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障害者の権利に関する条約
第19条:自立した生活及び地域社会への包容に関する一般的意見 仮訳

Ⅰ.序論

1. 障害のある人は歴史的に、生活のあらゆる分野における個人的な個別の選択とコントロールを否定されてきた。多くの人が、自らが選択した地域社会で自立した生活をおくることはできないと考えられてきた。支援は利用できないか、特定の生活施設と結びつけられており、地域社会のインフラストラクチャーはユニバーサルデザインではない。資源は、地域社会における障害のある人の自立した生活の可能性を開くために投資されるのではなく、施設に投資される。この結果、遺棄、家族への依存、施設収容、孤立と隔離が生じた。

2. 障害者権利条約第19条では、障害のあるすべての人が、自己の人生を選択し、コントロールする自由をもって、自立した生活をし、地域社会に包容される平等の権利を認めている。その基礎となるのが、すべての人間は生まれながらにして尊厳と権利について平等であり、すべての生命は平等な価値を持つという、中核となる人権原則である。

3. 第19条では、障害のある人が権利主体であり、権利所有者であることが強調されている。本条約の一般原則(第3条)、特に個人の固有の尊厳、自律及び自立(第3条(a) )、並びに社会への完全かつ効果的な参加及び包容(第3条(c))は、自立した生活と地域社会への包容に対する権利の基礎をなす。本条約に明記されている他の原則も、第19条の解釈と適用に不可欠である。

4. 自立した生活及び地域社会に包容される生活は、歴史的には、自律的な力を育成するパーソナルアシスタンス等の支援形態を作り上げ、地域社会の施設にユニバーサルデザインの特典を取り入れるよう要求することによって、自らが望む生き方をしたいと望んだ、障害のある人の強い主張に由来する概念である。

5. 本条約の前文において、締約国は、障害のある人の多くが貧しい生活をしていることを認め、貧困が及ぼす影響に対処することが必要であると強調した。社会的排除は依存を永続させ、それゆえ、個人の自由を妨げるので、その代償は高い。また、社会的排除はスティグマ、隔離及び差別を生み、障害のある人の疎外化の連鎖を煽る定型化された否定的な観念に加えて、暴力、搾取、虐待へとつながる可能性がある。自立した生活に対する権利(第19条)の促進等を通じた、障害のある人の社会的包容に向けた政策や具体的な行動計画は、権利の享有、持続可能な開発及び貧困削減を確保するための費用効率の高い仕組みの典型である。

6. この一般的意見は、締約国による第19条の実施と本条約の下での義務の遂行を支援することを目的としている。それは主として、すべての人が自立した生活をし、地域社会に包容される権利の享有を確保する義務に関するものだが、同時に、他の規定にも関連している。第19条は、本条約における最も広範かつ最も交差的な条文の1つとして明確な役割を果たし、本条約のすべての条文の実施に不可欠なものとみなされなければならない。

7. 第19条は市民的及び政治的権利並びに経済的、社会的及び文化的権利を含むもので、あらゆる人権の相互関連性、相互依存性及び不可分性を示す一例である。自立した生活をし、地域社会に包容される権利は、この規範に明記されているすべての経済的、市民的、社会的及び文化的権利が実現された場合にのみ実現できる。国際人権法では、即時の効果を持つ義務と、漸進的に実現すればよい義務を課している(注1)。 完全な実現には、市民的及び政治的権利若しくは社会的、経済的及び文化的権利が危険にさらされているか否かにかかわらず、段階を踏んだ実施が必要な場合がある構造改革も求められる。

8. 第19条は、人間生活への文化的アプローチの多様性を反映しており、その内容が特定の文化規範や価値観に偏らないようにすることを確保するものである。自立した生活及び地域社会への包容は、障害という文脈に適用される、人間生活に関する全世界共通の概念である。それらは、最高水準の自己決定を伴う、選択の自由の行使と自己の人生に影響を与える決定のコントロール並びに社会における相互依存を意味する。この権利の実現は、様々な経済的、社会的、文化的及び政治的文脈において、効果的に行われなければならない。自立した生活及び地域社会への包容に対する権利は、人種、皮膚の色、世系、性別、妊娠していることや母であること、市民権、家族または介護者の状況、ジェンダー・アイデンティティ、性的指向、言語、宗教、政治的意見又はその他の意見、国民的な、種族的な、先住民族としての若しくは社会的な出身、移住者、亡命希望者又は難民であること、国内の少数民族との関係、経済的地位又は財産、健康状況、遺伝的又はその他の罹病性、出生及び年齢又は他の地位に関係なく、障害のあるすべての人に言及したものである。

9. 第19条に定められた権利は、国際人権法に深く根ざしている。世界人権宣言は第29条(1)「すべて人は、その人格の自由かつ完全な発展がその中にあってのみ可能である社会に対して義務を負う」で、個人の人格の発展と、地域社会の一員であるという社会的側面との相互依存性を強調している。第19条はそのルーツを、経済的、社会的及び文化的権利に加えて、市民的及び政治的権利にも持つ。移動の自由と居住選択の自由に対する権利(市民的及び政治的権利に関する国際規約第12条)及び相当な衣類、食糧及び住居を内容とする相当な生活水準に対する権利(経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約第11条)並びに基本的な意思疎通の権利が、自立した生活と地域社会への包容に対する権利の基礎を形成する。移動の自由、相当な生活水準に加えて、自己の選好、選択及び決定を理解し、またこれらを理解してもらう能力も、人間の尊厳と人格の自由な発展に欠くことのできない条件となる(注2)

10. 女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約は、男女の平等を強調し、女子に対するあらゆる形態の差別を非難するものである(第1条)。そして、法的能力と、法的能力を行使する機会を含む法的事項に関する男女の平等を再確認している(第15条(2))。また、締約国に対し、個人の移動並びに居所及び住所の選択の自由に関する法律において男女に同一の権利を認めるよう求めている(第15条(4))。

11. 児童の権利に関する条約第9条(1)では、締約国に対し、次のように義務付けている。「児童がその父母の意思に反してその父母から分離されないことを確保する。ただし、権限のある当局が司法の審査に従うことを条件として適用のある法律及び手続に従いその分離が児童の最善の利益のために必要であると決定する場合は、この限りでない。」同条約の締約国は、第18条(2)で保障されているように、「父母及び法定保護者が児童の養育についての責任を遂行するに当たりこれらの者に対して適当な援助を与える」ものとする。さらに、第20条では、「一時的若しくは恒久的にその家庭環境を奪われた児童又は児童自身の最善の利益にかんがみその家庭環境にとどまることが認められない児童は、国が与える特別の保護及び援助を受ける権利を有する」こと(第20条(1))、そして、「締約国は、自国の国内法に従い、1の児童のための代替的な監護を確保する」ことと定めている(第20条(2))。障害を理由に提供される代替的な監護は差別となるだろう。

12. 〔訳注:児童の権利に関する条約〕第23条(1)はさらに、障害のあるすべての子どもが、自立を確保し、社会への積極的な参加を容易にする条件の下で、尊厳のある生活を享受すべきであると定めている。児童の権利委員会は、施設に収容されている障害のある子どもの数の多さに懸念を表明し、締約国に対し、脱施設化プログラムにより、障害のある子どもが家族、拡大家族又は里親と暮らせるよう支援することを強く促してきた(注3)

13. 平等と無差別は、国際人権法の基本原則であり、すべての主要な人権文書に正式に記されている。経済的、社会的及び文化的権利委員会はその一般的意見第5号において、「社会的障壁を課すことにより達成される分離及び孤立化」が差別とみなされることを明らかにしている。また、〔訳注:経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約〕第11条に関して、相当な生活水準に対する権利には、十分な食料、アクセシブルな住居及びその他の基本的な物質的ニーズへの平等なアクセスだけでなく、障害のある人の人権を十分に尊重する支援サービスや支援機器及び技術が利用可能であることも含まれると強調している(注4)

14. 第19条とこの一般的意見の内容は、また、持続可能な開発のための2030アジェンダおよび持続可能な開発目標(SDGs)の不可欠な部分として、ニュー・アーバン・アジェンダ(ハビタット3)の実施を導き、支えていくものでなければならない。ニュー・アーバン・アジェンダでは、インクルーシブで公正、安全、健全、アクセシブルで負担しやすい費用の、レジリエンスがあり、持続可能な、都市と人間居住を促進することによってかなえられる、すべての人が平等な権利と機会を享有する都市と人間居住の構想を提唱している。障害者権利条約第19条との関連では、持続可能な開発目標のターゲット10.2、すべての人々の能力強化及び社会的、経済的及び政治的な包含の促進と、ターゲット11.1、すべての人々の、適切、安全かつ安価な住宅及びサービスへのアクセスの確保が、特に重要である。

