(1)販売計画
施設(事業所)では、印刷、クリーニング、部品組立加工、包装作業等の作業を行っ ているほかに、食品加工品、木工製品、陶・工芸品販売、農耕・園芸品等の施設(事業 所)オリジナル商品の販売を行っているところが多く見られます。これらの売上高は工 賃に大きく関わるものであり、販売計画を立案しその数値と実績の検討・分析は重要 です。事業所の販売計画の立案状況は以下の通りです。
① 販売計画の立案については、ほとんどの事業所で十分とはいえないものの他部門 との調整のもと、前年・前月等実績に基づいて立てています。販売計画立案後、半 数近くの事業所は月ごとに販売実績と比較し、時々ですが販売高の変動の原因の検 討を行っています。一方で、常に変動の原因の検討を行っている事業所は1割程度 で計画を立てていない事業所が約2割みられます。
② 販売計画の根拠については、7割の事業所が実績に基づいて計画を立案していま す。前年・前月等の実績に基づいているが5割強でもっとも多く、販売計画立案し ている事業所の多くが、前年・前月等の実績に基づいて計画を立てています。
③ 販売高の変動の原因の検討の状況は、常に行っている事業所は1 割強とわずかです。しかし、時々行っている事業所が4 割強ともっとも多く、常に行っている事業所とあわせて6 割近くを占めています。課題は残るものの販売計画を立てている事業所の大半が販売高の変動の原因を検討しています。
④ 販売計画に基づく数値と販売実績の比較の状況は、比較時期の差はあるものの、行っている事業所は6 割近くを占めています。そのうち、月ごとに行っている事業所がもっとも多く、計画数値と販売実績を比較している事業所の半数近くが月ごとに行っています。
(2)市場調査
多くの事業所では民間企業と比べて商品アイテム数は少なく、少ない商品アイテムで効率よく販売するには、市場ニーズにあった売れる商品を開発・販売していく必要です。そのためには、過去の販売実績から「売り筋」「死に筋」商品を分析し「売り筋」を重点的に販売していくことや市場ニーズの調査による売れる商品の開発が不可欠と思われます。それぞれの事業所の市場調査・分析・活用状況は以下の通りです。
(3)価格政策
売上を上げるには他の事業所と差別化できるブランドを形成し、普及させることも 大切な要素です。事業所の価格決定、ブランドの普及度は以下の通りです。
① 売上を上げるには他の事業所と差別化できるブランドの普及度については、半数 以上事業所で普及度の差はあるものの、事業所のブランドが地域に浸透しています。また、価格の検討については、多くの事業者が同業者の価格との比較検討をしているものの、コストから価格を決定しています。
(4)販売促進
売上高を増加させるに外部に向けた幅広い販売促進活動が重要です。事業所でのバザー、地域イベント出店、地域へのチラシ配布等の販売活動を行なう際、家族・地域住民等を構成員とする後援会は大きな役割を担っています。事業所の販売促進の状況と後援会の活動の状況は以下の通りです。
① 事業所で販売促進活動を行なう際、家族・地域住民等を構成員とする後援会は大 きな役割を担っています。事業所の販売促進の状況と後援会の活動についは、事業所の約半数が地域に限定したチラシ配布やイベント出店で販売活動を行なっていますなど、多くの事業所が地域を限定した営業活動を行っています。
また、ホームページ等による販売促進活動や官民を問わず積極的に受注・販売活動を行なっている事業所も3 割を超えています。受注・販売活動は事業所のイベントや事業所だよりのみという受注・販売活動に積極的でない事業所も2割近くみられます。
(5)販売員管理
店舗を設けている事業所では販売員による接客は欠かせません。店舗で販売に携わる職員、利用者の管理の状況は以下の通りです。
① 店舗で販売に携わる職員、利用者の販売員としての配置と適性は、考慮している事業所は約4割で、全体として考慮していることが窺えます。しかし、販売活動の業務のマニュアル作成については、作成している事業所は1 割に及ばず、作成していないがほぼ半数を占めています。販売活動を強化していく上では、今後の取り組みが望まれます。
② 教育訓練についても定期的な教育訓練を実施している事業所はごくわずかであり、多くの事業所が担当者の能力に依存しています。
(6)商品管理
店舗における商品管理はお客様への信頼はもちろんのこと、事業所においても商品ロス、 販売機会ロスを防ぐ上で重要です。店舗における商品の管理状況は以下の通りです。
(7)店舗・陳列
商品の魅力と同時に店舗を魅力的にするのも、陳列を工夫するのも販売促進には大切なことです。売上をアップするには、通行者の注意を引き店内に誘導できるような店舗づくりをすることで客数アップにつながり、見やすく手に取りやすい陳列を行うことが客単価アップにつながります。事業所のもつ店舗、そこでの陳列の状況は以下の通りです。
(8)商品構成
売上高をアップするには、競合店との差別化を図ると同時に取扱商品の品揃えにおいても市場の需要と適合させることをも大切です。商品の特長・セールスポイント、取扱商品の構成と需要との適合状況は以下の通りです。
a.経営計画における販売計画の位置づけ
経済のグローバル化・成熟化と少子高齢化社会の到来などにより、福祉分野といえども事業所を取り巻く環境は大きく変わりつつあります。特に障害者自立支援法の成立以来、これまで福祉的サービスに重点を置いて運営を行ってまた事業所は、民間企業に近いかたちでの事業所経営を行う上で、経営計画と部門別の事業計画づくりが求められています。
販売計画の策定にあたって、まず経営計画の中における位置づけを正しく理解することが重要です。経営計画をつくる上での上位概念である企業理念、経営ビジョン、経営戦略をふまえて経営計画、部門別計画としての販売計画といった流れとなっています。これを図示しますと次のようなピラミッド構造図となります。
まず企業理念とは、企業の存在価値や社会的な意義を表したもので、<企業はこうありたい>という経営者の思い入れを表したものです。次に経営ビジョンとは、企業が企業理念に基づき<将来こうありたい>という姿を描いたものです。経営戦略とは、経営ビジョンを実現するための基本的手段といえます。そして、経営戦略を具体化したものが経営計画です。
b.販売年度計画はなぜ必要なのか
ではなぜ販売年度計画が社内外から注目を浴びているのかについてみていくことにしま しょう。民営企業経営の指針は、経済のグローバル化とともに、かつての売り上げ増大、シェア重視からキャッシュフロー、収益重視へと大きく変わってきています。
この流れは福祉事業所の経営においても同じであり、事業所収益建て直しのためには不採算部門の存続は許されず、各部門が収益重視の年度行動計画を立て、部門の上から下までがコミットメント(必達目標)を意識して行動する時代となっています。
c.何のために販売年度計画をつくるのか
● 経営計画と販売計画の位置づけ
販売年度計画の目的は2つあり、1つは外に向かっての販売競争力の確保であり、2つ目は内に向かってのつつましい筋肉質の事業所体質づくりです。 販売年度計画は、次の3点に留意しながら立てる必要があります。
① 部門年度経営目標を明示する
販売目標は、全事業所経営目標に基づいて、設定します。販売部門目標の設定にあたり部門長が考慮すべき点は次の通りです。
② 販売部門メンバーのチーム目標(コミットメント)を明示する。
利用者の能力差が大きいこともあり、個人の目標設定は行わず、かわりに部門長は部門目標だけでなくチーム別の目標設定を行います。そして、その目標達成をチームの責任として今まで以上に明確にする必要があります。
③ いつまでに何をやるかを決める
部門年度計画は活動計画ですから、月次計画へ展開するアクションプログラムが必要となります。
コミットメントとは カルロス・ゴーン社長は日産自動車改革の成功原因について「会社の上から下までコミットメント(必達 目標)を意識し、達成すればボーナス等にも反映されるという成果主義が理解されるようになってきたのが 大きい」と述べている。 |
a.計画立てに必要な情報を整理する
販売計画は、経営計画を実現させ、予算を達成するためにつくられるものです。計画は実現するためにあると考えて計画をつくります。その計画には、即時に業績を向上させる何か具体的対策を含んでいることが重要なのです。
販売部門は、顧客(ユーザー)と直接接する位置にあり、販売環境の変化を敏感にキャッチするアンテナの役割も期待されています。販売部門で計画の立案に必要な情報は、大別すると、業界、他社情報、顧客(ユーザー)情報、管理情報等で、その詳細は次表のとおりです。
● 販売部門の計画立案に必要な情報
市場情報 |
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競合情報 |
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顧客(ユーザー)情報 |
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b.販売業績向上のための4つのポイント
販売計画をつくり、その計画を達成するためには、何といっても事業所トップの意志が計画に反映されていることが求められています。予算達成のための販売計画には4つのポイントがあります。①販売方針、②マーケティングとマーチャンダイジング力による販売の仕組みづくり、③組織と役割分担、④販売目標数値などの設定、です。第一番目の販売方針は、販売部門が中心となって方向性を示すものですが、これは経営計画づくりにおいても重要なものです。そのため販売方針は、何を売るのかという販売コンセプト、業績に関する方針の策定、その業界を取り巻く市場戦略など、多岐に及びますが、その方針を一言で言い表せるコンセプトづくりが成功のカギとなります。次に大切なのは販売のための仕組みづくりです。これはマーケティング計画にいう製品、価格、チャネル、プロモーションの最適な組み合わせを念頭におくことです。このことは、もっと売れそうなものを、売れそうなところにターゲットを定め、お客のニーズを汲み取りより効率的な販売を行うための活動ということができそうです。また、一方ではマーチャンダイジングの視点から商品(製品)を企画し、店舗や各種流通手段により、お客様(ユーザー)の手に渡るまでの品揃えをすること等も、販売計画には盛り込まれていることが必要となります。
第3番目は、組織と役割分担です。販売計画の遂行にあたっては、どのような組織体で、どのような役割分担で行うかも重要ですが、福祉分野の事業所にとっては特に利用者の人間性を高める環境をつくり、生きがい、やいがいをもってもらえるような組織編成が求められます。
第4番目には、販売目標数値などの設定です。販売計画の中で、誰もがわかりやすく、誰もが目標としやすいものが営業数値の計画であり、ほとんどの企業は、これが販売目標として設定され、各種さまざまな計画に反映されています。
● 販売計画づくりの4つのポイント
