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事例報告 泉 恵子(東京都狛江市立緑野小学校 教諭)

皆さん、こんにちは。ただ今紹介いただきました泉恵子と申します。今回、DAISY教科書について知る人が増えればと思い、お話しさせていただくことにしました。どうぞよろしくお願いします。

DAISY教科書 活用事例報告

資料01

私は情緒の通級指導教室の担任と、特別支援教育コーディネーターを務めています。学校の支援設備としては、学校図書館の隣にパソコン室があり、2つ併せて情報センターとして利用しています。また今年度、電子黒板1台が市より配置されています。
DAISY教科書の使用に当たっては、まず、サンプルを校内委員会で紹介をしました。その後、読み書きに困難のあるお子さんの保護者へ言語聴覚士の先生や担任の先生から紹介していただき、授業や宿題として音読する機会の多い国語と、日常生活において使われる言葉が出てくることが多い社会科を日本障害者リハビリテーション協会へ申請しました。申請したものの、まだDAISY化されていない教科書もあり、でき次第、随時送られてきました。要請をすれば作ってもらえて使えるという信頼がありました。

DAISYの使用にあたって

資料02

届いてからはパソコンにAMISをインストールし指導を開始しました。初回は文字のサイズ、配色、音声速度の調節を行いました。2回目以降はそれぞれの課題に応じて利用していきました。
次からDAISY教科書の活用事例をお話しさせていただきます。ケース1は教育相談所の言語聴覚士の先生とクラス担任による指導事例です。ケース2~4は通級担任による指導の事例になります。

ケース1は、2年生の発音と発声に課題のあるお子さんの国語の音読練習の例です。担任の先生から校内委員会へ国語の教科書がはっきり、しっかり読むことができずに指導上配慮の必要なお子さんということで、言語聴覚士の先生と月1回の言語訓練を始めました。その指導の中でDAISY教科書を利用して音読練習がありました。ただ、月1回では授業に間に合わず、家庭学習へのシフトを考えたのですけれども、自宅にパソコンがないため学校のパソコン室にて学級担任と音読練習を 始めました。しかし、放課後30分程度の指導時間も行事や会議等の都合でとれないこともありました。「読むのが苦手」だからなんとかしたいという本人と保護者の意識が強まり、来学期より通級指導学級への就学につながりました。

DAISY教科書の活用事例

資料03

ちなみに、パワーポイントの画面で▼はDAISY利用に対する課題を挙げています。

ケース1 国語の音読練習

資料04

ケース2は、通級指導学級に通う3年生の不注意による読み飛ばし、語尾の勝手読みが多いお子さんの例です。こちらのお子さんはDAISYのほかに個別指導で視知覚のトレーニングも併せて行っているお子さんです。活用の仕方は、今年1月に日本障害者リハビリテーション協会で行われた講演会で栃木県鹿沼市立みなみ小学校の荒川一志先生が報告されたものを参考に行いました。
活用の仕方としては①音声ガイダンスを聞きながら指でなぞる。②音声ガイダンスを聞いた後、指でなぞりながら読む。③音声ガイダンスを聞いた後、読む。
荒川先生の報告では④に音声ガイダンスを聞かずに読むことになっていましたが、このお子さんの場合、自分の勝手なペースで読み、通常学級の中で、みんなで声を出して読もうというときにまったく読まずにいたり、勝手に一人だけ早いペースで読んだりということがありましたので、声を合わせて読むということを指導の狙いにして、今回は④として、音声ガイダンスを聞きながら声を合わせて読むというふうに行いました。
成果としては音声ガイダンスの一定のペースや間を意識して、勝手読みが少なくなりました。また、視知覚に課題があるお子さんでしたが、ハイライトがあるので、文字を追いやすいと本人も言っていました。

ケース2 声を合わせて読む

資料05

ケース3は、難聴のために教室ではFM補聴器を使っているお子さんの例です。初めて耳にする言葉は聞き誤りが多く、誤った言葉で覚えてしまうことがありました。こちらのお子さんの活用の仕方としては、①予習単位を決める。②音声ガイダンスを流しながら聞く。③述語・単語の確認を必要に応じて再生を繰り返して行いました。

ケース3 初めて耳にする言葉を知る

資料06

このお子さんは、成果として聞き取りの精度が上がり、「この前やった観光って先生がいっていたよ」と教えてくれることがありました。またこのお子さんの聴力は高音域を聞き取りにくいという特徴がありました。このお子さんだけでなく発達障害があるお子さんでは聞きやすい声と聞きにくい声がありますので、DAISYの声が選べたらいいなという話をしているところです。

ケース4、6年生の漢字の読み書きに困難がある子の例です。私が勤めている狛江市の隣には調布市がありまして、調布デイジーが活動されています。そちらの講習会で成人した当事者の方から、自分で学習できるDAISYのようなツールがあったらよかったのになという話を聞きました。これから中学進学に向けたお子さんですので、自主学習ができるようにするために、国語と社会科の両方を使用しました。

ケース4 自主学習の手立て

資料07

活用の仕方はケース3と一緒です。①予習単位を決める。②音声ガイダンスを流しながら聞く。③熟語・単語の確認を必要に応じて再生をしながら聞くということです。成果としては、国語になるのですが、文章を何度も繰り返し耳にすることで内容が理解されました。社会科では学習意欲が出てきました。社会科の歴史、人物調べなどを頑張りたいというようなことを目標に今、頑張っています。ただ、通常学級で使っている教科書には、6年生では3年生、4年生で習った漢字にはルビ等が振ってありません。自分の教科書は教室では読めないこともあります。担任の先生と相談してルビを振ることがありますが、そのルビがDAISY教科書にあればいいなという話を先生たちとしています。

これからということで、今までの事例で課題に挙がったこと。これまでの先生とも重なるところもあるのですけれども、指導時間と指導の場の確保、また、すべての漢字にルビが欲しい、音声ガイダンスを選びたい。それから3年生の社会科ですけれども地域の学習ということで教科書ではなく、地域の副読本を使っての学習になります。そういったもののDAISY化というのが可能であれば、3年生のお子さんにも使えるのかなということ。

これから

資料08

それから、電子黒板の利用と学校図書館との連携ということで、どのようにしたらいいのかということが、これからの課題だと考えています。
これで発表を終わります。ご清聴ありがとうございました。