全国フォーラム

発達障がい者就労支援全国フォーラム

NPO法人夢の樹オホーツクは平成20年度の事業の一環として、平成20年度厚生労働省障害者保健福祉推進事業の補助をうけて、「発達障がい者に対する障害者自立支援法に基づくサービスのニーズ把握に関する調査」を行ってきましたが、聞き取り調査に赴いた全国300余の事業所のなかから、発達障がい者の就労に関して先駆的又は有効な支援を行っている4事業所を招聘し、フォーラムを開催しました。以下にその骨子を列記しますが、取り組み方の違いはあれ、どの事業所も確固たる思想と具体的な手法(実践)をもっていることが挙げられると思います。

日程

  • 平成21年3月21日 13:00~17:30 事例報告 1~4
  • 平成21年3月22日 10:00~12:00 意見交換会

フォーラム主催者と報告者

事例報告 1

奈良県奈良市 社会福祉法人寧楽ゆいの会
なら障害者就労・生活支援センターコンパス センター長 小島 秀一氏

1.奈良県ジョブサポーター派遣事業
  • 就労促進の拡大を図るため、一般就労への意識や動機付けを図るとともに、職場適性等のアセスメントのできる、職場体験や現場実習の充実が重要
  • 企業や当事者には不透明な不安感があり、消極的になりがち
  • 円滑な職場体験等が行えるよう関係者間の調整、通勤支援及び職場内における職業生活支援を行う
2.支援内容
  • 実習者、受け入れ企業担当者、関係機関(含家族)との打ち合わせ
  • 通勤支援、職場内の職業生活支援(休憩時間の過ごし方、更衣室の利用、タイムカード、あいさつ、返事、報告の仕方、作業手順等の支援ツール、不安軽減のための相談)の実施
  • 受け入れ企業への実習者への配慮事項や作業指導方法の伝授及び作業環境や従業員との関係などの調整

報告者※この事業所の特徴は、地域の関係機関との連携の下、身近な地域で就業面及び就業に伴う生活面の支援を一体的に行っていることです。

そのための課題分析と今後の取り組みについては、資料をご覧ください。

会場の様子 また、支援を受け、実際に社会復帰を遂げられた方からの報告もあわせて行われました。

会場から大きな拍手とともに、「勇気づけられた」との感想が多数寄せられました。

フォーラム当日発表資料

事例報告 2

長野県松本市 社会福祉法人アルプス福祉会
コムハウス 施設長 金澤 洋一氏

1.松本がもし100人の村だったら
  • 池田香代子著「世界がもし100人の村だったら」を参考に、著者の許可(むしろ応援)を得て作った絵本
  • 障害を持っている人は5人(北欧では10人と言われている)
  • この違いは、国や地域の認知度や制度・仕組みの差
2.コムハウスでは
  • クッキー・ふきん・薪・施設外就労・リサイクル・麦ストロー・下請け作業・工芸品・紙すきなど多種多様作業を行い、46人の通所者が働いている
  • 46人が働くのだから、46種の作業があってもおかしくないと思う
3.選択できる大切さ
  • 自己選択をするのなら多様な選択肢が用意されていなければならない
  • ○○の作業はNさんの好きな仕事と担当職員は言うが、本当に好きなのか? Nさんが一番我慢できる作業ではないのか?
4.私たちの仕事は利用者の仕事を社会化させること
  • 作業に誇りや達成感を位置づけることが大切
  • 同時に地域にその中身を丁寧に伝え、利用者やその労働を施設のなかに囲わないこと
  • 仕事は報酬とやりがいと人間関係。施設は通過点。ならば報酬のみを追求せず働く力や意欲を育てることも大切

報告者 ※自分たちの願いは自分たちで叶えようと市民立で障がいの軽重にかかわらず支援していくことを目的に設立されたコムハウス。

「どんなに重い障がいがある方でも通える働く場にしたい」と3年間毎週街頭募金を行い6,500万円を集めました。応援団が多く、地元出身の上条恒彦さんの紹介でジブリ美術館へ麦ストローを納品しています。

フォーラム当日発表資料

事例報告 3

神奈川県横浜市 NPO法人PWL
就労移行ワークステーションPWL  理事長 箕輪 一美氏

1.多様な事業展開
  • 特殊学級を担任し、多くの卒業生を送り出すなか、社会からドロップアウトし生きがいを失ってしまっている子たちの存在を知り、退職
  • 1992年、PWLグループホーム第1号「なかまのいえ1・2」設立
  • 現在13ホームを運営定員72人
  • 就労移行支援、就労継続支援A型、自立訓練(生活訓練)、生活介護
2.教育、医療、福祉の融合
  • 15歳から5年間教育と福祉のコラボレーションを経て自立の道へ
  • 5年後には経済的自立を目指す
3.経済的自立
  • 横浜市では約12万円が自立生活者の生活費の最低ライン
  • 養護学校や高校を卒業した18歳の時点では年金対象外
  • 最賃8時間労働で12万円だがハードルが高い
  • 年金65000円+1日2500円の労働で経済的自立を目指す
4.余暇支援
  • スポーツ約12種目、文化約6種目のプログラム提供と参加
  • 地域活動への参加(バスケットボール、ソフトボールなど)
  • 通信制サポート校(日本健育高等学院)
  • 3年間で就労又は生活訓練又は就労移行支援等を利用しながら高校卒業単位を取得し就労先の拡充を図る

報告者※軽度の知的障害者が支援を求める方法を理解できないまま、精神病院、刑務所、ホームレスという結末を送る人も少なくなくありません。これら隙間にいる手帳をもたない15歳からの方たちに認定区分を受けさせ、就労支援を行っています。

また、有限会社を有しお弁当の製造販売を行っており、堅実な売り上げをキープしているほか、横浜本牧のビル内で染・織の技術を生かした製品を作っており、どちらとも「本物」の提供をこころがけています。

事例報告 4

沖縄県那覇市 NPO法人ミラソル会
就労サポートセンターミラソル  理事長 一杉 光男氏

1.5障害対応のリハビリテーション
  • 知的、精神、身体、発達、高次脳
  • 実践のなかで「働く」力をはぐくむ
  • 職業準備性に障害種別は関係ない
  • 企業で訓練するのは工賃を得るためではなく見極めるため
2.就労移行の4つの柱
  • ゴールからスタート 民間企業での職場実習により企業で要求される態度、常識、スピードと処理量を学び民間で通用する職業人をつくる
  • スペシャリストが評価、開拓、コーディネート ジョブコーチ2人を配し、GATB=厚生労働省一般職業適性検査を行い、職業リハビリからジョブマッチングを経て、定着後のフォローまで行う
  • 職業準備性を高める 座学により働く上で最低必要な知識、技能を育てる
  • 夢を具体化するアセスメント
フォーラム当日発表資料

報告者※授産活動を行わず(なので、工賃は発生しません!)、民間企業での職場実習とグループ就労訓練を主体とした実践的な職業リハビリテーションを行い、3年間で61人(5障害)を就労させています。

会場の様子 主な就職先は、製菓会社検品係、老健施設ヘルパー補助、IT企業バーコード読取、キーパンチャー、老人デイサービス清掃係、メンテナンス会社清掃員、石材会社現場作業員、デパート販売員、スーパー商品補充チェック係、害虫駆除会社駆除対策検査員、JA豊見城など多岐にわたっています。

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