15. 障害者権利委員会は、過去10年間の第19条実施における進展に注目してきた。しかし、本委員会は、第19条の目標及び精神と、実施範囲との間の隔たりに気付いている。依然として残されている障壁の一部を以下に挙げる。
 (a) 正式な法律及び慣行、若しくは生活様式に関する代替的意思決定による事実上の法的能力の否定
 (b) 地域社会における自立した生活を確保するための社会的な支援及び保障のスキームの不備
 (c) パーソナルアシスタンスや個別支援の提供を目的とした法的枠組み及び予算配分の不備
 (d) 子どもの施設収容およびあらゆる形態の強制治療を含む物理的・制度的施設収容と、
 (e) 脱施設化戦略及び計画の欠如と、施設ケアの場への継続的な投資
 (f) 障害のある人の地域社会への包容と利用可能な援助へのアクセスを妨げる否定的な態度、スティグマ及び定型化された観念
 (g) 地域社会における自立した生活に対する権利に関する誤解
 (h) 利用可能、受け入れ可能、負担しやすい費用の、アクセシブルで適応可能な、輸送機関、医療、学校、公共のスペース、住居、劇場、映画館、商品及びサービス並びに公共の建物等のサービス及び施設の欠如
 (i) 第19条の適切な実施を確保するための、障害のある人を代表する団体の参加を含む、適切な監視の仕組みの欠如
 (j) 一般予算配分における障害の主流化が不十分であること
 (k) 地方分権化が不十分なために起きた、締約国内における地域社会での自立した生活に関する地方自治体間格差と機会の不平等

Ⅱ.第19条の規範的内容

A. 定義

16. この一般的意見では、以下の定義を適用する。
 (a) 自立した生活:自立した生活/自立して生活することは、障害のある個人が、自己の人生を選択し、コントロールし、自己の人生に関するあらゆる決定を下せるように、必要な手段をすべて提供されることを意味する。個人の自律と自己決定は、輸送機関、情報、通信及びパーソナルアシスタンスの利用、居住地、日課、習慣、やりがいのある仕事、人間関係、衣類、栄養、衛生及び医療、宗教的権利、文化的権利、性及び生殖に係る権利を含む、自立した生活に欠かせない。これらの活動は、人間のアイデンティティと人格の発展に結びついている。すなわち、どこで、誰と生活するか、何を食べるか、朝寝坊をしたいのか、それとも夜更かしをしたいのか、屋内にいたいのか、それとも屋外にいたいのか、テーブルクロスとろうそくをテーブルにセットするか、ペットを飼うか、音楽を聴くかなどで、このような活動と決定が私たちの人となりを構成する。自立した生活は、個人の自律と自由の根幹であり、必ずしも1人で生活するという意味ではない。また、それは単に自力で日常活動を遂行できる能力として解釈されるべきではない。むしろそれは、本条約第3条(a)に記されている固有の尊厳と個人の自律の尊重を踏まえた、選択とコントロールの自由とみなされるべきである。人間の自律の一形態としての自立は、障害のある人が個人のライフスタイルと日常活動に関する選択とコントロールの機会を剥奪されないことを意味する。
 (b) 地域社会への包容:地域社会に包容される権利は、特に本条約第3条(c)に記されている、社会への完全かつ効果的な包容及び参加の原則に関連している。これには、完全な社会生活を送ることと、公衆に提供されるすべてのサービス並びに障害のある人が社会生活のあらゆる領域に完全に包容され、参加することができるようにするために彼らに提供される支援サービスへのアクセスを持つことが含まれる。これらのサービスは、特に住居、輸送機関、買い物、教育、雇用、レクリエーション活動及び公衆に提供されるソーシャルメディアを含むその他すべての施設並びにサービスと関連付けられる。この権利には、さらに、地域社会における政治的及び文化的生活に関するあらゆる措置とイベント、とりわけ、公的な会合、スポーツイベント、文化的・宗教的祭典及び障害のある人が参加を希望するその他の活動へのアクセスを持つことが含まれる。
 (c) 自立生活施設:自立した生活と地域社会への包容はいずれも、あらゆる種類の居住型施設とは別の生活の場に言及したものである。それは、特定の建物や環境における生活「だけ」を問題にしているのではなく、何よりもまず、特定の生活や生活施設を強制した結果、個人の選択と自律が失われることを問題としている。100人を超える入居者を抱えた大規模施設も、入居者が5~8人のより小規模なグループホームも、また個人の自宅でさえ、施設を特徴付ける別の要素として施設収容が挙げられる場合、自立生活施設と呼ぶことはできない。施設収容の状況は、規模、名称及び組織によって異なる可能性があるが、以下のような一定の決定要素がある。すなわち、他の者とのアシスタントの強制的な共有、誰から援助を受けなければならないかを決めるに当たり、影響力が発揮できないか、限られていること、地域社会における自立した生活からの孤立と隔離、日常的な決定をコントロールできないこと、誰と生活するかを選択できないこと、個人の意思と選好に関わらず、日課を厳格に守らなければならないこと、特定の権限を持つ者の下で、ある集団が同じ場所で同じ活動をすること、サービス提供における家父長的アプローチ、生活様式の監督、さらには、同じ環境の下で生活している障害のある人の数が、たいていは不釣り合いであることなどである。施設という環境において、障害のある人に一定程度の選択とコントロールが認められている場合もあるが、これらの選択は特定の生活分野に限られており、施設の隔離的性格を変えるものではない。脱施設化政策には、それゆえ、構造改革の実施が必要であり、それは施設環境の閉鎖に留まらない。大規模又は小規模なグループホームは、特に子どもにとって危険である。子どもには、家族とともに成長するというニーズに代わるものはない。「家庭のような」施設であっても、やはり施設で、家族によるケアに代わるものではないのだ。
 (d) パーソナルアシスタンス:パーソナルアシスタンスとは、障害のある人が利用できる、人指向/「利用者」主導の人的支援のことで、それは自立した生活のための手段である。パーソナルアシスタンスの様式としては様々なものが考えられるが、他のタイプのパーソナルアシスタンスと区別する特定の要素がある。すなわち、
  (i) パーソナルアシスタンスのための資金は、個別の基準に基づいて支給されなければならず、やりがいのある仕事に関する人権基準を考慮しなければならない。資金は、必要とされるあらゆる援助に対して支払うことを目的として、障害のある人によって管理され、障害のある人に割り当てられる。また、それは個別のニーズアセスメントと個別の生活状況に基づいたものとする。サービスの個別化により、予算の削減及び/又は個人の支払いの増加が起きてはならない。
  (ii) サービスは障害のある人によって管理される。これは、障害のある人が様々なサービス提供者によるサービスの契約を結ぶか、雇用主となることができるという意味である。障害のある人は、自分自身に合ったサービスを特注する選択肢を持つ。つまり、サービスを設計し、誰に、いつ、どこで、どのような方法でサービスを提供してもらうかを決定し、サービス提供者に指示したり、サービス提供者を監督したりする。
  (iii) パーソナルアシスタンスは1対1の関係である。パーソナルアシスタントは、パーソナルアシスタンスを受ける人によって採用され、訓練され、監督されなければならない。パーソナルアシスタントは、パーソナルアシスタンスを受ける人の完全かつ自由な同意なくして「共有」されるべきではない。パーソナルアシスタントの共有は、地域社会への自己決定による自発的な参加を制限し、妨げる可能性がある。
  (iv) サービス支給の自己管理。パーソナルアシスタンスを必要としている障害のある人は、サービス支給に関してどの程度自分が管理するかを、自己の生活状況及び選好に従い自由に選択することができる。「雇用主」としての責任が適用外であったとしても、障害のある人は常に、援助に関する決定の中心にあり、個人の選好について問われ、これを尊重されなければならない。パーソナルアシスタンスの管理は、支援付き意思決定を通じて行うことができる。

