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国際セミナー報告書
エンパワーされた障害のある人が地域を変える!

■講演

講師: バーニー・マクグレード、CBM
アーリー・ゴディネス・オカシオネス、CBM

上野 講師の方が準備をされている間、簡単に講師のプロフィールをご紹介いたします。日本語版のレジュメは19ページをご覧ください。詳しくはそちらをご覧いただきたいと思います。

一番右手に座っていらっしゃる方はバーニー・マクグレードさんです。臨床心理士、地域心理士をされています。CBM(クリストファー・ブラインデン・ミッション)で東南アジア太平洋地域事務所アドバイザーをされています。バーニーさんはCBRガイドラインの実践に向けた助言、災害対応に関する活動などでもご活躍されています。右から二番目はアーリー・ゴディネス・オカシオネスさんです。CBMの地域開発ワーカーをされています。東南アジア・太平洋地域事務所プログラムマネジャーをされています。今から約1時間ほど同時通訳を交えてご発表いただきます。最後に10分間ほど質疑の時間を取りたいと思いますので、ご質問のある方はメモをして質問の時間にぜひ発言なさってください。それではバーニーさんとアーリーさん、よろしくお願いします。

アーリー 皆さんこんにちは。今回、私たちのストーリーを共有するこのような機会をくださってありがとうございました。私たちCBMが障害者のエンパワーをどのようにやっているかについてお話できることを嬉しく思います。今回のプレゼンテーションは1時間をいただいております。その中で3つのトピックをお話ししたいと思います。

まずはこのプレゼンの目的についてお話します。今回の発表では参加者の皆様に、途上国で活動しているインクルーシブな国際組織であるCBMのことをもっと知っていただきたいと思います。2点目としましては、障害者をエンパワーすると今度はその障害者が、一般的には社会を、具体的には自分自身のコミュニティをエンパワーする、CBMとそのパートナーのこのような経験から学んでいただければと思います。3点目は、障害者および他の脆弱な人々と一緒にインクルーシブな防災対策の取り組みを定めていきたいと思います。これが私たちのプレゼンのだいたいの流れとなります。

それではまずCBMとは何かについてお話したいと思います。CBMは世界の最貧地域における障害者の生活の質の向上に取り組んでいるキリスト教の開発組織です。けれども、人種、ジェンダー、信仰は問いません。キリスト教の団体ではありますけれども、そちらは一面でしかありません。キリスト教というのはイエス・キリストを信じている人たちです。それについてもう少し加えさせてください。

バーニー キリスト教の団体ではありますけれども、私たちはキリスト教を布教しようとしているわけではありません。すべての人たちにとってインクルーシブな社会を作りたいと思っています。私たちの実践というのはイエス・キリストが言った愛を実践することです。つまり、隣人を愛す、自分自身を愛すことに取り組んでいくということになります。

アーリー 歴史です。CBMは1908年に設立されました。活動を始めてから108年になります。クリストファー牧師はこの団体の創設者です。いろいろと文字が書かれておりますけれども、要点だけお話したいと思います。CBMは、当初は視覚障害者を対象とした団体でした。けれども、後に障害種別をまたいだ開発団体になってきました。1997年に白内障の手術を300万件実施しました。2003年にはCBMの支援によって500万件の白内障手術を実施しました。私どもはそのようにいろいろと達成してきました。

皆さん、ビジョン2020というものを聞かれたことはありますでしょうか。こちらは世界中で私どもが展開しているキャンペーンとなります。2004年、CBMは視覚障害者に特化する団体ではなく、障害種別を問わない開発組織になりました。そしてCBRというアプローチを用いるようになりました。このようにCBMは進化してきたわけです。

私たちのビジョンは、すべての障害者が人権を享受し、自らの可能性を十分に実現できる世界を作ることです。私たちが実際に活動している分野に限らず世界全体がインクルーシブになるようにということを目的としています。

私たちの使命は、基本的価値観と100年以上の専門的知識に基づき、障害の原因でもあり、障害の結果でもある貧困に取り組むことです。地方レベル、全国レベルの市民社会組織との協力の下、すべての人のためのインクルーシブな社会を築くために活動しています。私たちは途上国に焦点を当てています。貧困というのは障害の原因にもなり、また貧困であれば生活をより良くする機会も少なくなってしまうからです。貧困というのは原因でもあり、障害の結果でもあるわけです。CBMは人種、ジェンダー、宗教に関わりなく最も不利な状況にある地域で活動しています。私たちは機能障害の原因となる疾病の蔓延を減らすこと、障害につながる状況を最小限にすること、障害者のため、社会のあらゆる側面においての機会均等、生計保障および完全なインクルージョンを促進することに努めております。

CBMのアプローチは、基本的には障害インクルーシブ開発という枠組みの取り組みであり、私たちの活動が及ぼす影響力に拍車をかける最重要テーマであると考えております。なぜかというと私たちはまさに障害インクルーシブ開発の専門家であるからです。私たちはこれは地域社会の中で貧しい暮らしをしている障害者の生活に前向きな変化をもたらす最も効果的な方法であると信じております。インクルージョンが可能になった場合にはこの社会の一部になり、生産性をもたらし、そしてコミュニティの中でも社会の中でも非常に重要な役割を担っていくと思っております。このようなディープインパクトというものを私たちは考えております。さらに私たちはアクセスと参加を妨げる障壁に取り組み、障害者がエンパワーされたセルフアドボケートとしてすべての開発と緊急対応プロセスに確実に完全参加できることを積極的に求めております。開発プロセスのみならず、基本的に災害があった時の被害者は子ども、高齢者、障害のある人々であるので、CBMとしてはここを強化していこうと思っております。緊急対応とIDRR(インクルーシブな災害リスク軽減)を私どもの一つの大きな柱のプログラムと考えております。

私たちの仕事に関してですが、国内に400以上のパートナーがいます。3800万人を超える人に対応し、60か国以上で活動しております。私たちは包括的医療制度および目の健康、耳と聴覚のケア、地域精神保健、身体のリハビリテーションなどのサービスを支援しております。また社会の主流から最も取り残された人々に手を差し伸べ、すべての人のためのインクルーシブ教育を確保し、コミュニティにおけるインクルーシブ開発を通じてインクルーシブでレジリアンスのある地域社会を築きます。CBMでは以前から医療的なアプローチを使っておりましたが、それだけではなく、よりエンパワーメントな観点から見ております。CBRのマトリックスを見ていただきますとそこも大きなところとなっているのがおわかりいただけると思います。

基本的価値観については、バーニーが先ほどキリスト教に関してどのように私たちの作業に反映されているのかということを話してくれました。それだけではなく国際主義もあります。つまり、私たちは一緒に仕事をすることによりインクルーシブな社会を達成しようと思っております。それから専門家気質は私たちの仕事の中で非常に重要です。専門家となり、技術的な専門知識をパートナーに提供することによって仕事の質を上げていくことができます。