コラム マッカーシーの4P とマーケティング・ミックス 製品(Product)、価格(Price)、チャネル(Place)、プロモーション(Promotion)と、頭文字にP のつく4つの言葉にマーケティング手法を分類したものです。これら手段の最適な組み合わせのことをマ ーケティング・ミックスといいます。 |
※販売計画づくりには、上図にみられるマーケティングやマーチャンダイジング、さらにマネジメント等のポイント要素については、本マニュアルの章立ての中に、詳しく記述のあるものがあるため、次ページでは<販売・目標数値の設定>について述べてみたい。
a.前向きな販売予算を立てる
年間販売計画を立てる上で、どのように販売予算を設定するかが問題となります。利用者の工賃を倍増という目標に近づくためにも、「できるだけ高い目標を掲げること」が必要です。現状に甘んじた従来型の考えから一歩進んで、新たな提案商品やサービスの質を加味することで計画に反映させます。もちろん、あまりにも力不相応では計画の精度は最初から低くなってしまいますが、力相応で一歩踏み込んだ前向きな予算をくみたいものです。
b.販売計画策定のステップ
より高い目標を実現させる販売計画策定には、次の5つのステップが考えられます。
ステップ1 | 本年度の収支実績を確認する |
どのような販売先(顧客・受注先)に、どの商品を、何人の販売部門の要員で販売したか、というきめ細かな実績確認が必要です。
ステップ2 | 来期の販売部門における経費を予測し確定する |
経費には、販売員給与や広告宣伝費や車輌費などが入ります。
経費の伸び率をおおざっぱに固定化せず、その根拠を明確にすることが大切です。
ステップ3 | 来期の粗利益目標を確定する |
粗利益目標の確定には、仕入れ計画とも関連を持ってきます。仕入れ先の選定は非常に重要で、原材料の仕入れにせよ品揃えを保管するための仕入れにせよ納期、品質を考慮し、適正ロットの仕入れを行うことで粗利益目標を設定したいものです。
ステップ4 | 損益分岐点売り上げを算出する |
「収支トントン」という言葉が企業経営者から漏れますが、その時の売上高がまさに損益分岐点の売り上げで、次の算式で表されます。
損益分岐点売上高= 固 定 費 = 固 定 費
1-変動費 1-変動比率
売上高
この分岐点を把握することで、販売部門の採算ラインがわかり、利益を出すにはどれくらいの売上高を確保しなければならないのか、あるいは販売部門の事業にいくらまで投資してよいのかが把握できます。
ステップ5 | 目標利益を加味して目標売上高を設定する |
目標利益を加味して目標売上高を設定するz この最低限の損益分岐点売り上げに対し、目標売上高は目標利益を達成するために必要な売上高として次のように導き出すことができます。
目標売上高=固 定 費+目 標 利 益
1-変動比率
目標利益については、できるだけ高い目標数値にチャレンジして下さい。
c.季節指数を販売計画に落とし込む
販売計画を実行に移す現場では、どのシーズンに、いくら売るか、また何月にピークをもってくるのかなどの対策が必要になります。このため年間販売計画を策定したら、次は「季節指数表」の作成です。これは全体の販売計画を、部門別、商品別、あるいは顧客別、テーマ別などの項目毎に、シーズン別・月別に管理していく計画表です。
この表を作成することで、重点販売シーズンや月を決め、さらにその際の商品を決めることで販売計画の実現に役立ちます。
● 季節指数表
コラム 損益分岐点を引き下げるには ●変動費の引き下げ 物販の場合は、売上原価が変動費として最も大きいので、仕入れ先の再考、仕入れのタイミングを工夫することで仕入れ単価の引き下げを検討します。 ●固定費の引き下げ 一般的には、人件費や減価償却費、金融費用(支払利息など)といった、主要な固定費を削減します。また、減価償却費については設備効率の向上、金融費用については、借入金の削減や借入先の選定も重要になってきます。例えば工賃倍増を目指す経営においては、極めて低い人件費を上げようという試みです。このため固定費の引き下げとは矛盾する部分もありますが、このケースの損益分岐点の引き下げは製品に付加価値をつけることで製品価格の引き上げによっても可能となります。 |
a.マーケティングと市場分析の位置づけ
事業所や企業において、販売目標を達成し利益を上げるためには、マーケティングが必要だといわれています。一例をあげれば顧客のほしがる商品を顧客の望む価格で、宣伝をしながら、近くの店舗で販売するといった活動を目指します。つまり、効率的に売れる仕組みづくりをしていくかがマーケティング活動の重要なポイントであり、そのためには市場が何を望んでいるのか等を調べるために市場分析(マーケティング・リサーチ)が必要になってきます。それと同時に、十分な利益を得るためには、製品、価格、販売促進、流通経路をうまく組み合わせ、新しい需要を創造する市場創造活動(戦略)を進めて行く必要があります。このように、市場分析は販売活動を行う上で大変重要な要素といえます。
● マーケティング活動
b.競合市場を知る市場
今まで福祉事業所では部品の組み立て等の軽作業が主体となっています。こうした事業内容から脱皮して新たな分野へ事業展開をする場合には、まず始めに次のような競合市場の現状を調査することが必要になります。①業界の市場規模、成長率、利益水準の基礎データを収集する。②業界内の主要競合企業はどこで、その売上、シェアを調べる。③他に新規参入の企業の可能性はないか。④既存の製品に取って代わる代替品の登場の可能性はないか。⑤競合先企業と原材料の仕入れ等においてかち合わないか。
c.対象市場を細分化する
市場は多様な年齢、性別、収入、ライフスタイルを持った多くの消費者から構成されています。事業所は、市場全体を顧客として画一的な商品開発を行うより、次図のような自己の商品をより強く求める顧客層に対してマーケティング努力を集中する方が明らかに合理的です。
● 市場細分化の基準
地理基準 | 住んでいる地域、人口、都 |
市部、郊外、気候等 | |
人工属性基準 | 年齢、性別、世帯数等の人 |
口動態データ、職業、所得等 | |
心理基準 | ライフスタイル、パーソナリティ、価値観 |
行動基準 | 価格や品質への反応度、広告への反応度、ブランド・ロイヤルティ、ストア・ロイヤルティ等 |
● 市場細分化の例※
※この例では、ケーキという商品の対象市場は人口属性基準の性別軸と年齢軸とによって全体市場を分割し、 20~30 歳代の女性に絞り込むことにしている。
d.ターゲットを絞り込む
福祉事業所は、大企業のように細分化された市場の全てに渡って多種類の商品やマーケティング手段を開発することはできません。むしろ、事業所が自己の経営資源(ヒト、モノ、カネ、情報)に照らして最も取り組みやすいセグメントを決め、そこにのみ集中的にマーケティング活動を展開することが大切です。
e.ポジショニングを決定する
次に、対象とする市場セグメントを決めたら、その市場セグメント内で活動している競争相手を検討した後で、自己の優位性を発揮できる場所を確保することです。
具体的な方法について、仮にZ事業所がつくるパンについて安心、美味しさという評価軸で考えてみましょう。消費者の選択も多く、競争相手の少ないHのそばにポジショニングすることが妥当といえます
● ポジショニングの考え方
a.市場と消費者行動
事業所が新たな製品を市場に投入する場合、そこでどれだけのシェアを取れるのかということが一大関心事です。マーケットシェアを拡大するためには、自分のところで作った製品の売上向上を図らなければなりません。そのために消費者の購買意志・決定の過程を探ることが大切となってきます。
b.消費者ニーズとマズローの欲求五段階説
消費者ニーズの充足は、製品やサービスを使う消費者を理解して初めて可能となります。つまり、事業所は消費者を把握することで市場を定義し、消費者の欲求の程度により、どんなモノを求めているかを探ることが必要となってきます。
心理学者のマズローは、人間の欲求の五段解説を唱えています。一つ目の生理的欲求が満たされてから、安全の欲求が生じます。安全の欲求が満たされてから所属と愛の欲求、さらには承認の欲求、最後の五段階目として自己実現の欲求へと高められていきます。
● マズローの欲求五段階説とニーズの高度化
欲 求 | テーマ | 関連する製品 |
【第五段階】自己実現の欲求 | 自己充足、豊かな経験 | 趣味、旅行、教育 |
【第四段階】承認の欲求 | 名声、ステイタス、達成 | 自動車、家具、クレジットカード、店、ゴルフ場、酒 |
【第三段階】所属と愛の欲求 | 愛、友情、他者による受け入れ | 衣服、化粧品、クラブ、飲料 |
【第四段階】安全の欲求 | セキュリティ、保護、防御 | 保険、警報システム、定年退職、投資 |
【第五段階】生理的欲求 | 水、睡眠、食物 | 医薬品、日用品、一般品 |
c.オピニオンリーダーの影響を重視しよう
消費者行動の理解する上で、まず一番目に個別消費者の行動や意識を理解することです。個別消費者の動機や欲求がわかれば、それを充足する製品を開発することもできますし、個別消費者の広告に対する反応がわかれば、それを合わせて最も効果的な広告を打ち出すことも可能となります。
二つ目は、消費者の相互作用(インタラクション)を理解することが大切です。つまり私たちは、最も身近な集団として家族や友人がいます。その他比較的大きな集団では業界団体や校友会があります。これらの集団の中で、情報収集活動が活発で理解力があり、常に的確な意見を積極的に述べる人がオピニオンリーダーです。
オピニオンリーダーは、指導者であったり、ご意見番であったり、マニアであったりといろいろなタイプを取りますが、その意見は非常に信頼性の高い、優れたものなので、製品の購買時などには大きな影響を及ぼすことになります。一説によれば広告の情報は、オピニオンリーダーという優れた感覚の持ち主を経由して、口コミで一般の人々へ伝達される割合が高いといわれています。市場に製品を投入する上でも、このような人を掴んでおくことが重要となります。
d.消費者の多様な生活パターンを理解する
市場は、消費者の性別、年齢、所得、学歴などの人口属性によって、細分化されるわけですが、いま一つの市場のとらえ方として、消費者の生活がどのような構造をしているのか、また、消費者が生活に対してどのような意識を持ち、行動しているのかという視点から、消費者のパターンを分けることも重要になります。
ライフスタイルは、消費者の生活構造、生活意識、生活行動という3つの次元から複合化して構成される生活の業種です。また、そこにはその人間の人生観、価値観、アイデンティティを反映した生き方で「ヒッピー」「スローライフ」「ベジタリア ン」などが有名ですが、「節約志向者」「家庭生活革新者」「デインクス」等多くのタイプに区分することができます。