17. 支援サービスの提供者は、自らの支援サービスについて、実際には第19条で課せられた要件を満たしていないにも関わらず、「パーソナルアシスタンス」だけでなく、「自立」又は「地域社会での生活」といった用語を用いて、しばしば誤った説明をする。強制的な「パッケージ型解決策」、特にある特定のサービスの利用可能性を別のサービスと紐付けている解決策は、より多くの人が共同で生活することを求めるものであったり、特定の生活施設でしか提供できない可能性があったりする。障害のある人の完全な自己決定と自己管理が伴わないパーソナルアシスタンスの概念は、第19条に一致していないとみなされる。意思疎通に関する複雑なニーズを持つ人は、非公式な意思疎通手段(顔の表情、体の姿勢、〔訳注:代替的な〕発声法等、代表的ではない手段による意思疎通)を使用する人も含めて、指示や決定、選択及び/又は選好を考えて伝え、これらを認識し、尊重してもらえるように、適当な支援を提供されなければならない。

B. 第19条 柱書

18. 第19条では、無差別と、障害のある人が地域社会で自立した生活をする平等の権利の認識を再確認している。他の者と平等の選択の機会をもって地域社会に包容され、自立した生活をする権利を実現するには、締約国は、障害のある人がこの権利を完全に享受し、並びに地域社会に完全に包容され、及び参加することを容易にするための効果的かつ適当な措置をとらなければならない。

19. 本条文は2つの概念を扱っているが、それらはその見出しにおいてのみ明確に言及されている。すなわち、自立した生活に対する権利と地域社会への包容に対する権利である。自立した生活に対する権利は個人的な次元のことで、アクセスや機会が否定されることなく、自由になるというネガティブな権利〔訳注:規制されない、させない権利〕であり、一方、地域社会への包容に対する権利は社会的な次元のことで、インクルーシブな環境を開発するポジティブな権利〔訳注:行動を伴う権利〕である。第19条に記されている権利は、これら両方の概念を扱っている。

20. 第19条は、障害のあるすべての人に明確に言及している。いかなる「程度」であれ、法的能力若しくは必要とされているレベルの支援の全面的又は部分的な剥奪が、障害のある人の自立と地域社会における自立した生活に対する権利を否定あるいは制限するために行われてはならない。

21. 障害のある人がパーソナルサービスに対するニーズが高いと評価されると、締約国は、施設を唯一の解決策と考えることが多い。特にパーソナルサービスが「費用がかかりすぎる」とみなされたり、障害のある人が施設以外の場で生活「できない」とみなされたりする場合が、これに該当する。知的障害のある人、特に意思疎通に関する複雑なニーズのある人は、施設以外の場で生活できないと評価されることが多い。そのような推論は、知的能力や機能のレベル又は支援ニーズに関わらず障害のあるすべての人に、自立した生活と地域社会における包容に対する権利を拡大している第19条に反するものである。

22. 障害のあるすべての人は、自らが選択する文化に積極的に所属することを自由に選択すべきであり、地域社会の他の構成員と同じ程度に、自己の人生を選択し、コントロールすることが可能でなければならない。自立した生活は、「事前に決められた」個人のライフスタイルの促進とは相容れない。障害のある若者は、障害のある高齢者のために設計された場で生活することを強制されるべきではなく、その逆も行われるべきではない。

23. すべてのジェンダーの障害のある人は、第19条の下での権利所有者であり、平等の保護を享受する。女性の完全な能力開発、向上及び自律的な力の育成を確保するためのすべての適当な措置がとられるべきである。障害のあるLGBTQIの人は、第19条の下で平等の保護を享受しなければならず、それゆえ、彼らの人間関係は尊重されなければならない。さらに、自立した生活及び地域社会への包容に対する権利には、あらゆる年齢層、民族集団、指定カースト(不可触民)、言語的及び/又は宗教的少数派並びに移住者・亡命希望者及び難民の障害のある人の保護が含まれる。

C. 第19条(a)

24. どこで、誰と、どのように生活するかを選択し、決定することは、自立した生活及び地域社会への包容に対する権利の中心となる考えである。それゆえ、個人の選択は居住地に限定されず、その人の生き方やライフスタイルに加えて、毎日のスケジュールや日課など、日常的かつ長期的次元の私的及び公的領域を網羅した、生活様式のあらゆる側面を対象とする。

25. 障害のある人は、選択肢がないために選択の余地がないことが多い。これは例えば、家族による非公式な支援が唯一の選択肢である場合、施設外で支援が得られない場合、住居がアクセシブルではなかったり、地域社会で支援が提供されていなかったりする場合、支援がグループホームや施設等特別な形態の住居内でのみ提供される場合などが該当する。

26. さらに、障害のある人は、利用可能な様々な選択肢に関するアクセシブルな情報がないこと、及び/又は、障害のある人の法的能力の行使を認めない後見法や同様な法規範あるいは決定に由来する法的制約のために、個人の選択を行使することが許されない場合がある。正式な法律が何もなくても、家族や介護者又は地方自治体等の他者が代替的意思決定者としての役割を果たし、個人の選択をコントロールしたり、制限したりすることがある。

27. 法的人格と法的主体性は、障害のある人の地域社会における自立した生活の実現の基礎である。第19条は、それゆえ、本条約第12条に明記され、本委員会による法律の前における平等な承認に関する一般的意見第1号(2014)の中で詳しく説明されている、法的人格及び法的能力の認識と行使に関連がある。さらに、第14条に記されている、障害を理由とする拘束の絶対禁止とも関連があり、個別の指針で詳細が説明されている(注5)

D. 第19条(b)

28. 個別支援サービスは、医学的、社会的又は慈善的ケアの一形態ではなく、権利とみなされなければならない。障害のある多くの人にとって、様々な個別支援サービスへのアクセスは、地域社会における自立した生活の前提条件である。障害のある人は、その個別のニーズと個人の選好に従い、サービス及びサービス提供者を選ぶ権利を有し、個別支援は「利用者」のニーズに合わせて適応可能な、十分な柔軟性を備えたものとすべきで、その逆であってはならない。これは締約国に対し、個人のニーズと選好に従った、地域社会における自立した生活を阻む障壁に対する実践的な解決策を明らかにすることができる、資格を持った専門家を十分な人数確保する義務を課すものである。

29. サブパラグラフ(b)には、この支援サービスのカテゴリーに該当する様々な個別サービスが明記されている。それらは在宅サービスに限定されず、雇用、教育又は政治的・文化的参加、親としての能力や親族等の世話をする能力を高め、自信をつけさせる支援サービス、政治的・文化的生活への参加、余暇・趣味活動、旅行及びレクリエーションの領域へも拡大可能なものでなければならない。

30. 個別支援サービスは、締約国の文化的、経済的及び地理的特性によって、その名称や種類が異なる場合があるが、すべての支援サービスは、地域社会に包容されて生活することを支援し、地域社会内の他者からの孤立と隔離を防止するべく設計されなければならず、実際にこの目的に適したものでなければならない。これらの支援サービスの目的を、地域社会における完全な包容の実現とすることが重要である。それゆえ、個人を隔離し、その自律を制限する、施設収容という形態をとった支援サービスは、いかなるものであっても第19条(b)では認められていない。

31. すべての支援サービスは、完全な、個別化され自己選択された、効果的な包容と参加並びに自立した生活という規範の、全般的な目的を支持する方法で設計され、提供されなければならないということに留意することも重要である。

E. 第19条(c)

32. 条文のこの項で言及されているサービス及び施設とは、地域社会における一般住民向けの、障害に特化していない支援サービス及び施設である。それらは住居、公共図書館、病院、学校、輸送機関、店舗、市場、博物館、インターネット、ソーシャルメディア並びにこれらと類似した施設及びサービス等、広く様々なサービスを網羅している。これらは地域社会内の障害のあるすべての人にとって、利用可能であり、普遍的にアクセシブルで、受け入れ可能及び適応可能でなければならない。

33. 地域社会の施設、商品及びサービスのアクセシビリティは、インクルーシブでアクセシブルな雇用、教育及び医療に対する権利の行使とともに、障害のある人の地域社会への包容と参加に不可欠な条件である。様々な脱施設化プログラムから、施設の規模を問わず、施設閉鎖と施設入居者の地域社会への転居は、それだけでは十分ではないことが明らかになった。このような改革には、啓発プログラムを含む総合的なサービスと地域開発プログラムが伴わなければならない。地域社会内のアクセシビリティ全般を改善することを目的とした構造改革により、障害に特化したサービスの需要を削減することができるであろう。

