでは非常にリスクがあるということになります。
 きょう、いろいろとお話を聞いた中で、ぜひ多摩市またNPOの皆さんにもこれからも大いに健闘をお祈りしたいというふうに思いました。私もグレイター・イースターハウスでもチーフェグゼクティブとして仕事をしていますけれども、NPOにはまだまだこれから仕事が山積していると思います。

■萩原 先ほどのエサリントンさんの話に加えて、ミラーさんからはいろいろな面でホリステイックなアプローチという、日本語でいうと包括的なとか、種々の方面からというようなことですけれども、いろいろな選択肢を資金作りや、組織づくりも含めて進めていかなければいけない。先ほどのプレゼンテーシヨンでもそうでしたけれども、お2人の中から社会企業化という概念がたぴたびでてくるので、そういうものをこれからの日本でどう育てていくかということも大変な課題になるのではないかというように思います。それでは山岡さん、午前中と、それから先ほどの3人の方々の発言を受けて、ちょっとご意見を伺いたいと思います。よろしく。

■山岡 はい。3人のご発言で、エサリントンさんのおっしやった4年前の文化の違いというものがある、日本の現代社会における大きな動きがあるということが前提になるかと思うんですけれども、この辺についてちよっとお話したい。
 実は、私ども日本NPOセンターが設立されたのが4年前でございまして、1996年の11月でございます。実際にそれまでさまざまなネットワークがあって動きはしていたんですけれども、そのときからかなり本格的にこの日本のNPOの新しい仕組みつくりを全国的に仕掛けていったというような状況がございまして、ある意味でそういう渦巻きをっくっていったという感じがしております。実はその2年前に、私はNCVOのご招待によりまして、ロンドンの郊外でインターナショナルチャリタルローコンフェレンスですか国際的な非営利法人制度の法律に関する国際会議がありまして、NCVOが主催されたと思うんですけれども、参りました。日本のメンバーと参りまして、いかに日本の市民活動団体が社会の中できちんとした存在が認められていなくて、法人格も、いわゆる主務官庁制の枠の中でしかとれないというような話をプレゼンテーションしましたら、日本というのはそういう民間団体の、結社の自由というのがないのかというような話しがありまして、結社は勝手に自由にすればいいんですけれども、組織としてきちんと契約できるようなそういう法人制度もないんだという話をしましたら、随分けげんがられまして、日本のような先進諸国で高度工業社会で、とんでもないことだなというようなことがございました。私はそれ以前、その直前くらいまでにいろいろ新しい法人制度をつくらないといけないということで、具 体的な提言をしておりましたので、いよいよそのロンドンの会議に出て、これはかえって本格的にやらないといけないなと。しかし、21世紀のうちにはできないだろうなと思っていたんですけれども、帰って直後、1995年の1月に阪神淡路大震災がありまして、が、このごろいろいろなところから提言は出ていたわけんのですけれども、私どもが提言していた動き1つの結集、大きな潮流になって、NPO法一一中途半端な法律ですけれども一一一これができる動きが出たわけです。この新しい法律つくり運動を、民間で、地方でかなり仕掛けていったんですね。いろいろな地方、大きな都市でこの法律つくりのための集会をやりました。市で。それぞれの地域でいろいろな団体が実行委員会をつくって集会をやるわけですね。私はこの1995年から1998年にかけて何回も各地に行ったかわかりませんけれども、地方で非常にローカルなレベルで法律つくりの議論をやった。これが、その法律ができて以後の、さまざまな活動の糧になっているというふうに思います。そういう課程で、大阪、広島、仙台、名吉屋、各都市いろいろなところでいわゆるNPOセンター名前はいろいろ違いますけれども、できてまいりました。今、私どもそういう民間のNPOセンターと行政がつくるNPOセンター、多摩の場合はちょうどその中間みたいなところがありますけれども、さまざまなものがありまして、民間だけでやっているのも20~30ありますね。私ども、NPOセンターは全くの民間でございます。そういう全くの民間のNPOセンターと行政の、私ども一緒にしょっちゅう合宿して特別研修をやって、スタッフをやっていますから、全国のNPOセンターのスタツフの顔とか理事は大体見えていると。多摩センターの場合は、まだ私ども、ちやんとおつきあいしていませんけれども、大体私どもそういうネットワークがこの数年来出てまいりまして、いろいろな動きがその中で起こっております。