実際にこのタイプを把握するには、AIOという基準で多数の質問を行います。Aは活動(Activities)であり、Iは関心(Interests)、Oは意見(Opinions)です。市場調査においてもこれらの質問事項をつくり、ライフスタイル別需要動向などに結びつけることも必要といえます。
● ライフスタイルとAIO基準
a.マーケティング・リサーチとは
マーケティング・リサーチは、類似用語であるマーケット・リサーチとは違います。マーケティング・リサーチは、製品の開発や販売促進などのマーケティング活動を行う上で発生する課題を解決するために、市場現況などのデータを収集し、分析して今後のマーケティング活動の指針となる意思決定材料を求める手段といえます。つまり、単なる消費者の調査などの市場調査(マーケット・リサーチ)と対象範囲が異なってきます。
そして、マーケティング調査の対象範囲は広く、次図のような4Pといわれるマーケティング活動と関連を持っています。
● マーケティング要素とリサーチテーマ例
b.マーケティング・リサーチのステップ
事業所がマーケティング・リサーチを行う場合のステップとその内容は次のようになります。
● マーケティング・リサーチの流れ
c.定量調査、定性調査
マーケティング・リサーチの実施方法の基本は定量調査と定性調査です。定量調査とは、売上高などの数量や売上構成の割合等を数値として把握するものです。一方、定性調査は調査対象者が感じたことや思ったことを言葉によって把握するものです。そのためインタビュー形式やディスカッション形式、または文章記入形式で行います。
d.一次データと二次データ
一次データは事業所が抱えている問題点を明らかにするためマーケティング・リサーチを行って収集されるものです。内部データは組織内部から集められるデータで財務データや苦情・返品データなどがあります。外部データは組織外から集められるデータで、統計書、報告書、集計表、専門雑誌などがあります。
一般的に、一次データの方が特別に収集したものなので、有用性が高いといわれていますが、コストや時間がかかりますので、まず二次データが不十分な場合とか、重要なテーマが持ち上がった時に、一次データの収集を行うということも配慮すべきです。
④ データの収集をどう行うか |
a.実査(フィールドワーク)を行う
事業所が抱える問題は、その内容や性質によって、どうしても一次データが必要な場合があります。このように調査対象者からデータを収集する作業を「実査」または「フィールドワーク」と呼びます。具体的な収集方法には次のような質問法、観察法、実験法の3つがあります。
b.質問法
事前に用意した質問を行うことで、データを収集する方法です。質問の仕方やデータ回収方法の違いにより、次の5つに分けられます。①郵送法:被験者にアンケート形式の質問紙を送り、回答後に反送してもらう方法。②面接法:調査者が被験者に直接対面して質問を行い回答を得る方法。③電話法:電話を使って被験者に質問を行い、回答を得る方法。
④留置法:事前に質問紙を配布しておき、後日決まった日時に回収する方法。⑤インターネットサーベイ:web 上の回答欄に選択・記入してもらう方法。
● 質問法の特徴
郵送法 | 面接法 | 電話法 | 留置法 | インターネット | |
調査対象者数 | 多い | 少ない | 多い | 多い | 多い |
質問の客観性 | 高い | 低い | 低い | 高い | 高い |
質問項目数 | 多い | 多い | 少ない | 多い | 多い |
回答の信頼性 | 普通 | 高い | 低い | 普通 | 普通 |
回収の早さ | 遅い | 早い | 早い | 遅い | 早い |
回収率 | 低い | 高い | 低い | 高い | 低い |
調査コスト | 多額 | 多額 | 少額 | 高額 | 少額 |
(出典:「マーケティングの基本」野口智雄)
c.観察法
被験者の行動や状態の変化を実際に見ることによってデータを収集する方法です。たとえば、物販店で消費者である被験者が、どのような歩行経路をとるかを調べる動線調査や陳列台への目の動きを調べるアイカメラによる調査などがこれに当たります。
d.実験法
製品、価格、チャネル、プロモーションなどのマーケティング手段を操作することで被験者の反応がどのように変わるかを調べる方法です。たとえば、物販店で同じ商品を値引きした場合としない場合では売上にどれくらい違いがあるのかを明らかにする調査がこれにあたります。
e.どう質問し、どう回答するか
調査によって入手したい情報が決まれば、的確に回答を得られる方法を考えなければなりません。これが質問回答形式で次の5つがあります。
a.価格は製品の需要と供給の関係で上下する
製品価格は、需要と供給の関係でおおよそ決まってきます。ある製品を欲している人たちが多ければ「供給量<需要」という関係が成り立ちます。このように需要が供給を上回っていれば製品は逼迫し、少々高くとも売れ、利益も獲得できます。
この反対に、「供給量>需要」という関係になれば、今後は市場で製品が過剰な状態となり、在庫増加を抑えるために価格を下げて販売を伸ばし在庫調整することになります。
b.価格設定3つの考え方
価格設定について考える場合、大きく分けると次図のように3つの考え方があります。
● コスト上積価格法によるコスト志向の価格設定
● 価格設定の考え方
c.新製品の価格設定
価格設定にはさまざまな方法があります。新製品を投入する際の価格設定の基本的な考えとして2つの方法を説明しておきましょう。
① 上層吸収価格設定
生産者が新製品を市場に出す場合には、その製品を開発するためにかかったコストを早く回収するために価格設定を高くして高水準の利益を確保し、収益面で優位に立とうとします。このため、ターゲット市場において製品の差別化が強くなされている、顧客にとって非常に魅力的である、ということが必要条件になってきます。上層吸引とは高額所得者の潜在的ニーズに合い喜んで買ってくれる価格という意味です。具体的には家電業界や精密機器業界で、この価格設定がみられます。テレビなどは、50 年以上前に発売されたときは50 万円もしました。当時のテレビは技術的にも画期的で、競争企業が簡単にマネのできないものであったと考えられます。市場規模が拡大してくると競争企業が参入し、価格が次第に下がってきます。この価格設定ではその前に十分な利益を確保しておくことが重要になります。
d.市場浸透価格
新製品を市場に導入する際に、多くの人に購入してもらうため、できるだけ低い水準でつける価格を市場浸透価格といいます。これは、素早く市場へ新製品を浸透させ、マーケット・シェアを獲得するための価格設定方法です。
たとえば、ブロードバンド時代を見据えたヤフーBBによる圧倒的な低価格戦略の例があります。このような価格設定をするのは、短期的には損をしても大きなマーケット・シェアを獲得できたならば、長期的には多大の利益を得られる可能性があるからです。しかしながら、この市場浸透価格設定では販売量の増大が絶対的条件です。逆に販売量が伸びなければ、リスクが非常に増大し、価格の維持は経営を大きく圧迫することにつながります。
a.心理的効果を狙った価格設定
消費者は、いろいろな製品の価格に対応した多様な心理や購買行動を持っています。消費者の価格に対する心理面での反応に基づいた価格を決めることが、心理的価格設定です。
① 端数価格
1,000 円とか3,000 円というようにキリのよい価格設定をするのではなく、それぞれ980円、2,980 円というようにわざと端数をつけることによって、その価格差以上に安いというイメージを与える価格です。このような端数価格は、釣り銭がわずらわしいなどの問題もありますが、それ以上に心理的効果が大きいので、食品などの価格戦略にも幅広く活用されています。
② 均一価格
均一価格とは、特定の商品をグループ分けして、一定の金額に統一して価格を設定する方法であり、スーパーや百貨店等でよく行われる100 円均一セールとか1,000 円均一商品コーナーなどが代表的な例です。この場合の商品のポイントは、同一価格帯の商品を組み合わせて考えることがポイントとなります。
③ セット価格
セット価格とは、例えば一着3 万円のスーツが二着セットにすると5 万円になるというように、単一価格と複数価格に差をつけるような価格設定方法です。この方法は一種の値引き政策ともいえますが、客単価の向上を図り購買意欲を刺激することを狙った心理的価格としてその効果も期待できます。
④ 慣習価格
タバコや清涼飲料水のように購買習慣上、消費者の意識にほぼ定着している価格があります。この価格は多少下げても需要は伸びませんが、逆に多少あげると大幅に需要が減ると考えられています。
b.時間軸による価格設定
価格の設定について、今までは設定そのものを画一化して考えてきましたが、製品によっては時間軸により価格設定を決めていく方法もあります。
① 時間の経過とともに価格が下がるケース
営業時間中にスーパーで生鮮食料品を購入すると定価ですが、閉店間際になるとその価格が10%引き、30%引きになることがあります。これは、翌日まで品質を維持できない生鮮食料品でよくあることです。
② 購入が早いほど価格が安いケース
映画の前売り券はこの例に当てはまります。映画の前売り券は映画が上映される前まで発売され、1,800 円の価格が1,300 円になっています。より顕著な例では割引制度が充実した航空運賃があります。現在、航空運賃は1ヶ月前の発売と直前の発売とでは半分も安くなるケースもあり、出発が近くになるにつれて運賃が上昇します。
③ 休日と平日で料金が違うケース
旅館やホテルでは通常、旅行に行きやすい週末の料金は平日より高く設定されています。需要に応じて多くのお客様を受け入れたいところですが、客数の飽和状態を少しでも平準化させるため意図的な価格変動による需要の分散化を図っているといえます。
c.流通チャネルごとの価格設定
これは、顧客がどう販売チャネルを利用するかによって価格が変動するという現象です。つまり、販売チャネルの多様化によって価格の多様性が増しているといえます。たとえば、同じ製品でも百貨店で購入する、スーパーで購入する、インターネットで購入するといった際、購買価格に違いがあります。これをマルチ価格設定といいます。
こうしたマルチ価格設定における問題点は流通からマルチ価格設定による反発を生むことです。店頭で販売されている製品と直接競合させないため、市場に出回っている製品の仕様と若干変えた製品を提供したりする等の工夫が必要になります。
d.競争企業の価格変更への対応
市場には常に競合企業があり、消費者の志向も変化しています。このため製品の価格を一定に持続できるとは限りません。事業所でつくる自主製品と同じような製品を競合先が先に値下げした場合、どう対応したらよいかを考えてみましょう。他企業の値下げが長期的に行われ売上に重大な影響を及ぼすような場合、次のような4つの対応策を取ることが必要となります。①価格は維持し、品質をよくすることで製品の価値を強化する。②競合先と同じ比率で値下げをする。③格上の値下げ製品をつくり競合先に対抗する。④低価格攻撃製品を導入する。
