ノルウェー盲人図書館　アーニー・シルシェブ

私の名前はマイ・リンです。16歳です。ノルウェーのオスローから来ました。高校（カレッジ）のコミュニケーション科で学んでいます。小学校3年生のときに、ディスレクシアと分かりました。小中学校時代は、暗くて困難ばかりの日々でした。あまり記憶がありません。小学校6年生、11歳のときに、読み書きを学ぶための担当の教員がつきました。録音図書を手に入れる前は、両親が読みあげをしてくれていました。ディスレクシアがあったので、録音図書を読む資格がありました。小学校6年生で録音図書を手に入れましたが、一部の教科のみでした。家で宿題をするときに録音図書を使いましたが、あまりよく覚えていません。中学校にあがった頃から、変化がありました。好機が増え、人々は私に期待を持つようになりました。私は、DAISY図書を手に入れましたが、そのDAISY図書は、正しく再生できませんでした。次の年も、同じことが起こりました。そこで、私の両親は、きちんと再生できるDAISY図書を手に入れるための活動を始めました。私は、初め、DAISY図書を使う気になれませんでした。なぜなら、自尊心を失っていたからです。しかし、あるとき、DAISY図書を使わなければならないことがあり、その後、時が過ぎるにつれて、自分からDAISY図書を使いたいと思って使うようになっていきました。私は、初めDIASY図書を使うのが嫌だったのですが、今は、楽しんでいますし、頼ってもいます。もしDAISY図書がなければ、私は、どの教科においても、今ほどの点数を得られることはなかったと思います。今後、DAISY図書が手に入らなくなるのではないかということが気がかりです。

どのように、DAISY図書を活用しているかですが、AMISというソフトをノートパソコンで使っています。イヤホンを使うこともあります。DAISY図書を聞く間、私は印刷された原本を手元に持ちます。

必要なものが手に入らない状況では、自尊心は簡単に失われてしまいます。例えば、パソコン、教育、録音図書などの必要なものです。私には、私のことと、私のディスレクシアを尊重（リスペクト）してくれる良い友達がいます。私は、スポーツをしていましたので、それも、自尊心を回復するのに役立ちました。録音図書は、私の自尊心を回復するのに役立ちました。そして、録音図書のおかげで、自分にとって十分な成績をとることができました。

最後に、DAISYユーザーへのアドバイスです。良いアドバイス、技術、解決策を含む、良いサポートを得てください。良い、自尊心を持ってください。

自分が、秀でられる場所、得意なことができる場所を、いろんなところでさがしてください。DAISYを活用してください。いろんなことが、断然うまくいくようになります。

ノルウェー　国立盲人図書館（NLB）製作部部長　アーニー・シルシェブー氏　発表概要

ノルウェーのDAISYサービスについて、すべての学校へのサービスと、生徒への付加的なサービスについてお話します。私は、ノルウェー国立録音図書と点字図書館（以下、NLB）の、製作部門の部長をしています。ノルウェーの法律では、視覚障害者とそれ以外の障害者で、入手できるサービスに違いはありません。教科書、人生を豊かにするための図書すべてにおいてです。著作権上における違いはありません。教育法上、生徒は、DAISY図書や点字図書を入手する資格があるという書き方はされていませんが、生徒は、必要な支援を受ける権利があると明記されています。政府の社会サービスは、障害のある国民に、支援技術と機器を提供します。例えば、視覚障害のある生徒は、DIASY再生機を政府から、好きなだけ持っていて良いという条件で借ります。ディスレクシアの生徒は、コンピューターやその他の機器をもらうことができます。

DAISYの提供団体は、2つあります。NLBは、大学にDIASY図書を提供しています。小学校から高校までは、国立のヒューズビー・リソースセンターがDAISY図書を提供しています。

もともと、NLBもヒューズビーも視覚障害者を対象としたサービスを行っていましたが、視覚障害者も、その他の理由で読むことに困難のある人たちも、同じサービスを利用することができます。ノルウェーでは、視覚障害者は、どんな図書も、必要な形式で入手する権利があります。例えば、点字、eテキスト、DAISY等で必要だとリクエストすれば、入手できます。ヒューズビーは、視覚障害のある生徒のための施設であるけれども、ディスレクシア等の、他の読むことに困難のある生徒達のために、読めるフォーマットに変換する権利があります。学校は、どの生徒がアクセシブルな教材が必要かの判断を行い、アクセシブルな教材を発注する責任があります。提供する側は、学校が必要だと判断した生徒に提供するという保障を得られます。図書の値段は、一人の生徒の一冊の図書に約20US$で学校が購入します。学校によっては資金的な困難で購入が難しい場合もあります。ヒューズビーでは、現在は音声のみのDAISY図書を製作しています。日本での事例や、マイ・リンの発表からも分かるように、フルテキストのDIASY図書は、大変重要です。ヒューズビーは、フルテキストのDIASY図書を製作する準備を進めています。リソースが問題で、技術と資金の両方が必要です。

