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平成17年度厚生労働科学研究障害保健福祉総合研究成果発表会報告書

発表会:障害者のエンパワメントの視点と生活モデルに基づく具体的な地域生活支援技術に関して

平成17年11月26日(土)

★第一部「研究成果報告」

(司会者)
大変お待たせ致しました。只今より「平成16年度 厚生労働省科学研究発表会-障害者のエンパワメントの視点と生活モデルに基づく具体的な地域生活支援技術に関して-」という報告会を開催いたします。本日はお忙しい中、皆様お集まり頂きまして有り難うございます。 それでは第一部、研究成果の報告に入りたいと思います。まずその前に谷口明広より開会にあたっての挨拶を、その次に引き続き第一部の研究成果報告に入っていきたいと思います。ではよろしくお願い致します。

(谷口明広)
どうもこんにちは。ようこそお越し頂きまして、有難うございます。今日は、本当に色々な方に来て頂きまして、北は福島県の郡山から来られております。南は徳島から来られていますし、西は島根県からも来られています。色々なところから来て頂いてありがとうございます。一番多いのは京都でございます。あと近畿では奈良とか大阪から来て頂いております。本当に有難うございます。

このエンパワメントの視点と申しますのは、今ちょうど障害者福祉が非常に動いている時でございます。戦後こんなに障害者福祉が動いたことはありません。2年前に支援費制度が動き出しました。そして今は自立支援法をという流れが新しく来ております。そしてまた数年後には何かがまたあるのではないかという予想がされている中で、やはり一番大事なのは障害をおもちの方、一人ひとりが本当に生き生きと充実した生活を送れるということが一番大事なことではないかと思っております。そして障害をもつ人たちが力をつけていく、力をつけていくというのは荷物を持ったりということではありません。本当に生きていく力、生き抜いていく力をどうやってつけていけばいいのか、またどういう時にそういう力がついていくのか、というようなものをこの研究において明らかにしていきたいと思って始めました。この研究に色々な人たちのご協力を得ています。全国で20ケースを追わせて頂きました。知的障害者の方、身体障害者の方を含めまして20ケースを追いかけて参りました。その人たちの人生においてどういうことがおきて、どういうふうにうまく生きてこられたのか、 また力が無くなるパワレスの状態も皆さんは経験されてきております。そのパワレスの状態からエンパワメントする状態にもっていくにはいったい何が大事だったのか、そして今から発表いたします。エンパワメントとはいったい何なのかということについて、今日はお話をさせて頂きたいと思っています。今日皆さんに先立ちまして、お話をしなければならないのは、私の話をちょっと短めにさせて頂きます。そして後半部分のシンポジウムをより長くさせて頂いて、その後のディスカッションを充分に皆さんとの会話の中に進めていきたいと思っておりますので、その辺をご了承頂きたいと思います。それでは始めさせて頂きたいと思います。

「障害をもつ人たちへのエンパワメント支援を考える」という題をつけております。もともとエンパワメントという言葉はどこから出てきたかを申し上げます。社会福祉の分野で使われている言葉は借り物が多いですね。実はQOLというのも、経済的な言葉であります。今はやりのケアマネジメントという言葉は、アメリカのNASAというスペースシャトルをとばしているところがありますが、あそこで初めて使われた言葉である。社会福祉でもともと使われる言葉というのは意外に少ないです。このエンパワメントも実際はアメリカの公民権運動、と申しますのは黒人差別というところから始まりました。権利や権限を与えることという意味が、このエンパワメントの意味として辞書にはよく書かれています。公民権運動やフェミニズム運動、例えば黒人の人たちはアメリカでは差別を受けている。けれども黒人と白人を比べて何が劣っているのだろうかということを考えた時に、例えば身体能力的には黒人の方々の方が上ではないか、例えばオリンピックを見ている時、そう思われます。けれども彼らが本当はそういう力があるにも関わらず、非常に根強い差別によって押さえ込まれている。 権限とか権利自体も非常に剥奪されてしまっている。そういうところに黒人の方々は公民権運動があり、キング牧師とかマルコムXというような黒人開放運動家がいますが、彼らが好んで用いたのがこのエンパワメントという言葉であります。

その考え方は社会福祉発展途上国開発、医療、看護、教育、ビジネスなどの多くの領域に拡大しています。現在、このエンパワメントという言葉は色々な分野で使われてきております。発展途上国のエンパワメント、例えばイラクの問題なんかも、イラクの人たちのエンパワメント、という言葉なんかでよく用いられております。そういう部分もこのエンパワメントという言葉が使われているという事をお知り下さい。

我々はこの障害者のエンパワメントということに関して定義を作りました。この定義を読み上げてみます。『「エンパワメント」とは同様の生活環境にある一般状況と比較してパワレス状況にある者が、政治・経済・社会的場面等における一般水準の獲得を試みた時に、本人の意向にそって、個々が有する能力の向上・社会環境の改善・個人と社会環境との調整という方法を用いて、そのパワレス状況を改善していく諸過程である』。定義と言うものは、難しく書けば書くほどかっこいいものでございます。ですからこんなに難しく書いてしまっておりますが、ちょっと解説をしながらもう一度読んでいきたいと思います。

「同様の生活環境にある一般状況と比較して」ということは、一概になかなか言えないことなのですが、障害をおもちでない方々の、例えば同一年代、同一年齢、同一年齢層、同一生活水準、そういうようなものと比較して、「パワレス状況にある者」これは障害をもっている方だけではないかもしれません。色々な形で「パワレス状況にある者が、政治・経済・社会的場面等における一般水準の獲得を試みた時に」というわけですから、誰でもパワレスな状況にある人たちは一般水準を獲得しようと、あるいは一般水準を越えようと思って努力をするわけですよね。それを試みた時に「個々が」我々の研究チームで一番重要視したところである、「本人の意向にそって」本人が嫌だということをやらさなくてもいいではないか、本人が本当にやりたい、本人が望んでいる、本人が望まないことではなくて本人が望んでいることが大切なのです。例えば、私も経験がございますが、子供の時に機能訓練で無理やり板にくくりつけられて立たされたりしました。そういうことではなくて、本当に自分がやりたいということ、私がよく申し上げるのですが、子供の頃10m歩きなさい、 歩けるようになりなさいと言われたのですが、10m向こうに何もないわけですね。私はよく10m向こうにシュークリームさえ置いておいてくれたら、もっと頑張って歩くのにと思っておりました。本当に、そういうものだと思います。「本人の意向にそって」これがすごく大事であります。そして「個々が有する能力の向上」能力の向上と申し上げますのは、後で説明致しますが、障害をもっている個人が非常に能力を上げる、色々な意味での能力を上げるということがまず一つです。次に「社会環境の改善」個人を取り巻く環境を改善する。環境をよくするというだけでもエンパワメントしていくということが考えられます。そして環境も個人も本当は変わらなくても、もっとうまく融合させていければもっと本人たちのエンパワメントがあがっていく、エンパワメントしていくのが三つ目にあります。そのような方法を用いて「そのパワレス状況を改善していく諸過程である」ということ言っています。どのような方法があるのかということについて今からお話申し上げます。

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