受託責任ということでは私たちは入手できるリソースをできるだけうまく使っていきます。CBMというのはどうしてもドナーに依存している場合があります。個人、グループ、企業、あるいは双方向的な政府ということもあります。そういったリソースをきちんと使い、管理するということが受託責任という意味です。率直なコミュニケーションでは、私たちはパートナーや同僚、誰に対しても透明性を持ってコミュニケーションを取ることの価値を考えていくことが重要です。インクルージョンではできるだけプロセスの中に多くの人たちを含めていき、すべてのプロセスの計画の段階からみんなが参加していくことが重要です。

こちらのスライド(図1)はたくさんの箱があるように見えるかもしれません。ここで申し上げたいのは皆様にどことどこがつながっているのかを発見していただきたいということです。これはグローバルプログラム戦略です。まずビジョン、ミッションがあり、ターゲットとするグループがあります。低中所得国で貧困の中に暮らしているすべての障害者および障害のリスクのある方です。私たちには大きな4つの目的があります。もちろんコミュニティ、健康へのアクセス、それに対応するサービスもあります。それから障害者がヘルスケアや教育に対してアクセスできるということ、さらには意見を持って参加していくということ、政策とプログラムへの関与ということが重要です。非常に幅広いということがおわかりになると思います。アドボカシーだけではありません。エンパワーメントだけでもありません。緊急な医療のニーズにも対応していきたいと思っております。

図1
図1図1の内容

バーニー それに加えさせていただきたいのですけれども、CBMが長年かけて培ってきたサービスにフォーカスしておりますがそれだけではなく、障害のある人たちは何らかの特別なサービスを享受する権利があると信じております。これは自立して生活を送っていけるようにするためです。なので、ヘルスやリハビリテーションサービスへのアクセスが必要であり、何らかの条件で障害になるようなことであればその原因を取り除く、あるいは予防していくことが重要です。

2つ目に、既存のコミュニティサービスも改善していくべきだと思っております。そうすることにより障害のある人だけではなく誰もがサービスを享受することができます。今現在、健康のサービスの中にリハビリテーションの要素があるのであれば、障害者や周辺化された人たちがアクセスできるかどうかということが重要です。そしてその中心になるのは、すべての障害のある人たち、すべての年齢の人たちがきちんと意見を持ち、声を上げていけるということです。すべてのジェンダー、宗教、人種に関わらずです。障害の種別にも関わらずです。それがインクルーシブ開発と考えております。

アーリー この戦略はCBMが関わるすべての国においてのガイドとなっております。これは5カ年計画で、現在レビューをしているところです。最新のものに関してはGPS(グローバルプログラム戦略)の教訓を基にしておりますが、今のところはこちらを私どもの主力戦略として使っております。

GPSの中で中核となる仕事の領域です(図2)。まず最初に包括的でインクルーシブな目の健康、2つ目に障害インクルーシブな災害リスク軽減と緊急対応、3つ目は障害インクルーシブ地域開発、CBRと呼ばれているものです。

図2
図2図2の内容

右側には6つの写真が出ています。基本的にCBRには3つの中核がありますが、私たちのアプローチの中では他の懸念事項に関しても注力しています。例えばインクルーシブな生計を立てていくこと、コミュニティメンタルヘルス、インクルーシブ教育といったものも私どものCBRプログラム、あるいはCBIDプログラムの中に入っています。

分野横断的な懸念事項とは、ジェンダー、子どもの保護、環境、持続可能性に関することです。つまり、こういった分野をすべてのプログラムで見ていくべきであるということです。なぜかというと私たちはこういったものはプログラムをインクルーシブにするために含まれるべきであると信じているからです。例えばジェンダーはあるセクターにおいて必要ですし、子どもの保護に関しては私たちの内部、あるいはパートナーを通じて子どもに対して害を及ぼしたくないと思っております。環境に関しても環境に害を及ぼしたくありませんし、持続できる環境を促進していきたいということです。持続可能性に関してもただ単に一回限りの解決策ではなく、長期的に影響を与えられるような解決策を見出していきたいと思っております。

私たちにたいして上野悦子さんから質問をいただきました。どのようにパートナーと協力しているかという質問でした。CBMはプログラムの結果として障害者の暮らしおよび地域社会全体の改善が長く続くことを目的としています。アプローチとしては、他の国際団体のようにコミュニティと直接仕事をするわけではありません。現地のローカルパートナーと作業をしています。ここで何をしているかというと彼らの能力を改善、開発し、彼らが行っているプログラムをより良くしていきます。

まずパートナーを選ぶというところから始まります。どのようにパートナーを選んでいるのか。長いプロセスなのですが、パートナーシップ関係に入る前に確実化しているのは、まず初期の能力でプログラムが始められるかということが重要です。既存のシステムだけではありません。会計システム、内部管理システムが既にある必要があります。そうしないときちんと資金が使えないという状況になってしまうからです。

もう一つの方法は既存のパートナーの能力を強化するということです。世界中にアドバイザーがおり、技術的なサポートを提供しております。医師、聴覚機能訓練士、作業療法士などもいます。もしパートナーがトレーニングが必要であれば技術者を送ることもできます。それだけではなく管理的、事務的なサポートもします。パートナーはその国々で法人格を持っています。それと同時にCBMの事務要件を満たしています。すべてのパートナーには私どものデータベースに貢献していただきます。それによって計画やモニタリングで必要なデータが入手できるようになります。これを管理的なサポートと呼んでいます。

プロジェクトの協力関係をどのように終了させるか。ちょっとトリッキーに聞こえるかもしれませんが、例えばフィリピンでは20年以上パートナーとなっている処があり、今でもサポートしていますが、それには条件があります。一つの地域に固執しないということです。そこから出ていき、他の地域でプログラムを継続していくということが条件です。後ほどこれに関してはもう少し詳しくお話いたします。こういったプロセスの中で常にパートナー評価を実施しております。これは初期段階だけではなく、きちんとチェックをするためにも行っております。パートナーが必要な能力はどういったものなのか、私たちはどうサポートできるのか。既にパートナー評価は2年間行いましたが、多くのパートナーがモニタリングと評価のスキルが足りないということがわかりました。彼らのために、そこでの彼らの能力を強化するためのプログラムを開発しました。

IPCM(インクルーシブなプロジェクト・サイクル・マネジメント)のプロセスによる質の高いプロジェクト管理です。これに関してもCBMがモニタリングしております。複数年の計画を行っております。これが私が先ほど申し上げた、プロジェクトを20年間支えているというものです。つまり、3か年、5か年の戦略計画があり、CBMとしてはある特定の地域である特定のプロジェクトをサポートします。それが終了した時には継続的な提案を受けることもできます。あるいは他の提案として別の地域に移るということもあり得ます。このようにCBMは提案を受けたらパートナーに対して承認をしております。計画プロセス、プロジェクト監視の手段、評価などのプロセスを通じてパートナーと協力しているのです。パートナーとどのように協力体制を築いているかという質問のお答えになればと思っております。

