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CBRガイドライン・保健コンポーネント

リハビリテーション

はじめに

序文で強調されていたように、リハビリテーションの利用は、障害者のある人が最良の健康レベルに到達するために重要である。国連障害者権利条約第26条は、「障害者が、最大限の自立並びに十分な身体的、精神的、社会的及び職業的な能力を達成し、及び維持し、並びに生活のあらゆる側面への完全な包容及び参加を達成し、及び維持することを可能とするための効果的かつ適当な措置(障害者相互による支援を通じたものを含む。)をとる」ことを求めている(2)

障害者の機会均等化に関する標準規則では、リハビリテーション処置とは、機能を提供あるいは回復するもの、または機能の欠損や機能的制限を補うものであると述べている(23)。リハビリテーションは人生のいかなる時期においても行われ得るが、多くの場合、それは限られた期間における、1回または複数回の介入という形で行われる。リハビリテーションの介入は、地域のリハビリテーションワーカーや家族により実施される基本的なものから、セラピストなどにより実施される専門的なものまでさまざまである。

リハビリテーションの成功には、保健、教育、生計、そして社会福祉などのすべての開発部門を巻き込むことが求められる。本項目では、保健部門により提供される機能改善のための手段に焦点を当てる。保健関連のリハビリテーションサービスや支援機器の供給は、必ずしも保健省の手に委ねられるわけではないと知っておくことは重要である(リハビリテーションサービス参照)。

BOX23 ケニア

官民協力の構築

ケニア身体障害者協会(APDK:The Association for the Physically Disabled of Kenya)は、50年間、50万人以上の障害のある人に包括的なリハビリテーションサービスを提供し続けてきた。いくつかの団体との協力の成果として、APDKは9つの支部、280の関連アウトリーチ施設、そして多くの地域に根ざしたリハビリテーションプログラムにより構成される国家レベルのリハビリテーションネットワークを構築することができた。これらは治療、支援機器、外科的介入の支援などのサービスを提供している。

APDKによる協力の成功例の1つに、医療サービス省(旧、保健省)とのものがある。過去30年間、APDKは可能な限り多くの人々に質の高いリハビリテーションサービスが利用可能になることを保証するためにこの省と協働してきた。9つあるAPDK支部の6つは政府系の病院内に設置されており、医療サービス省は療法士や技術士など50名以上の保健ワーカーをそれらの支部のスタッフとして提供してきた。この省がほとんどの保健ワーカーの人件費を負担し、APDKがプログラム費用を負担しているのである。

APDKのCBRプログラムは、1992年にモンバサ支部で設立したものが最初である。2000年以降、もっとも立場が弱い人々である障害のある人のために、ナイロビの主要なスラムへこれらのプログラムを拡大している。CBRプログラムは、家でできるリハビリテーションを提供し、APDKのアウトリーチセンターや支部へつなげる重要な役割を果たしている。政府がいくつかの治療部門の費用を出している一方、CBMやKindernothilfeによる経済的支援を用いて、APDKはこれらのプログラムに32名ものCBR人材を雇った。

APDKは、都市や農村に暮らす人々にリハビリテーションサービスを提供するために、どのように施設リハビリテーションと地域に根ざしたリハビリテーションが協働できるかということを示した官民協力の良い例である。2008年だけで、約52,000人のケニア人がAPDKからリハビリテーションサービスを受けている。

目標

障害のある人が、彼らの総合的な健康、インクルージョン、参加に寄与するリハビリテーションサービスを利用できる。

CBRの役割

CBRの役割は、地域レベルでのリハビリテーション活動を促進、支援、実施すること、そして、より専門的なリハビリテーションサービスへの照会を促すことである。

望ましい成果

  • 障害のある人が個別に評価を受け、彼らが受けるサービスの概要を示したリハビリテーション計画の策定に関わる。
  • 障害のある人と家族が、リハビリテーションの役割と目的を理解し、保健部門で利用可能なサービスに関する正確な情報を受け取る。
  • 障害のある人が専門的なリハビリテーションサービスに照会され、それらのサービスを受けること、またサービスがニーズに合ったものであることを保証するフォローアップが提供される。
  • 基本的なリハビリテーションサービスが地域レベルで利用可能である。
  • 地域で実施されるリハビリテーションサービスをサポートするリソースが、CBR人材、障害のある人と家族に利用可能である。
  • CBR人材が、リハビリテーション活動を実施できるようになるための適切なトレーニング、教育、そして支援を受ける。