34. 具体的な範囲として、第19条では、安全かつ適切な住居、個別サービス及び地域の施設並びにサービスへのアクセスを取り上げている。住居へのアクセスとは、他の者と同様に地域社会で生活するという選択肢を持つことを意味する。特別に計画された地域でのみ住居が提供され、障害のある人たちが同じ建物、施設又は地域で生活しなければならないような方法で住居の手配がなされるのなら、第19条は適切に実施されていないことになる。障害のある人に選択の権利と可能性を与えるために、単身で、あるいは家族の一員として生活している障害のある人に配慮したアクセシブルな住居が、地域社会のあらゆる地域において十分な数利用できるようにしなければならない。このためには、バリアフリー住居の新築と、既存の居住用建造物のバリアフリー改修が必要となる。さらに、住居は障害のある人にとって負担しやすい費用のものでなければならない。

35. 支援サービスは、都市又は農村地域で生活している障害のあるすべての人にとって、物理的にも地理的にも、安全に手の届く範囲内で利用可能なものでなければならない。それらは、低所得で生活している人のことを考慮した、負担しやすい費用のものでなければならない。また、それらは受け入れ可能なものでなければならず、すなわち、標準的な質的水準を尊重し、ジェンダー、年齢及び文化に配慮したものでなければならない。

36. 個人の選択と自己管理を認めない個別支援サービスは、地域社会における自立した生活をもたらすものではない。居住サービスと支援サービスを組み合わせた支援サービス(統合「パッケージ」として提供)は、多くの場合、費用効率を根拠に障害のある人に提供される。しかし、この根拠自体、経済的に反証される可能性がある一方で、費用効率という側面が、問題となっている人権の中核よりも優先されてはならない。パーソナルアシスタンス及びアシスタントは、障害のある人の間で規則によって「共有」されるべきではなく、パーソナルアシスタンスを必要としている障害のある人の完全かつ自由な同意をもってのみ共有される。選択の可能性は、地域社会で自立して生活する権利の3つの重要な要素の1つである。

37. 平等な支援サービスに対する権利は、地域社会における施設及びサービスに関連したプロセスへの障害のある人の参加と関与を保障する義務に対応しており、これにより、このような施設及びサービスが、特別なニーズに応え、ジェンダーと年齢に配慮し、地域社会における障害のある人の自発的な参加を可能にするために役立つものとなることが確保される。子どもの場合は、自立した生活及び地域社会への包容に対する権利の中核に、家庭で成長する権利が含まれる。

F. 中核となる要素

38. 本委員会は、自立した生活及び地域社会への包容に対する権利の行使に十分な、標準化された最低限の支援レベルの実現を、すべての締約国に義務として課すことを確保するには、第19条の中核となる要素を明らかにすることが重要であると考える。締約国は、第19条の中核となる要素が、特に金融危機や経済危機の際に、常に尊重されることを確保すべきである。これらの中核となる要素とは、以下の通りである。
 (a) 本委員会による法律の前における平等な承認に関する一般的意見第1号(2014)に従い、機能障害を問わず、障害のあるすべての人の、どこで、誰と、どのように生活するかを決定する法的能力に対する権利を確保すること
 (b) 住居へのアクセスにおける、収入とアクセシビリティの両方の点での無差別を確保し、新築及び改築された住居のアクセシブル化を保障する、建物に関する強行法規を制定すること
 (c) 地域社会における自立した生活に向けて、家族等による非公式な支援が唯一の選択肢とならないように、公式な支援を促進する措置をとることも含めて、障害のある人による地域社会における自立した生活のための具体的な行動計画を策定すること
 (d) ソーシャルメディアへの障害のある人の参加を含む社会的平等を達成し、ICTの開発が保護され、ユニバーサルデザインを基礎として進められるよう、適切なICTコンピテンスを確保するために、基本的な主流のサービスのアクセシビリティ要件に関する法律、計画及び指針を策定し、実施し、監視し、違反に対する制裁措置をとること
 (e) 具体的な行動計画を策定し、基本的な、個別の、共有されない、人権に根ざした、障害に特化した支援サービス及びその他の形態のサービスの開発と実施に向けた措置をとること
 (f) 第19条の達成における後退が、しかるべく正当化され、国際法に従った後退である場合を除き、発生しないことを確保すること
 (g) 今も施設で生活している人を含む障害のある人に関する一貫した定量的・定性的資料を収集すること
 (h) インクルーシブでアクセシブルな自立生活サービスを開発するために、地域の資金及び開発協力のための資金を含む、あらゆる利用可能な資金を使用すること

Ⅲ.締約国の義務

39. 締約国の義務は、絶対的かつ即時に適用可能な権利(市民的及び政治的権利)あるいは漸進的に適用可能な権利(経済的、社会的及び文化的権利)のいずれかの人権の性質を反映したものでなければならない。第19条(a)の、自らの居住地と、どこで、どのように、誰と生活するかを選択する権利は、市民的・政治的権利であることから、即時に適用可能な権利である。第19条(b)の、個別に評価された支援サービスへのアクセスに対する権利は、経済的、社会的及び文化的権利である。第19条(c)の、サービス施設を利用する権利は、経済的、社会的及び文化的権利で、アクセシブルなICT技術、ウェブサイト、ソーシャルメディア、映画、公共の公園、劇場及びスポーツ施設等の多くの主流のサービスが、この権利を通じて、社会的目的と文化的目的の両方を果たしている。漸進的な実現には、具体的な戦略、行動計画の策定と決定及び支援サービス開発のための資源の配分、並びに既存及び新規の一般向けのサービスを障害のある人を包容するものとする即時的義務が含まれる。

40. 尊重の義務に含まれるのは、ネガティブな〔訳注:権利を侵害しない〕側面だけではない。そのポジティブな〔訳注:行動を伴う〕側面として、第19条に記されているどの権利も、締約国又は民間主体によって侵害されないことを確保する、すべての必要な措置をとることが締約国に義務付けられている。

41. 経済的、社会的及び文化的権利の漸進的な実現を達成するために、締約国は自国における利用可能な手段を最大限に用いる措置をとらなければならない(注6)。これらの措置は、即時に、あるいは合理的な短期間のうちにとられなければならない。このような措置は、意図的、具体的で、対象を絞ったものとし、また、あらゆる適当な手段を用いたものとすべきである(注7)。地域社会における自立した生活に対する権利の組織的な実現には、構造改革が必要である。特にこれは、あらゆる形態の脱施設化に当てはまる。

42. 締約国は、障害のある人を代表する団体との緊密な、かつ敬意ある態度での協議の上、あらゆる施設収容を自立生活支援サービスに置き換えるための、適切な時間枠と資源調達を伴う戦略計画に着手する即時的義務を有する。締約国に対する評価の差は、計画の実施に関係しており、置き換えの問題とは関係ない。締約国は、地域社会への障害のある人の完全な包容を確保するために、障害のある人を代表する団体を通じて、彼らと直接協議し、移行計画を作成すべきである。

43. 締約国が、例えば経済危機あるいは金融危機への対応として、第19条に関する後退的措置を導入しようとしているとき、当該締約国は、このような措置が一時的で必要かつ無差別的なものであること、また、当該締約国並びに当該措置においては締約国の中核的義務を尊重するということを実証する義務がある(注8)

44. 漸進的な実現の義務には、経済的、社会的及び文化的権利の享受における後退的措置への反論も含まれている。このような措置は、障害のある人の自立した生活及び地域社会への包容に対する権利の完全な享受を奪うものである。したがって、後退的措置は第19条に対する違反となる。

45. 締約国は、この一般的意見に列挙されている、地域社会において自立して生活する権利に関する最低限の中核的義務については、後退的措置をとることを禁じられている。

46. 締約国は、障害のある個人又は集団に対する差別を撤廃し、自立した生活及び地域社会への参加に対する平等な権利を保障する即時的義務を負う。これは締約国に対し、障害のある人の自立に必要となる、居住地の選択、負担しやすい費用のアクセシブルな住居へのアクセス、住居の賃貸、一般向けの主流のサービス施設及びサービスへのアクセス等を妨げる政策、法律及び慣行を廃止又は改正することを義務付けるものである。合理的配慮提供の義務(第5条(3))もまた、漸進的な実現の対象ではない。