新しく税制優遇の制度をつくろうということで、おととい私どもは連絡会、そういうセンターが中心になって、今35,36かな、ネツトワークをつくってその税制優遇制度を実現するための運動体、連絡会をやっております。そういう法律制度をつくることを直接の役割にしているシーズというところとか、私どもとか、そのほか幾つかのそういうネツトワーク組織が一緒になって最初に提言もつくって、それを元に議員連盟ができて、議員連盟の案もできて、かなり具体的な、ところまで今進んでおります。来年の12月1日がこの法律施行がされて3年目になるわけですけれども、それまでに、何とか税制優遇の仕組みをつくっていこうということで頑張っております。
 資金のことですけれども、先ほどの新しいNPOファンドみたいなものもあったらいいと思いますし、船舶の、競艇のお金をどう使うかとか、宝くじのお金をどう使うとかあるんですけれども。既存のお金を出す制度はたくさんあるんですね。たくさんあるんだけれども、この4年間の動きに対応しきれていない。新しいNPO、こういう政府のコントロールの元にない民間非営利組織というものの存在を前提としない制度なわけなんですね。ですから、使いにくいけれども、数百、その一割ぐらい使えれば、もう御の字で、私はそういうお金をNPOに使いやすい仕組みに変えていけばいいと思います。  実は、きょうは河さんと久しぷりにお会いしたんですけれども、皆さんのお手元に配ってありますけれども、例えば医療福祉事業団というのがございまして、ここの助成金で、私ども介護系のNPOが介護に参入したことによってどういうふうに変わっていくかというのを、今、全国で調査しているんです。全国といっても数は少ないんですけれども、各地のNPOにかなりじっくりとヒアリングしてやっております。その一端を今度10月に東京でシンポジウムをやるわけですけれども、これは医療福祉事業団のお金をいただいているのですが、これがNPOとか任意団体には非常に使いにくいんですね。使いにくい。これをもうちよっと使えるようにして、その5%ぐらいがNPOか任意団体に行くようになりましたら、もうそれでこういう関係の分は十分だと思いますね。それから、国際交流基金というお金があります。芸術文化振興基金というものがあります。それから、環境事業団の地球環境基金というのがあります。今までできた船舶振興会、それから自転車振興会、それから宝くじ、共同募金もそうですね。共同募金なんか大きい。今あるさまざまなファンド、基金が、基本的にはこういう自由な市民団体というものが社会に存在しないという前提、縦割りごとにそれぞれの役所の元にコントロールされているのが民間団体で、そういうものと関係のない自由なNPOのようなものがあるということを、社会的に存在として認めてないときにできた仕組みでございまして、その仕細みが対応しきれていない。だからこれさえきちんと対応しきれるようにすれば、資金源はたっぷりあると。僕はそういう意味もありまして、国際交流基金とかいろんな既存のそういう資金源を使う実験をしているというのが、今、実情でございまして、ですからできるだけそういう共同募金会のお金をNPOが使うときどうしたらいいだろうかというので、使ってみるとか。いろいろな実験、だから皆さんもいろいろな既存のファンドを使う実験をする、そのことによって、そういうファンドの幅を広げていくことによってかなりいろいろなことができるかなと。これは自治体の基金等についても同じではないかというふうに思っております。社会の動きに若干制度が4,5年遅れているというだけなんですね。ステユアートさんがおっしゃった4年の日本の動き、この動きに対して数年遅れで制度はついてくるだろうと、僕は思っております。逆に言うと、そういう制度がついてくるように、どういうふうに私たちが働きかけていくかということが重要かなというふうに思っております。

■萩原 ありがとうございました。  フリーディスカッションになると通訳の方が大分苦労なさるので、できればなるべく少しゆっくりとしやべっていただいて、時間がないので大変なことなんですが、大変重要な発言を皆さんがされているので、日英ともに、きちんと伝えていただきたいと思います。その点のご留意をお願いしたいと思います。  それでは、今のお三方のお話を受けて、先ほど発言をなさっていただいた河さん、鈴木さん、新井さんからちよっとまたお話をいただいて、その後、フリーにディスカッションをしたいと思いますがいかがでしょうか。どなたからでも結構なんですけれども。  河さん。

