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第3回アジア太平洋CBR会議

分科会3-1 地域資源動員

タイにおける障害のある人への住宅環境改修サービスに関する政策提言

Sirinart Tongsiri MD.PhD, Chanutta Ployluemsaeng PhD, Katanyu Hawsuthisima

Faculty of Medicine, Mahasarakham University
Faculty of Pharmacy, Mahasarakham University
Faculty of Architecture, Urban Design and Creative Arts, Mahasarakham University

導入

住宅環境改修は障害のある人の生活の質を改善するためには不可欠である。文献によると、様々な改修に関する支援制度がある。オーストラリアではお金のない家族、障害のある人の活動を向上するために工事の一部もしくは全額を補助する目的で、住宅改修基金が設立された。米国では、障害のある人や高齢者の病院への入院を防ぐために、上限25,000ドルまでの貸付金が住宅改修のために提供される。そのローン返済は5年間で利子なしである。

タイでは、2007年の障害者エンパワメント法によって、障害のある人は登録されていれば住宅環境サービスが受けられるようになった。県の社会開発・人間安全保障局は障害のある人の住宅改修サービスの責任を担う。しかしながらこのサービスへのアクセスは多くの問題により制限されている。例えば、住宅改修に関する知識や計画的なサービス提供が不足していることやアクセス方法、家族の経済面の問題である。地域資源動員はWHOのCommunity Based Rehabilitation(以下CBR)マトリックスのエンパワメント項目の内の1つである。これらの住宅改修の支払い困難な人々にとって、サービス補助を受けるために地域資源が利用可能である。

私たちの研究はタイにおいてどのように地域資源が使われるべきかを提案し、サービスへのアクセスを改善するための政策提言を発展させることを目的とした。

方法

提出された基準に沿って、コーンケン、マハーサーラカーム、カーラシン、ローイエットの4つの県のプライマリケア看護師、理学療法士より選抜された移動困難な人、高齢者を対象とした。国際生活機能分類(International Classification of Functioning, Disability and Health: 以下ICF)、EQ-5D-3L、バーグ・バランステスト、住宅環境評価用紙を用いて各々の参加者を評価した。デザインされた基準は歩行困難(ICFコード2、3、4のd450)、住宅所有、サービスを受けることを望んでいることである。住宅環境と参加者の機能は写真やビデオで記録している。

障害のある人に適した住宅環境を再考してもらえるよう建築家、エンジニア、地域建設業者、看護師、ソーシャルワーカーを対象に能力強化研修を実施した。そして研究チームの一員である建築家は変更が示された家屋建設計画に沿って家屋寸法を決定した。適切な家屋改修のデザインは、個々の障害のある人の機能に応じて、ユニバーサルデザインに基づいている。改修計画について、障害のある当事者全員の承諾を得た後、改修に着手した。研究者は頻繁に現場を訪れ、計画やプロトコロールに沿っているか確認された。研究者が更なる障害のある人の生活の質向上が見込めると判断すれば、修正もなされた。改修の前と完成後、3、6、9ヶ月後に、ICFに基づいた質問票を使用して、障害のある人の機能を評価した。研究者らが利用可能な資金を調達した。全ての改修費用は記録された。その費用のデータと障害のある人の機能変化は国家政策や家屋改修支援資源の発展のために、政策立案者に伝えられた。

結果

2014年1月から4月までの間に全てのデータは集積された。62人の参加者が選抜され、自宅内で評価を受けた。平均年齢は57.3±17.2歳で、参加者の約半数は男性(52%)であった。参加者の大半(98%)はなんらかの歩行障害(d450.1-d450.4)が認められた。最も障害を受けた基本動作は床やベッド、椅子からの立ち上がりであった。5人の参加者は工事開始前に亡くなった。また後に、2人の参加者は改修を拒否し、6棟が工事資金待ちであったため、今回のレポートには含まれていない。改修後の最も顕著な改善点は、歩行、床やベッド、椅子からの立ち上がり、階段昇降、外出、屋内活動であった。

このサービスに必要な資金は、県リハビリテーション基金、行政区管理組織、障害のある人の家族からの寄付によるものであった。建設関係者は仏教僧侶や村人、兵士、家族などの地域からのボランティアが大半であった。ボランティアが確保できない場合は、専門の建設業者が雇われた、

費用や改修項目によって、改修タイプは4つのグループに分類された。グループ1は手すりや、間口の広いドアの設置などの最低限の改修を行い、その平均費用は20,922.05バーツ(約620ドル)であった。グループ2はトイレの位置をリビングに近くするなど、家の中のある部分を変更し、その平均費用は41,519.30バーツ(約1,235ドル)であった。グループ3は改修が困難で、新しい家を建て直し、その平均費用は63,918.15バーツ(約1,890ドル)であった。グループ4は障害のある人の機能を向上というよりは、安全面から新しい屋根の設置や洪水防止用で埋め立てをするなどの改修を行い、その平均予算は23,000バーツ(約700ドル)であった。工事期間について、グループ1は2-15日、グループ2は3-20日、グループ3は11-30日であった。EQ-5D-5Lによって評価された生活の質は、グループ1で0.158、グループ2で0.164、グループ3で0.348、グループ4で0,203増加した。

議論

住宅環境改修サービスは地域でサービスが利用できない状況、経済面的困難によりサービスにアクセスできない障害のある人に利用される。経済面への支援だけでなく、住宅の改修や建設に関する知識を高めていく必要がある。改修は標準的な住宅に沿うのではなく、障害のある人の機能向上を目指して実施されるべきである。保健部門や非保健部門、例えば建築家やソーシャルワーカー、地方自治体など、様々な専門分野から構成されたチームを作るべきである。障害のある人からの要望により、住宅改修後に変更が加えられることも珍しくなかった。

私たちはサービスを提供する際に、次の手順を考慮に入れることを勧める。

関係者間の連携、資源の統合や割り当て、能力強化や有効なデータに基づく政策決定である。知識や理解促進のためには知識管理も活用されるべきである。この研究で使われた費用を基に、政策立案者は障害のある人の住宅環境改修のための予算確保に着手するかもしれない。

要約

住宅環境改修は障害のある人の機能や生活の質を向上することができる。これらのサービスにアクセスすることが難しい人々に対しては、様々な地域の組織と連携していく必要がある。

参考文献

1. The Victorian Department of Human Services (2009). Disability Services-Aged Care Assessment Protocol. Melbourne, Victoria.
Downloaded from http://www.dhs.vic.gov.au/disability

2. Illinois Housing Development Authority. Single-Family Owner-Occupied Rehabilitation (SFOOR) Program.
Downloaded from http://www.ihda.org/homeowner/grantHomeowner.htm#SFOOR.
Accessed date 2 February 2014.


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