● 競争先価格引き下げへの対応
a.仕入商品などの値入はどう行うのか
福祉事業所で新たな進出分野として、パンの販売と喫茶コーナーを設置するようなケースを考えてみましょう。この場合、品揃えを充実するためにも仕入が必要になります。それでは仕入商品の販売価格をどう決めるのでしょうか。
販売価格を設定する場合、仕入原価を基準として決めるやり方が、一般的に行われますが、仕入原価にどれくらいの利幅を見込んだ売値をつけるべきかが問題となります。このような仕入原価に一定の値入をして売値を設定することが、価格決定の方法の1つです。
b.仕入商品などの値入はどう行うのか
仕入原価と売価と利益との関係を表す比率に値入率と利幅率があります。
① 値入率とは、「仕入原価」に対する利幅の割合を表し、次の公式で算出されます。
値入率=利 幅=売価-仕入原価 ・・・a
仕入原価 仕入原価
売価=仕入原価×(1+値入率) ・・・b
② 利幅率は「売価」に対する利幅の割合で、その公式は次の通りです。
利幅率=利 幅=売価-仕入原価 ・・・c
売価 売価
売価=仕 入 原 価 ・・・d
1-利幅率
③ さらに、値入率と利幅率の間には次の公式が成り立ちます。
値入率=利 幅 率 ・・・e
1-利幅率
それでは、実際の数値で計算例をあげてみましょう。
≪計算例≫
仕入原価80 円の品を20 円の利幅を見込み、売価を100 円とする。 【設問1】値入率、利幅率をそれぞれ求めて下さい。 【解答】計算式a、cより 値入率=100-80=2 0=0.25=25% 利幅率=100-80=2 0=0.2=20% ※20%の利幅率を確保するためには、25%の値入率で値付けをしなければなりません。 【設問2】目標利幅率を25%にアップした場合の値入率と売価はいくらですか。 【解答】eより 値入率= 0.25 =0.25≒0.333=33.3% 【設問3】売価を98 円におさえ、20%の利幅率を確保するためには仕入原価をいくらにしたらよいでしょうか。 【解答】dより仕入原価=売価×(1-利幅率)=98×(1-0.20)≒78円 |
このように目標利幅率(荒利益)を達成するためには、いくらで売らなければならないということや、売価を設定して一定の利幅を確保するための仕入原価を検討するときなど、これらの公式を活用すると求められます。値入率表(後掲)を利用すれば、もっと簡単に求めることができるでしょう。いずれにしても売価の設定には販売計画や利益計画に基づいて考えることが大切ですが、あらかじめ商品のロスなども考慮する必要があります。
c.プライスゾーン、プライスラインをどうとらえるか
商品の価格はその素材や品質によって異なるのは当然ですが、例えば、A商品は50~100円、B商品は1,000~2,500 円というように商品の価格には上限と下限に幅があります。このような商品の価格帯をプライスゾーンといい、この価格帯の中で最も売れている価格や中心となる価格線をプライスラインと呼んでいます。価格を設定する場合には、品質上の特性や魅力と価格との関係を比較検討して販売しやすい価格帯や価格を決めていく方法がとられます。
プライスゾーンの設定方法として、一般的に、大衆品、中級品、高級品の3段階に分け、それぞれの商品の品質をもとに、低価格、中間価格、高価格ゾーンを設定する方法があります。販売商品の品揃えがうすい場合には、どの価格帯を重点価格帯とするかを決め、その価格帯の中で最もよく売れる値頃をみつけて販売力強化につなげることです。
● プライスゾーンの考え方
a.受注活動の基本手順とは
事業所(施設)においては、簡単な組み立て作業や袋詰めなどの軽作業の受注が多く、仕事量の確保が切実な問題といえます。このため、ここでは受注活動の新規開拓を中心に受注活動プロセスを捉えてみましょう。
受注活動とは、顧客(発注先)とのコミュニケーションをはかりながら、顧客の満足する製品(商品)を提供することで、相互の利益の一致を目指すことといえます。この受注活動の基本手順には、①計画・準備の受注活動、②訪問・面談時の受注活動、③納品・アフターサービスの受注活動、の3つであり、この手順に沿った活動が期待されます。
● 受注活動のプロセス
b.「計画・準備」の受注活動のポイント
受注活動を具体化するためには、まず始めに事業所で生産できる商品の知識、商品のセールスポイント、価格・取引条件、競合先の現状等を把握することです。次に見込み客をどう見つけるかが重要な課題となります。見込み客を見つけるには、飛び込み法といって、何のつても持たずに事業所などを訪問する手法もありますが、営業のプロでない職員が担当するには難しい開拓法といえます。このため事業所として、次のような方法で見込み客を開拓するべきでしょう。
● 見込み客の開拓方法
・縁故活用 法……事業所職員や利用者の家族、知人、学校の先輩などの縁故をたどって見込み客を発見していく。
・団体 関 係 の活用……商工会議所、商工会、中小企業団体中央会等との結びつきを深め、会員企業の情報提供をしていただく。
・ネットワークの活用……地域のボランティアや団体関係者によるネットワーク組織を立ち上げ、受注先の紹介に結びつける。
c.「訪問・面談」の受注活動のポイント
初回の訪問では、相手が何しにきたかと警戒感を持ちやすいことから、よい印象づけをして人間関係をつくることに重点を置くべきです。このため服装や言葉遣いに注意することが必要です。訪問は必ず一回で終わるのでなく、2~3回の訪問を重ねることで受注に結びつけるという考えが大切です。商談にあたっては、事業客の製品やサービスについての十分な知識を身につけ、顧客の要望に合ったセールスポイントで説明することです。その際、相手方企業の誰がキーマンかを見極めて交渉することが大切です。
クロージング(商談締結)には、顧客の発注意欲を見極め、タイミング良く行うことが大切です。クロージングを行う前段階として、事業所に発注する際の抵抗感を一つひとつ取り除く対応が必要です。それには、「施設に来て見学していただく」ことです。整備された現場で利用者の方々が一生懸命に作業している姿を見ることで、感動し発注に結びつくケースも考えられます。つまり「現場見学は施設最大の営業」ともいえます。
d.「納品・アフターサービス」の受注活動のポイント
特に初回納品の場合には、受注した商品を細心の注意をはらって点検・整備し納品することが大切です。納品後にクレームが発生するケースもよくあります。クレームは発注先の期待の裏返しとみるべきであり、感情的にならずに迅速に行うべきです。アフターサービスの本来の目的にクレーム発生を事前に防ぐということも含まれます。そのためには、定期的に発注先を訪れ、満足度を確認したり、生産体制の充実などの事業所情報を提供することも考えられます。
コラム 受注活動を行う 事業所(施設)では、民間企業や公的機関からクリーニング、お弁当、袋詰め作業など様々な仕事を受注し ています。基本的にこのような授産活動の営業は職員が行っていますが、民間企業の営業職のように営業を 専門職にしているわけではなく、地域各種団体やサポーターズクラブの紹介や職員の人脈に依存しているの が現状です。そのため、地域活動への積極的参加ネットワークを広げておくことやサポーターズクラブが機 能できる体制の整備は大切です。事業所の中には、役所や地域官民問わずに毎日お弁当やパンの納品を行い 利益の確保を利用者のやる気を引き出しているところもあります。また、民間企業に利用者ならではの能力 を強み(例えば1つの作業への集中力など)と捉え、これを武器にターゲット企業を絞り積極的な営業活動 を行い高単価の仕事を受注しているケースも見られます。 このように工賃アップのために少しでも高単価の仕事を受注するには、利用者の利用者の適性・得意な作 業を明確化し、事業所で可能な作業が受注できそうな見込み企業にターゲットを絞り営業する必要がありま す。営業に際しては、訪問の目的や先方にもたらすメリットを明確に伝え、事業所が得意をすることや納期 など仕事への責任感をしっかり示すことが重要です。 また、事業所内においても、営業活動担当者や受注した仕事の責任者を決めておくことはもちろんのこと、 職員全員が電話対応などの面においても基本的なビジネスマナーを身につけるなど受注体制を整えておくことも大切です。 |
a.年間販促カレンダーを作る
売上アップを図るには年間販売計画に基づいた年間販促カレンダーを作成し、計画的に販売促進を行うことが大切です。年間販促カレンダー作成のあたっては、各月のイベントやシーズン性を考慮した販促テーマ、重点商品を決めます。
●年間販促カレンダーの例
1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | |
季節 イベント | 正月 成人式 | 節分 バレンタインデー | ひなまつり ホワイトデー | 桜まつり | 子供の日 | 梅雨 | 七夕 夏休み | お盆 夏休み | 秋祭り 敬老の日 | 運動会 | もみじ | クリスマス |
販促テーマ | ||||||||||||
重点商品 | ||||||||||||
目標売上 |
b. 月間販促カレンダーを作る
年間販促カレンダーを作成したら、月間販促カレンダーを作成します。1 ヵ月を3つの分けイベントや記念日などをテーマにした季節性のある販売促進計画を考えます。販促商品は季節性・イベント性の強い商品が中心となります。売れ残りによる商品ロスを防ぐために販売限定数を決め、販促ツールでお客様の購買意欲をそそるもの一案です。
c.週単位の販促カレンダーを作る
週単位で販促イベント考える場合は、曜日ごとに「オススメ商品」でアピールする方法 があります。例えは、パン工房であれば、毎週月曜日「食パンの日」火曜日「メロンパンの日」といったように毎週同じ曜日に同じ商品を「オススメ商品」に決め、POPやチラシでアピールします。何曜日にどんなオススメ商品が販売されるのかお客様に周知されれば、それを目当てに来店するお客様の数も把握できるようになります。そうなれば、商品の生産や原材料の仕入れの計画の立てやすくなります。この場合、毎週同じ商品の繰り返しとなるので、お客様が繰り返し購入して飽きの来ない商品や日常性のある商品を選ぶことが大切です。
● 月単位の販促カレンダー(例)
a.POPの役割
販促カレンダーを作成したら、販促テーマに沿った販売イベントを行います。イベントを行うにあたり、効果的な販売促進手段を検討する必要があります。販売促進手段として、POPやチラシ・DM、ホームページ、事業所の会報誌、地域の広報誌といった販促ツールがあります。その中でも、POPやチラシ・DM(事業所の会報誌を含む)は事業所内で作成できます。特に、POPは短時間に簡単に作成できる販促ツールであり、事業所(店舗)の方針、商品・サービス、イベントをアピールするために有効な手段です。 そこで、売上アップの効果のあるPOPを作成するにあたり、POPの意味と役割を確認しておきます。