■河 エサリントンさんがおっしやったこの4年というのは、私はやはり一番大きかった のは阪神淡路の大震災だったと思います。そのとき何が起こったかというと、これまで日本の社会の中でNPO、あるいはもうちよっと広義に言えばボランテイア組織でもいいんですけれども、言うことに対して足を引っ張る考え方の一番の中心が、先ほどの言葉遺いをちょっと繰り返しますけれども、本来はそれは官にやらせればいいことであって、その官のやるべきことを代わりにやるということはいかがなものかという批判でありました。先ほど申し上げましたように、私は公という世界があるというところから考えておりましたから、そういう議論にはついていけなかったわけでありますけれども、間違いなく多くの活動がつぶれてきた歴史というのは、官がやるべきことを肩代わりする活動というのは悪であると。どうしてこんな考え方が戦後の日本を覆ったかといいますと、ある面では憲法でありますし、日本の福祉のなりわい、社会福祉のなりわいであるわけでありますけれども、戦後のGHQが日本の社会福祉というものを構築したときに、一つは官と民を責任を明確に分離しろと、あいまいな公の領域などのやり方はいかがわしいからやめろということをおっしゃったわけであります。分かれた部分の中で漢と明に完全に分断されたと、いうところが私は非常に大きなところでありますし、また、これも余り議論されておりませんけれども、それと同じ形で憲法の89条というものがつくられまして、これは民の世界に官がやるべきことのお金を提供するのはまかりならないというのが憲法89条に書いてあるわけであります。これは今のNPOの方々も世の中の社会福祉の活動をされている方もすべてこの情報が無視されたところから、無視したところから議論をされていらっしやるわけでありますけども、これまでの日本の社会福祉のシステムというのは今の憲法89条というのをかなり重く見てつくってきた。逆に言えば今回の社会福祉法の改正というのはこの憲法89条を重く見た上で、なおかつその考え方の憲法の範囲以内で広げられないかということをやったわけでありまして、この苦労といいますか、この考え方の変換というのはぜひご理解いただきたいと私は思っております。
 今、最後に山岡さんがいろいろなお金を使えるということをおっしやいました。今回の社会福祉法の改正は余り皆さん方にご理解いただいていないという部分がございますけれども、私は一つの大きな改正というのは、共同募金のお金というものをこれまでは半分以上、一言で言えば社会福祉法人にと言った方がいいと思いますが、お渡しするというルールがあったわけでありまして、これは条文に書いてあったわけでありますが、この条文を削りました。削ったということはどういうことかというと、共同募金のお金というのは毎年260億ぐらい集めさせていただいておりますが、これはまさに個人の寄付であります。なによりも国家が監督するお金ではございません。このお金が260億ありまして、その半分以上が社会福祉法人に回っていたわけでありますけれども、その半分以上を回さなくてはいけないという条文を削ったということは、その配分については、まさに配分を決める方々がいろいろ参加された上で決められればいいわけでありまして、共同募金というお金が260億集まっているということは、私はある面では日本の社会の誇りだと思っております。もちろん、赤い羽についてはいろいろなご批判をされる方がいらっしゃいますけれども、もうそういう時代は終わったという前提でついでに説明宣伝させていただきますと、10月1日からまた赤い羽根運動が始まりますので、ご協力方よろしくお願いしたいと思っております。