ヒューズビー・リソースセンターの統計によると、2006年から2007年では、1,455校の小学校が、2008年から2009年では、1,775校の小学校が、DAISY図書を入手しています。これは、ノルウェーの全小学校の54.3％です。高校では、2006年から2007年で235校、2008年から2009年で327校、これは、51.9％の学校です。今年ヒューズビーで入手可能な図書の合計は、1,423タイトルで、昨年より180タイトル増えました。ユーザーは、9,797人で昨年より400人増えました。

ノルウェーの全生徒数の1.5％がDAISY図書を利用したことになります。潜在的に、どれくらい利用者がいるかというのは、難しい質問ですが、だいたい、3－5％くらいだろうという話もあります。わかっていることは、活用できる生徒は、現在使用している生徒数よりも、もっともっと多くいるということです。

地域の公立学校は、生徒にアクセシブルな環境を提供する責任があります。国のリソースセンターがありますし、ディスレクシア協会は学校用のガイドラインを出していますが、国の規定はありません。

十分なサービスが提供できるかどうかには、次の要素があります。1.資金　2.技術的なスキル　3.支援技術の知識があって、教員達をサポートできる、リソースパーソン4.生徒が、DAISY図書を入手できるように導く両親です。大学の教材ですが、これは、NLBが責任を持っています。NLBは、初めは、視覚障害者のための施設でしたが、規定には、視覚障害者へのサービスに影響しない範囲で、他の読みに困難のある人たちへのサービスを提供するとあります。つまり、法律的に、読みに困難のある人たちへのサービスを提供することになんら問題はありませんが、リソースの問題があります。視覚障害者は、製作の権利があります。必要な図書のリストを送ります。NLBや、他の提携団体（海外含む）に、既存のものがあるかどうか確認し、あれば提供し、なければ製作します。

読みに困難のある人たちは、既存の教科書DAISYを借りる権利があります。既存のものがあれば無償で入手できます。NLBのサービスは、すべて無償です。しかし、製作してもらう権利はありません。私たちは、論文や概論等の大学で使われる図書を製作します。50％は、朗読者による録音で、50％は、パソコンの合成音声の声でフルテキストのものです。昨年は、150の教科書DIASYを作成しました。そのほかに、eテキストや、点字の図書も作成していますが、数は少ないです。大学でも同じで、学校が、アクセシブルな環境をつくる責任を持っていますので、学校が、NLBにリクエストを出します。学校によって、サービスの質はまちまちですが、学校では診断をしますし、NLBのことを含む、様々な情報を提供します。また、支援技術や機器の提供を行ったり、国に申請するように助言したりします。ここ2年ほどで、学校でも代替フォーマットの作成を始めたところもあります。スキャンしたものや、テキストファイルや、TTSを活用したもの、DAISY教材等です。ノルウェーでは、現在、大きな変化が起きています。

今後の展望ですが、DAISYコンソーシアムも、NLBも、DAISY図書を製作する効率の良い方法を考えています。パイプラインやパイプオンライン等のツールは、効率的な製作に大いに役立つと考えています。早くて、安い手法です。同じお金で、より多くの教材を作ることができるようになるのは重要なことです。外部のリソースも活用しています。北欧の国では、互いに、図書の相互貸し出しを行っていいます。スウェーデンやノルウェーでは、図書の30％は、英語です。英語のDIASY図書は、すでにアメリカのRFB&D等で製作されている可能性が高いです。ですから、国際的な相互貸し出しは、入手可能な図書の数を増やすのに大変重要です。今年から、北欧の国々では、国境を越えた、相互貸し出しをはじめました。ウェブ上の製作ツールを使えるようにしました。すべての大学からアクセスできます。パイプオンラインです。今年の2月から活用できます。生徒は、ファイルをアップロードして、DAISYフォーマットのファイルをダウンロードすることができます。