主要概念

リハビリテーション

障害者権利条約が「ハビリテーション」と「リハビリテーション」に言及していることからもわかるとおり、リハビリテーションは、さまざまな健康状態における障害を経験している人々に関連のあるものである。ハビリテーションは、先天的または発達の早い段階で障害をもち、その障害なしに機能を使う機会をもたなかった個人を支援することを目的とする。リハビリテーションは、病気やけがの結果として機能を失い、機能を最大限取り戻すために日常活動の実施を再学習する必要がある個人を支援することを目的とする。ハビリテーションは比較的新しい用語であり、低所得国ではあまり一般に使用されていない。したがって、本ガイドラインにおいては、「リハビリテーション」という用語をハビリテーションとリハビリテーションを示す用語として用いる。

リハビリテーション介入

保健部門においては、さまざまなリハビリテーション介入が実施され得る。以下の例を検討のこと。

  • 脳性まひのある女児へのリハビリテーションには、運動、感覚、言語の発達を促すような遊び、筋肉の緊張や変形の進行を防ぐ運動プログラム、機能的活動のための適切な座位保持を可能にする特殊なクッションのある車いすの提供が含まれる。
  • 盲ろうの男児へのリハビリテーションには、親と協働し発達を促すための刺激を与える活動を行えるようにすることや、家や地域の環境の中をうまく移動できるようにするための機能的移動訓練、触れること(touch)や手話(sign)などの適切なコミュニケーション方法の教育が含まれる。
  • 知的障害のある思春期の女子へのリハビリテーションには、月経時のケアなどの衛生活動、問題行動に対処するための家族との戦略づくり、そして安全な地域社会へのアクセスと参加を可能にしたうえで社会的交流の機会を提供することが含まれる。
  • うつ病の若い男性へのリハビリテーションには、うつに関する問題に取り組むための1対1のカウンセリング、ストレスや不安に対処するためのリラクゼーションテクニックの訓練、そして社会活動や支援ネットワークを増やすための支援グループへの参加が含まれる。
  • 脳卒中の中年女性へのリハビリテーションには、下肢強化運動、歩行訓練、自立した更衣、入浴、食事するための機能訓練、平衡障害を支えるための歩行杖の提供、そして言語の回復を促すための訓練が含まれる。
  • 糖尿病により両下腿切断をした高齢男性へのリハビリテーションには、筋力強化訓練、義足または車いすの提供、そして移動や移乗動作や日常生活動作を教えるための機能訓練が含まれる。

リハビリテーションサービス

リハビリテーションサービスは、政府、民間、または非政府部門により運営される。ほとんどの国においては、保健省がこれらのサービスを管理する。しかし国によっては、リハビリテーションは他の省により管理される場合もある(例:ベトナム労働・傷痍軍人・社会問題省や、インド、ガーナ、エチオピアの社会福祉省)。また、サービスを政府と非政府組織が協力し管理している国もある(例:イラン・イスラム共和国、ケニア、中国)。

サービスは、医療専門家(例:看護師、リハビリテーション医師)、治療専門家(例:作業療法士、理学療法士、言語療法士)、技術専門家(例:義肢装具士)そしてリハビリテーションワーカー(例:リハビリテーション助手、地域リハビリテーションワーカー)などの幅広い関係者により提供される。リハビリテーションサービスは、病院、診療所、専門的なセンターやユニット、地域施設や家庭など、さまざまな場所で提供される。たいていの場合、実施されるリハビリテーションの時期(例:事故やけが直後の急性期)や、要求される介入の種類によって、リハビリテーションに適切な場所が決定する。

低所得国、それも特に農村では、利用可能なリハビリテーションサービスには限りがあることが多い。例えば、リハビリテーションセンターがその国の主要な都市に1カ所しかない場合もあるし、療法士は病院か大きな診療所にしかいないこともある。だからこそ、CBRなどの地域に根ざした戦略は、障害のある人や家族をリハビリテーションサービスにつなげ、それを提供するために不可欠なのである。

