調査の概要

1.調査の目的

昨年度の障害者保健福祉推進事業(調査研究プロジェクト)より継続して、支援現場における自閉症や強度行動障害の人たちに特有な支援ニーズや状態像、および、それらに対応した効果的なサービスの提供のあり方や質などについて検討を進めてきた。

しかしながら、昨年度事業の観察調査データによる結果からは、6つの協力施設で取り組まれている有効な支援プログラムを十分に反映した数量的な知見を得ることができなかった。そこ で今年度は、昨年度事業の事例調査で見出された強度行動障害の類型(クラスター)ごとにい くつかの事例を選択し、内部検討委員と外部評価委員、他を含めた事例検討会において、予防的対応を含めた有効な支援の質的部分を明らかにしていくこととなった。最終的には、これらの事例研究(定性データ)から得られた情報や知見に基づき、強度行動障害を示す人たちの施設支援モデル案の作成を行なう。

2.調査の方法

(1) 調査の対象(事例の選定)

昨年度の事例調査データの強度加算対象者151人について、強度行動障害尺度の因子得点を用いた階層クラスター分析(グループ内連結法)を行なった。その結果をRescaled Distance Cluster Combine=20でCut offしたところ、下記のような5つのクラスター類型が得られた。全国6地域の全国自閉症者施設協議会加盟施設における強度行動障害加算事業の利用者の中から、それぞれのクラスターに合致する事例を1クラスターあたり1~3例ほど選定し、合計6回にわたる事例検討会で報告・討議された。

  • クラスターⅠ型:コミュニケーションが困難で、自傷攻撃破壊が激しいタイプ
  • クラスターⅡ型:コミュニケーションが困難で、対応困難なタイプ
  • クラスターⅢ型:多動固執パニックが激しく、対応困難なタイプ
  • クラスターⅣ型:自傷攻撃破壊、摂食排泄睡眠の障害が激しいタイプ
  • クラスターⅤ型:多動固執パニック、摂食排泄睡眠の障害の激しいタイプ

(2) 事例検討会の内容の整理

事例検討会で討議された事例のうちの11事例について、報告および検討内容を次の1~12の項目に分けて整理した。そして各事例は、クラスターⅠ~Ⅴ型の順に3ページから列挙していく。

  1. フェイス・シート
  2. 生育歴、相談・治療・教育歴
  3. 障害の状態像:障害名(診断名)、発達検査等の客観的評価データ
  4. 行動障害の状態像(利用前の様子、利用前の判定基準点数の分布)
  5. 行動障害の要因等に関する分析、とらえ方
  6. 行動障害改善のためのプログラム、支援の経過、職員体制など
  7. 行動障害の転帰(利用後の様子、利用後の判定基準点数の分布)
  8. アフターケア
  9. 得られた知見、今後の課題
  10. 外部評価委員からのコメント
  11. 質疑応答、報告内容の確認
  12. 事例検討のまとめ(自閉症や強度行動障害を示す人たちへの有効な支援/予防的支援)

(3) 強度行動障害を示す人たちの施設支援モデル案の作成

3回にわたって開催された事例検討会での討議内容を整理し、「強度行動障害を示す人たちの施設支援モデル案」を作成した。この中で、強度行動障害を示す人たちの支援の展開過程(まとめ)を図1に示す。

menu