もう一つの質問としていただいたのは政府との協力関係です。スライド(図3)を見ていただくと、右側に火を起こすオーブンがあります。オーブンだと思ってください。火が上にあります。下にも火が起きています。右のケーキを作るために火を起こしています。これはビビンカオーライスケーキとフィリピンでは呼ばれています。ライスケーキというのは火と火の間で調理されるものです。

図3
図3図3の内容

なぜこれを私たちと政府との協力の例としてお見せしているかというと、CBMは国レベル、国際レベルで活動し、政府の意思決定に対して影響を与えております。これは双方向的なもの、国際的な方向性に乗っ取って行っているわけですが、ローカルのパートナーも彼ら自身がコミュニティレベルで作業しております。アドボケートしたり、影響を与えたり、意識を向上させたり、このような努力で、何かいいもの、おいしいものを作り出すことができるというふうに思っております。政府だけでなく、政府と民間セクターの両方が関わることによってです。この写真をご理解いただけましたでしょうか。つまり、トップダウン、ボトムアップのどちらかですと影響を与えるアドボカシーというのは非常に難しくなってしまうということです。

以上がCBMのバックグランドになります。この後に質疑応答もありますので、その時に何かご質問がありましたらぜひ聞いてください。それでは次にバーニーさんにプレゼンの第2部をお願いしたいと思います。

バーニー それでは改めまして皆さんこんにちは。私のほうからはCBMがどういった活動をしているか、パートナーと何をしているか、障害のある人たちと何をしているか、障害者がどのように自分たちをエンパワーしているかについて話してほしいということでしたので、その話をしようと思います。どのように自らの力を活かしているかのお話をしたいと思います。

こちらのイラスト(図4)はフィリピンのマニュアルで使われているものです。CBMの考えをどのように実践するかということを表しております。この中でコミュニティが描かれています。ユニバーサルデザインやインクルーシブ、公共交通機関に障害者が乗っているということが書かれています。何か新しい手段を用いるというのではなく、従来からあるもの、例えば公園で太極拳をやっている人たちの中にも障害者がいたり、モスクや教会もインクルーシブな場所になっています。障害者が植林をしたり、ビジョン2020のこともここに全部表しております。コミュニティ全体がすべての人をインクルージョンするために取り組み、そして実現しているということです。例えば小さい村では信号機があまりなかったりするのですけれども、そういったものをどのように活用して人の安全を保障するかということが書かれています。災害対策、防災ということについても私たちが何をしているかということは後ほどお話させていただきたいと思います。

図4
図4図4の内容

私たちがコミュニティと人々をどのようにエンパワーするか。自分たちで自らをコントロールし、責任をもって行動することが重要です。そのためにはジェンダーのエンパワーメントの枠組みを障害者の状況にも活用できるのではないかと思い、取り入れています。つまり、自分たちの決定に関して自らそれを行い、責任を取るということが重要だと思っております。福祉というのは依存した状況になります。それは必ずしも悪いことではないのかもしれませんが、もっと自立をするということが大事だと思います。

そして意識化ということが大事になってきます。どういった状況になっているのかを分析し、どうしてこのような状況になっているのかということを自ら考えます。ただ単に貧しいということを知るだけではなく、なぜその人たちは貧しいかを考えるわけです。なぜ障害者は多くの国で教育から排除されているのか。どうして障害のある子どもたちは学校に行きづらいのか。世界中におきまして、どうして1億6800万人の子どもたちが危険な状況で働かなければいけないのか、危険な状況にいるのか。なぜそういう状況かということを考えることが大事なわけです。その個人だけではなく、コミュニティ全体での生活を考えることが大事です。

皆さんは「スパイダーマン」の映画を見たことはありますか。映画ではおじさんが亡くなる時にいいました。「巨大な力をもつということは巨大な責任をもつということだ」と。つまり、私たちはセクターとして自分の生活をコントロールするだけでは不十分なのです。私たちは自分たちの懸案事項だけを話すのでは不十分なのです。すべての人たちの懸案事項を考えなければいけません。私たちは地域で起こっていることを切り離して考えてはいけないと思っています。

世界中のアドボカシー運動で、例えば政治、環境、より良い保健サービスといった局面において、どれだけの障害のある方が積極的に活動していますでしょうか。それこそ手のひらで数えられる一握りしかいないかもしれません。もしかしたら違うかもしれません。けれども、地方の自治体のレベルで見た時にどれだけの障害がある人たちが社会的なこと、地域のことに積極的に活動しているのでしょうか。例えば地域をきれいにしようといった活動にどれだけ障害のある人たちが参加しているのか。私たちの大きな責任というのは当事者団体、障害者団体が積極的に参加することによって成し得られると思っております。そうしたことは実際に起き出しております。

人々が自分の人生をコントロールするということ。それには地域が社会的、経済的、政治的な機会を受けられる、真の参加がなせるようなアクセシビリティを保障することが大事です。これは障害のある人たちのために社会や地域をよくするというだけではなく、すべての人たちのためになるわけです。

皆さん、三角を考えてください。三角の真ん中に地域を置きます。すべての人が参加する地域にするためにはまずは政府がいなければいけません。それからコミュニティの問題を常に見て、政府がちゃんと対応するように働き掛ける市民社会組織が必要です。そしてもう一方のところにはビジネスセクターがあります。また住民組織も重要です。住民組織というのは例えば障害当事者団体もそうかもしれませんし、何か特定のセクターに関して政府や市民社会組織とともに活動し合うことによって確実により良い地域を作り出していくのです。

先ほどアーリーが言っていましたけれども、CBMは自分たちのエンパワーメントのプロセスを持って進化してきました。私たちは気がつきました。地域で活動していれば地域の開発アプローチがあります。私たちは草の根のアプローチを取っています。私たちはローカルのパートナーと一緒に活動しています。CBM自体がプログラムを作り率先するということはありません。それぞれの国のパートナーは私たち以上にその国のことをよく知っているということが前提です。私たちの仕事はパートナーを支援することです。技術的な支援であったり、資金援助であったり、いくつかのパートナーが協働できるようなサポートをしています。

パートナーは様々なレベルで活動しています。中には伝統的な活動をやっている人たちもいます。例えば白内障のミッションをやっている団体もあれば、セラピーをやっている団体もあります。そうした異なる活動をしているパートナーの方たちに、障害種別を越えてすべての人たちを見てほしいと言っています。政府を支援し、政府が役割を果せるような影響力を持っているパートナーというのはまだ少ないです。