地域に根ざしたサービス

CBRは歴史的に、地域リソースを用いた、低所得国に住む人々へのリハビリテーションに焦点を当てたサービスを提供する手段であった。CBRの概念はより広い開発戦略へと進化してきたものの、地域レベルにおいてリハビリテーションサービスの提供に関与することは、CBRプログラムにとって未だ現実的かつ必要な活動となっている。

専門的なセンターにおけるリハビリテーションは、多くの人々、特に農村に暮らしている人々にとっては不必要で実際的ではない場合があり、リハビリテーション活動の多くはコミュニティ内で行うことができる。世界保健機関(WHO:World Health Organization)マニュアルTraining in the community for people with disabilitiesは、地域リソースを用いてコミュニティの中でリハビリテーション活動を実施するためのガイドである(32)

専門的なセンターでのリハビリテーションのフォローアップとして、地域に根ざしたサービスもまた、必要である。コミュニティに戻ったあとでも、家や地域社会で新しい技能や知識を使うにあたり、継続的な支援や介助が必要な場合もあるだろう。CBRプログラムは家庭訪問や必要なリハビリテーション活動の継続を促すことを通した支援を提供することができる。

コミュニティにリハビリテーションサービスが確立されたところでは、専門的リハビリテーションサービスを提供する照会施設との密接な関係が維持されなければならない。障害のある多くの人のニーズは時期により変化し、長期間における定期的な支援が必要であることもある。リハビリテーションの成功は、障害のある人々、リハビリテーション専門家、そしてコミュニティにいる関係者の間の強いパートナーシップにかかっている。

BOX24 中国

リーの自立への旅

中年の未亡人であるリーは、年老いた母親と3人の子どもと中国の青海省に住んでいる。彼女の家族はみんな、2003年10月に起こった事故の前までは彼女に頼って暮らしていた。リーは家の修理をしているときに高い場所から落ち、脊椎を骨折した結果、両足が弱くなり、感覚も喪失してしまった。退院した後、彼女は昼も夜もベッドに横になっていた。すぐに両足に腫れが広がり、寝返り、入浴、更衣、トイレ動作などすべてを子どもたちに介助してもらわなければならなくなった。リーは自信を失い、何度も自殺を試みた。しかし幸運なことに、それらは失敗に終わった。

地域CBRプログラムの村落リハビリテーション担当者がリーを訪ね、彼女の家でリハビリテーションを行った。リーは残った機能を使った日常生活活動の新しいやり方を教わった。また、自分の障害に関する情報を与えられ、床擦れや尿路感染症の防ぎ方について学んだ。家族や友人たちは、立位や歩行を練習するための簡単な歩行器の作り方を学び、トイレへの移動の問題を解決するために簡単な便器を作った。また県のリハビリテーションセンターは松葉杖と車いすを提供し、時間と練習を重ねた結果、リーは1人で立ち、松葉杖を使って歩けるようになり、比較的長い距離には車いすを使うことができるようになった。

リーは少しずつ自信を取り戻し、やがて家族のために大好きな料理を作ることを含む日常的な活動もできるようになった。さらにリーは、加工工場を開いた。そこから得る収入と県の市民生活省から毎月支払われる少額の生活補助金で、彼女は再び家族を養うことができるようになり、将来に対しても自信をもつことができるようになった。

リハビリテーションプラン

リハビリテーションプランは利用者が中心になり、目標指向的で、現実的である必要がある。プランを立案するとき、個人の好み、年齢、性別、社会経済状況、そして家庭環境がしっかりと考慮される必要がある。リハビリテーションは多くの場合、長い旅であり、短期目標とともに長期的ビジョンが要求される。リハビリテーションプランが現実的でない場合には、価値のあるリソースが無駄になり得る。

多くのリハビリテーションプランは、障害のある人に相談しないことが原因で失敗する。彼らの意見や選択がプランの立案に確実に反映されることを保証し、彼らの生活の実態、特に貧困問題が考慮されるようにすることは重要である。例えば、農村に暮らす貧しい人が理学療法を受けるために頻繁に都市へ通うことを要求するようなプランは失敗に終わりかねない。リハビリテーションワーカーは、革新的である必要があり、農村部であっても可能な限り家の近くで、適切かつ利用可能なリハビリテーションプログラムを策定する必要がある。

