2023年11月22日、労働年金局(Department for Work and Pensions: DWP)は、作業能力評価(Work Capability Assessment: WCA)の内容変更を公表しました。
同局は、2023年9月5日から10月30日まで、WCAの改訂案についてのパブリックコメントを実施していましたが、今回、その結果とそれに対する同局の考え方、そして、今後の改訂予定について公表しました。
これまで、本紙で何回かご報告していますが、英国では、2023年3月に「支援の変革:健康と障害に関する白書(Transforming Support: The health and Disability White Paper)」を発行し、障害者や慢性病のある人々の就労をサポートし、生活を変え、経済を成長させていくための福祉制度改革のための長期計画を示しました。
その改革の1つとして、WCAを廃止するということがあり、一方では、それに代わる「健康と雇用に関する試行事業」(障害福祉NEWSNo68参照)等が実施されていますが、もう一方では、新しい制度ができるまでの間、WCAの内容を見直す作業も行っています。
英国には、雇用および支援手当(Employment and Support Allowance: ESA)、ユニバーサルクレジット(Universal Credit:UC)の就労困難加算等障害や病気によって職業能力が制限されている人々に対する手当がいくつかあり、これらの手当を受給するためにはWCAを受ける必要があります。
WCAを受けると、次の3つのカテゴリーに評価されます。
①仕事ができる(Fit for work:FFW): この評価を受けるとESAまたはUCの手当は受けられません。 ②労働能力制限(Limited Capability for Work: LCW): 手当を受けられるとともに、仕事に就くための支援が提供されます。 ③仕事および仕事関連活動の能力制限(Limited Capability for Work and Work-Related Activity:LCWRA: 仕事はできないという評価で、仕事を探したり、仕事の準備をしたりする必要がないことを意味します。UCとESAの両方で高額の手当が受給できます。 |
しかし、このWCAについては、手当を受給すべき人が受給できていない、WCAを受けるまでの期間が長すぎるといった問題点が英国議会からも指摘されています。
今回の主な改訂は、機能評価の内容です。例えば、次のような改定が行われます。
移動: 在宅就労が可能になってきたことから、移動の評価項目をすべて削除する。または、LCWRAの評価基準を50メートルから20メートルに減らすべきかどうか。あるいは、LCWに割り当てられている点数を下げるかどうか。在宅就労が可能になっていることが背景。→LCWRAの移動評価を削除 腸/膀胱機能の欠如または喪失(失禁): 失禁の評価をすべて削除。または、LCWRAの評価基準を「毎週」失禁するから「毎日」失禁するに変更する必要があるかどうか。あるいは、LCWの評価点数を減らすかどうか。→変更しない。 認知障害または精神障害による社会的関与への対処(社会的関与): 社会的関与の項目をすべて削除。または、LCWの評価点を減らすかどうか。→変更しない。 |
なお、この変更は、2025年の申請者から適用されます。
詳しくは下のサイトをご覧ください。(寺島)
https://www.gov.uk/government/consultations/work-capability-assessment-activities-and-descriptors/outcome/government-response-to-the-work-capability-assessment-activities-and-descriptors-consultation