■萩原 それでは、後、どなたかご発言ありますか?では鈴木さん、お願いします。

■鈴木 先ほど、言い足りなかったことの続きにもまたなってしまうかもしれないんですけれども、私はもちろんイギリスと日本の、国民性といいますか、違いも確かにあると。日本的なこの風土に即した中でこれからNPOもいかに日本的な部分を生かしながら、そういった昔の良さを生かしながら発展をしていくか、また、していくべきなのではないかという、そんな気持ちがしております。例えぱ日本にはこれはイギリスにもあるのかもしれないんですけれども、自治会という組織がありますよね。あるいは管理組合、多摩市の中にもいっぱいございます。また、消防団なんていう昔からの組織がございます。隣組なんていうと非常に古いんですけれども、こういった組織は、脈々とそういった歴史を刻んで日本の風土に沿いながらやってきていると。防災の意味でも、いみじくも阪神淡路震災からこのNPOというのも非常に飛躍的な発展をしてきているわけですけれども、あるいは先ほどお話をいたしましたような社会体育系のいろいろなボランティァ団体、あるいは文化系のさまざまなボランティア団体、福祉系、社会福祉協議会を中心にしてさまざまな団体が今、ございます。そういったものがこれからどう、NPOにかかわってくるのか。また、力を協力しあいながらお互いが発展をしていけるかどうか。もちろん、NPOの法人の資格の取得というものにはとらわれずに、総括的な中で、NPOという枠組みをつくっていけるかどうか。私は、日本のこれからの発展の中には、そういったことも大きな一つの要素になってくるんではないかなと。  実は私、これは40歳までという中での世界的な組織なんですけれども、青年会議所(ジュニアチェンバー)というところにずっと入って活動して参りました。多摩市でも「駅前の放置自転車をスリランカに持っていこう」なんていう運動もしてきたんですけれども、これも先ほどの山岡さんがおっしゃったように、白転車振興会の補助金を使わせていただいたんですけれども、そういった活動をしている例えばロータリークラブだとか、ライオンズクラブ、もちろんそういった実績のあるところもあるわけで、また、逆にそういった方々のノウハウが本当の市民活動NPOの皆さんへの提供ができるような仕組みつくり、そんなことも必要になってくると思いますし、もちろん国の法制度あるいは自治体の中での条例、またその寄付金の問題等いろいろと整備をしなければいけない問題があると思いますけれども、やはり日本の風土に適したNPOのこれからの発展というのが必ずあると私は思っておりますし、もちろん、諸外国の先進的な国のいいところはせひ取り入れていかなければいけないとは思っておりますけれども、独自の、やはり日本にふさわしいものという、そういうところもせひこれからは考えていかなければいけないのかなと、そんなことを感じました。