A. 尊重の義務

47. 尊重の義務とは、締約国に対し、自立した生活及び地域社会への包容に対する権利の個人的行使を、直接的若しくは間接的に妨げ、あるいは何らかの方法で制限することを控えるよう義務付けるものである。締約国は、いかなる人に対しても、地域社会における自立した生活へのアクセスを制限したり否定したりすべきではない。これには、居住地又はどこで、どのように、誰と生活するかを選択する、障害のある人の自律と選択肢を直接的若しくは間接的に制限する法律によるものも含まれる。締約国は、本条約第19条に記されている権利の行使を妨げる法律を改正すべきである。

48. この義務は、締約国に対し、一般向けの施設及びサービス並びに支援サービスへのアクセスを阻む障壁を保持し、また、新たに生み出す法律、政策及び組織を廃止し、これらの制定を見送ることも義務付けている。これには、自己の意思に反してメンタルヘルスサービス施設に拘束されている、若しくはその他の障害特有の形式による自由の剥奪を受けている、あらゆる個人を解放する義務も含まれる。さらに、これにはあらゆる形態の後見制度の禁止と、代替的意思決定制度を支援付き意思決定という代替策に置き換える義務も含まれる。

49. 第19条の下での障害のある人の権利の尊重は、締約国が施設収容を段階的に廃止しなければならないことを意味する。締約国による新規の施設の建設は認められず、古い施設も、入居者の物理的安全の確保に必要な最も緊急の措置以上の改築は認められない。施設は拡大されるべきではなく、施設を出る者の代わりに新規の入居者を入れるべきではなく、施設から分かれた「サテライト型」の生活施設(アパートや一戸建)は、外見上は個別に生活しているように見えても施設を中心に展開しており、開設されるべきではない。

B. 保護の義務

50. 保護の義務とは、締約国に対し、家族及び第三者が直接的又は間接的に、地域社会における自立した生活に対する権利の享受を妨げることを防ぐ措置をとるよう義務付けるものである。また、それは締約国に対し、家族及び第三者、サービス提供者、土地所有者若しくは一般向けのサービスの提供者による、地域社会に包容され、自立した生活をする権利の完全な享受を損ねる行動を禁止する法律及び政策を制定し、実施することも義務付ける。

51. 締約国は、公共若しくは民間の資金が、いかなる形態であれ施設収容を行う既存及び新規の施設の維持、改築、開設、建築に費やされないことを確保すべきである。さらに締約国は、民間施設が「地域社会での生活」を装って開設されないことを確保しなければならない。

52. 支援は常に、サービス提供者の利益ではなく、個人のニーズに基づいたものとすべきである。締約国は、サービス提供者を監視する仕組みを設置し、障害のある人が家庭内に隠されたり、施設内で孤立させられたりすることから保護し、子どもが障害を理由に遺棄されたり、施設に入れられたりすることから保護する措置を採用し、障害のある人に対する第三者による暴力を摘発する適当な仕組みを設置すべきである。また、締約国は、居住型施設の所長及び/若しくは管理者が、入居者の後見人になることを禁止すべきである。

53. 保護の義務には、特定のサービスの提供からの個人又は集団の排除など、差別的な慣行の禁止も含まれる。締約国は、地域社会における自立した生活を踏まえてサービスが提供されること、並びに障害のある人が住宅市場において賃貸契約の可能性を否定されず、不利を被らないことを確保するなど、自立した生活と地域社会への包容を阻む慣行上又は手続上の障壁を第三者が課すことを禁止し、防止すべきである。図書館、スイミングプール、公共の公園/スペース、店舗、郵便局あるいは映画館などの公衆に開放されている一般向けの地域社会サービスは、本委員会によるアクセシビリティに関する一般的意見第2号(2014)(注9)に記されているように、アクセシブルな、かつ障害のある人のニーズに対応したものでなければならない。

C. 実現の義務

54. 実現の義務とは、締約国に対し、本条約に記されている自立した生活及び地域社会への包容に対する権利の完全な実現を確保するための適当な法的措置、行政措置、予算措置、司法措置、計画、宣伝及びその他の措置を促進し、支援し、提供することを義務付けるものである。また、それは締約国に対し、地域社会におけるアクセシブルではない住居、障害支援サービスへの限られたアクセス、アクセシブルではない施設、商品及びサービスと、障害のある人に対する偏見など、自立した生活と地域社会への包容に対する権利の完全な実現を阻む実際の障壁を撤廃するための措置をとることも義務付ける。

55. 締約国は、障害のある人が自立した生活をし、地域社会に包容される権利を実現できるよう、その家族が支援する力を向上させるべきである。

56. 法律、政策及び計画を実施する一方で、締約国は、地域社会における自立した生活に関するあらゆる側面について、特に地域社会における支援サービスの開発と支援サービスへの資源の投資に関して、障害のある人を代表する団体を通じて様々な障害のある人と緊密に協議し、彼らを積極的に関与させなければならない。

57. 締約国は、脱施設化の戦略と具体的な行動計画を採用しなければならない。これには、構造改革を実施し、障害のある人のために地域社会におけるアクセシビリティを改善し、地域社会への障害のある人の包容に関する、社会のすべての人の認識を高める義務が含まれる。

58. 脱施設化には、体制の転換も必要である。これには、総合戦略の一環として、施設閉鎖及び施設収容規則の撤廃が含まれる。これと並行して、インクルーシブな支援サービスに加えて、予算と時間枠を設定した個別移行計画を含む様々な個別支援サービスも設ける。それゆえ、地方自治体を含む政府のあらゆるレベル及び部門での改革、予算及び前向きな姿勢を確保するために欠かせない、協調的な、政府全体によるアプローチが必要となる。

59. 地域社会における自立した生活を支援する計画及び資格の付与は、障害関連の費用を埋め合わせるものでなければならない。さらに、家族向けの住居を含む、十分な数のアクセシブルな、かつ負担しやすい費用の住居の利用可能性を確保することが、脱施設化に不可欠である。障害のある人の自律及び自立を低下させる要件を、住居を利用する際の条件にしないことも重要である。公衆に開放される建物とスペース及びあらゆる形態の輸送機関は、障害のあるすべての人のニーズに配慮する方法で設計されなければならない。締約国は、障害のある人が地域社会で自立した生活をする可能性の実現に資金を再配分するための、意図的かつ即時的な措置をとらなければならない。

60. 障害支援サービスは、障害のあるすべての人にとって、利用可能で、アクセシブルな、負担しやすい費用の、受け入れ可能及び適応可能なものでなければならず、また、個人あるいは家庭の収入などの様々な生活条件や、性別、年齢、国民的若しくは種族的出身、言語的、宗教的、性的及び/又はジェンダーのアイデンティティ等の個人の状況に対して、敏感に対応するものでなければならない。障害の人権モデルは、必要な支援サービスの種類及び量を含むいかなる理由をもってしても、障害のある人を排除することを認めない。パーソナルアシスタンスをはじめとする支援サービスは、事情を知らされた上での自由な同意による決定に基づく場合を除き、他者と共有されるべきではない。

61. 締約国は、以下の要素を援助の利用に関する資格基準に盛り込むものとする。アセスメントは、障害に対する人権アプローチに基づき、機能障害ではなく社会における障壁を理由に本人のニーズに焦点を絞り、本人の意思と選好を考慮し、これらに従い、意思決定プロセスへの障害のある人の完全参加を確保するものとすべきである。

62. 障害手当等の現金給付は、本条約の第19条及び第28条に従い、締約国が障害のある人に支援を提供する形式の1つを示している。このような現金給付では、多くの場合、障害関連の費用が認められ、地域社会への障害のある人の完全な包容が促進される。また、現金給付は、障害のある人が直面する可能性がある貧困及び極端な貧困状況に取り組むものである。締約国は、経済危機又は金融危機の際に、障害のある人の収入を減少させたり、前述のパラグラフ38に定められている人権基準と一致しない緊縮政策をとったりすることによって、障害のある人が直面する困難を増やしてはならない。

63. 障害のある人への支援は、個別アプローチにより評価され、障害のある人が地域社会に包容される際に経験する具体的な活動と実際の障壁に合わせて行われるべきである。アセスメントでは、障害のある人が、時間の経過とともに変化していく活動に参加するためのアクセスを必要としていることを認識すべきである。締約国は、現金給付/個別予算などの支援の個別化において、障害のある人が農村及び/又は都市地域で生活する際に直面する課題を考慮し、これに取り組むことを確保すべきである。