フィリピンというのは地方分権的な国です。1760の地方自治体がそれぞれお互いに独立した形で自治をしております。およそ50の非政府組織が一億人をサポートしていると考えた時、やはり団体の数は十分ではありません。私たちの役割というのは可能にする人になろうということです。つまり、地方自治体がやるべき仕事をできるように支援するということです。また当事者団体、障害者団体の発展を支援するということです。そしてCBRが何かということを地域に理解してもらい、それを行ったら次の地域に移るという形で行っています。

どのようにやっているか。まずコミュニティが今どのような状態にあるかという現時点の場所から始めます。そしてコミュニティの人々とともに持っている物の上に積み重ねていきます。地域というのは空っぽではありません。既にそこに何かがたくさんあります。コミュニティが私たちに教えてくれることはたくさんあります。ローカルのパートナーはコミュニティのことをよく知らないかもしれません。私たちはコミュニティの中に入って行って次のように話します。私たちは皆さんのことを信じています、皆さんは素晴らしい仕事をしています、けれども、皆さんは障害者を排除していますよ、と話すのです。障害者も含んでもらい、人々と一緒に学び、人々の声を聞いていくということが大事だと思っています。排除している人たちとも話すことが大事です。そして一緒に態度を変えさせるということも大事です。

先ほどアーリーも言っていましたけれども、私たちはどうやって貢献することができるか。ちゃんとアクセスがあるか、政府がそれを保障しているか。つまり、人々が必要としているリハビリテーションにちゃんとしたアクセスがあるか。これはすべての地域にないかもしれません。けれども、近くに受けられるサービスがあるかもしれません。まずは地域に既に存在しているサービスが教育、生計、保健などをどのようにより良くするかということを考えます。そしてそれをアクセシブルにするわけです。日本においてはハンディキャップな状態を作らないバリアフリーということに関しては先に進んでいると思います。すべての人が恩恵を受けられるバリアフリー、ユニバーサルデザインが大事です。

例えば車いすを考えた時、障害者全体の5%しか車いすを利用しておりません。スロープというのは妊婦さんや階段が上りづらい高齢者の方にもプラスになります。何か身体的なエクササイズをしていないとこういった階段はつらかったりします。けれども、もし階段がなければすべての人にとってプラスになるわけです。コカコーラの配達で建物の中に入れる時にもやりやすくなります。ベビーカーなんかもそうです。マレーシアに行きました。とても素晴らしい建物はあるんですけれども、どこにでも段がありました。段があると、車いすにしてもベビーカーにしてもぶつかってしまうわけです。私たちは誰がこんなものを作ったのかと思いました。やはりすべての人にプラスになるものを作らなければいけません。私たちのサービスというのはすべての人にプラスになるものだと思っています。

障害者はとても強い声をもっております。私たちはそれに焦点を当てております。そして政策や計画がインクルーシブな開発に関してあるということが大事です。例えば障害インクルーシブな開発とCBRはどう違うか。こうした言葉は聞いたことがありますか。障害インクルーシブな開発というのはインクルーシブな開発の原則を基盤にしています。開発に関するものすべてを言います。すべての人がインクルーシブになるということ、誰も取り残さないということです。すべての人が貢献するということです。けれども、障害インクルーシブな開発といった時には障害のある人に焦点を当てています。私たちはすべての人のことを考えていますけれども、焦点は障害のある人に当てています。それが私たちのプログラムのバックボーンになるわけです。

そしてCBRに関してです。今はCBIDに名前を変えようとしているところですが、フォーカスは変わらず障害のある人ですが、地域的、草の根的な視点を持つ活動です。草の根の状況はどうなのか。そこから地方レベル、国レベル、国際レベルへと意思決定者にどうのように影響を与えることができるのか。それにより国の法律や国際的な政策がどう変わっていくのか。例えば大きな自然災害があったとします。それぞれ違うNGOが来て、違うサービスがあるわけです。それらが障害のある人をインクルーシブにしているか。妊婦さんもインクルーシブなのか。あるいは高齢者や子どもたちはどうなのか。救援のプログラムの中にきちんと取り入れているのか。こうしたことを言いたいのですが、おわかりいただけますでしょうか。皆さんいかがでしょう。よろしいでしょうか。ありがとうございます。

ではどういう意味があるのか。次のスライド(図5)をお見せします。こちらにお見せしている写真は発泡スチロールでできたボードです。子どもたちに丸や四角の形をこの穴に当てはめようと言っています。以前、私たちがしようとしていたのは人を変えようとしていました。その形に合うように人を変えようとしていたのです。つまり、このボードがコミュニティと考えてみてください。コミュニティを変えようとはせずに人を変えようとしていたわけです。あなたがそこにはまらなければいけない。

図5
図5図5の内容

耳が聞こえないのであれば話す方法を学んでください。それはあなたの問題です。あなたが問題を解決してください。もし車いすを使っているならどうにか方法を見つけて動いてください。もし視覚障害があるのであれば杖を使って、移動訓練をちょっと受けてコミュニティの中を歩行してください、と言われたのですが、そんなことはできませんでした。あるいは手話を使っていれば「他の人たちは手話を使っていない」、スロープがあったとしても45度の急な傾斜でまるでスキー場です。つまり、コミュニティではなく、いつも障害のある人たちが努力して変わらなくてはいけなかったのです。 

障害インクルーシブ開発はコミュニティに変わってもらおうとするものです。右側の写真でお見せしているのは、入れ込もうとしている物の形を変えるのではなく、穴の形を様々な形に変えようとしているわけです。そうすればどのような人であれコミュニティにフィットすることができます。変わるかどうかというのは社会によるわけです。つまり、変わる義務は社会にあるのです。CBRというのは社会のリハビリテーションです。人をリハビリテーションするのではありません。

それに加え私たちが確実にしたいのは障害のある人たちが完全に参加し、障害を自分でセルフアドボケーションしていただきたいということです。障害当事者団体の中心でイニシアチブを取り、政府に対して敵対化するのではなく、政府と一緒に働いていく。政府に敵対化することが仕事ではありません。政府とうまくやっていないのであればよい関係にもっていきたい。政府だけではなく他の人たちともです。

DPOとしても人々に対してただ叫ぶだけではいけないと思っています。これは私の個人的な意見です。私は30年以上仕事をしていますが、多くのDPOが政府に対してただ叫んでいるのを見てきました。でも、そうすれば人々を怒らせてしまいます。女性団体であれ他のグループであれ、プラカードを持って政府に突き付ける、そんなことはもう忘れてください。それでは何も起きません。他のことをすべて試してもうそれしかないということであればしょうがないでしょう。でも、そうでなければ政府に対して「私たちはどのように政府を手助けできるでしょうか」と話すべきです。