リハビリテーションのニーズは、子どもの就学が始まったとき、若者が働き出したとき、またはリハビリテーション施設を出て地域で再び暮らし始めた時など、特に移行の時期に変わり得る。これらの移行時期には、活動が適切で関連の深いものであり続けるために、リハビリテーションプランが調整される必要がある。

推奨される活動

ニーズを把握する

リハビリテーションプランを立て、活動を始める前に、CBRスタッフが当事者や家族と一緒に、ニーズや優先順位について基本的な評価を実施することは重要である。評価は重要な技能であるので、CBRスタッフはその分野の能力を伸ばすために優先的にトレーニングや指導を受けるべきである。個人のニーズを把握するために、以下の質問を検討することが役立つだろう。

  • 彼らはどのような活動ができ、どのような活動ができないか?
  • 彼らは何をできるようになりたいのか?
  • 彼らはどのような困難を抱えているのか? どのように、いつ、それらの困難が生じたか?
  • どの領域が影響を受けているか? 例:身体、感覚、精神、コミュニケーション、行動
  • どのような2次的な問題が発生しているか?
  • 彼らの家庭やコミュニティはどのような状況か?
  • 彼らは自身の障害にどのような方法で適応してきたか?

過去の医療記録を見直したり、当事者を観察したり、当事者に基本的な身体検査を実施したり、当事者、家族、そして関連する保健専門家・サービスとの話し合いを通して、正確な情報は得られる。当事者の進歩のモニタリングを継続的に実施するため、初期評価とその後の診察の記録を保管しておくことは重要である。多くのCBRプログラムは、スタッフが記録をしやすいように、評価表や進捗ノートを作成している。

照会の促進とフォローアップの提供

もし基本評価の後、CBRスタッフが理学療法、作業療法、言語聴覚治療などの専門的リハビリテーションサービスの必要性を認めた場合には、彼らは障害のある人のための照会施設を通して利用を促すことができる。以下の活動が推奨される。

  • 保健システムのすべてのレベルにおいて、利用可能なリハビリテーション照会サービスを把握する。
  • 障害のある人と家族に場所、予想できる利点や費用など、照会サービスに関する情報を提供する。
  • 障害のある人や家族が照会サービスに関する懸念について話し、質問ができるように促す。必要があれば、さらなる情報を探すのを手伝う。類似した問題を経験していたり、同じまたは類似したサービスからすでに成果を得たりした、同じ地域の人をつなげることもできる。
  • 障害のある人や家族が、照会される前にきちんと説明を受け同意していることを保証する。
  • 一度照会がされたら、きちんと予約がされ、治療が行われるように、サービスと当事者との定期的接触を維持する。
  • サービスへの利用を促すためにどのような支援が要求されるのか(経済的支援、移動、代弁)、どのようにそれが提供できるのかを確認する。例えば、もし代弁が必要ならば、CBRスタッフはリハビリテーションに立ち会う。
  • 継続的支援が必要かどうかを見極めるため、リハビリテーション後のフォローアップを提供する。例えば、リハビリテーション活動は家で継続されることが必要な場合もある。

専門的リハビリテーションサービスは、多くの場合大都市にあり、農村や遠隔地に住む人々の利用は制限される。また都市までの移動に関連する費用のこともしっかりと考えなければならない。例えば交通費、食費、宿泊費、その間に得られない日給、そして多くのサービスが現金払いであることも考慮しなければならない。CBRプログラムは、経済的な制約を認識し、政府または非政府組織のプログラム、銀行ローン、地域サポートなどの多種類の選択肢を調査するべきである。

BOX25 イラン

サービスから遠すぎる場所はない

イラン・イスラム共和国のCBRプログラムは、村の保健ワーカーやCBRワーカーが障害のある人を早期に発見し、その地域のプライマリーヘルスケアサービスへ照会することを促している。照会の後、リハビリテーションスタッフによる移動チームが家を訪問し、家でできるリハビリテーションを提供している。特別な介入が必要な場合、たいていは州都や首都にある3次レベルのケアセンターに照会される。そして専門的施設でのリハビリテーション後、必要があれば、リハビリテーション活動の継続を保証するために、CBRプログラムと連携したプライマリーヘルスケアサービスに再び照会される。移動チームは、進捗を観察したり必要な時に追加の支援を提供するため、フォローアップを行う。