64. 締約国は、地域社会における自立した生活と支援サービスの選択に関する、事情を知らされた上での意思決定に不可欠な、最新の、かつ正確な情報を、点字、手話、触覚の使用、読みやすい様式及び代替的・補助的な意思疎通の形態を含むアクセシブルな様式で、適時に提供し、普及すべきである。

65. 締約国は、障害関連のサービスに従事しているか、新たに従事しようとしている、スタッフ、意思決定者並びに障害のある人向けのサービスを監視する公務員を含む職員が、地域社会における自立した生活に関する理論及び実践研修を適切に受けることを確保すべきである。締約国は、また、第19条に従い、障害のある人が地域社会で生活できるよう社会的支援を提供するために許可を申請する団体に関して基準を設け、それらの団体がどのように職務を遂行しているかを評価すべきである。

66. 締約国は、また、第32条に基づく国際協力と、それに続く投資及びプロジェクトが、地域社会における自立した生活を阻む障壁を永続化させる一因とならないこと、むしろ、障壁を撤廃し、自立した生活及び地域社会への包容に対する権利の実施を支えるものとなることを確保すべきである。災害後は、本条約第11条の実施に関わる重要な要素として、二度と障壁を築かないことが重要である。

67. 締約国は、司法手続の利用の機会を確保し、法律扶助、適当な法的助言、救済策及び支援を、合理的な手続上の配慮等を通じて、地域社会で自立して生活する権利の行使を求めている障害のある人に提供しなければならない。

68. 締約国は、家族介護者に適切な支援サービスを提供し、それを受けて今度は彼らが自分の子どもや親族の地域社会における自立した生活を支援できるようにすべきである。この支援には、レスパイトケアサービス、児童ケアサービス及びその他の親支援サービスが含まれる。財政的援助も、多くの場合、極端な貧困の状況下で、労働市場へのアクセスの可能性もなく生活している家族介護者には不可欠ある。締約国は、また、家族にも社会的支援を提供し、カウンセリングサービス、支援の輪及びその他の適切な支援の選択肢の開発を促進すべきである。

69. 締約国は、障害のある人が経験する物理的障壁、意思疎通や環境、インフラストラクチャー及び態度に関わる障壁と、地域社会での自立した生活の実施に必要な要件に関して、資料を提供してくれる調査及びその他の形態の分析を、定期的に実施しなければならない。

Ⅳ.条約の他の規定との関係

70. 自立した生活及び地域社会への包容に対する権利は、本条約に定められている他の人権の享有と相互に関連している。同時に、すべての権利は、個人が生活する場所として選択した、その人格の自由かつ完全な発展がその中にあってのみ実現可能な地域社会で行使され、享有されなければならないということを認めるこの権利は、他の人権をすべてあわせたものを上回る。

71. 障害のある人を代表する団体を通じて、障害のある人と協議し、彼らを積極的に関与させること(第4条(3))は、すべての計画及び戦略の採択並びに地域社会における自立した生活に対する権利を実施する際のフォローアップと監視に不可欠である。意思決定者はあらゆる段階において、障害のある女性、障害のある高齢者、障害のある子ども、心理社会的障害のある人及び知的障害のある人の団体を含む、障害のあるすべての人を積極的に関与させ、彼らと協議しなければならない。

72. 無差別(第5条)は、自立した生活と地域社会への包容という観点からすると、支援サービスへのアクセスと受給において重要である。締約国は、差別を受けることなく支援サービスを利用するための資格基準と手続を、機能障害ではなく個人のニーズに客観的に焦点を絞り、人権を遵守するアプローチに従って定義すべきである。障害のある子ども、学生、従業員及び高齢者向けのサービス等、障害のある人を対象とした特別なサービスを、障害のある人が置かれた特別な状況の下で、そのニーズに従って確立することは、本条約に違反する差別とみなされるべきではなく、むしろ、正当かつ法的に利用可能な差別是正措置とみなされるべきである。第19条に関連した差別に直面している障害のある人には、自由に利用できる、効果的で負担しやすい費用の法的救済策がなければならない。

73. 多くの場合、障害のある女子(第6条)は、社会における家父長的な定型化された観念と、女性を軽んじる父権的な社会的様式のために、より排除され、孤立させられ、居住地及び生活様式に関して、より多くの制約に直面している。また、障害のある女子は、ジェンダーに基づく複合的及び交差的な差別、施設収容、性的暴力、虐待並びに性的ハラスメントを含む暴力も経験する(注10)。締約国は、負担しやすい費用の、若しくは無料の法的救済措置及び支援サービスを、暴力と虐待の被害者に提供しなければならない。家庭内暴力を受けている障害のある女性は、介護者としての役割をしばしば果たしている虐待者に、経済的、身体的あるいは情緒的に依存していることが多く、この状況のせいで、障害のある女性が虐待関係から脱することが妨げられ、さらなる社会的孤立へとつながっている。そこで、自立した生活と地域社会への包容に対する権利を実施する際には、ジェンダーの平等と、ジェンダーに基づく差別並びに父権的な社会的様式の撤廃に、特別な注意を払うべきである。

74. 文化規範及び価値観は、悪い意味で、障害のある女子の生活様式に関する選択とコントロール並びに自律を制限し、特定の生活様式で生活する義務を負わせ、自己のニーズを抑制し、その代わりに他者に奉仕し、家庭内で特定の役割を担うことを強制する可能性がある(注11)。締約国は、女性が社会サービスや支援を利用する際の差別と障壁に取り組み、社会サービスや支援の利用に関する様々な政策、計画及び戦略において、男女平等を十分に配慮することを確保する措置をとるべきである。

75. 締約国は、また、障害のある女子の能力開発、自律的な力の育成及び向上を目的とした措置(第6条(2))が、支援及び社会的な保障の利用におけるジェンダーに基づく不平等に取り組むものであることも確保すべきである(注12)。締約国は、障害のある女性が一般労働市場に(再)参入できるよう支援する適切なワーク・ライフ・バランス政策(資源、時間、サービス)を採用し、親としての責任の行使に関して、男女の平等な権利及び責任を確保すべきである。 また、ジェンダーに基づく暴力の被害者のためのシェルターが、障害のある女子にとって完全にアクセシブルであることを確保することも、締約国の責務である。

76. 障害のある少年・少女のための適切な、年齢に配慮した支援サービスの存在は、彼らの人権の平等な享有(第7条)にとって極めて重要である。障害のある子どもの発達しつつある能力を尊重し、彼らが自己に影響を及ぼす選択について発言する権利を持てるよう支援することが不可欠である。障害のある子どもの施設収容を阻止するために、家族に対する支援、情報及び指針を提供すること(第23条)と、障害のある子どもに平等な機会を保障する養子縁組に関するインクルーシブな政策を設けることも重要である。

77. 仲間との社会的交流や関わり合いの際に、十代の若者は、親族による非公式な支援よりも、パーソナルアシスタンスや専門の手話通訳者の方を好む場合がある。締約国は、障害のある子どもと青年のために、個人的に、若しくは彼らが所属する団体を通じて、革新的な支援形式とアクセシブルなサービスを確立すべきである。障害のある子どもは、スポーツや地域社会での活動を実践するために、年齢に応じた支援を必要とする場合がある。障害のある青年が、同年代の仲間との余暇活動に時間を費やし、これに参加することができるようにすべきである。締約国は、仲間集団のネットワークへの障害のある青年の包容を促進する支援機器及び技術を提供しなければならない。さらに、実家を出るための支援、就労支援及び高等教育を継続するための支援等、若者の成人期への移行を促進するサービスは、自立した生活の支援に欠かせない。

78. 第19条は最終的に地域社会の変換に関係しており、開かれた、権利実現を可能にする、インクルーシブな地域社会の創造には、意識の向上(第8条)が不可欠である。障害のある人の自立した生活を妨げる定型化された観念、障害のある人に対する差別と誤解は根絶されなければならず、障害のある人の肯定的なイメージと社会に対する貢献が促進されなければならない。意識の向上は、当局、公務員、専門家、メディア、一般大衆、障害のある人とその家族に対して行われるべきである。すべての意識向上活動は、障害のある人を代表する団体を通じて、障害のある人との緊密な協力の下に実行されるべきである。

79. 第19条に定められている権利は、施設及びサービス等の利用の容易さ(第9条)に関する締約国の義務と結びついている。なぜなら、それぞれの地域社会における、公衆に開放されるすべての構築環境、輸送機関、情報、通信、施設及びサービスの全般的な利用の容易さ〔アクセシビリティ〕は、地域社会における自立した生活の前提条件であるからだ。第9条は、建物管理法及び都市計画法の改正、様々な部門におけるユニバーサルデザインの基準の導入、住居のアクセシビリティ基準の設定など、公衆に開放される建物における障壁の特定と撤廃を義務付けるものである。

