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事例報告(先生、保護者からの報告)

山下 公司(北海道札幌市立北九条小学校 教諭)

皆さん、こんにちは。私、札幌市立北九条小学校で今年度開設されました発達障害通級指導教室を担当している山下と申します。よろしくお願いします。

今回の私のお話なんですけれども、先ほどの先生お二人とは少し違いまして、今年度開設されたというところで、DAISYをどのように活用しているか、その辺の道筋について丁寧にお話しできればいいかなと思っていますので、よろしくお願いいたします。資料はありませんのでよろしくお願いします。

DAISY活用事例報告~初期導入を中心に~

資料内容1

一応、本校の学びの教室で活用に至るまでを話しさせていただきたいと思います。

実は、今年度新たに開設されて開設準備を進めていったわけなんですけれども、DAISYについてはまず初めに、まず教育委員会から働きかけがありました。教育委員会の指導室の先生から、こういうことでDAISYがあるということをお聞きしたのが初めかなと思います。その裏には、今回製作でかかわっているNPO法人かかわり教室の先生が、おそらく札幌市教育委員会の方に働きかけをされて、こういうのがあるよということで発達障害の子たちに特化した通級指導教室なので、そういう教室で活用してはどうですかということで、市内にある小学校1校、中学校1校ずつに札幌市教育委員会より働きかけがあったように記憶しています。

まなびの教室で活用に至るまで

資料内容2

私の方も、耳ではDAISYについて聞いていたんですけれども、実際にどういうものかというのを生で触るというか、LD学会で展示をされておられたので、その時に見せてもらう等の部分でしか体験することがなかったので、札幌市教育委員会にぜひ活用をしたいんだけれどもというお話をすると、私の方が直接、NPO法人かかわり教室さんにお邪魔して、直接見せてもらったらどうかというお話もいただきましたので、それも札幌市教育委員会の許可を得た上でかかわり教室さんにお邪魔させていただいて、パソコンの仕組みや起動の仕方も含めていろいろ体験させていただく機会を得ました。

実際には、「これいいな」というところだったんですけれども、実態把握ということで、お子さんによって必要かどうかの判断がやはり必要ではないかと考えたので、一度経験させていただいた上で、この子にとっていいかな、どの子にとっていいかなというのを、実態把握を進めていきました。

4つ目として、札幌市教育委員会の方へ「実際に活用します」とまず報告させてもらいました。その上で、今年度開設された教室ですので、パソコン等も設置がないような教室でした。空き教室をいただいて、予算がついて、教材を少し買ってという状況だったのでパソコンが1台もないような状況でした。ただ、DAISYを活用するにあたっては当然パソコンが必要になってきます。使うお子さんの数だけ必要になってくるということで、ここは頑張らなければならないということで、「使います」と宣告した上で、「なので、パソコンをください」ということを市教委にお願いして、なかなか予算もない状況だったんですけれども、市教委の先生もいろいろ頑張っていただいて、実際には学校の中にある特別教室等にあるパソコンを、措置替えという形でうちの教室でということで、3台、うちの教室でとりました。学校のパソコンですので、子どもたちが使用する用に設定されていますので、新たなソフトを入れたりダウンロードしたりということができないような仕組みになっているんですね。その辺についてもご配慮いただきたいと強く申し上げまして、新たにDAISYを入れなければならないんだということで、札幌市教育委員会が委託しているパソコンの業者さんに直接来ていただいて、直接セットアップしていただくということも教育委員会にお願いしてその了承を得た上で進めていきました。

さらにまた、そこで許可を得てパソコン導入されますよとなってから、今一度NPO法人のかかわり教室さんにお邪魔して、こういうお子さんたちがいるんですというお話をさせてもらって、実際に教科書を使いたいということで、実態に合わせて使っていけたらいいねと進めながら、ようやく活用に至ったのが今回のDAISYの活用に至った経緯かなと思います。

では具体的な事例ということですが、まだ実際にこの動きが進められたのは、夏休みぐらいに札幌市教育委員会から連絡がありましてそれからの動きになりますので、先ほどの先生方の事例に比べたらまだまだ導入初期の段階かなとおさえていただければと思います。実際に34名通級されているんですけれども、その中で3名のお子さんがDAISY教科書を使わせてもらっています。