例えばアクセシビリティに関する法律があったとします。「あなたは市長さんでしょ。なぜスロープが無いのですか」と叫べば、市長は耳をふさいで、「この人を私のオフィスからつまみ出してくれ」となります。ちょっと想像してみてください。あなたに敵対心をもっているような人が来たらどうでしょう。その市長が1年経っても何もしてくれなかったらやってもいいと思います。私たちはこの市長がアクセシビリティの法律をまったく知らないということがわかっても、知らないふりをして、「市長さんはアクセシビリティの法律をご存知だということを私たちは知っています。あなたは本当にいい市長さんですし、市民を助けたいと思っていらっしゃいます。」と言うのです。実はこの市長が市民のことなど気に掛けていないことを知っていてもです。

私たちが調査をした結果、市長は再選したいということがわかりました。そこで私たちは彼に言います。「市長さん知っていますか。この都市には3000人の障害のある人たちがいて、その家族も含めると18000人にもなります」。計算は彼にさせましょう。「市長さん、私たちはあなたを手伝ってあなたのコミュニティをもっとアクセシブルにしたいのです」。そのようなよいアドボカシー計画を立てていただければ、市長さんも私たちの話に聞く耳をもってくれるのではないかと思います。

つまり、DPOの役割というのはどうやったら変化を起こせるか、どういう役割をそこで担えるかです。もしかしたら最初は大変かもしれません。何も起きなかったら強めにアドボカシーをしてもいいと思います。障害のある人たちだけにフォーカスするのではなく、コミュニティをどのように変えるかということにフォーカスすべきです。CBMでは今でもサービスおよびDPOの開発により焦点を当て、社会的なことにはそれほどではない、という傾向があります。

家族をどうインクルーシブにしていくのか、障害のある子どもたちをどうインクルーシブにしていくのか。もちろんいくつかエクスクルーシブになっている場合もあります。その場合、コミュニティや隣人たちはどのようにインクルーシブにしていくのか。例えばもし手話しか理解できない人がコミュニティにいるのであれば、コミュニティの中に手話がわかる人がいるのか。あるいは子どもたちが障害のある子どもたちの通学を手助けしているのか。以前、Child to Child activitiesというプログラムがありました。これは子どもたち自身にほかの子どもたちや祖父母など大人を教育する重要な役割を担ってもらうものでした。

次、基本原則に移ります。まずはプログラムに関してどういう状況なのか意識をすることです。次に、参加。そして包括的なアクセシビリティ。ただ単にスロープだけのことではなく、障害者、妊婦さん、高齢者の方たちを含めた全員のためのアクセシビリティです。

私たちはツイントラックアプローチを取っています。これは専門的なサービス確実に提供されるようにする、DPOの開発を支援する、そして一方で社会を変えていくというものです。さらに、ジェンダーの問題を提言していく。また、子どもたちの安全、子どもたちの保護というのも非常に重要です。それから、エンパワーメントです。

もう一つ明らかにしなくてはいけないのですが、コミュニティ開発において、私たちは、エンパワーメントされていない、そこから排除されている人たちが自分自身をエンパワーするプロセスにも同じように焦点を当てています。コミュニティは、真の参加を可能にするためにそのシステムや障壁を打ち壊します。そこではコミュニティは多様性を尊重するようになり、私たち全員が相互依存しているということをきちんと理解するのです。多くの人は、アジアには、たとえば東南アジアには非常に素晴らしいコミュニティがあり、みんなが助け合い、お互いに支え合っている、と思っていますが、必ずしもそうではないのです。コミュニティはどことも同じで、人はそれぞれ自分のことしか気にしていないのです。より地方にいた場合、あるいは貧困層が多い都市部の場合は非常に強いコミュニティ意識があり、彼ら自身の防火設備や水道システムなどを整備して、お互いにサポートし合っています。

しかし、多くのコミュニティにおいては、もしある家で誰かが虐待しているとしてもそこで介入はしないかもしれません。ある家庭で障害のある子どもがいると知っていてもそこまでは入っていかないかもしれません。それは個々の家族のユニットとして大切にしているからであり、コミュニティというのはお互いに敬意を払いあっているということです。しかしながら、お互いを尊重し合うあまり、本当は介入しなくてはいけないのにしない場合もあります。介入の結果、何が起こるかということを恐れているからです。

私たちが必要なコミュニティというのはすべてがインクルーシブであることです。東南アジアに関しては共に働こう、協働しようという気持ちが非常に強いのでとてもラッキーだと思います。私はアイルランド出身です。もちろん政府に対して多いに期待はしていますが、コミュニティレベルで起きていることがたくさんあります。家族の相互依存性はだんだん失われています。パーソナルケアアシスタントについては、例えば母親や祖母に頼るのですが、他のシステムに頼ることもあります。あと2分しかないと言われたのですが、私はまだ話始めたばかりだと思っていました。

こちら(図6)はエンパワーメントの枠組みになります。5つのステップの一番下が福祉です。福祉というのは政府のサービスに私たちが頼っているところです。それは間違ってはいません。そこにあるのであれば、そしてあるべきなのであれば。ただそれでは人々はエンパワーメントされていません。サービスを利用するというだけです。

図6
図6図6の内容

2つ目のステップはアクセスです。どうすればサービスにアクセスすることができるのか。サービスにアクセスできることによってエンパワーされます。アクセスというのはただ単にスロープだけのことだけではなく、私の家からそのサービスにどうすればアクセスできるか、ということなのです。コミュニティはきちんと準備ができているのか。スラム地区から車いすを使って出て行けるのか。道の途中は車いすには狭すぎる。保健サービスはすぐそこにあるのに家から出られないというような場合もあるでしょう。あるいは学校に着いた時、先生が「ここには来てはいけません。なぜかというとあなたは目が見えないからです」と言われることもあります。これは開発途上国だけでなく、開発国でも常に起きていることです。

次のステージです。サービスに達することができて、その後、より理解することで意識化することができます。コミュニティのオーガナイザーと話をし、どうしてサービスにアクセスできないのか、何が問題なのかを聞くことができます。その後、何かできることはあるのか、何が問題なのか、なぜ聴覚障害があるからアクセスできないのか、なぜ私の隣人が手話を学んでくれないのか、彼らの問題は一体何か。意識化が強くなるにつれ、疑問が多くなります。どうしてみんな貧しいのか。より意識をし、気づくことができればもっと変えていきたい、変化するプロセスに参加したいというふうにつながっていきます。

そしてそこから管理をするということになります。これが一番上のところです。福祉、アクセス、意識化、参加、管理というふうにつながっています。これは自分の人生に関することです。他の人はあなたのためにこれはできないのです。もちろんプロセスを手伝うことはできます。ですが、誰かに外に出て人々をエンパワーしようということは言えません。私はあなたをエンパワーすることはできません。あなたの選択なのです。あなたが聞きたいかどうかです。あなただけがあなたをエンパワーすることができるのです。もちろん何かのトレーニングやプログラムをすることはできますが、あなた自身がエンパワーしていかなくてはなりません。そこのステージまでいったら皆さん自身の人生の管理をすることができるということです。皆さんの団体、当事者団体は強くエンパワーされています。なぜかというとともに協力してこのプロセスを通してともに協力してきたからです。