POPとは「売場における広告」のことで、広い意味では看板や陳列などを含め売場にある販売促進効果のあるものすべてを示します。しかし、一般的には、商品説明のショーカード、プライスカード、ポスターなどの狭い意味でのPOP示しています。最近は量 販店などで電子POPが多く見られますが、ここでは紙媒体を示しています。
POPの分類方法はいくつかありますが、店舗の提示場所別に店頭POPと店内POPに分けてそれぞれの役割をみていくことにしましょう。
売上高はお客様の購入金額(客単価)と来店されたお客様の人数で決まります。店頭POPは、店頭の通行客に店内の情報を伝え店内に導く役割を果たしています。一方、店内POPは来店されたお客様に商品の魅力や価格を伝え購買に導く役割を果たしています。つまり、店内POPは客単価アップに、店頭POPは客数アップに貢献しています。
● 店頭POPで販売促進している事例
b.チラシ・DM(ダイレクトメール)・ホームページの役割
チラシ・DM・ホームページは、事業所(店舗)や商品、イベントをアピールしてお客様を事業所(店舗)へと導く役割を果たします。チラシ・DM・ホームページは集客のための手段であり、客数に貢献しています。
チラシは、サポーターズクラブの方々へ事業所の会報誌を送る際にDM機能を果たし、イベントや新商品・新サービスを周知させることができます。また、地域の集会施設に置いてもらうことや近隣の住宅にポスティングすることで、事業所(店舗)の存在やイベント、商品・サービスを地域の方々に認知してもらうことができます。しかし、この販促手段だけではお客様の数には限界があります。せっかく他では手に入りにくい独自商品を自主生産し販売しても、売上アップに結びつけるには限界があります。
それに対して事業所などのホームページを活用して独自商品をアピールすることは、周辺地域限定されることなく広く多くのお客様を獲得することができます。しかし、内容の更新が事業所内でできない、ネット販売を取り入れることで手間がかかるなど販売スタッフの負担が大きくなるのなどの欠点もあります。
● 売上の仕組みと販売促進策
a. POP、チラシ・DMの「5W2H」を理解する
POPやチラシ・DMは、売る側からの一方的な情報発信です。DMの場合は、一度事業所(店舗)を利用されたお客様や保護者会を含むサポーターズクラブにお送りするので、ある程度は関心を持ってみていただけます。しかし、POPやチラシは、不特定多数のお客様への情報発信です。その商品やサ-ビスに関心がない方にとってはどんなに素晴らしいPOPやチラシを作成しても販促効果はありません。そこで、効果的なPOPやチラシを作成にあたっての留意点をみていくことにしましょう。
POPやチラシは、販促カレンダーの販促テーマを具体化させた販促媒体です。よって、POPやチラシ作成にあたっては、誰をターゲットに、何を情報発信するのか、発信の目的は何か「店舗の存在を知らせたいのか、商品をアピールしたいのか、フェア・バザーなどのイベントを知らせたいのか」、「いつ配布・掲示するのか」、「どこに掲示するのか」、 「どの地域まで配布・送付するのか」などの「5W2H」を明確にしておくことが大切です。
● POP作成にあたっての「5W2H」
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b.お客様の購買行動心理を理解する
効果のある販促ツール作成にあたりもうひとつ理解しておかなければならないことがあります。お客様の購買行動心理です。お客様の購買行動心理をAIDMAの原則といいます。POP・チラシを「5W2H」を意識して作成し掲示・配布しても、ターゲットとなるお客様に見ていただかないとまったく効果はありません。
効果あるものにするには、POPやチラシ・DMがお客様の注意を引き見ていただけることが大切です。そのためには、用紙・文字の大きさ、色使い、掲示場所を工夫して目立たせることが重要です。さらに、文字だけのものよりは、写真やイラスト(アイキャッチャー)をいれると目を引きやすくなります。
まずは、POPやチラシ・DMそのものの存在に気づいてもらうことが、購買への第一ステップです。POPやチラシ・DMを見たお客様が今回のターゲット顧客であれば、その掲載内容に興味を示し、「ほしい、見てみたい、行ってみたい」と心が動くでしょう。
● AIDMAの原則
a.POPの作成手順
では、次にPOPの作成の方法をみていくことにします。POPは売場に掲示・設置するものです。POPは売場を活性化させるとともに、事業所(店舗)の経営方針やお客様に対する姿勢が表れています。誤字、脱字がないことは当然ながら、丁寧に作成することが大切です。いきなり用紙に文字を書き始めるのではなく、下記のようなフローチャートの手順で作成することがキレイなPOP作成のポイントになります。手書き、パソコン作成どちらも同じ考え方で作成します。
また、近年はパソコンで簡単に作成できるPOP・チラシ用のテンプレートも市販されていますので、それを活用すると効率的にキレイなPOPが作成できます。
● POPの作成のフローチャート
コラム コピーにおける5W2H ◇when・・いつ(商品発売日、イベント期間など) ◇where・どこで(販売場所、イベント開催場所など) ◇why・・・なぜ(おいしい理由、売れている理由例えば素材や製法のこだわり) ◇what・・何を(商品、サービス、イベント内容など) ◇how・・・どのように(製造方法など) ◇how much・・・いくら(販売価格など) |
b.コピー作成にあたって
POPを作成するには、始めにコピー(広告文)を考えます。見栄えのよいPOPは、お客様の目を引くなどインテリア機能として売場を活性化させることができます。しかし、書かれているコピーの内容に興味をもってみてもらえなければ、販促ツールとしてのPOP本来の役割を果たすことは不可能です。そのため、コピー作成がPOP作成の中で一番重要となります。客単価アップにつながるコピーを作成するには、「5W2H」、「お客様の購買行動心理」を考慮すると同時に、売場で果たすPOPの役割についても考えて作成する必要があります。
● POPが売場で果たす役割
◇ 店内情報を伝え、お店に入りやすくする ◇ 事業所(店舗)の経営方針を伝える ◇ 物言わぬ販売員として商品・サービスの情報を伝える ◇ 商品説明・価格を伝えることで接客効率を向上させる ◇ 掲示・設置することで売場を活性化させる ◇ こだわりを伝えることで商品に付加価値つけ魅了的に見せる ◇ 他の商品との違いを伝えることで差別化する ◇ 衝動買い、関連販売、まとめ買いを可能にする ◇ 客単価アップ 売上高アップ |
POPは、売場に掲示する販促ツールのため、チラシのようにお客様の手元でじっくり読んでもらうものではありません。売場で瞬時に内容を理解してもらわなければ売上には結びつきません。そのため、POPのコピーはあまり細かく文字が書いてあると心理的に読むのが嫌になってしまい、販促ツールの意味がなくなってしまいます。POPは販売員との間をつなぐツールという位置づけのもとに、その商品・サービスのセールスポイントを絞ってわかりやすく書くことが大切です。
c.コピーはブロックで考えよう
明確にターゲット顧客を絞り込んだ店舗を除いては、様々なお客様が来店します。POPに限らず販促ツールの基本は、どんなお客様にも理解できるように商品・サービスの内容を読みやすくわかりやすく伝えることが大切です。読みやすいコピーを作成するには、コピーはフロックで考えます。タイトル(商品・サービス)、キャッチフレーズ、説明文の3 つのブロックに分けて考えるとよいでしょう。
a.キャッチフレーズで心を掴む
キャッチフレーズはお客様の購買意欲を刺激するためのコピーです。POPに興味を持ってもらうための導入コピーとして、説明文につなぐ重要役割を果たします。お客様の興味を引くという意味で、同じ商品のキャッチフレーズでもターゲットとするお客様によって内容や表現方法は異なってきます。
● キャッチフレーズの例
◇語りかけ調 「お試し頂きました?」 ◇ニュース・記事調 「本日10個限定販売!」 ◇提案調「寒い朝、温かいお味噌汁はいかが。」 ◇おすすめ・実証調 「小さいお子様のおやつにも最適です!」 「プレゼントに喜ばれています」 |
b.説明コピーは読みやすく
キャッチフレーズの作成が終わったら、次に説明コピーを作成します。説明コピーはキャッチフレーズを受けて「というのは、だから、つまり」という発想で作成するのがポイントです。文章は、短く読みやすく、誰にでもわかるよう言葉で書くことが大切です。
説明コピーを作成するには、初めに商品・サービスの情報を列挙します。その中から、キャッチフレーズを具体的に説明している情報を3 点程度に絞り箇条書きにします。表現は抽象的な言葉や業界用語や略語を使わないようにするなどお客様の目線で作成することが大切です。例えば「日持ちがよい」商品であれば、「保存方法は常温で30 日が目安」などのように具体的に表現します。
● 説明コピー作成のポイント
お客様の知りたい情報・メリットをわかりやすく伝えること ◇ キャッチコピーを受けて、商品・サービスのセールスポイントを絞る ◇ 商品の特長だけでなく、デメリットも伝える ◇ 文章は短くするか、箇条書きにする ◇ 専門用語、難しい言葉、略語は避ける ◇ 漢字・ひらがな・カタカナのバランスを考え読み |
c.レイアウトと文字
POPを読みやすくするには、紙面一杯に文字を書くのではなく周囲に適度な余白(ホワイトスペース)が必要です。また、人の目の動きを考えた「Zの法則」に従って3 ブロックに分けたコピー、イラスト、写真をレイアウト(配置)することが大切です。AIDMAの原則で示したように初めにお客様の目を引き興味を持ってもらうには、お客様の目線が最初に来る左上にキャッチフレーズをレイアウトするなど、目線の止まる4 隅を有効に使うことがポイントです。
● POP作成のポイント
◇ 用紙のサイズは掲示・設置場所・商品の大きさに応じて選ぶ ◇ 用紙や文字の色は、商品・サービスの特性に合わせて選ぶ ◇ 用紙のホワイトスペースをとる ◇ 目線の誘導を考えたレイアウトにする ◇ 用紙や文字の大きさは、商品や売場の大きさを考慮に入れて選ぶ ◇ アクセント(噴出し・リボンなど)は多用しない ◇ 文字の色は使いすぎると内容がぼける ◇ 文字の色は基本色を決め3~4色までに押さえる ◇ 文字の大きさにメリハリをつけ読みやすく |
● 作成事例
a.五感に訴える
チラシはPOP(売場の広告)とは違いそこに商品がないため、写真、イラスト、丁寧な説明文を使ってわかりやすく情報を伝える必要があります。チラシで購買意欲そそるには、単にその商品の写真、イラストを掲載するのではなく、関連商品も一緒に写真に撮りその商品の使用シーンを提案するなど商品が魅力的に見えるような演出が重要です。
また、コピーにおいても、実際の商品をイメージできるように「五感」に訴える工夫をすることが大切です。例えば、シュークリームであれば、「とろりと溶け出すカスタードクリームがたまらない!」といったようなキャッチコピーで食べたい・買いたい意欲をそそります。