A君の概要です。

普段の様子でいえば友だち関係はすごく良好で、休み時間は友達とふざけあったりボール投げしたりして遊ぶことが多いんです。ただ、担任の先生に聞くと、なかなか会話は難しいのかな、物静かな感じなのかなということで、どんな話し方をするかというと、単語で話す。話を聞いたことにしても、何が自分に起こっているかがよくわからないというタイプのお子さんかなと思います。おうちでの話なんですが、おうちで「学校でどういうことをやったの?」と聞いても全て「わからない」、ケンカがあったとしても、その状況が何だったのかわからないというタイプのお子さんでした。その背景にはいろいろあったのかと思うんですけれども。

担任の先生からの情報で、通級に当たって担任の先生からどういうお子さんかということを当然聞いていくわけですか、その中で一番気になるところは、このお子さんについては、読むことが難しいんですと、だから学習についても難しいというのが現状ですということで、担任の先生からお話をいただきました。読むことが難しいということは、当然書くことも難しいんですよねということでお話しをいただきました。

「では音読についてはどういう形で進めているんですか」と聞きますと、初めから「しない」とのことです。小学校2年生なんですけれども、そのように乗り越えていくことに決めたのかなと思います。担任の先生は、本人は読むことに難しさがあることも理解しているので、できなくてもいいかなと思っていますということでおっしゃっていました。それ以外では、集中を持続するのが難しいんですけれども、好きなことには集中できる。難しいと言ってしまえば、読むことも難しい、書くことも難しいので、学習場面においては、集中を持続することが難しいということなのかなととらえています。

保護者からの情報。同じように、音読はしない。毎日宿題等で音読しなさいと出てくると思いますが、音読はしない。読むこと、書くことに強い抵抗感があって、教科書は家では開きません。開かないんですね、初めから。そう決めたんだと思うんですけれども。そういうことで抵抗感が強いということを話し合ったりとか、担任の先生からの話もあったように、注意がそれることがすごく多いということです。あと衝動的に行動するということだとか、あと重要なポイントとしては、パソコンが好きで、家では自分でパソコンを開いて起動して遊んでいたという環境が実はご家庭にあったのかなと思います。

WISCでみてもフルIQで88ということで、全体の知的発達水準でいえば平均より下かなと思います。ただ下位検査を見るとバランスが悪いというのは今後検討の必要があるかなと思っています。

次に導入に当たってです。ここからまた流れのお話になります。

まず、教室に導入するよという段階を経て、ではその子にどう導入していったかを考えていきたいと思います。

導入にあたって

資料内容3

まず保護者に直接DAISY教科書を見てもらう。教室の中にようやく設置できたので、「こういうのがあるんですよね」ということで実際に保護者の方にまず見ていただきました。実際に操作していただいて、CD-ROMを入れるところから始めて、「ここをクリックしてください」ということで、実際に操作をしてもらいました。

そうしたら保護者の方は、「これはおもしろいですね、先生」と、保護者の方がまず食いついていただいたかなというところです。その後、子どもにも実際に使用してもらって、「こういうのあるんだけど、使ってみないかい?」という話をして、「うーん」と言いながらだったんですけれども、「ちょっとやってみたい」と。やはりその後ろにあるのは、パソコンが好きでやってみたいという興味本位ですね、初めのスタートとしては興味ということでスタートしたのかなと思います。

保護者の方が実際にパソコンを使用されるんですけれども、もちろんCDをお渡しして、ご丁寧に説明もありましたので、セットアップできるような状況だったんですけどなかなか上手くできなかったということがあったので、家庭訪問してセットアップさせてもらいました。

あと、先ほどの話にもあったんですけれども、復習として活用するということで、既習の内容についてもやってみようということでやってみたりだとか、あとは予習として、これから習うところを、担任の先生から情報をいただいていますのでそこで活用できたらということで活用していきました。

A君への支援の目的です。まず読むことへの抵抗感を減らしていただきたいということがあったかなと思います。あと、授業に参加する。意欲的に主体的に参加できるようになればいいなということで、予習をメインに今回サポートしていったかなと思います。