基本的なサービスニーズについて見ていきたいと思います。これ(写真1)はパプアニューギニアです。災害があった時はどうするか。私たちは外的な力に頼ることもあります。その時はまだ福祉の状況です。それはいいと思います。

写真1
写真1写真1の内容

それに対して災害対応についてです。障害者は多くの場合、目に入らない状態となっております。目に留まっていません。けれども、一番弱い立場にいます。こちら(写真2)に子どもを背負っている男性の写真があります。フィリピンの台風の被害が大きかった場所です。子どもを保健サービスが受けられる所まで何マイルも歩いて運んでいくところです。この人たちの家は全部破壊されております。

写真2
写真2写真2の内容

アクセスについてみてみましょう。こちらは(写真3)インドネシアの病院です。警備員から看護師、病院の管理者といったすべての人が障害当事者団体と協力して、どのようにしたら自分たちの病院をもっとアクセシブルでインクルーシブにできるかということを考えました。ユーザーフレンドリーなポスターを作ったり、手話を学んだりしました。例えばカウンターを全部変えるのではなく、このように一部のカウンターを低くしました。こうすることによって車椅子を使っている人だけでなく、子どもたちも受付の人とのやり取りがしやすくなりました。様々なコミュニティから病院へのバスアクセスも改善しました。

写真3
写真3写真3の内容

次は意識化です(写真4)。何人かの人たちが集まって外国の援助ワーカーと一緒に話をしている写真です。どうしてこのような状況になったか、なぜこんなことになったか、どういうふうに誰を巻き込んだほうがいいかという話し合いをしています。右側はインドの子ども国会です。子どもたちが何が起こっているかについてお互いに話し合って共有しています。子どもたちが意思決定を行っています。私たちのパートナーも子ども国会と一緒に活動しています。そしていろいろな質問をしています。

写真4
写真4写真4の内容

次に参加に移ります。これは社会に参加するというだけではなく、自分が所属するセクターに参加し、偏見を減少させるための活動をするということです。多くの障害当事者団体にいる障害者は身体障害者です。車いす利用者だったり、視覚障害者だったりします。しかも大人です。大人がプログラムに参加しているということになるわけです。

では子どもたちはどうなっているのか。若者はどうなっているのか。知的障害者はどうなっているのか。精神障害者は、ろう者は一体どこにいるのでしょうか。社会のインクルージョンということを考えるのであればまずは当事者団体内、家族内でのインクルージョンを考えることが大事です。先ほどのインドネシアの病院ではあらゆる種別の障害当事者団体が病院でのトレーニングを積極的に行っています。コンサルティングもやっています。子どもの国会においてはすべての子どもたちが参加しています。

次に管理です。このリスト(写真5)はインドのヒンディー語で書かれておりますが、人々が選択をするということです。選択をするというのが大事です。権利も含まれています。そして人々がセルフアドボケートしてエンパワーされることが大事です。地域の人たちもそれを学ぶことが大事です。

写真5
写真5写真5の内容

最後に一言。権利に基づいたプログラムという言葉を聞いたことはありますか。それは一体どういうことなのでしょうか。例えば国連の障害者権利条約6条、7条、24条の教育に関する条項を見ていただきますといろいろと書いてあります。しかし、これをどのように権利に基づいたプログラムにつなげるのか。権利に基づいたプログラムとは私たちにとってはものの見方、考え方です。そこで第3条に戻りますと、そこには8つの大事なことが書いてあります。固有の尊厳、個人の自律、無差別、社会への完全かつ効果的な参加及び包容、差異の尊重、機会の均等、アクセシビリティ、男女の平等などです。

権利に基づいたプログラムというのは、自分たちのプログラムがちゃんと男女の平等を守っているかどうかということです。例えば当事者団体の意思決定のレベルにおいて男女が平等に扱われているかどうか。また障害のある子どもたちのアイデンティティを尊重しているかどうか。私たちの意思決定に子どもたちを含んでいるかどうか。子どもたちの声を聞いているかどうか。そうしたことを考えるわけです。例えば無差別では意思決定の時にちゃんと精神障害者のことを考えているか、機会の均等ではすべての人に機会は均等化、学校や生計を立てることに関してもそういったことは実践されているかどうかを考えるわけです。

CBMでは今でも小規模な生計プログラムをやっています。しかしワークショップやメインストリームの教育に焦点を当てることは止めるようになりました。以前はやっておりました。私たちのパートナーが自分たちのファイナンシャルサービスを作ろうとしました。けれども、それはうまくいきませんでした。私たちはファイナンシャルサービスの専門家ではありませんでした。ですから、そういう時にはコミュニティ内のファイナンシャルサービスの専門家、専門団体の所へ行きます。ジェンダーが専門ではないのでジェンダーを専門にやっている団体の所へ行きます。活動の中では私たちはすべてできると考える傾向があり、コミュニティから自分たちを隔絶してしまいがちです。しかしメインストリームのサービスや組織と関わるようになると、メインストリームの組織はさらにインクルーシブになり、さらに私たちもメインストリームのサービスから恩恵を受けられます。

人がエンパワーされたか、地域がエンパワーされたかは障害者権利条約の原則に照らし合わせてみればわかります。差別をしていないか、固有の尊厳と個人の自律、自ら選択する権利を尊重するか、自立しているか、コミュニティの一員となり参加する、他の人の違いと多様性を尊重しているか、機会の均等を尊重しているか、アクセシビリティ、ユニバーサルデザインになっているか。私はすべての場所がユニバーサルデザインになってほしいと思っていますし、男女、そしてトランスジェンダーの平等ということも信じております。子どもたちの能力も信じています。このように障害者権利条約第3条に書かれていることを振り返ることで、エンパワーされたかどうかわかります。

エンパワーされた地域の一つの例です。マディヤ・プラデーシュ州という所があります。ここは障害者をリーダーとして地域をエンパワーしています。こちら(写真6)はインドの農村地域です。この地域では有機農業を自分たちの村に取り入れました。それまでは化学肥料を使っておりました。このプログラムには今では何万人も人たちが従事しています。有機農業を取り入れることによって天然肥料が土壌の湿度を保ち、より強くなった作物の茎や根が土壌侵食を防ぐことができています。環境を良くし、持続可能性を高めるだけではなく、食糧確保にもなります。

写真6
写真6写真6の内容

さらに、私たちの活動が「持続可能な開発のための2030アジェンダ」を確実に実現させるためにリンクしていることを示しています。これを実現させるために障害のある人たちは大きく貢献できるわけです。皆さんは持続可能な開発目標をご存知ですか。目標の中にはいくつかの指標があり、障害者に関する指標もあります。素晴らしいと思います。けれども、私たちにとってはすべての目標が大事なわけです。

