科学・技術・工学・数学(STEM)関連画像の解説に関するガイドライン
※STEM:science, technology, engineering, and mathematicsの略
調査の過程でいくつかの重要なテーマが明らかになり、以下のガイドラインが作成された。これらのガイドラインを特定のタイプのSTEM関連画像に適用する際のアドバイスについては、このウェブサイトで紹介している例を参考にしてください。
1. 簡潔性
回答者から寄せられたアドバイスの中で最も多かったのが、解説をさらに簡潔にすることであった。簡単にまとめると、視覚障害者は視覚障害がない人々に比べて、本や論文を読むのにより多くの時間がかかるので、画像に関する不必要に長い解説によって、そのプロセスがさらに遅くなることがないようにしなければならない。
多くの画像は視覚的詳細情報が豊富であるが、重要な情報は少ない。画像の要点が一目で理解可能ならば、解説もごく簡単にするべきである。
同様に、画像の情報が本文にも含まれている場合、そしてそのためアクセシブルである場合は、画像に関する解説ではその情報を繰り返す必要はない。
画像に重要な情報が含まれている場合は、単語数を最小限に抑えた解説により、情報へのアクセスを提供しなければならない。
2. データ
解説では、無関係な視覚的要素ではなく、データに焦点を絞らなければならない。たとえば、念入りに描かれた図には、重要なデータが含まれていることがよくあり、それは全体像の解説とは別にデータを提示することによってアクセシブルにできる。
3. 明瞭性
最も簡潔で、データが豊富な解説を提供するためには、明瞭性が見過ごされてはならない。解説がわかりにくく、あるいは混乱を招く方法で提示されているために、読者が何度も解説を聞く必要がある場合、全体的な目標は達成されていないといえる。
4. ドリルダウン構成
解説は、ドリルダウン構成にしなければならない。たとえば、簡潔なまとめに引き続き、詳しい説明および/あるいは具体的なデータを提示する。ドリルダウン構成は、読者がさらに詳しい情報を求めて読み進めるか、あるいは、求める内容はすべて読み終わったので読むのを止めるかを選べるようにする。
例えば、図の解説が表題(例「月の満ち欠け」)で始まる場合、読者は図の詳しい内容を読むことを希望するかどうかを決定できる。解説ではその後、図の簡単な要約(例「図は地球の周りを回る月の8種類の満ち欠けを示す」)、そしてさらに詳しい内容とデータが続く。このアプローチ方法は、デジタル録音図書の基礎となっているXMLコードによってサポートされる。非常に簡潔な解説は、”alt”としてマークされ、それよりも長い解説は、”prodnote”としてマークされる。 注:”prodnote”タグは、HTMLの”longdesc”タグと同じ目的で使用される。
5. 表
表、円グラフおよび棒グラフは、叙述的説明をするのではなく、表として提示しなければならない。キャプション、見出し、データなど、表の内容を適切にコーディングすることによって、叙述的説明よりもアクセスしやすくなる。グラフの要約あるいは概要を述べてから、表を提示しなければならない。
6. プロセス
フローチャートや図によって視覚的に提示されるプロセスや、化学反応の図解などは、入れ子のリストへ変換するとよい。
フローチャートやその他のプロセスの叙述的説明は、負担に感じるほど長くなる可能性があり、最善を尽くしても、情報へのアクセスの提供が失敗に終わることが多いという、調査参加者の全体的な意見の一致が見られた。このガイドラインで提案されている、プロセスをリストに変換する技術は、デルファイ調査参加者からのフィードバックを直接受けて開発された。このアプローチは広く使用されていないので、このガイドラインでは実施方法の例を多数紹介している。
7. 数学
数式はMathMLでマークアップし、個々の読者が望む方法で表示しなければならない。
数学へのアクセスの提供に関する詳しい内容を読む。
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8. 叙述的説明
多くのSTEM関連画像は、直線的な叙述的説明によって最もうまく解説できる。それでもなお、そのような「従来型の」方法による、純粋に視覚的な画像(例 ゾウリムシの絵や数学の図)の解説は、このガイドラインに従った解説方法、特に、簡潔性、ドリルダウン構成、明瞭性およびデータの重視などを取り入れることにより、さらに効果をあげることができるであろう。
9. ナビゲーションコントロール
テキストとして提示される解説は、一般に録音音声よりも好まれるが、これはテキスト読み上げソフトの方が優れたナビゲーションコントロールを提供するからである。さらに、特にリストや表については、適切にマークアップされたHTMLで解説が提示された場合、従来の直線的な叙述的説明では得られない、データへの迅速かつ独立したアクセスを提供する。
また、個々の情報を箇条書きにし、改行して提示すること、あるいはリストを作成することによって細分化し、ナビゲーションを促進することもできる。
しかし、テキスト読み上げソフトは、技術用語の発音を間違えることがよくあり、また、重要な要素を際立たせるために朗読者が使用できる強調表現を使うことはできない。