● 五感に訴える方法
◇ 視覚に訴える・・・色、形、中身を伝える表現 例えば、写真、イラストなどの活用 ◇ 聴覚に訴える・・・歯ざわりを伝える表現 例えば、サクサク、シャキシャキ、モッチリなど ◇ 味覚に訴える・・・味の伝える表現 例えば、甘い、辛い、甘酸っぱいなど ◇ 触覚に訴える・・・手触り伝える表現 例えば、フワフワ、しっとり、とろーり など ◇ 臭覚に訴える・・・香り伝える表現 例えば、レモンの香り、磯の香り、香ばしい香りなど |
● 商品の演出方法
b.場所や問い合わせ先はわかりやすく
チラシは売場に設置されていることもありますが、一般的には事業所(店舗)の存在、商品を認知していただくために配布します。地図や店頭・店内風景を掲載しておくなど店舗の情報をわかりやすく伝えことや問合せ先・営業時間・休日を明記することも大切です。
● 効果的なチラシのチェックリスト
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コラム 食品を美味しく見せる色使い 食品の美味しさの演出方法のひとつに色づかいがあります。白は美味しさを演出する基本色ですが、食欲を促進させるには赤やオレンジが有効な色とされています。 赤は購買を刺激する色としても食品の販促以外のも、セールのPOPやチラシに活用されています。反対に、青色は冷たいドリンクには使用される色ですが、沈静な色として販促には不向きな色とされています。また、鮮やかの黄緑・紫は食欲を減退させる色です。濁った色も食品をまずそうに感じさせる色といわれています。 プレートに盛った調理やお弁当は、熟したトマト、パセリ、レモン等を活用して「赤・黄・緑」をバランスよく配置すると美味しそうに演出することが出来ます。 |
a.整理をする
お客様に気持ちよく買物をしていただくには、日常の「5S」を呼ばれる売場管理が大切です。「5S」とは、「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「躾」のことです。売場の「5S」を徹底することは、お客様を迎えるための基本姿勢です。そこで、まず「整理」から考えてみましょう。
店舗における整理とは、売場に不要なものを排除することです。店頭に不要なものが置かれていないか、例えば、ダンボール箱や台車が置かれたままになっていたり自転車を放置しておくと、店内の見通しが悪くなったり、入りづらくなりします。売場の通路においても商品の入ったダンボールなど放置したまましておくと通りづらく、魅力ある商品を陳列しておいても販売機会を逃してしまったり、販売スタッフの作業効率を低下させてしまいます。また、店頭にしおれた生花や枯れた鉢植えが放置されていたり、期限切れのPOPが掲示されていては、売場の管理体制の悪さを通行客や来店客に知らせる結果となります。販売活動に不要なものや期限切れのものは整理することが大切です。
b.整頓
商品陳列棚など売場が整頓されていると、お客様は商品が気持ちよく効率的に買い物ができます。また、販売スタッフにとっても商品陳列棚、バックヤードの棚、レジカウンター周りが整頓されていると効率よく作業ができます。特に、レジカウンター周りの用具の収納場所を決めて管理しておくことは、お客様にラッピンジグや配送を頼まれた場合にもすぐに対応出来ます。お客様を待たれない視点においても売場の整頓は大切です。
コラム POPの管理 販促カレンダー応じて作成した店頭ポスターやショーカードやプライスカードの多くは期間限定のPOPです。期限切れのPOPはお客様とのトラブルにつながりかねません。掲示する際にPOPの隅に撤去期日ごとに赤丸・青丸などマークを付けておくと管理しやすくなります。 ![]() |
c.清掃を徹底する
お客様を迎える売場において清掃は欠かすことのできない日常業務です。特に店頭にゴミが落ちていたり、店頭の扉や窓が汚れていてはお客様を向かえる姿勢が問われてしまいます。店内においても、通路のゴミ、陳列棚が埃で汚れていないか、商品に埃がついていないかをつねにチェックすることが大切です。魅力的なディスプレイしていても埃などで汚れていては魅力が半減してしまい、意味のないものになってしまします。買いたい商品があっても、埃をかぶっていたり、汚れていてはせっかくの購買意が欲失われてしまいます。同時に、直接売場とは関係ないと考えがちなバックヤードやトイレの清掃も手を抜いてはいけません。販売スタッフが気持ちよく働けるだけでなく、お客様は常に売場から見えない場所にもお店の管理体制やお客様を向える姿勢をみていることを忘れてはいけません。
d.清潔を保つ
お客様がお店を選ぶ上で、清潔感は重要なポイントになっています。食品を取り扱っている事業所(店舗)では一番重要なことです。売場の清潔は「整理」「整頓」「清掃」の3つが実行されることによって保たれています。3つのうち1つでもかけると、お客様から「清潔感」にかけた店舗と評価されてしまいます。
売場における清潔感とは、単に店舗を清潔に保つだけではありません。販売スタッフの服装、髪や爪などにも気を配ることが重要です。開店前の朝礼のときに、白衣・帽子・靴などの服装、爪、髪のチェックをすることが大切です。
e.躾をする
売場における躾とは、売場管理者が販売スタッフに決められたルールを守るように教育することです。売場のルールの基本は、接客を始めお客様に対する姿勢、「整理」「整頓」「清掃」「清潔」が徹底できるようにすることです。躾に大切なことは、最低限のルールをマニュアル化し、バックヤードに掲示しておくことや売場管理者・職員が自ら手本を示し販売スタッフである利用者になぜそれを行う必要があるのかなどを説明しながら根気よ く教え習慣づけるようにすることが大切です。
● 5Sから考える売場管理ルールの例
◇ 店頭に要らないダンボールや台車を置かない ◇ 使った用具は決められた場所にしまう ◇ バックヤードの商品は決められた場所に保管する ◇ 毎日、開店前に店頭・店内の清掃をする ◇ 陳列棚の商品の乱れを直す習慣をつける ◇ 白衣などが汚れていないかチェックする ◇ つねに手洗いの習慣をつける ◇ 店頭・トイレに汚れがないか時間を決めてチェックする |
a.販売業務マニュアル作成の目的
販売業務マニュアル作成の目的は、売場管理を標準化し販売スタッフの作業効率のアッ プとお客様に気持ちよく楽しく買物をしていただくための接客対応の標準化です。日常売 場では、「売場の5S」の徹底を含め売場での業務を効率よくムラなく行うことは重要なことです。
事業所(店舗)での販売活動において、多くの事業所は販売に携わる職員、利用者の販売 員としての配置と適性を考慮して行っていますが、販売業務のマニュアルを作成して販売 活動を行っていないのが現状のようです。今後、売上アップを図っていくには、販売担当 職員向けに作成するのは当然のことですが、利用者に仕事意識をもってもらえるように利 用者向けの業務マニュアルを作成することも大切なことです。
販売業務マニュアルがあれば、仮に売場責任者が急如休んだときでも 戸惑うことなく通常通り販売業務を行いことができます。
● 3Mのチェックポイント
◇ ムダ・・売場の業務内容にムダがないか 商品や用具をムダにしていないか ◇ ムラ・・いつも同じように販売業務ができているか 在庫数にムラがないか ◇ ムリ・・販売スタッフの能力を考慮しているか 取扱商品にムリはないか |
b.業務マニュアル作成の基本
販売業務マニュアルは、「5S」と「3M」を考慮に入れて作成することが大切です。 「3M」とは「ムダ」「ムラ」「ムリ」のことで、この3つをなくすことは、売場の作業効率、売上アップにつながる重要なポイントです。
利用者スタッフの販売業務マニュアルは、利用者の能力に配慮し漢字にルビをふること、イラストや写真を使ってわかりやすく作成することが基本です。また、マニュアルの形態においても利用者の能力に配慮して、大きな用紙に記載した作業手順や売場のルールをいつでも確認できるように売場のスタッフ配置場所に掲示しておくのもよいでしょう。
c.売場業務と販売業務マニュアル
売場の業務は開店前の準備から始まります。まず初めに朝礼を行い、販売スタッフの出欠の確認を行います。次に、作業スケジュールの確認、販売スタッフの配置を行います。販売スタッフの配置と同時に身だしなみの確認を行います。
販売業務マニュアルにこれら1日の作業スケジュールからそれぞれの作業方法までを記載しておくと、売場の業務のムラをなくすこと(標準化)ができます。1日の作業スケジュールはフローチャートにしてバックヤードに掲示しておくとよいでしょう。
また、それぞれの作業担当者が持ち回りの場合には、作業担当表を作成して「誰に」「何を」「どの場所で」「どのタイミングでする」を記載して掲示しておくのもよいでしょう。具体的な作業内容・手順については、販売業務マニュアルなどの中に利用者販売スタッフにもわかるようにイラスト、写真などを使って記載しておきます。
● 1日の販売業務フローチャート作成例
a. 販売スタッフの役割
店舗における販売スタッフの役割は大きく2つあります。1つは商品・サービスの情報提供おこない購買に結びつけ、売上に貢献することです。もう1つはお客様の情報を蓄積して固定客に結びつけることや取扱商品に反映させることです。2つの役割を果たすには売場での接客は欠かすことのできない重要なサービスです。
b.接客の基本
接客とは、お客様が気持ちよく楽しく買物ができるようにアドバイスするなどの気配りをすることです。接客に大切なことは、最低限のマナーとお客様の視点を心がけて行動することです。まずはお客様の求めているものが何かを把握し、それに応じた対応をすることが基本です。そのためには、商品・サービスの説明やオススメする場合でも、販売スタッフが一方的に話すのではなく、お客様の話を聞くことが大切です。
よい接客はお客様の心に響き、固定客化につながります。時には口コミで広がりお店のファンをつくります。反対に、商品がどんなに良いものであっても接客態度が悪いとお客様は不快に感じ2度と来店されません。売場は人的販売の場ですから、接客は売上に大 きな影響を与えます。接客の基本を身につけ、お客様が気持ちよく楽しく買物ができる雰囲気づくりが大切です。
● 接客の基本
◇ 笑顔・・・接客は第一印象からはじまる ・・・笑顔は売場の雰囲気を明るくする ◇ 挨拶・お辞儀 ・・・状況に応じた挨拶・お辞儀をする ◇ 服装・身だしなみ ・・・清潔感のある売場にふさわしい服装をする ◇ 話の聞き方、話し方 ・・・あいづちをするなど関心を持って聞く、先入観をもたない ◇ 言葉づかい ・・・丁寧な言葉づかい、正しい敬語を使う ◇ 誠実な姿勢 ・・・お客様に立場に立った商品説明、クレーム対応をする |
c.接客用語と行動のタブー