次にSDGsの目標2に関してです。目標2には飢餓の終焉、食糧安全保障と栄養の向上の達成、持続可能な農業の促進ということが書かれています。私たちがマディヤ・プラデーシュ州でやっている障害者が先頭に立って実践しているプログラム自体がSDGsの目標2にまさに沿うものであるわけです。こちら(写真7)は農作業している人たちの写真になります。車いすを使用している男性が有機農業の方法を他の人たちに教えている写真です。こちらは持続可能な開発についてのページです。私たちはすべての女性、少女が機会の均等を教授し、法的、社会的、経済的な障壁が取り除かれることを目的としております。私たちはそれはすべての障害者にとってそうであってほしいと思っています。

写真7
写真7写真7の内容

「サイクルを終わらせる」という名前のプログラムがあります。End the Cycleと英語で検索していただければ詳細がわかるかと思います。本当はアーリーに彼女自身の話をしてもらいたいと思っておりました。彼女は事故で障害をもち、その後、どのようにリーダーとなったのかを話してもらいたいと思ったのですが、まだ時間はありますでしょうか。

アーリー 自分の人生を楽しんでいる30代の女性がいました。彼女は山登りをしたり、シュノーケリングをしたりすることを楽しんでいました。けれども、オートバイ事故があったためにそれはすべて無くなってしまいました。セブ島の山間部におきましてオートバイ事故があり、崖からオートバイが落ちて女性は飛ばされてしまいました。背中から地面にたたきつけられたことによって脊椎が損傷し、背骨が骨折してしまいました。そこで彼女は脊椎損傷の手術を受けました。

その事故の後、彼女は自分の心が動くことのできない体の中に閉じ込められてしまったと思ってしまいました。このベッドから別の所へ動きたいと思った時には他の人の手を借りなければいけませんでした。どこにも行くことができないわけです。そのような状況に彼女は本当にみじめな気持になりました。自殺をしようかと思ったぐらいでした。けれども、自分にはまだ恵まれていることがあると思った時、つまり、まだ自分の仕事はあるし、サポートしてくれる家族もいる、人生を続けようと、リハビリテーションを行いました。

最初は本当に大きな痛みを伴うものでしたけれども、徐々に一歩目を踏み出し、二歩目、三歩目というふうに歩んでいき、最終的に彼女はそれまでの仕事に戻りました。彼女の母親は「あなたはもう仕事には戻れないわよ」といいました。医者も「仕事には戻れない」といいました。けれども、彼らに対して彼女は「いいえ、私は仕事に戻ります」といいました。結局は仕事に戻りました。リスクがあると言われましたが、彼女は地域の活動を始めました。道も岩や石が多かったり、平坦ではなかったりしていろいろと動きにくくて脊椎の回復にはよくなかったのですが、同僚や家族のおかげで彼女は仕事を続けることができました。

同僚の中には「彼女はこういったことはできないから昇格することはできない」という人もいました。国際組織もそうしたことはできないと思いました。彼女はそれができるということを自分で証明しなければいけませんでした。先ほどバーニーが言いましたように、自分を変えてボードの中にはめようとしていました。彼女の働いていた団体は障害プログラムをサポートしないと言いましたので、彼女は団体を辞めることになってしまいました。2年ほど仕事がなかったのですが、CBMのことを知り、障害のある人をプログラムマネジャーとして採用したいということでした。そして彼女はCBMに入り、今、皆さんの前にこうして座っているのです。

どうして私は人生を進んでいこうと思ったのか振り返って考えてみました。私の両親は私を必要としておりますし、私は親に依存したくなかった。両親の命も限られているし、私は私自身の人生を送らなくてはいけない。なので、進んでいこうと決めたわけです。もちろん困難はあります。どういうふうに対応していこうか、まだまだ探っております。生産的でなければならないと思っております。それで、進もうと決めたわけです。私の母親は私の世話をしてくれているのですけれども、彼女は私を止めたりはしません。なぜかというと転んだらどうしよう、滑ったらどうしようというような多くのリスクはあるわけです。いつでもケガをする危険はあります。でも、彼女は「どんどんやりなさい、あなたは自分でわかっているし、自分でできるから」といいます。そこには信頼関係がありますし、家族からのサポートもあります。気持ちのサポートもあります。私に対してアクセスできる部屋も与えてくれました。うちは2階建てで階段を上がれないので、両親の部屋を使わせてくれています。もしかしたらそういったものがなければ私はすごく大変だったと思います。

CBMで仕事をしていて私が気づいたことは、実は私のような人が他にもたくさんいるんだということです。もう終わりだ、できないと思っているような人たちもいるわけです。もしかしたら日本のほうが状況はいいかもしれません。フィリピンにはたくさんのバリアがあります。過小評価をされてしまったり、もしかしたら私にはできないという偏見をもたれているかもしれません。そういったことは私も以前いた国際団体の職場で経験しました。

例えば中国に招待されたことがありました。私に早期の子どもに関するチャイルドケアの経験を離してほしいと言われたのですが、私の上司は「彼女は行けない。彼女にはそれは難しい」といいました。私にはできないというあなたは一体何なのかと思いました。究極的には彼らは障害に関するプログラムの優先化はできないということで私はそこから外れてしまったわけです。しかし、CBMでは私自身をさらにアドボケートすることができますし、今日、皆さんの前でお話することができて非常に嬉しく思っております。ありがとうございました。

バーニー アーリーのストーリーに足したいのですが、私は彼女を知って何年にもなります。例えば子どもの議会、フォーカスグループなど子どものためのプログラムを行っています。これはフィリピンの遠隔地でやっています。遠隔地というのは単に地方ではなく、山を登り川を渡って行かなければならないような村です。彼女は子どものグループにどのように障害のある子どもたちをインクルーシブにすべきかということに関してよいアドバイスを持っています。パートナーと出かける時も、彼女は車いすを使って、川を渡り山を越えて仕事に向かいます。彼女は常に自分の恵まれている点を数え上げるのです。彼女の身に起きたことは衝撃的ではありますが。ちなみにあちらに座っている彼女のパートナーはブレスという名前です。つまり、ブレシング、「恵まれている点」を彼女は今も数えているのです。

まとめになります。私たちはCBMでこれを既にやっているというわけではなく、他のパートナーともやっています。パートナーシップに対して強力な信念をもっておりますし、パートナーから学ぶことが非常に多い。そういった関係にあります。ここに向かっていきたいと思っています。そして私たちが確実にしていきたいことは障害のある人たちがいつも私たちの活動の真ん中にいるということです。障害のある子どもたちが彼ら自身の意見をもつためにエンパワーされなくてはいけません。そして社会を変えるために活動するのです。もちろんサービスが確実に整備されているようにし、政府、コミュニティ、市民社会グループも彼らの役割や責任を果たして、すべての人たちがインクルーシブになることです。DPOは自分の組織の運営方法を確実に知るようにし、障害のある人たちすべてをインクルーシブにしなくてはいけません。システムを強化し、リハビリテーションが政府のレベルで行われなければなりません。政府がどのように良いリハビリテーションサービスを提供できるか。教育に関してもインクルーシブ教育をどのように実行していくかを理解してもらうことです。そういったことを私たちは今後パートナーを通じてやっていこうと思います。そして政府のシステムを強化し、DPOも強化していきたいと思っております。これは私たちの次の課題になります。今後私たちが動いていく方向です。こういったアイディアに関して、パートナーと緊密に協力していき、DPOのみならずメインストリームの組織とも一緒に仕事をし、社会を変えたいと思っております。