A君への支援

資料内容4

方法ということですが、まず簡単に操作の指導をします。本人が家で自分1人で、いつでもできる状況を作ってあげたいなということで、どうやったらできるかというところを、立ち上げからすべて「こうやってやりますよ」ということをお話ししていきました。あと、読み取り課題の実施をします。これは付加的なものですが、実際に家で読んで、どう読み取ったかというところや、1週間かけて同じ教材を読んでどうだったかをみていく必要があったかなということをやっていきました。

~方法~

資料内容5

あと音読の宿題。学校の宿題とは別に通級指導教育用の宿題ということで、「パソコン音読がんばり表」を作り、「今日はここを読むよ」ということを約束しておいてシール等を用意してやっていったというところかと思います。

教室ではこういう形でパソコンをやっていきました。今はヘッドホンを使ってやっていますが、こんな形でやってます。

結果としては、教科書を開くことはなかなかなかったのですが、DAISYに対しては意欲的に取り組むことができました。あと、それに伴って何かしらないけど音読を行なうようになったというところがあったかなと思います。あと、漢字もなかなか苦手なお子さんだったので、読みがわかってきた、ということで、漢字も読めるようになってきたということがあるかと思います。

~結果~

資料内容6

あと、読み取りのところなんですけれども、自分で読ませてどうだったかと話を聞いても、なかなか答えられない。でも最後のところだけは答えられるのです。中間のところの読み取りは当然どの子も苦手かもしれないですが、その辺が苦手だったりしたので、そこは自分で読んだときよりも、見て聞いて、DAISYを活用した中で読み取りのテストを後ですると、そこは格段に違いがあったと思います。

A君を通して見えてきたことなんですけれども、パソコンを使うということが興味・関心によってだと思いますが、大変有効だったと思います。あと判読ということで、当然、音声でバーッと出てきますので、そこへの効果が高いのかなと思います。実は聞いて覚えるというのは、この子にとってはキーポイントになっていたのかなと思います。

A君を通して見えてきたこと

資料内容7

あと、気づいた点。もちろん本として内容とはわかっているのですが、読んでることが内容理解ではないと頭ではわかっていたのですが、この子を通してまた新たに理解させられたと思いました。音読させたら読むことに精一杯で、内容まで当然たどりつかないことがこの子を通してまた改めてわかったかなと思います。

その他の事例ということで、B君は違ったタイプで、注意集中の苦手なお子さんだったりしました。そこでペースがうまくとれないことがあったり、集中して取り組むことが苦手だったりというところで、よかったのかなと思っています。

C君についても、音読をするようになりました。この子もなかなか音読ができないお子さんでしたが、自閉的傾向があるお子さんで、その辺でなかなか難しさがあったりしたんですけれども、音読できるようになったという成果としてあったと思います。まだまだ導入段階なので、これからどういう形で音読ができるようになったかということを整理しなければいけないと思っています。

その他 事例

資料内容8

保護者の声として、まず第一に挙がったのは、読みに対する抵抗が減ったということです。それが結果として音読課題に取り組むようになったということで表れたかなと思います。あと、自分で意欲的に取り組みようになりました。パソコンの起動についても、どの子についても「こうやるんだよ」と指導していったので、そこができることが自信にもつながったのかなと思っています。あと、「次年度も活用したい」という声があったので、そこについても頑張っていきたいなと思います。

保護者の声

資料内容9

ある保護者の方からは、「高学年になればなるほど必要になるんじゃないか」というお声もいただいていますので、今後その辺も検討していければなと思っています。あと、「他の教科書もあればいい」ということで、国語で活用させていただいていますが、他の教科書もあればいいねというお声をいただいています。

ただ反面、「インストールが難しかった」というのもありましたので、そこは我々でフォローしていく必要があったり、あと、「読みのスピードを遅くできるといいね」ということもあったので、今後そういうことにも期待したいと思っています。あと、「システム上で何かあるのかな」という声をいただいていました。

他の教科書もあればいい。

資料内容10

通級指導教室の役割ということなんですけれども、アセスメントということで、有効かどうか、そういうのが使用できる環境が整っているかどうかを整理していかなければならないと思っております。

あとは活用方法の指導ということで、どのように活用していくかということをしっかりしていかねばなりません。あと、当然、評価というところも含めて、活用状況の確認ということをしていかなければならないのかなと思っています。

本教室でのDAISY活用の役割

資料内容11

まだまだ導入段階ということで、今後どういった展開になっていくかというのを考えていかなければならないと思っています。どうもありがとうございました。