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ノーマライゼーション(normalization)

解説

ノーマライゼーションは、「社会で日々を過ごす一人の人間として、障害者の生活状態が、障害のない人の生活状態と同じであることは、障害者の権利である。障害者は、可能な限り同じ条件のもとに置かれるべきであり、そのような状況を実現するための生活条件の改善が必要である」とする考え方である。

ノーマライゼーションを世界で初めて提唱したのはデンマークのニルス・エリク・バンク-ミケルセン(N.E.Bank-Mikkelsem)である。社会省担当官であった彼は、隔離的保護的で劣悪な環境の巨大施設に収容されている知的障害児者の処遇の実態に心を痛め、1951年に発足した知的障害者の親の会の活動に共鳴し、そのスローガンが法律として実現するように尽力した。彼が推進力となって作られた1959年法は、ノーマライゼーションという言葉が世界で初めて用いられた法律となった。

1963年にスウェーデン知的障害児者連盟(FUB)のベンクト・ニリィエ(B.Nirje)は、デンマークの1959年法の前文にある「知的障害者ができるだけノーマルな生活を送れるようにする」という言葉に出会い、その言葉を当時のスウェーデンとデンマークでの施設の状態を批判する文書で引用した。ニリィエは、「知的障害者は、ノーマルなリズムにしたがって生活し、ノーマルな成長段階を経て、一般の人々と同等のノーマルなライフサイクルを送る権利がある」とし、ノーマライゼーションを原理として整理した。

この考え方は次第に浸透し、1971年の「国連知的障害者権利宣言」、1975年の「国連障害者権利宣言」の土台となり、1981年の「国際障害者年」のテーマを「完全参加と平等」とした国連決議(34/154、1979年)へとつながってゆく。北欧の知的障害者の領域から広がったこの概念は、今日では福祉の基本的な概念のひとつになっている。