最後に皆さんとお話したいことですが、時間はかなり過ぎてしまったのですけれども、災害対応に関しての話をしたいと思います。これもまた多くの取り組みがなされております。ハイヤン台風がありまして、その前には津波もありました。日本でも津波があったので同じような経験をされていると思います。そこに国際組織が入ってきました。水に触れてしまったので衛生の問題もありますし、避難所の問題、健康の問題、農業の問題というようにそれぞれのクラスターグループに分類されました。ですが、そういったグループの中に障害のある人々が入っていないことに気が付きました。私たちの責任としてインクルーシブになっていなければいけない。呼ばれるのを待つのではなく、私たち自身が自ら入っていかなければならないのです。常に座って招待されるのを待っているだけでは何も起きません。女性団体に障害のある女性のグループがなければ彼ら自身が何かをしなくてはいけないのです。そして私たちがきちんとアドボカシーをしていないのでインクルーシブになっていないということなのです。ですから、そこで活動をして、態度や姿勢を変えさせなくてはいけません。

そのためにはケンカをして戦うのです。失礼、ケンカではなく、ロビー活動をして声を聞いてもらうことです。私たちのロビー活動の対象はむしろDPOで、彼らを様々な会議に参加させて、声を聞いてもらうようにするのです。住宅に関してもアクセシブルな住宅を準備してもらわなくてはいけない。まだまだプロセスの途中ですが、初期段階で計画の中にきちんと障害者が含まれるようにします。

2つ目は、市町村のレスキューチームに対するトレーニングの実施に関してです。現在ではインドネシアやフィリピンなどではローカルレベルでのレスキューチームがありますので、このトレーニングに障害のある人が確実に含まれるようにしなければなりません。警官や地元のボランティアサービスの人たちへのトレーニングでは黒いメガネをかけてもらって体験をしてもらっています。「この人を助けてください」と声掛けします。子どもたちには人形など様々なものを使って、他の子どもたちをどういうふうに助ければいいのかというトレーニングを行っています。

アーリー バーニー、ありがとうございます。それに加え、彼らへのトレーニングではコミュニティ内のリスクも特定します。障害者の視点から違うものが見えると思いますので、彼らにどういったリスクがあるのかを認識してもらいます。危険性はどうなのか、脆弱性はどこにあるのか、なにを他の人に知ってもらわなくてはいけないのか。それから自分たちが今持っている能力は何か、さらには他に必要な知識や能力があれば彼ら自身を救うこともでき、他の人を助けることもできるのではないか。早期警戒システムを設置に関しても手助けをしてくれます。視覚障害者、聴覚障害者のための早期警戒システムはどういうものか。これも今はコミュニティの警戒システムの中に組み込まれています。

フィリピンのマニュアルはラハタンダといいます。ラハタンダとは全員が備えがあるという意味です。地方自治体、すべてのNGOがこのマニュアルを手引書としています。障害のある人々が自分自身を救うためにはどうエンパワーすればよいのか、コミュニティの中でどのように参加していくべきか、さらにはNGOに対しては、災害時にどのような特定のニーズがあるのかということが書かれています。このマニュアルは英語で書かれているのですけれども、もしよろしければ皆様にお分けすることもできます。なぜかというとCBMはこのマニュアルの草案作成に参加しており、既に公開されているからです。以上で私どもの発表は終わりになります。何かご質問がありましたらお受けしたいと思います。

上野 バーニーさん、アーリーさん、長い時間をかけましていろいろな活動についてお話いただきありがとうございました。もともとの予定ではここでご質問を受けたいと考えていたのですが、少し予定を変えさせていただきます。この後、グループ別に別れます。皆さん、自分の活動に照らし合わせてみて、非常にもやもやが残っていたり、これはどういうことなんだろうと聞いてみたいことがたくさんおありかと思います。それをグループディスカッションのほうで共有していただきます。今から休憩をはさみましてグループに分かれていただきます。

別れ方について説明させていただきます。この部屋の一番後ろに2つのグループディスカッションの場が設定されております。1つのグループに15人ぐらいずつ座ることができます。足りなかったら椅子を持ち寄っていただきます。もう1つのグループはこの部屋を出て左側にもう一部屋設定しております。情報サービスが必要な方、手話通訳とパソコン要約筆記の必要な方はそちらの部屋で提供いたします。静かで雑音に惑わされることがない環境を設定しております。3つのグループ分けですけれども、基本的にどこに入っていただいても同じことを話し合っていただきますので同じ内容になります。情報サービスは隣の部屋です。

最初に今回の講演を聞いてわかりにくかったこと、聞いてみたいことをグループで出し合っていただきます。講師の方が3つのグループをグルグルと回りますので、その時にグループのほうから講師の方に質問をぶつけていただきます。質問を出し合いながら話し合う中で、共通の課題が見えてくるかもしれません。このことについてもう少し深く聞いてみたい。例えばコミュニティ開発について、エンパワーされるということについて、災害についてのお話がありました。その中で特に議論を深めたいというようなことが出てくると思います。それをグループのコーディネーターが拾って、皆さんと話し合いながら深めるテーマを設定していきます。もしテーマが見つからない場合は質問をたくさん出していただくということでも構いません。

グループ分けしていただく時に同じ団体から来ていらっしゃる方はできれば分かれていただいたほうが多様な方々と接することができると思います。今日はJICAの国際研修で障害者リーダーの皆さん、ダスキン研修生としてアジア太平洋の若い障害のある方々も参加されています。できるだけ皆さんもグループに分かれて、それぞれの所が国際色豊かになるように参加していただければと思います。日本手話は隣の部屋に用意いたします。

グループコーディネーターを紹介いたします。隣の部屋では渡邊雅行さんが対応いたします。奥のほうでは沼田千妤子さん、林早苗さんが対応いたします。それぞれの所に分かれていただきます。この後休憩を取ります。休憩時間については総合司会の奥平からご案内いたします。

司会 いま2時36分ですので45分まで休憩時間としたいと思います。出て右側に看板が出ていますが、そこが渡邊雅行さんのグループのお部屋です。情報保障が付くお部屋です。いまお持ちのレシーバーは最後のまとめの時までは自分で携帯していただきたいと思います。よろしくお願いします。それでは休憩に入ります。