■萩原 ありがとうございました。それでは新井さん、ご発言をお願いします。

■新井 今、鈴木市長の方から日本的なといいますか、日本に合ったというふうなお言葉がありましたけれども、実は私もイギリスのNPOとそのNPOを支える制度というのに注目をしましたのが、そういうところと共通点があるんではないかというふうに思ったからなんです。というのは、今NPOといえばアメリカということで、アメリカとのインターンシップとか、アメリカの制度研究とか、交流とか、すごくたくさんされていて、NPOはアメリカという感じで、紹介がされてきていたわけなんですけれども、元々アメリカというのは政府よりも先にNPOができたというか、移民で行きましたから、人民組織が先にできたという、そういうところで、私もアメリカの制度とかNPOの若干実践的な研修というものに行って来たんですけれども、本当にNPOと行政と企業というのが、それぞれ全く独立して、インディペンデント、インディペンデントという、「それがもうベストなんだ」という主張がNPO側にもすごくあって、そういう状況を見ると、なかなか今これからNPOが育っていくという日本には、それをそのまままねをしてといいますか、制度を日本にそのまま紹介するというのはちょっと無理があるのではないかというのが、これは私の個人的な感想なんですけれども。そこで、3年前に、イギリスというところにちょっと目をつけたといいますか、たまたまブリティッシュカウンセルとか、グレートブリテンササガワ財団のほうから声がかかったということもあるんですけれども。イギリスもどちらかというと中央集権でやってこられて、サッチャーさんが規制緩和、行政改革で大なたをふるって、民活をやって、若干経済は持ち直したけれども地域がちょっと荒廃してしまったというところで、昔からあった、チャリティーグループ、チヤリティー登録したそういうボランタリーなグループのところを若干支援しながら、より広い範囲での福祉的な分からこういったまちづくりというところに至るまでの広い範囲の市民活動を支援していく。先ほど、エサリントンさんがおっしやったように、地域のコミュニティー、NPOを中心とするコミュニティーが参加しなければお金が流れないという制度を作って、そのコミュニティーを醸成しながらNPOが中心になってまちづくりをしていくという、こういうことを支援し始めているわけなんです。
 90年代の始めにシティチャレンジという制度をつくって、それをもっと進めたのが先ほどいったCRVということなんですけれども。そういう制度はとても、日本向けといいますか、なかなか日本は縦割りで難しいところはあるんですけれども、独立セクターとしてあるのではなくて、これから育ちつつあるところにお金を回しながら制度をっくっていって、行政とそれから、企業とNPOがパートナーシップをもって事業を進めていく。そういうやり方というのがとてもこれからの日本のNPOの活躍の場もつくるだろうし、その自治体にとっても地域にとってもとてもすばらしいのではないかということで、3年前から研究を始めまして、いろいろ詳しく事情を知れば知るほど、そういう思いを強くしているという状態なんです。  そんなことで、今なるほどなと思って聞いていたのが、山岡さんの方からありましたファンドのことですね。私たちはイギリスのナショナルロータリーという宝くじの制度に目 をつけて、実は日本にも宝くじがありましてね。余っているといいますか、300円で買いますよね。そうすると、300円くらい当たった人というのはほとんど取りに行かないのです。それで、例えばジャンボ宝くじとかというので取りに来ないで国庫に入るお金というが30数億あるという話を聞きまして、年閥の宝くじ全体だと80億ぐらい、その宝くじのお金が市民に戻らないで一一ごめんなさい、私すぐに早くなってしまうので心してゆっくりと一一市民にお金が戻らないで国庫に入って、そのお金がどうなっているか、といいますと、都道府県に配分されるのです。都道府県に配分されて各基礎自治体市町村に又お金が行くということで、それだったら、その宝くじで余ったお金でNPOファンド、ナショナルロータリーみたいに、余った分はNPOに行くんだというような法律をつくって、NPOファンドができないかなと、そもそも最初に思ったんです。非常にグッドアイデアと思ったんですけれども、調査をしていくうちに、やはりそういうお金というのは各自治体が非常にあてにしているお金で、毎年そういうお金が各自治体におりてくるということを前提の上で、もうみんな予算を組んでいると。だから、それがこなくなるような提案などというのは通るわけがない。日本ではそういう既存のものを変えるよりも、新しいものをっくる方がまだ簡単だというふうに、ちょっと自治省とか東京都のほうと話をしてそんなことを聞きまして、「そうかいいプランだと思ったんだけど」と思いながら、「では新しく宝くじをつくろうという提案をしようではないか」みたいなことで、NPOファンドということを考え始めたんです。  今、山岡さんからご紹介いただきましたシーズ、市民活動を支える制度を作る会というところで、実はここのシーズの産みの親といわれているのが東京ランポで私の団体なんですけれども、そこで、11月の税制の改正に向けて期限が来ていますので、ともかく税制の優遇制度を先につくろうということで、今、一生懸命活動しているんですが、それが終わった後で、そのNPOファンドの大キャンペーンをまた繰り広げようかと思っていたところなんですね。そうしたら、お隣にいる山岡さんの方から、「いやいや、こういうこともあるよ」ということが出てきましたので、この辺はやはり横のネットワークをきちっととりながら、最終的にどういうふうにしていこう、やっていくのがいいのか相談して、ぜひNPOの資金の基盤つくりにというところについては手をとって、やっていきたいなと思ったところです。
 それから、質問なんですけれども、長くなってすみません。1つは、先ほどおっしゃった、協定の国際会議、カナダで行われるということでエサリントンさんがおっしゃいましたけれども、そのことについてちょっと詳しく教えていただきたいことと、後、私どもが苦労しているのは事業評価のことなんですけれども、例えば行政とかには「事業評価をしろ」とかと私たちよく言うわけですけれども、では実際に自分たちが行っている事業ですね。これの評価というものが実は非常に難しくて、2年前から東京ランポで自分たちが実施した事業の評価をしてみようということで、事前評価と事後評価ということに取り紬んでいるんですが、なかなか数字で表せない活動がNPOには多くて、一筋縄ではいかないと いうことがわかりました。そういう意味で、もしそちらのNPOの方で自分たちの実施している事業につていの評価制度、というものがあれば、少しご披露いただきたいなというふうに思ったんですけれども。

