地域共生社会開発プログラムとは

NPO法人起業支援ネット 副代表理事 鈴木 直也氏

皆さん、こんにちは。聞こえますでしょうか。鈴木と申します。よろしくお願いします。

私は、2016年からリハビリテーション協会様と一緒にこのプログラムの開発、実施を進めてまいりました。その中で、そのプロセスを通じて感じたこと、考えたことを少しご紹介させていただければと思っています。

先ほどのビデオで全体像はつかんでいただけたと思っておりますが、このプログラムの開発は、地域社会から取り残されてしまいそうな人たちをなんとかつながりを取り戻すことで、いきいきと暮らしていくことを目指してまいりました。この取り残されてしまいそうな人たちというのは、例えば、引きこもったり、住むところが確保できなかったり、色々な人とつながりが切れてしまって絶縁してしまったり、仕事をクビになって離職してしまったり、差別を受けてしまったり、お金がなくなってしまって社会的な活動ができなくなってしまったり。そういう方というのは、たくさんいらっしゃると思います。特に、この新型コロナウイルスの関係で、今、一番このつながりというものが途切れてきてしまっていて、深刻な社会課題になりつつあることは、報道からも垣間見えると思いますが、このコロナ感染が広がる前からそういう方々は結構いらっしゃいます。ただ、なかなか難しい問題がありまして、現状としては、困難な人ほど、その人に対する支援の手が届かなかったり、支援そのものがなかったり。つまり、困難な人ほどつながらないのです。ですが、目指す地域というのは、どんな方の困りごとに対しても、ちゃんと答える機能があったり、支援が届いたり、そして、ネットワークでしっかりと囲まれているといいますか、支えられている、そんな地域なのです。しかし、なかなかこの現状と未来をつなぐ有効なプログラムがなく、色々なことにチャレンジしても、そのイベントの当日はうまくいきますし、何かアクションしたわずかな参加者の方はうまくいくのですが、地域という視点でみると焼け石に水というか、なかなか手ごたえがないというようなことを感じながら日々活動していたわけなのです。

地域共生社会開発プログラムとは:スライド1(図の内容)

地域共生社会開発プログラムとは:スライド2(図の内容)

もう少し困った人に対して、地域社会が有効な手を差し伸べることができないかと、そんなことを考えてみました。これは奥田道大先生の「コミュニティ形成の理論」というものを参考に作らせていただいたのですが、なぜ困っている人に対して手が差し伸べられないのかということを考えてみると、一つは、まず自分事とは思えないこと。身内は守るけど、身内じゃないから、そこまではできないよという方がいらっしゃる。次に、知らんふりするというか、自分は知らんと、自分には関係ないから、自分は困ってない、自己責任であるというようなことで、なかなか手が差し伸べられないケースがある。また、やることは必要だと思っているが、それは行政がやるべきこと。だって、私たちは税金を払っているのだからと、自分がすべきことだとは思っていない。行政がちゃんとやれ、困った人がいるなら何とかしなさい、とこういう人たちもいて、なかなか自ら「じゃあ、やりましょう」ということにはなっていかないというのが、このコミュニティの類型論から考えた原因というものでした。ですから、この身内を守るとか、知らんふりするとか、行政を叱るとか、これらをどうやってひっくり返していくか。この考え方をどうやって変えていくのか。もしくは、何か体験を通じて自然に変わっていくことはできないかということで、ワークショップを使えないかと、先ほど、ビデオにもありました「できることもちよりワークショップ」を開発させていただいたわけです。このワークショップをすることによって、地域の一人ひとりの住民の方の意識や行動が少しずつ変化するのではないかと、少しずつ手ごたえを感じながら、今、進めている最中ということになります。

地域共生社会開発プログラムとは:スライド3(図の内容)

地域共生社会開発プログラムとは:スライド4(図の内容)

この「地域共生社会開発プログラム」は、3つのステップで構成されています。まずは、地域資源を発掘ということで、先ほどのビデオの中でも、一人ひとり丁寧にお手紙をお渡しするつもりでお声がけをすると主催者の方がおっしゃっていました。一番大事なことは地域にどんな人がいるか、どんなキーパーソンがいるか、どんなマインドを持った人がいるか、そういう人たちを徹底的に発掘して、お声がけをして、賛同していただく。ワークショップに来ていただくこともいいですし、その後、何かしら依頼して、協力を求められることが、地域資源を発掘することの重要なポイントになっています。そして、先ほどのワークショップを実施するわけですが、ワークショップは実施するだけでは一過性のもので終わってしまいますので、ワークショップが終わった後にチーム化ということで、何かしらリアルな連携、ワークショップが終わった後に地域の中で具体的な活動をスタートさせる。これをスムーズに連続して行っていくことで、地域が少しずつ変わり始めたと聞くようになりました。具体的な内容については先ほどビデオでもありましたし、このあと大府市の事例の中でもお聞きできるのではないかと思っております。そして、ワークショップの詳細については、私が最後にもう一度説明するので、今は割愛します。

地域共生社会開発プログラムとは:スライド5(図の内容)

地域共生社会開発プログラムとは:スライド6(図の内容)

地域共生社会開発プログラムとは:スライド7(図の内容)