80. 締約国は、あらゆる災害リスク管理活動(第11条)において、障害のある人に支援サービスを提供する義務を事前に考慮し、彼らが取り残されたり、忘れられたりしないようにしなければならない。武力紛争、人道上の緊急事態又は自然災害の発生の後に障壁が再び築かれないようにすることも重要である。再建のプロセスでは、障害のある人の地域社会における自立した生活のために、完全なアクセシビリティを確保しなければならない。

81. 法律の前にひとしく認められる権利(第12条)は、障害のあるすべての人が完全な法的能力を行使する権利を持つこと、ひいては、どこで、誰と、どのように生活したいかを選択することにより、自己の人生を選択し、コントロールする平等な権利を持ち、自己の意思と選好に従い支援を受ける権利を保障するものである。支援付き意思決定への移行を完全に実現し、第12条に記されている権利を実施するには、障害のある人がその法的能力を他の者との平等を基礎として行使できるように、自己の意思と選好を育み、表明する機会を持つことが欠かせない。これを達成するためには、障害のある人が地域社会の一員とならなければならない。さらに、法的能力行使の支援は、障害のある個人の意思と選好を尊重する、地域に根ざしたアプローチを用いて提供されるべきである。

82. 第13条に記されている司法手続の利用の機会は、地域社会で自立して生活する権利の完全な享有を確保する基礎となる。締約国は、障害のあるすべての人が法的能力を持ち、法廷に立つことを保障しなければならない。締約国はさらに、地域社会における自立した生活に関するあらゆる決定について、不服申立てが可能であることを確保しなければならない。地域社会における自立した生活を可能にするための支援は、権利及び資格として法的強制力を持つものとする。司法手続の平等かつ効果的な利用を確保するためには、法律扶助、支援及び手続上の配慮と年齢に適した配慮に対する実質的な権利が不可欠である。

83. 機能障害、若しくは機能障害との関連で「危険」とみなされるような状況、及び本委員会による第14条に関する指針に詳細が説明されているその他の要因に基づく強制的な施設収容は、しばしば障害に特化した支援サービスの欠如が原因で実施されたり、増加したりする。したがって第19条の実施は、最終的には第14条に対する違反を防止することになる。

84. 支援サービスに、障害のある人に対する虐待、搾取若しくはいかなる暴力の可能性も入る余地を残さないことを確保することが、何よりも重要である(第16条)。障害、ジェンダー及び年齢に配慮した監視、法的救済策及び救援は、第19条で述べられているサービスを利用していて、虐待、暴力及び搾取に直面する可能性のある、障害のあるすべての人が利用できるものでなければならない。施設は入居者を地域社会の他の人々から孤立させる傾向があるため、施設に収容された障害のある女子は、強制不妊手術、性的・身体的虐待、心理的虐待及びさらなる孤立を含む、ジェンダーに基づく暴力をより一層受けやすい。障害のある女子の場合、このような暴力に関する報告を阻むさらに多くの障壁にも直面する。締約国が施設を監視する際にこれらの課題についても考慮し、施設内でジェンダーに基づく暴力にさらされている障害のある女性による救済策の利用を保障することが不可欠である。

85. 個人の移動(第20条)に対する支援がなければ、障害のある多くの人の地域社会における自立した生活を阻む障壁はなくならない。第20条に記されている、負担しやすい費用で利用可能な、質の高い移動補助具、補装具、支援機器及び人又は動物による支援及び仲介する者の提供は、障害のある人のそれぞれの地域社会における完全な包容と参加の前提条件である。

86. 障害のある人は、利用しやすい〔アクセシブルな〕様式のあらゆる公共の情報にアクセスし、他の者との平等を基礎として情報及び考えを求め、受け、及び伝える権利を持つ(第21条)。意思疎通は自らが選択する形態及び様式で行うことができ、これには、点字、手話、触覚の使用、読みやすい様式及び代替的な意思疎通の形態、手段及び様式が含まれる。意思疎通及び情報を双方向でやりとりできることと、異なる意思疎通方法を使用する個人にとって、サービス及び施設が利用しやすいことが重要である。障害のある人が、どこで、誰と、どのように生活するか、また、どのようなサービスが最適かを、十分に事情を知らされた上で決断し、選択できるようにするためには、支援サービスに関する情報と障害関連の仕組みを含む社会的な保障のスキームに関する情報が、利用しやすく、様々な情報源から入手可能であることが特に重要である。フィードバック及び不服申立の仕組みが、意思疎通の面で利用しやすいことも極めて重要である。

87. 締約国は、第19条の下での支援サービスの提供において、障害のある人のプライバシー、家族、住居、通信及び名誉が、いかなる不法な干渉からも保護されることを確保すべきである(第22条)。いかなる不法な干渉の事例においても、障害、ジェンダー及び年齢に配慮した監視、法的救済策及び救援が、支援サービスを使用している障害のあるすべての人にとって利用可能でなければならない。

88. 地域社会における自立した生活に対する権利は、障害のある子どもや親の、家族に対する権利(第23条)と深く結びついている。地域に根ざした支援及びサービスがなければ、障害のある人の家族に経済的な困難や制約がもたらされる可能性がある。本条約第23条に記されている諸権利は、子どもがその家族から引き離され、施設に収容されることを防ぐために、また、地域社会での生活に際して家族を支援するために欠かせない。これらの権利は、親の障害を理由に子どもが親から引き離されないことを確保するためにも、同様に重要である。締約国は家族に対し、子どもの権利を守り、地域社会への包容と参加を促進するに当たり、情報、指針及び支援を提供すべきである。

89. 自立した生活及び地域社会への包容は、本質的にインクルーシブ教育(第24条)と結びついており、障害のある人が自立して生活し、地域社会への包容と参加を享受する権利の認識が必要である(注13)。普通教育制度への障害のある人の包容は、地域社会における障害のある人のさらなる包容を生む。脱施設化も、インクルーシブ教育の導入を伴う。締約国は、障害のあるすべての人が地域社会での生活を享受し、地域社会から利益を得、地域社会に貢献するために必要な強み、技能及び能力を構築する際に、インクルーシブ教育に対する権利の行使が果たす役割に留意すべきである。

90. 一般向けの保健施設及びサービス(第25条)は、障害のある人にとって、地域社会において利用可能で、アクセシブルな、適応可能及び受け入れ可能なものであり、一部の障害のある人(意思疎通の複雑なニーズや心理社会的障害、知的障害のある人及び/又はろうの人)が入院、手術及び診察中に必要とする支援を伴い、かつ、快く提供するものでなければならない。看護師、理学療法士、精神科医又は心理学者を、病院だけでなく自宅にも派遣することは医療の一部であり、第19条の下での締約国の義務の実現とみなされるべきではなく、第25条の下での義務の実現とみなされるべきである。

91. 地域社会における自立した生活と、ハビリテーション(適応のための技能の習得)及びリハビリテーション(第26条)とは相互に依存している。一部の障害のある人の場合、十分な個別支援を受けなければ、リハビリテーションサービスへの参加は不可能である。同時に、リハビリテーションの目的は、障害のある人の完全かつ効果的な地域社会への参加を可能にすることである。障害のある人のハビリテーション及びリハビリテーションでは、事情を知らされた上での本人の自由な同意を、常に尊重しなければならない。ハビリテーション及びリハビリテーションは、教育、雇用、健康及び社会問題と極めて関わりが深い。

92. パーソナルアシスタンスを含む個別支援サービスの存在は、多くの場合、労働及び雇用に対する権利(第27条)の効果的な享有の前提条件である。さらに、障害のある人は、障害に特化した支援サービスの雇用主、管理者又はトレーナーにもなるべきである。第19条の実施は、このように保護雇用の段階的廃止を助けることになる。

93. 障害のある人が相当な生活水準(第28条)を享受することを確保するために、締約国はとりわけ、彼らが自立して生活できるようにする支援サービスを利用する機会を提供すべきである。それゆえ、締約国側には、特に貧しい生活をしている障害のある人のために、機能障害に関連するニーズに係る適当なかつ費用の負担しやすいサービス、補装具その他の援助を利用する機会を確保する義務がある。さらに、地域社会における公営及び補助金付きの住宅計画を利用する機会が必要である。障害のある人が障害に関連する費用を自己負担しなければならない場合、本条約に反するとみなされる。