■萩原 ありがとうございました。今、新井さんの方から質問が出ましたので、それにお答えいただく方法でやりたいと思いますが、最初のエサリントンさんのプレゼンテーションのときに、developping organization というところで、ちよっとスライドが1本でなかったんですけれども、ビジョンとかミッションとかobjectives とか、resources とかimplementationという最後に evaluation という言葉がありました。エサリントンさんがevaluation と言って、少し触れられたんですが、この際大変重要なアイテムですから、改めてエサリントンさんにお伺いをしてみたらどうかというふうに思います。コンパクトの国際会議ですか?カナダでもオーストラリアでもいろいろそういうのがあるというふうには聞いたんですけれど、国際会議があるのかと、僕も聞き落としたかもしれないな。国際会議がカナダでね。では、その2つについてお答えをいただきたいと思います。

■エサリントン 今、日本にあったものをつくるということをおっしゃって、それは大変大切だったと思います。つまり、1つのところで機能したからといって、それをぱ一と別のところに委嘱するというのは本当に無理だと思います。特に、イギリスと日本の場合は文化的な類似点というのもかなりあるのではないでしようか。もしかしたら島国ということもあるかもしれませんし、文化的な伝統の中でも分かち合う部分が多いのかもしれません。ただ、基本的にはイギリスのNPOセクターというのは、政府との協力のもとに何かをしていこうという意向が強いです。しかし、アメリカの場合は全く逆ですね。NPOはNPOだけでやっていこうという独立志向型です。それがイギリスとアメリカとの間で文化的な非常に大きな相違点です。ですけれども、文化的な類似点が日本とイギリスとの間に近いからといって、イギリスのものをすぐに日本に移して一くるというのは私も賛成しません。その国独自の文化的な文脈の中でNPOセクターを育てていくということが大切だと考えます。もう既に存在しているNPO、実際に機能しているNPOもたくさん日本にもあると思います。ですから、全くそれを根こそぎ覆すのではなくて、それをいかしていくことが大切でしよう。  それから、会議なんですけれども、これは私どもの方で春に行います。春にロンドンで行われるのは私たちが主催しているもの。そして夏には、カナダでまた別の会議が行われます。これは、単にイギリスだけではなくて外の国でのいろいろな教訓というものを生かしてということで、まだ日にちがはっきりしていないんですけれども、4月くらいを考えています。これはロンドンのものですね。  それから、評価なんですけれども、これは非常に複雑です。測定基準というのを非常にイギリスの方でもいろいろと考えました。つまり、これは外部から押しつけられるよりもできるだけ自分たちでつくった方がいいわけですね。ですから自分たちでやろうと思った一62一 んですが、この際には幾つもの品質モデルというものをつくって、その品質モデルをNPOに当てはめるという形を取りました。例えばビジネスェクセレンスモデルというのがビジネスの世界で一一これはアメリカにもあると思うんですけれども、日本にもあるんではないでしょうか一一そういったビジネスェクセレンスモデルというのをNPO向けにつくったと。そのため幸い予算がありましたので、その予算を元にしまして、NPO用にそれを開発しました。かなり手間のかかる作業でしたが、やっとできました。評価については実際のパフォーマンスの評価ということ、いろいろなモデルをつくっておりますので、この詳細についてもまた後でお送りできます。  また、チャリティーズエバリュェーションサービスというのがイギリスにあるんですけれども、ここでピカソというモデルを作りました。ピカソが実際に何の略なのかちよっと私もよくわからないんけど、PQASOだと思います。これは小規模なNPO団体を対象として開発された評価モデルです。この分野につきましては、ここ3~4年でかなりいろいろなことが起こりました。いかにして品質の基準、そして、評価手法をつくっていくかということで、かなりいろいろなことが起こりました。いろいろな評価方法というのが実際にあるわけですけれども、実際にいろいろと試行錯誤もやっています。ただ、原則として何が推進力となっているかといいますと、nonprofitが寄付をしてくれる人たちに対して、自分たちが目標が達成したということを不せるものというのが目的になっているわけですね。例えば、年間報告書などというのが作成されるわけですけれども、まずここで、子供たちが笑っているような写真を載せると。でもこれだけでは十分ではないわけですね。子供たちの笑顔を見ればお金がもらえるか、寄付してもらえるかというのはちよっと簡単なわけで、目標に対してどれくらい達成度があったのかというようなことを報告書で報告をするということ。プロジェクトごとに、いろいろなドラフトさくりもやってみました。ですから、詳しいことはまた改めてご希望であれば資料をお渡しできると思います。

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