ビデオにも出てきました松本市の話を少しさせていただきながら、ワークショップの中身、開発プログラムの中身を知っていただきたいと思います。松本市は、24万ぐらいの人口があるのですが、ワークショップ、プログラムを行った地域は3,200人の地域で、かなりコンパクトな地域になっています。ただ高齢化率34.5%の65歳以上の方がいらっしゃるので、松本市の平均の27.4%に比べるとかなり高齢化が進んだ地域になっており、実は、この地域で初めてこのワークショップを展開したという記念すべき第一回目のワークショップの開催地です。今、写真を写していますが、この写真には、かなり年配の方が参加されている様子が写っています。このように地域の高齢者も積極的に参加いただいてワークショップを進めたわけです。少しデータを見ていただくと、ワークショップの参加者の内訳ですが、地域住民が12名、専門職や行政職が16名、民間の方そのほか9名来ていただいて全部で37名参加しています。「なぜ参加したのですか」とお伺いしたところ、72%の方が、これは複数回答なので合計100%にならないのですが、主催者から誘われたからということです。いかに丁寧に声掛けをしたかということがこれで表れているかと思います。やはり人はチラシを見ただけではなかなか参加できなくて、ただ内容がわからなくても誰かからきてくださいと頼まれたら参加するのではないかなと、声掛けが非常に重要な要素になっているかということが、このアンケート、参加者の構成から、そして、動機からもわかるかと思います。参加者の声も少し拾ってみると、「新しい手法だと思った」という方もいらっしゃいますが、「初めての参加でも意見を出せるとわかった」、「ワークショップの結果で包括ケアの人と打ち合わせで議論することになり話し込むことになった」「みんなの出した意見を聞いてこんなことでいいのかと認識した」「これなら専門知識がなくてもできると思った」、「例えばこれだけでは解決策にならないと思ったが非常に重要だと思った」「専門家には思いつかないことがあり、工夫すれば乗り越えていけることを体験した」「この新村地区では考えられなかったことがでた」

地域共生社会開発プログラムとは:スライド8(図の内容)

地域共生社会開発プログラムとは:スライド9

地域共生社会開発プログラムとは:スライド10

このように、参加者の方が誘われたから来たという動機の方が多いですが、結果的に参加した後にこのような感想が出たということがワークショップの効果なのかなと思っております。

この新村地区でワークショップの後、どのような展開になったかというと、民生委員の方たち向けにワークショップを行ったり、自治会長の方が集まってワークショップ的なことを行ったり、地域包括ケアの方が主役になって行ったりと、さまざまな形で活動が続いております。そんな地域での活動が起きるきっかけのために、このワークショップを実施するということになるのかなと感じています。

地域共生社会開発プログラムとは:スライド11(図の内容)

まとめになりますが、先ほどの奥田道大先生の図に戻ると、ワークショップの中でさまざまな仕掛けを施していまして、さまざまな場面で住民の意識が転換するポイント、仕掛けを設けています。例えば身内を守るという方、自分事とは思えないという方は、ワークショップの中で、どうも他人事から自分事に変換するということが起きる。知らんふりする人、自分には関係ないと思っていたが、これは放っておけない、何とかしなきゃという気持ちになる。そして、行政を叱っていた、必要だが、自分のすべきことではないと思っていた人には、自分でもできることがたくさんあるのだということに気づいてもらう。これは行政がやるべきことなのではなく、もしかしたら、自分たちこそがやるべきことなのではないかと思っていただく。こんなことが、ワークショップの中で起きるような仕掛けになっており、それによって会場全体、参加者全体が何とかしたいという気持ちになる。そのことによって、コミュニティとして機能し始めるといいますか、ワークショップの後でも、出会った方々がつながって、こちらからの声掛けで集まっていただいたりしながら、何かしらの活動がはじまっていく。地域共生的な活動につながっていく。実はこれが、この地域共生社会開発プログラムの大きな流れであり、ポイントになっていると私たちは今のところ考えております。そんな形でほかの地区でもワークショップが行われていますし、このあと愛知県大府市の共和病院さんの事例も聞いていただければと思います。ワークショップのあとの展開も非常に進んでおられる地域ですので、是非、その話も聞いて、もう少しこのプログラムの意図を一緒に考えていただければと思います。私の説明は以上で終わらせていただきます。ご清聴ありがとうございます。

地域共生社会開発プログラムとは:スライド12(図の内容)

地域共生社会開発プログラムとは:スライド13

【司会】

鈴木さんありがとうございました。どうぞ皆さん拍手を送ってください。ありがとうございます。それでは、鈴木さんのお話から「地域社会開発プログラム」の神髄をご理解いただけたと思います。では、実際はどうなのか、どのように展開してきたのかということを実施された大府市にあります共和病院の松崎穂さんからお話いただきます。

松崎さんについては、少し前のメールでご紹介しましたが、共和病院の救急病棟の看護係長さんをされていて、大変ご多忙なお仕事の中、今日は来てくださいました。松崎さんは「できることもちよりワークショップ」の指導者研修にあたりますコーディネーター研修も受けられています。それでは、松崎さんよろしくお願いいたします。

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