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パネルディスカッション 石井 みどり(横浜市立盲特別支援学校 図書館司書)

(代理報告:野口 武悟)

引き続いて、野口が、本日勤務のご都合で出席がかなわなかった横浜市立盲特別支援学校の石井みどり先生に代わりまして、石井先生の報告内容を代理報告いたします。

読みに障害のある全ての子どもたちに。盲学校では様々な使い方

資料01

まず、はじめに、盲学校では映像を利用しながらも音声のみを利用したり、マルチメディアDAISY が多様な使われ方をしています。それによって教科書だけではなく様々な読書が可能になってきているという現状があります。

はじめに

資料02

その多様な使われ方なんですけれども、まず一つとしては「カセットテープ、テープ図書に代わる録音図書」の役割ということがあります。学校や周りの大人たちは、子どもたちが点字図書から遠ざかり安易な読書に走るのではということを懸念していたんですけれども、実際はどうだったかと言いますと、点字図書とDAISY 図書を選ぶ力がついてきたという状況があります。

1.多様な使われ方(1)カセットテープに替わる録音図書

資料03

二つ目、「点字の導入期にある児童・生徒にとって」ということなんですけれども、点字の習得に関しては、内容を理解しておくと点字の推測読みが可能になるということで、それに関して、マルチメディアDAISY の活用は、新しい言葉をあらかじめ理解しておくのに有効な機会になっているということがあります。

1.多様な使われ方(2)点字の導入期にある児童・生徒にとって

資料04

三つ目ですけれども、「文字の特定・確認が可能」。通常、点字図書、音声だけのDAISY やテープ図書、あるいは拡大図書のような、点字や音声、活字のみの読書というものが一般的なんですけれども、マルチメディアDAISY というものは音声で読み上げられている文字がその場で特定でき、さらにその文字を拡大して確認することができるので、非常に学習、勉強、読書の際に有効だということです。

1.多様な使われ方(3)文字の特定、確認が可能

資料05

そして四つ目ですけれども、「点字図書も活字図書も読書の手段にならない、障害の重い児童・生徒にとって」ですが、例えばページをめくることができない生徒にとっては、このマルチメディアDAISY というものが初めての教科書になりました。

1.多様な使われ方(4)点字図書も活字図書も読書の手段にならない児童・生徒にとって

資料06

五つ目として、「高速で再生し素早く情報を得る」。これがどういうことかと言うと、慣れてきた生徒が、通常4倍速で読書をしている。これはまさに活字図書でいう斜め読みに相当する。それが可能になってきたということです。

1.多様な使われ方(5)高速で再生し、素早く情報を得る

資料07

そして最後に六つ目として、「視野狭窄等により行や文字を追うことが困難な児童・生徒にとって」。マルチメディアDAISY のハイライト機能は、行を追うことが困難な子どもたちには非常に画期的な機能だということです。文字の認知が困難な児童がハイライト機能によって文字を確認し、学年相当の教科書の利用が可能になった例もあります。

1.多様な使われ方(6)視野狭窄等により行や文字を追うことが困難な児童・生徒にとって

資料08

次に課題ということで石井先生が挙げている点ですけれども、一つとして、学校間の連携がとれていないということが挙げられます。具体的には全国の盲学校では学校間の連携がまだ十分にはとれていないということです。また、近年は、教員が強制的に異動させられてしまって、盲教育、視覚障害教育の専門性が失われていく状況が全国的に見られるということです。異動が早いところでは数年で、以前であれば十数年勤務できていたケースも多くあったんですが、今は数年で異動ということが増えてきているようです。

2.課題(1)学校間の連携が取れていない

資料09

二つ目ですけれども、マルチメディアDAISY の利用・編集についての啓発・啓蒙が必要で、対社会に対してだけではなくて、学校関係者に対しても必要なことで、その際に、学校図書館の果たす役割は大きいのではないかということです。

2.課題(2)マルチメディアDAISYの利用・編集についての啓発・啓蒙が必要

資料10

そして三つ目。授業は多媒体の教科書で進められていますので、それぞれの整合性が必要だということです。これがどういうことかというと、盲学校では子どもたちの見え方によって、普通の文字版の教科書、それから市販の拡大図書の教科書、そして手作りの拡大版、それから点字版、そしてDAISY 版と、多様なものが提供されています。それぞれの整合性というものが必要だということです。

必要な資料が音訳されていなかったり、あるいは逆に必要でない資料が音訳されていることもあります。その場合、その音訳に携わってくださったボランティアの方には非常に心苦しい思いをしてしまうので、そのあたりの整合性、調整が必要だということです。

2.課題(3)授業は多媒体の教科書で進められる。それぞれの整合性が必要

資料11

そして最後、四つ目ですけれども、国による資料センターの建設が必要だということです。教科書バリアフリー法が施行されても予算的な裏づけがなく、また各ボランティアが培ってきた経験というものがなかなか他に生かされない状況もあります。こういった状況の中で、読みの障害のある子どもたちに関わっている人たちのよりどころとなる資料センターの建設というものが必要ではないだろうかというのが、石井先生が最後に指摘している課題です。

2.課題(4)国による資料センターの建設が必要

資料12

以上で、石井先生の報告内容の代理報告を終わります。ありがとうございました。

ご静聴ありがとうございました。

資料13