94. 地域社会の発展を左右する決定に影響を与え、これに参加するために、障害のあるすべての人は、個人的に、あるいは障害のある人の団体を通じて、政治的及び公的活動への参加の権利(第29条)を享有し、行使すべきである。適当な支援により、障害のある人が投票し、政治的活動へ参加し、公務を執行する権利の行使に対する貴重な援助が提供できる。アシスタント若しくはその他の支援スタッフが、障害のある人の投票権行使の際の選択を制限したり、悪用したりしないことを確保することが重要である。

95. 文化的な生活、レクリエーション、余暇及びスポーツ(第30条)は、例えばイベント、活動及び施設を障害のある人にとってアクセシブルかつインクルーシブなものとすることを確保することにより、包容を追求し、達成することができる、地域社会における生活の重要な次元である。特に、パーソナルアシスタント、ガイド、朗読者、専門の手話・触手話通訳者は、障害のある人の意思と選好に従った、地域社会におけるインクルーシブな生活に貢献する。いかなる種類の支援の使用も、障害に関連する費用とみなされることが重要である。そのような支援サービスは、地域社会への包容と自立した生活を育む助けとなるからである。文化的な活動及び余暇活動への参加に必要なアシスタントは、入場料を無料にすべきである。また、いつ、どこで、どのような種類の活動に援助を使用するかについて、国内外を問わず、制約すべきではない。

96. 資料及び情報は、住居、生活様式、社会的な保障のスキーム並びに自立した生活と支援及びサービスに関するものなども含めて、あらゆる部門にわたり、障害別に系統的に分類されなければならない(第31条)。情報は、脱施設化と地域社会における支援サービスへの移行がどのように進んでいるかを定期的に分析できるものとすべきである。指標には、各締約国の特別な状況を反映させることが重要である。

97. 国際協力(第32条)は、海外援助が第19条に従い、障害のある人の意思と選好を尊重し、彼らがどこで、誰と、どの生活施設で生活するかを選択する権利を育む地域社会の支援サービスに投資されることを確保する方法で、実施されなければならない。国際協力の枠組みの中で獲得された資金を、新たな施設や監禁場所若しくは施設型ケアモデルの開発に投資することは、障害のある人の隔離や孤立につながるので、受け入れられない。

Ⅴ.国レベルでの実施

98. 本委員会は、締約国が自立した生活と地域社会における包容に対する権利を実施する際に、国レベルで課題に直面する可能性があることに留意する。しかし、前述の規範的内容と義務に従い、締約国は本条約第19条の完全な実施を確保するために、以下の措置をとるべきである。
 (a) 障害のあるすべての人が、その機能障害の種類を問わず、どこで、誰と、どのように生活するかを選択すること(いかなる障害についても、それを理由に監禁されない権利を含む)を妨げる、あらゆる法律を廃止する。
 (b) 地域社会、環境並びに情報通信を、障害のあるすべての人にとってアクセシブルにするために、法律、基準及びその他の措置を制定し、執行する。
 (c) 社会的な保障に関する計画が、様々な障害のある人のニーズを、他の者との平等を基礎として満たすものであることを確保する。
 (d) 物理的空間及び仮想空間におけるユニバーサルデザインの原則を、義務の実現/実施の監視も含めて、政策、法律、基準及びその他の措置に盛り込む。本委員会によるアクセシビリティに関する一般的意見第2号(2014)に概説されているユニバーサルデザインの原則や建設に関する法的指針を遵守するために、建築基準法を見直す。
 (e) 障害のあるすべての人に、地域社会における自立した生活に対する実質的な、及び手続上の権利を提供する。
 (f) 障害のある人に、自立した生活と地域社会への包容に対する権利に関する情報を、彼らが理解できる方法で提供し、障害のある人がその権利を行使する方法を学べるように、自律的な力を育成する研修を行う。
 (g) 障害のある人のあらゆる形態の孤立、隔離又は施設収容を撤廃するために、脱施設化のための明確な、的を絞った、具体的な時間枠と適切な予算を伴う戦略を採用する。現在施設に収容されている心理社会的障害及び/又は知的障害のある人並びに障害のある子どもに、特別な注意を払うべきである。
 (h) 障害のある人に対する否定的な態度と定型化された観念に立ち向かう意識を育み、個別化されたアクセシブルな主流のサービスの開発に取り組む中で、地域社会の変革を確実に実施する。
 (i) 障害のある人の参加を、個人的に、また、障害のある人を代表する団体を通じて確保することは、支援サービス及び地域社会の変革と、脱施設化戦略の計画及び実施に極めて重要である。
 (j) 総合的な政策及び法的指針を策定し、その実施に向けた適切な時間枠と、官民の機関による違反に対する、効果的で抑止力のある、相応の制裁措置を設けた上で、負担しやすい費用のアクセシブルな住居、構築環境、公共のスペース及び輸送機関の建設のための財源を割り当てる。
 (k) パーソナルアシスタンス、ガイド、朗読者、専門の手話通訳者等、障害のあるすべての人を対象とした、適当な、かつ十分に人指向/「利用者」主導で、本人が管理できる支援サービスの開発に資源を割り当てる。
 (l) 第19条の規範的内容を考慮した、障害のある人の地域社会における自立した生活を支援するサービスの入札プロセスを策定する。
 (m) 既存の施設及び居住型サービス、脱施設化戦略及び地域社会における自立した生活の実施を監視する仕組みを、独立した監視の枠組みの役割に留意しつつ、確立する。
 (n) 第19条の下で想定される監視および実施は、障害のある人を代表する団体を通じて障害のある人と十分に協議し、彼らの参加を得て遂行されるべきである。

(注1)経済的、社会的及び文化的権利委員会(CESCR)による一般的意見第3号:締約国の義務の性格(規約第2条パラグラフ1)1990年12月14日 E/1991/23パラグラフ1-2

(注2)世界人権宣言第22条、自由権規約人権委員会による一般的意見第27号パラグラフ1、経済的、社会的及び文化的権利委員会による一般的意見第4号パラグラフ7

(注3)子どもの権利委員会による一般的意見9号(2006)障害のある子どもの権利 CRC/C/GC/9 2007年2月27日 パラグラフ47〔訳注:及び49〕

(注4)経済的、社会的及び文化的権利委員会による一般的意見第5号パラグラフ15及びパラグラフ48-49〔訳注:48-49ではなく33〕

(注5)障害者権利委員会による障害者権利条約第14条:障害のある人の身体の自由及び安全に対する権利に関する指針を参照。2015年9月に開催された同委員会第14会期で採択

(注6)経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約第2条(1)及び障害者権利条約第4条(2)を参照

(注7)経済的、社会的及び文化的権利委員会による一般的意見第3号パラグラフ2

(注8)本委員会委員長から締約国への緊縮政策に関する手紙 2012年5月

(注9)http://tbinternet.ohchr.org/_layouts/treatybodyexternal/Download.aspx?symbolno=CRPD/C/GC/5&Lang=en

(注10)障害者権利委員会による障害のある女子に関する一般的意見第3号(2016)を参照

(注11)同上 パラグラフ8、18、29及び55

(注12)女子差別撤廃委員会による一般勧告第21号 婚姻及び家族関係における平等(第13会期、1994年)

(注13)障害者権利委員会によるインクルーシブ教育を受ける権利に関する一般的意見第4号(2016)


原文:
United Nations
CRPD/C/GC/5
Convention on the Rights of Persons with Disabilities
Distr.: General
27 October 2017
Original: English
Committee on the Rights of Persons with Disabilities
General comment No. 5 (2017) on living independently and being included in the community
http://tbinternet.ohchr.org/_layouts/treatybodyexternal/Download.aspx?symbolno=CRPD/C/GC/5&Lang=en
Office of the High Commissioner for Human Rights.United Nations Human Rights.
http://www.ohchr.org/EN/HRBodies/CRPD/Pages/CRPDIndex.aspx

〔訳注〕 条約文・条項見出しの引用部分などでは政府公定訳を使用しています。 例:child(子ども/児童)、woman(女性/女子)、inclusion(インクルージョン/包容)、accessibility(アクセシビリティ/利用の容易さ)

日本障害フォーラム仮訳

訳者:石川ミカ