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平成18年度厚生労働科学研究費補助金障害保健福祉総合研究推進事業報告書

「精神科回復期リハビリテーション病棟」のあり方に関する研究

Ⅵ.結論

昨年度までの研究で提示した施設基準について、望ましいあるべき姿であると、調査対象病院は考えていた。ただし人員配置や在院日数については、各病院のモデル病棟の実情より高い基準であることを示唆していた。「精神科回復期リハビリテーション病棟」の実現のためには、これらの基準についてさらに検討する必要がある。

表1 各回答病院のモデル病棟の概要

病院名 診療報酬上の病棟種別 (回答された)病棟機能   病床数
A 精神病棟入院基本料2 男子病棟 閉鎖 51
B 精神病棟入院基本料2 リハビリテーション 開放 46
C 精神病棟入院基本料2 男女、開放、慢性病棟 開放 51
D 精神病棟入院基本料2 社会復帰(女) 開放 50
E 精神病棟入院基本料3 救急治療支援 開放 44
F 精神病棟入院基本料3 リハビリ(亜急性) 閉鎖 65
G 精神科急性期治療病棟入院料1   閉鎖 53
H 精神科療養病棟入院料   開放 60
I 精神科療養病棟入院料   開放 58
J 精神科療養病棟入院料   閉鎖 55
K 不明 神経症、リハビリ 開放 50
L 不明   開放 70
M 不明   閉鎖 60
      713
平均       54.8
データ数       13

表2 救急病棟からの転棟患者の、モデル病棟での平均在院日数

病院名 モデル病棟での平均在院日数
A 0-3
B 0-3
C 無回答
D 無回答
E 0-3
F 3-6
G 0-3
H 3-6
I 0-3
J 3-6
K 0-3
L 0-3
M 0-3

図1 モデル病棟の1病床当たりのスタッフ数

図 グラフ

表3 モデル病棟のスタッフ数(実数)

  医師 看護師 准看護師 看護補助者 精神保健福祉士 作業療法士 心理士 その他
2 15 2 0 0 0 0 0
2 13 6 3 0 0 0 0
1 13 5 0 0 0 0 0
0 15 2 1 2 1 1 0
6 15 2 1 3 2 0 0
8 18 3 5 1 0 0 0
2 15 4 4 1 1 1 0
1 7 4 12 1 1 0 0
1 3 11 7 2 2 0 0
平均 2.6 12.7 4.3 3.7 1.1 0.81 0.2 0

図2 モデル病棟における退院促進プログラムの実施回数(1ヶ月当たり)

図 グラフ

表4 モデル病棟における退院促進プログラムの実施回数(1ヶ月当たり)

  SST 心理教育(本人) 心理教育(家族) 服薬指導 退院前の訪問 アルコール問題への支援 その他
4 0 0 0 0 0 0
1 1 1 1 4 1 0
0.5 0 0 1 0 0 0
4 0 0 0 1 0 0
4 0 0 11 10 0 0
3.5 3.5 1 3.5 1.5 4 0
4 0 0 8 0 0 0
0 0 0 0 0 10 0
平均 2.6 0.6 0.3 3.1 3.3 1.9 0

図3 救急病棟からの転棟患者の、モデル病棟からの1年以内の転出先

図 グラフ

図4 救急病棟から後方病棟への患者の流れの平均像(11病院:C,D病院を除く)

流れ図


精神科回復期リハビリテーション病棟(案)

定義

精神症状があり、病識の乏しさや社会生活における困難を有するため長期化のおそれがあり、また現に長期化している患者に対し地域生活支援と連携した積極的なリハビリテーションを実施することにより9カ月以内に地域へ退院させる病棟。

対象

救急・急性期において充分な入院治療を受けても退院可能でない患者。ただし、入院患者のうち患者の5割以内は入院後1年以上でも可とする。

基準

  1. 15対1看護(従来3対1相当)
  2. 精神保健福祉士1名、作業療法士又は心理士1名以上を病棟専属
  3. 精神科療養病棟と同様の病棟環境を持つ
  4. 患者の8割以上が9ヵ月で自宅退院(自宅・単身アパート・グループホーム・社会復帰施設を含む)。ただし3カ月以内に再入院した者は退院とみなさない
  5. 当病棟入院時に医師、看護師、在宅復帰支援を担当する者、その他必要に応じた関係職種が共同して精神科リハビリテーション総合実施計画を作成し、患者に対して説明を行う
  6. 心理教育、SST、OT、フィールドトリップ等退院促進プログラムの実施
  7. 個別ケースの退院の実現を目標として主治医、担当看護師、及び地域生活支援関係者を含む多職種によるカンファレンスを実施
  8. 入院中より退院促進・地域連携室(仮称)との連携。(室の要件:病院内に地域支援専任の看護師またはPSWが計3名以上いること)
  9. 診療報酬は転入棟後9ヵ月までを限度として算定(3ヵ月ごとに逓減)。精神科急性期治療病棟と精神科療養病棟の間の点数とする。
  10. 病棟全体ではなく、病室単位も可能とする。その際、スタッフ配置は病棟全体で基準を満たす必要があるが、入院1年後の患者の割合と、自宅退院の割合は病床にのみ適用する。

図5 精神科回復期リハビリテーション病棟の必要性・実現可能性

図 グラフ

図6 精神科回復期リハビリテーション病棟(案)の各基準の適否

図 グラフ


文献

1保坂隆:厚生労働科学研究障害保健福祉総合研究事業「精神科病棟における患者像と医療内容に関する研究」主任研究者保坂隆.平成16年度総括・分担研究報告書

2保坂隆:厚生労働科学研究障害保健福祉総合研究事業「精神科病棟における患者像と医療内容に関する研究」主任研究者保坂隆.平成17年度総括・分担研究報告書

3瀬戸屋雄太郎・安西信雄:退院促進のために必要な診療報酬改定:精神科回復期リハビリテーション病棟の提案.精神障害とリハビリテーション、10:2,2006.