お客様の接客に対する評価は、お客様を迎える挨拶から見送りまでの姿勢で決まります。よい接客は固定化につなぐための重要なサービスであり、事業所全体の評価につながります。そのため、お客様を迎える挨拶、売場での接客用語、してはいけない立ち振る舞い、見送り方など接客の仕方の基本を販売業務マニュアルに記載して、習慣的にできるようにしておくことが大切です。しかし、単にマニュアル通りに行動してもお客様への感謝の気持ちが表われなければ、よい接客にはならないことはいうまでもないことです。
● 基本的な接客用語
◇ いらっしゃいませ。 ◇ はい、かしこまりました。 ◇ 少々お待ちくださいませ。 ◇ お待たせいたしました。 ◇ 恐れ入ります。 ◇ 申し訳ございません。 ◇ ありがとうございます。 ◇ またのご来店お待ちしております。 |
● 立ち振る舞いのタブー ◇ お客様から呼ばれても返事をしない、すぐに対応しない ◇ お客様が触れた商品をその場で整える ◇ お客様によって対応が異なる ◇ お客様の行動を凝視する ◇ レジなどの応対の順番を間違える |
コラム コラム「5つのありがとう」 お店では商品購入したときや注文をしたときに、日常当たり前のように「ありがとう」を口にしています。そこで改めて売場の「ありがとう」の意味が考えてみましょう。お客様の多い店には「5つのありがとう」があります。 ◇ 来てくれてありがとう ◇ 見てくれてありがとう ◇ 訊いてくれてありがとう ◇ 買ってくれてありがとう ◇ 苦情をいってくれてありがとう すべて感謝の気持ちの表現です。大事なことは、笑顔、明るい声で「ありがとう」 |
a.グットマン理論
お客様はお店に不満を感じた場合、お店に苦情を述べて対応を要求するケースと お店には苦情をいわないケースがあります。まったくお客様からのクルームがないからといって お店のお客様がすべて満足しているとは限りません。
グッドマン理論によると、不満を持ったお客様の口コミは満足したお客様の2倍の割合で伝わるといわれています。さらに、商品・サービスに対して不満を感じているお客様の96%は苦情をいわないとされています。苦情をいわないお客様のリピート率は9%程度であるに対して、苦情をいったお客様4%のうち迅速にクレーム対応してもらえた場合のリピート率は約80%、解決に時間がかかった場合で約50%といわれています。また、満足していたお客様も理由なく、40%がリピートしないといわれています。
クレームは恐れるのではなく、時には売場にアンケート用紙を設けるなど些細なことでもクレームをいってもらえる環境を整えることは重要なことです。
「苦情をいってくれてありがとう」の精神でクレームを吸い上げ、今後の商品・サービス、接客を含む売場づくりをしていくことが固定客を増やすことにつながります。
b.クレーム対応のフロー
グッドマン理論にあるように、お客様はお店に不満を感じて迅速かつ適切な対応をすれば顧客満足度は高まります。クレーム対応の基本はお客様の話を聴くことから始まります。大切なことは「お客様の心理的ニーズ」に対応することです。とりあえずは最後まで話を聞くことです。途中で言い訳やお客様にも責任があるなどとお客様心情を概してしまっては、せっかくのお客様を永久に失う結果になります。それどころか、悪い評判が広がり他のお客様までも失いかねません。話を聴いて、その場で対応が不可能と判断した場合には「人を変える、時を変える、場所を変える」のいずれかの方法で対応するとよいでしょう。
● クレーム対応のフロー
● グットマン理論
「クレーム対応の実際」中森三和子・竹内清之著 日経文庫 引用加筆
a.売れ筋、死に筋の把握
自主生産などの販売商品には、売れ筋、死に筋(あまり売れず売場滞留時間の長い商品)、中間筋(その中間商品)があります。これらは、日常的に単品ベースで売上データをつけておくことや陳列を整えることで把握できます。在庫や廃棄ロスをなくすには、つねに販売実績の分析や売場での観察により「売り筋」「死に筋」の分析が不可欠です。分析の結果、「売り筋」を「よく売れています!」といったキャッチフレーズのPOPなどの販促ツールへ反映させてさらに売上アップを図ることが大切です。
一方、「死に筋」はセールなどを行って売り切り、その後は品揃えから排除するのが基本です。しかし、「死に筋」を永久に売場から排除には、短期の売上データだけで判断することは危険です。「売れ筋」も同様ですが、長期的な売上データや市場動向から判断することが重要です。その時期の気候、温度の問題やその時のなんらかの市場の要因で、例えば、近くに競合する店舗で同様の商品を特売していたなどの要因で売れなかったということもあります。
「売り筋」「死に筋」の品揃えへの反映は、単に過去の売上データだけでなく、外部環境(競合状況、人口変化、トレンド、天候など)を考慮して検討することが大切です。そのためには、つねに周囲の環境変化を把握し、売上データ記録とともに記録しておくとよいでしょう。
b.ABC分析と利益確保
販売商品全体の20%の商品で、全売上高の80%を売り上げようとする考え方をABC分析といいます。約20%の商品をA商品、次に売れている商品(販売商品全体の約10%で全売上高の約10%)をB商品、残り70%の商品をC商品と分類します。販売商品の「売れ筋」をA商品、「その中間筋」をB商品、「死に筋」をC商品に分類し「売れ筋」を重点商品としてさらに売上アップを図ろうとする考え方です。
しかし、「売れ筋」A商品に分類されたすべての商品が「利益のある商品」とは限りません。そのため、売上高を利益に置き換えたABC分析も行い、その2 つの分析をミックスした形で重点商品を決めることが大切です。
また、事業所の自主生産品は、民間企業の商品と違い生産数量、販売量には限界あります。そのため、一度決めた重点商品に固執することなく、少ない販売数量で多くの利益が確保できる独自性のある自主生産品を開発し育てていくことも大切です。
● ABC分析
c.販売商品のポジショニング
販売商品の品揃えを見直すには、上述の分析に加え事業所の販売商品のポジショニング(位置づけ)を行うことも大切です。縦軸に価格、横軸に需要を設定した下記のようなポジショニングマップを作成し、販売商品それぞれの位置づけを明確にして今後に品揃えや販促に反映させます。
● 商品のポジショニングマップ
コラム 処分商品の販促方法 「死に筋」は早めに処分商品として売切り現金化することが大切です。そのためには、POPなどで「処分品」と表示するのではなく、「特別サービス品」「当店オススメ」と表示して集客・販促商品同様にお客様の購買意欲をそそることが売切りのポイントです。 |
a.商品のライフサイクル
お店を構えている事業所のほとんどは、事業所で自主生産したものを販売しています。商品には人の生涯と同じように寿命があります。商品が市場に登場してから消滅するまでの生涯をプロダクト・ライフサイクルといいます。プロダクト・ライフサイクルは、導入期・成長期・成熟期・衰退期の4 期に分けられます。事業所(店舗)の品揃えを見直す際には、売上高や利益面からのABC分析に加えて、それぞれの商品がプロダクト・ライフサイクルのどの時期のものであるかも考慮する必要があります。
● プロダクト・ライフサイクル
導入期の商品は、まだ市場認知度の低くこれから市場を開拓していく商品です。一般には生産量の少ないので生産コスト、市場認知度を高めるための販促強化のコストや労力がかかります。しかし、パン・菓子など自主生産している事業所においては専門家の指導を受けながら、競合店にはない独自性・新規性のある商品を開発して広く市場にアプローチしていくことは、売上アップや事業所の認知度の向上につながります。
成長期の商品は、市場に出回り始めた商品で売上高・利益ともに期待できる商品です。現時点のABC分析でB商品であっても、重点商品として販促を強化することで売上アップを図ることが可能な商品です。
成熟期の商品は、重点商品をしての現時点の売上は期待できます。しかし、競合店の多いため価格競争に巻き込まれてしまいます。競合店を差別化できるよう独自のアレンジが必要になります。
衰退期の商品は、市場でのブームが去り現時点において売れ筋商品であっても徐々に売上が下降します。売れ行き状況を見ながら、生産量の減少あるいは品揃えからの排除の検討が必要です。いつまでの過去のデータにこだわっていると廃棄ロスが発生してしま います。
商品ライフサイクルを把握するには、つねに市場動向(トレンド、ライフスタイルなど)に目を向けることです。過去の売上データだけに頼るのではなく、毎日売場に出てお客様を接し、どんなお客様がどのような商品を購入していくのか、売れている商品の共通点、売れない商品との違いなどを把握し、早めに品揃えに反映させることが大切です。
b.花形商品をつくる
新商品開発を含めた品揃えを検討するには、上述したように市場性を考慮する重要です。マーケティング戦略には、ポートフォリオ戦略という考え方があります。マーケティングとは商品・サービスを生産者から消費者へ移転する活動のです。
ポートフォリオ戦略とは、市場成長性(商品の将来性)と市場占有率(競争的優位性)の視点で事業を4 つのタイプに分類し、今後の事業の方向性を決めることです。事業を自主生産品などに置き換えることで、今後に重点商品を検討することができます。
● PPM(ポートフィリオマメジメント)
花形商品は市場成長性が高く、事業所でも売れている商品です。問題児は市場成長性が高いが、競合店に負け売れ行きの悪い商品です。金のなる木は、市場成長性が低いものの競合店よりも優位に立っているため、資金需要が少なく儲かる商品です。負け犬は市場成長性が低く、売れ行きも悪いため徹底させる商品です。
ポートフォリオ戦略の基本は、市場成長性の高い問題児に金のなる木で得た利益を投下して、花形商品に育てるという考え方です。 事業所においても、市場成長性の高い問題児を重点商品として自主生産品を改良したり、POP、チラシ、ホームページなどの販促を強化することで花形商品に成長させることも不可能ではありません。
a.前出し陳列を実施する
大半の事業所では、民間の小売店と違い商品を仕入れて販売するのではなく自主生産品を販売しています。このため、バックヤードで在庫管理をするというよりは、売場に陳列している状態での商品管理が多く見られます。売場での商品管理のポイントは、商品補充の際に前出し陳列などに日常の売場管理を徹底することです。
前出し陳列とは、陳列棚の奥に置かれた状態の商品をお客様に見やすく手に取りやすいように陳列棚の手前に出すことです。売れて空いたスペースに商品を補充してしまうと、後ろの商品は劣化してしまう恐れがあります。古い商品を前に出し、後ろに売れた分の商品を補充することで、その棚にはつねに新しい商品が並ぶことになります。
また、陳列棚の奥に商品があるとお客様には商品が見えず、時には販売機会を失いかけません。その観点からも前出し陳列は重要です。
加えて陳列商品の管理で重要なことは、日当たりの問題です。食品はいうまでもないことですが、あらゆる商品は長い時間日光に当たることで黄ばんだり、耐久性が衰えるなど劣化します。店頭の商品は日光だけでなく、埃もかぶります。什器レイアウトはもちろんのことですが、日よけのルーバーやブラインドをおろす、商品に包装をほどこすなど、日光や埃などへ配慮した商品管理も必要です。