リハビリテーション活動の促進

CBRプログラムは、家での治療または地域に根ざした治療サービスを強化し、さまざまな種類の機能障害をもつ人が自身の機能を家や地域で維持、最大限に活用することを保証するための支援を提供できる。

子どもの発達のための早期介入活動の提供

すべての子どもは、生活のために重要な技能を身につけるためのプロセスを学習する。子どもの発達の主な領域は、身体発達、会話と言語の発達、認知発達、そして社会的・情緒的発達である。発達の遅滞は、その子どもが同年代のグループの発達レベルに届かない時に生じる。早期介入を通し、可能な限り早期に発達遅滞のリスクが高い子どもや発達遅滞の認められる子どもが特定され、その遅滞を防ぐ、または改善するためのリハビリテーション介入が提供される。

脳性まひ、視覚障害または聴覚障害などの障害の存在は、発達遅滞の原因になったり、他の子どもと遊んだり、学校に行ったりするなどの日々の活動へ参加するための子どもの能力を制限する。CBRスタッフは、発達のための機会をシンプルかつ楽しく学習することを促すための早期介入活動を、多くの場合それぞれの家庭で、提供することができる。CBRプログラムはまた、考えや経験を共有したり、遊びグループを促すために親同士を引き合わせることもできる。こうすることにより子どもたちは、他の子どもと遊ぶことや、新しい技能学び、発達のすべての分野において向上することができる。

BOX26 エジプト

家族のための楽しみ

エジプトのアレクサンドリアのCBRプログラムは、スタジアムやモスクなどその地域のさまざまな場所において、毎週活動をしているクラブがある。親は障害のある子どもを連れてCBRプログラムや地域ボランティアにより企画された活動に参加する。そこでは歌やダンスのコンテストなど、子どもたちのためにさまざまな楽しい活動が用意され、親にとっては他の親と経験を共有したりトレーニングの講習会に出席したりする良い機会になっている。

機能的自立を促す

機能的介入は、移動、コミュニケーション、入浴動作、トイレ動作、更衣動作、食べること、飲むこと、調理、家事などの個人の日常生活技能の自立レベルを向上させることを目的とする。介入は、年齢、性別そして地域の環境に依存し、人生の中で次の段階へ移行する時期により変化する。CBRスタッフは以下のことを提供することができる。

  • 障害のある人と家族に、活動を遂行するためのさまざまなやり方をトレーニングする。
  • 家族に障害のある人が最大限の自立を獲得するために、機能的活動において一番良い支援方法について教育を行う。
  • より活動しやすくするための歩行器や移動補助機器などの支援機器の使用に関する訓練を行う。
  • 筋力低下やバランス不良、筋肉の緊張など、活動するための能力に影響を及ぼす機能障害に対処するための専門的技術の教育と指導を行う。これには、筋力強化、ストレッチ、そしてフィットネスプログラムが含まれる。

BOX27 ガイアナ

人生の異なった見方を学ぶ

シャーリーはガイアナのある村に暮らしている。彼女は視覚障害者であるため、母親はけがをしてしまうことを心配し、シャーリーを1人で外出させることを恐れていた。CBRボランティアはシャーリーの家を訪問し、シャーリーが1人でも外で移動ができるように指導することは可能であると母親に話した。しかし、シャーリーの母親を説得することは難しかった。CBRボランティアはCBRの地域コーディネーターであるポーリーンに、シャーリーの家を訪問するように頼んだ。ポーリーンも視覚障害者なので、シャーリーと母親にとって良い見本となり、モチベーションになるのではないかと考えたのだ。その結果母親は同意し、シャーリーにより良い機能的自立を促すリハビリテーションプランが作成された。シャーリーの進歩は目覚ましく、今では白杖を使って地域を動き回ることができている。さらに、その地域のCBR委員会の活発なメンバーと障害当事者団体のメンバーにもなっている。

環境改造を促す

障害のある人の機能的自立を改善するために、環境改造が必要なことがある。CBRスタッフは、個人レベル(家の中)での環境改造、例えば車いす利用のためのスロープ、階段近くの手すり、トイレ改造、出入口の拡大や地域レベルでの環境改善、例えば学校環境、公共建物または職場の改造を促す(保健:支援機器参照)。

