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バランスとフェアネス:
著作権の例外規定が果たす役割とその将来性
2010年3月31日

出典:The DAISY Planet,March 2010
http://www.daisy.org/planet-2010-03

2月28日から3月1日まで、第7回IPA(国際出版連合)著作権シンポジウムがアブダビで開催された。270名以上の公式参加者と53ヶ国の国際専門家が、著作権と出版に関わる政策課題を、2日間にわたり討議した。IPA会長のヘルマン・P・スプライト(Herman P. Spruijt)は、開会式で次のように述べた。「著作権は万能薬ではありませんし、盗用を防ぐ砦でもありません。また政治的ドグマでもありません。それは、新しい技術だけでなく、社会の変化にも合わせて、変えていかなければならないツールです。」DAISYコミュニティと、アクセシブルな出版物が必要な人々にこれを提供することに何らかの形で関与しているその他の関係者は、そのような変革が必要であることを知っている。

おそらく、今年のシンポジウムでこれまでともっとも異なっていた点は、セッションの1つ、「バランスとフェアネス:著作権の例外規定が果たす役割とその将来性」で、印刷物が読めない人々のための著作権の例外規定が取り上げられたことであろう。その論旨は明確であった。「著作権の例外規定は、視覚障害者とその他の特別なニーズを抱えている消費者が現在直面している課題を解決できるのか?出版専門家と著作権の例外規定を訴えているおもな活動家による討議」この討議に参加した発表者のリストには、そうそうたる面々が名を連ねていた。

  • エレン・タイズ(Ellen Tise)国際図書館連盟(IFLA)会長(南アフリカ)
  • クリス・フレンド(Chris Friend)世界盲人連合(WBU)読む権利グローバルキャンペーン代表 アクセシビリティ戦略目標リーダー、サイトセイバーズ・インターナショナル プログラム開発アドバイザー
  • アリシア・ワイズ(Alicia Wise)博士* パブリッシャーズ・ライセンシング協会 会長、出版社協会 デジタル出版部長(英国)
  • キャサリン・ブラーシュ(Catherine Blache)フランス出版社協会 国際政策シニアカウンセラー
  • カルロ・スコロ・ラヴィッザリ(Carlo Scollo Lavizzari)(議長)国際STM出版社協会 弁護士、レンズ・ケンメラー法律事務所 共同経営者(スイス)

IPA著作権シンポジウムのプログラムは、IPAのウェブサイトで入手可能である。

クリス・フレンドの講演では、おもに読む権利が取り上げられた。

WIPOのウェブサイトに記されているように、著作権法では、創作者の利益とユーザーの利益の公平なバランスをとらなければいけない。結局のところ、読むことに障害のある人々にも権利があり、それらは現在、国連障害者権利条約に正式に定められている。

著作権侵害が、デジタル時代の出版に関する深刻な問題であることは理解しているが、それは私たちが自ら引き起こした問題ではない。

今日まで出版社とその他の権利所有者は、著作権の例外規定が乱用と侵害につながるという証拠を何も提示していない。海賊行為をたくらむ者の中で、著作権の例外規定が設定されるまでずっと待った末に、違法な活動に関わる者などいるだろうか?どこにその証拠があるのか?「海賊版出版社」は、違法に大金を設けられるように、読むことに障害のある人々のための条約ができるのをただ座って待っているのか?

WIPO条約/著作権にまつわる6つの神話
フレンドはまた、印刷物を読めない障害がある人々のためのアクセシブルなフォーマットによる出版物の提供を促進する、全盲、弱視およびその他の読字障害者のアクセス改善のためのWIPO条約修正案に関する「神話」をいくつか取り上げた。世界盲人連合と英国王立盲人援護協会(RNIB)によって作成され、2009年12月のWIPO SCCR(著作権・著作隣接権常設委員会)会議で配布された「6つの神話」は、以下の通りである。

  1. 読むことに障害のある人のためにアクセスを容易にする条約は、著作権全般に不利なもので、著作権制度を「廃止する」ことになる可能性がある。
  2. 視覚障害者のための条約は、「時期尚早」である。
  3. 著作権以外にも多数の問題があるのに、なぜ著作権と著作権の例外規定に注目するのか?
  4. 視覚障害者のための国際条約は、著作権侵害につながる。
  5. 視覚障害者のための条約は、著作権に関する別の例外規定/侵害へとつながる「危険な坂道」である。
  6. 読むことに障害のある人々のアクセスに関わるニーズの最善の解決策は、条約よりも、出版社が自主的に支援することである。

ナレッジ・エコロジー・インターナショナル(KEI)のウェブサイトでは、これらの6つの神話に対する反論を唱えており、それぞれについての「真実」が示されている。

*アリシア・ワイズ博士は、4月22日にスコットランドのエジンバラで開催されるDAISYコンソーシアム年次総会後のパネルディスカッションに参加する予定である。