b. 消費期限・賞味期限管理を徹底する
事業所の多くでは期限切れの商品に対する廃棄処分は現場の判断に任せている傾向がみられます。事業所(店舗)・商品に対する信頼感・安心感を失わないためには廃棄処分基準を作成し、マニュアルに落としておくことが大切です。食品であれば、陳列台に平置き陳列の商品、冷蔵ケースの商品など管理担当者を決めて、消費期限や賞味期限を商品の補充とは関係なく毎日チェックすることが不可欠です。食品類の廃棄処分基準は消費期限や賞味期限が基本ですが、期限の迫った段階で「処分価格」で販売することで廃棄ロスを軽減できます。この場合、「処分価格」の理由をPOPで明記しておくことは大切なことです。
(農林水産省ホームページより引用)
● 消費期限と賞味期限
消費期限 | 賞味期限 | |
対象商品 | 長く保存がきかない生の加工食品に表示( およそ5 日以内に食べたほうがよい商品) | 冷蔵や常温で保存のきく加工食品に表示 |
表示方法 | 年月日 | 製造日から3 ヵ月以内は年月日3 ヵ月を超える場合は年月表示 |
表示の意味 | 期限を過ぎた場合は食べない方がよい | 美味しく食べることのできる期限期限を過ぎても食べられないと いうことではない |
c.品質管理をマニュアル化をする
商品の品質管理は売場管理の1つです。食品の消費期限や賞味期限の確認作業は当然のことですが、販売商品すべてに廃棄処分の基準を決めて、開店前の陳列棚の清掃、整 頓のときや品出し・商品の補充の際に確認作業を行うことが大切です。廃棄処分の基準は販売業務マニュアルの中、または品質管理マニュアルに明示しておきます。
また、冷蔵ケースなどの温度・湿度などの管理、店頭・店内を問わず商品への日当たりの管理も忘れることのないようマニュアルに明示しておきましょう。各作業のチェックリストを作成し、毎日チェックすることを習慣にしておくのも一案です。
● 品質管理のチェックリストの例
a.お店の存在をアピール
売上アップを図るには、より多くのお客様に来店していだだくことと、来店されたお客様に多くの商品を見ていただき販売機会を増やす工夫が必要です。そのためには、始めてのお客様でも入りやすい店頭づくりが大切です。 通行客はもちろんのことですが、チラシやインターネットで来店を促してもお店がわかりにくかったり入りにくかったりしては、せっかくの販売の機会を失いかけません。
店頭の役割の1 つに訴求機能があります。何を販売・サービスしている店なのかを知らせることで、店内に入るための抵抗感をなくすことです。そのためには、看板やのぼりなどのPOPは欠かせません。特別に店舗を構えず自らの施設や公共施設などの一区画で販売や飲食サービスを行っている場合には、事業所内においてお店を運営していることを通行客にわかるよう事業所入口などで目立つ看板やのぼりなどでアピールすることが重要です。
●お店の存在をアピールした事例
b.店頭の開放感を高める
店頭の役割には誘導機能もあります。店頭の開放感を高めお店内の様子が見えるようにしておくことは、入店の抵抗感をなくすために大切なことです。また、入口付近に商品を運んできた台車や段ポール箱を置かないこと、駐輪・駐車の位置に注意することは重要なことです。店頭に障害物があると店の見通しを妨げるだけでなく、入店しようとするお客様にとっても物理的、心理的抵抗感となります。
●店頭作りの事例
c. きっかけをつくる
誘導機能として、店内の見通しを高めるほかに店頭の陳列やディスプレイによる誘導があります。店頭の陳列で入店のきっかけをつくるには、街でよく見かけるように店頭にワゴンを設置して販促カレンダーと連動した目玉商品を陳列しておく方法があります。目玉商品には「オススメ商品」のPOPをつけて通行客の興味をそそることが重要です。
また、店頭の生活シーンの提案や季節感のあるディスプレイで通行客にお店のセンスのよさをアピールし、店内に興味を持たせる工夫をすることも大切です。
d.直接目線を合わせない工夫
店内に入ろうといた瞬間、真正面のカウンターにいた販売スタッフと目線があってしまうと、お客様は「買わずには帰れない」といった心境になります。レジカウンターなどの販売スタッフが待機する場所は、入口正面を避けるようレイアウトにすることも入りやすい店づくりには大切なことです。
● 商品のポジショニングマップ
a.店内レイアウトのフロー
店内レイアウトの目的は2つです。1つはお客様の店内回遊性を高め、販売機会の向上を図ることです。もう1つは売場スタッフのムダ動きをなくし、作業効率の向上を図ることです。売場においては、お客様に店内くまなく回遊してもらい多くの商品を見てもらうことは売上アップにつながります。反対に売場スタッフの動線は、作業効率をよくするための短くすることが基本です。そのためには、什器のレイアウトや通路幅が重要になってきます。レイアウトは下記の手順で行います。
● 店内レイアウトのフロー
b.通路の原則
「動線」とは人が動く道筋のことで、お客様が動く道筋のことの客動線をいいます。客動線を長くするには、店側が什器のレイアウトや通路幅を計画することが必要です。 客動線を長くするには、まずは歩きやすい通路にすることです。お客様は通路幅が狭いと通ることに抵抗を感じ回遊しません。通路幅は、最低でも人がすれ違っても通れる幅が必要です。一般的には、90~120 ㎝といわれていますが、車いす、ベビーカート、シルバーカートでのお客様にも快適に買い物していただけるよう通路幅を広くとることや通路に品出し途中の段ボールなど障害物を置かないなどの配慮をすることも大切なことです。
c.商品レイアウトの原則
商品レイアウトをする上で大切なことは2つあります。1つは商品の売上高の割合と売場面積と比例させることです。もうひとつは、販売商品をグルーピングしグループごとにレイアウトすることです。基本的には商品ジャングル別にグルーピングした商品は縦割りでレイアウトします。販売商品のジャングルが同じ場合には価格帯で横割りでレイアウトします。
d.マグネットで客動線を長くする
通路幅が広くても店内に魅力がなければ、店内を回遊してもらうことは不可能です。くまなく歩いてもらうには、店奥や歩く先々に魅力ある商品、興味をそそられるディスプレイをすることが必要です。引きつけられるという意味で、そのディスプレイや商品陳列箇所をマグネットといいます。マグネットは通常、店頭付近、通路の突き当たりに設けます。奥行きがある店舗の場合には通路の途中にもマグネットを設ける必要があります。
● マグネットの設け方
a. 探しやすい、比較しやすい陳列
陳列の目的は、商品を展示し、商品情報を提供し、商品の選択に寄与することです。売上につなげるには、探しやすく、見やすい、手に取りやすい、比較しやすい陳列にすることが大切です。
商品を探しやすく比較しやすくするには、商品ラインでグルーピングすることが大切です。商品ラインでグルーピングした陳列は、売る側にとっても、商品の補充・品質管理面でも効率的です。
また、同じラインの商品を同じ陳列棚に陳列することで比較しやすいというメリットもあります。その場合、商品を比較しやすいようにPOPは価格表示だけでなく、それぞれの商品の特徴や違いの違いなどを明記したショーカードをつけることが大切です。それぞれの商品の特徴や違い、一覧表を陳列棚の上の壁面に掲示しておくのもよいでしょう。探しやすい比較しやすい陳列には「物言わぬ販売員」としてPOPは欠かせない販促ツールといえます。
●探しやすい、比較しやすい陳列
b.見やすい、手に取りやすい陳列
商品の陳列は、お各様の手が届くことと目が届く高さを考慮することが重要です。この高さを「有効陳列範囲」をいい、床上60~170 ㎝といわれています。お客様は商品に興味を持つと手に取って商品をよく知りたいと思います。リピート買いを除いては、手に取れない商品は売れないといっても過言ではありません。
手に取りやすい高さに陳列した商品が一番売れる商品です。そのため、売りたい商品・重点商品は、戦略的に手に取りやすい高さに陳列します。この陳列スペースのことを「ゴールデンライン」をいい、床上85~125 ㎝がその高さです。
一方、もっとも見やすい高さはお客様の身長によって多少の差はありますが、「ゴールデンライン」の上の床上125~170 ㎝といわれています。
●見やすい、手に取りやすい陳列範囲
また、「有効陳列範囲」に考慮して陳列しても、商品の大きさやPOPの取り付け位置にも配慮をしないと見やすい、手に取りやすい陳列にはなりません。せっかく、「ゴールデンライン」に商品を陳列しても、大きなPOPを商品の前に取り付けると商品を手に取るときに邪魔になったり、商品が見づらくなるので注意が必要です。
●見やすい、探しやすい陳列事例
a.売上高と陳列
売れる商品は売場の占有面積を大きくするというのが陳列の原則です。原則にもとづき、売れる商品は陳列棚に横陳列する数(フェイス数)を増やします。また、売りたい商品も同様に「ゴールデンライン」にフェイス数を多く取ることで多くの売上が期待できます。
また、エンドとよばれる陳列棚の横スペースで販促商品(季節商品、目玉商品)を大 量に陳列することで売上アップを図る方法もあります。この陳列をエンド陳列といいます。
● 売上とフェイス数
● 陳列の基本
◇ 商品グルーピングで探しやすく ◇ 見やすく、手に取りやすく ◇ 売上高とフェイスを比例させる ◇ POPとの連動で比較しやすく ◇ 商品の価格や特性にふさわしい陳列 ◇ 大量に陳列すると商品価値が下がって見える ◇ 高価格商品と低価格商品は同一場所に陳列しない |
b.見せる陳列で購買意欲を刺激する
陳列には、店頭や店内の展示スペースを使い見せる陳列で購買意欲を刺激する方法もあります。その1 つの方法は、関連する他の商品と一緒に展示することで使用シーンを提案し、お客様の衝動買いを促し、客単価アップにつなぐ方法です。
そのほか、販促カレンダーのテーマにもとづき、季節性などをテーマに展示スペースに小物を使って商品を魅力的にアピールし、お店のセンス、ステータスをアピールする方法もあります。例えば12 月であれば、「クリスマス」をテーマにクリスマスツリーや雪ダルマを飾り、クリスマス用の手作りキャンドル、木工品、織物製品、焼き菓子の詰め合わせを一緒の展示することで単品陳列するよりも一つひとつが魅力的に見えます。
また、単品陳列でも陳列の仕方やラッピングを工夫することで魅力的の見せることもできます。
● ラッピングで見せる陳列した事例
●魅力的にみせる陳列ポイント
◇ テーマ・季節感のあるディスプレイで興味をひく ◇ テーマは販促カレンダーと連動 ◇ ディスプレイの小物は本物志向で ◇ 提案型ディスプレイで衝動買いを促す ◇ カラーの豊富な商品は左から赤・橙・黄・緑・青・紫ルールで陳列 ◇ グラデーションカラーの商品は ◇ 重い・大きな商品は下段、軽い・小さな商品は上段で安定感を ◇ 立体感・変化のある陳列で興味をそそる ・互い違い(リピート)に商品を展示 ・トライアングル(三角形)に展示 |
【販売計画】