BOX28 ベトナム

おばあちゃんが自分の道を見いだす

ベトナムのタイビン村のあるおばあちゃんは糖尿病と低視力を患っていた。彼女は、特に夜間に、頻繁にトイレに行く必要があり、トイレは屋外の庭にあったので、付き添ってもらうために家族を起こさなければならなかった。地域のCBRプログラムのボランティアは、おばあちゃんが夜間でも1人で紐をつたってトイレまで行けるように、ベッドからトイレまでの道のりに紐をつけることを家族に助言した。簡単な環境改造がこのおばあちゃんの自立を確立したのだ。

自助グループをつなぐ

CBRプログラムは、類似した障害やリハビリテーションニーズをもつ人々が、情報や考え、経験を共有するために集まる自助グループを促進している。CBRプログラムは、これらのグループとリハビリテーション専門家との交流を促すことにより、互いの理解や協働を可能にすることができる。

BOX29 インド

病院の支援を認識すること

インドのムンバイ圏の貧しい地域のあるCBRプログラムは、しばしばリハビリテーション施設のスタッフをCBR人材のトレーナーや先生として巻き込んでいる。CBRプログラムは、障害のある人の家族の多くが耳鼻咽喉科や眼科などの病院に照会されるのを怖がっていることに気づいた。そのような状況を受け、障害のある人と家族のために、照会病院への訪問ツアーを企画し、それらがどのような病院でありそこで提供されるさまざまなサービスをどのように利用できるかということを説明した。数人の病院の専門職員は、CBRプログラムが企画した文化的イベントに招待され、彼らのサービスはコミュニティに認められた。多くの専門病院は、CBRプログラムで照会された人には、助成金を反映させた費用を請求することに同意した。

資料の開発と配布

障害に関する小冊子やマニュアルが、リハビリテーションに役立つことがある。これらの資料は、特にリハビリテーション専門家が限られた地域において、CBRスタッフ、障害のある人や家族のためのリハビリテーションガイドとして使用される。これらの資料は、リハビリテーション活動に関与するさまざまなサービスや部門と同様、より広い地域へ価値のある情報を提供することができる。以下のCBR活動が推奨される。

既存の資料を探す。これらは中央政府省庁、国連機関、障害当事者団体、または国内および国際非政府組織から入手できる。また多くはインターネットから入手可能である。例:Training in the community for people with disabilities(32)、Disabled village children(33)

  • 資料を、文化の相違に特に配慮した、その地域の要件に合ったものに適応させる。
  • 既存の資料をその国またはその地域の言語に翻訳する。
  • 既存の資料が利用可能でない場合は、その地域のニーズに合わせた新しい資料をわかりやすい言語で作成する。
  • すべてのCBRスタッフに資料を配布し、リハビリテーションのため障害のある人を訪ねる際に持っていけるようにする。
  • 障害のある人、家族、地域の人々のための資料が入手できるリソースセンターを作る。センターは、地域開発オフィス、地域保健センター、または障害のある人のための特別な施設などに設置しても良い。

BOX30 ベトナム

資料のベトナム語への翻訳

ベトナムのあるCBRプログラムは、WHOのCBRマニュアルなどのいくつかの既存の出版物を現地で使用することを目的にベトナム語に翻訳した。さらに、障害のある人や介助者の具体的な関心ごとを扱ったオリジナルの資料も作成した。保健ワーカーにはいつも、自分たち用と彼らが訪ねる人用の合計2部の資料が提供されている。

トレーニングの提供

CBRスタッフは、リハビリテーションサービスの利用を促すことができ、地域レベルで適切なサービスを提供できるようになるためのトレーニングが必要である。多くの組織は適切なトレーニングプログラムを開発している。CBRスタッフは、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、聴能士、移動訓練士、義肢装具士、医療や緊急医療従事者などのリハビリテーション専門家のそれぞれの役割、そして彼らがさまざまな障害のある人々にどのように役立つかということについて、しっかりと理解しなければならない。CBRはリハビリテーション専門家に、CBRの役割や、CBRがリハビリテーションサービスを最大限に活用してもらうためにどのように寄与できるかという認識を高めるための教育を行うこともできる(導入:運営参照)。