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国連障害者権利条約およびWSISの実施:特に障害に関連した規定と障害を含めた開発プロセスによるインクルーシブな情報社会の実現

モンティアン・ブンタン
タイ盲人協会会長

見解および概念の構築

情報と知識は、パワーの最も重要な源であり、私たちが生き残り、人間の尊厳をもって充実した人生をおくるためにはパワーが必要であることは、疑う余地がない。それゆえ、情報へのアクセスは、すべての人の人権、また基本的自由として、保障されなければならない。障害者のためのアクセシビリティとは、同じ時に、同じ場所で、余計なコストをかけることなくアクセスができることを意味する。これらの見解は、2002年6月に、私たちのうちのほんの一握りの人々が、DAISYコンソーシアムとUNESCAP、タイ政府機関およびNGOが主催した、障害者のためのICTアクセシビリティ地域セミナーに参加するためにバンコクに集った際、私たちの考えを構築し、それを政策提言へと進める上で、主要な推進力となった。

このような考え方を世界中に広めるには

2002年末に向けて、私たちの提言は、日本の滋賀県琵琶湖近郊で話し合われた地域開発の枠組み(行動のためのびわこミレニアム・フレームワーク)に統合されていき、中核となる声明(アクセシブル/インクルーシブな情報社会およびユニバーサルデザインと支援技術の達成)を、史上初めて主流のサミット(世界情報社会サミット、WSIS)のジュネーブにおけるフェーズ1およびチュニスにおけるフェーズ2の両方で、更に明確に紹介する道が開かれた(www.itu.int/wsisの世界情報社会サミットウェブサイト参照)。

優れた運転手を使って車を動かしていくには

主流の世界サミットの文書に盛り込まれることは、優れた車に乗っているようなものである。しかし、この車にはよいエンジンと十分な燃料、そして何よりも、優れた運転手が必要である。そこで私たちは、自分たちの考えを、法的拘束力のある文書の中で明確に定義してもらうことに更に取り組み、国連障害者権利条約(http://www.un.org/disabilities/)においてこれに成功した。

この条約が画期的な解決策である理由は何か?

  • 21世紀最初の国際人権法としての地位を享受したこと
  • 社会開発と人権の二つの側面を持っていること
  • 草案作成から協議、採択まで5年しかかからなかったこと
  • 史上最多の市民社会組織、特に障害者組織による国連のプロセスへの参加が許されたこと

そして重要なのは

  • インターネットを通じて、世界中で草の根レベルの参加/ロビー活動がオープンに行われたこと

この条約はWSISの実施とどのように関連しているのか?

  • 「アクセシビリティ」を最重要事項の一つとしていること
    • 前文 第5パラグラフ
    • 第3条 一般原則F項
    • 第4条 一般的義務 第2パラグラフ
    • 第9条 アクセシビリティ全般 全文
    • 第21条 情報へのアクセス 全文
    • 第24条 教育 第3・第4パラグラフ(特に点字および手話に言及した部分)
    • 第29条 政治的権利 パラグラフAのサブパラグラフ1
    • 第30条 文化的権利(特に文化的資料へのアクセスに言及した部分)
    • 第32条 国際協力 パラグラフD
  • いくつかの関連用語について、実際の使用および共通の理解のため、明確に定義していること
    • 意思疎通
    • 言語
    • 合理的配慮
    • ユニバーサルデザイン
  • 国連の法的文書としては史上初めて、条約とその選択議定書のテキストをアクセシブルなフォーマットで利用できるようにしなければならないこと(本条約第49条および選択議定書第17条参照)。

理想の概念に合うよう、現実的なアプローチをとるには

ユニバーサルデザインと支援技術の利用を通じて、あるいは、国連障害者権利条約で定義され、義務付けられた規定を通じて、アクセシブル/インクルーシブな情報社会を実現するには、そのような理想の目標をより達成可能に、あるいはより感知可能にするための、更なる明確化および単純化が今後も必要である。私たちが、国連障害者権利条約に対するバンコク提案以来、提案し続けてきたのは、オープンかつ非独占的な何らかの国際的なアクセシビリティ基準が開発され、十分に認識され、そして順守されなければならないということである。インターネットに関しては、障害の有無にかかわらず、ますます人々の生活にとって重要となってきているので、国際的に認められたアクセシビリティ基準が大いに求められる。

現在国際的に認められているアクセシビリティ基準について

国際的に認められるようになったアクセシビリティ基準のうち、以下の2つが特にオープンで非独占的であることが知られている。

  • ワールド・ワイド・ウェブ・コンソーシアム(W3C)http://www.w3.org/WAI/によるウェブ・アクセシビリティ・イニシアティブ(WAI)http://www.w3.org/WAI/

および

  • DAISYコンソーシアムによって開発され、管理されてきた、デジタル録音図書の仕様規格である、デジタルアクセシブル情報システム(DAISY)http://www.daisy.org/

同期化マルチメディアのアクセシビリティ基準の開発に向けて

現在あるこれら2つの基準は、情報社会をよりアクセシブルなものにするために、ある程度は私たちの役に立ってきたが、まだ多くの障害者グループが抱える問題を解決することはできていない。たとえば、ウェブ・アクセシビリティ・ガイドラインはテキスト中心になりすぎていると考えられており、一方で最新のDAISY規格は(DAISYが当初対象としていたメディアである)音声と、テキストおよび静止画像だけにしか対応できない。これら2つの基準を、動画その他のさまざまなコミュニケーション手段や様式をサポートする同期化マルチメディアのアクセシビリティ基準にするため更に開発を進めていくことは、障害の有無にかかわらず、また文字で書かれたスクリプトが読めるか読めないかにかかわらず、私たち全員にとって大きな利益をもたらすはずである。

同期化マルチメディアのアクセシビリティ基準とインターネット

国際的に開発され、認定され、順守される同期化マルチメディアのアクセシビリティ基準は、私たちにとって、ダイナミックで急速に成長しつつあるインターネットコミュニティから障害者のコミュニティが疎外されないようにするために達成すべき、大いなる課題の一つであるということを、私は固く信じている。このような基準があり、ユニバーサルデザインの考え方が実際に適用され、支援技術の開発が今のように分裂することなく、もっと具体的な成果を生み出すことができれば、私たちは、インターネット電話、インターネット放送、およびワールド・ワイド・ウェブについて、確実に共通の方向性を見出すことができる。

結論

WSISの実施プロセスにおいて、インターネットアクセシビリティはインターネットガバナンスの中核となる要素として扱われるべきである。このような開発は、ユニバーサルデザイン、支援技術および合理的配慮を明確に定義し、義務付けている国連障害者権利条約に従い、権利に基づいて行われなければならない。特にこのインターネットガバナンスフォーラムのような、障害者を含む全関係者によるオープンな参加と貢献を通じて、アクセシブル/インクルーシブな情報社会が最終的に実現できるものと私は信じている。