6 他の活動の出発点としての子どもの本
感覚的あるいは精神的な障害をもつほとんどの子どもにとっては、読むという行為そのものがとても大変なことです。しかもなお、芸術的な経験への欲求は他の子どもとまったく同様に
ところが、障害をもつ子どもたちの多くは、自分で遊びをはじめたり、何かを作り出したりするだけの想像力をもっていないので、周囲の手助けが必要です。しかし、障害をもつ子どもたちのまわりにいる大人も、障害児と遊ぶときにイメージの世界をふくらませられるほどエネルギーをもちあわせている人は、そう多くはありません。
一方、絵本をはじめとして、物語、歌などには、子どもの心を刺激する想像力のたねがいっぱいつまっています。図書館は、「おはなしをきく会」や「絵本をスライドで見る会」、「人形劇」、「映画の会」などに障害をもつ子どもたちを招いて、よろこばれています。こういう催しは子どもたちにとって、何よりもまず、社会的な接触と経験を得る場になります。そのうえ、あとで思いだして話をするたねにもなります。
本を読んであげるとき、ことばだけでなく、身ぶりやものまねをコミュニケーションの手段として使うと、物語がより生き生きしてきます。本の中の絵にあった音楽を演奏することもできるでしょう。子どもたちを生き生きと活動させるもっともよい方法を見つけるのは、そんなに簡単なことではありません。しかし本の中の絵は、子どもにも大人にも、いろいろな思いつきを与えてくれます。本の中で出会う登場人物を絵に描いたり、人形をつくって衣装をきせることもできます。
エズラ・ジャック・キーツの絵本『ゆきのひ』(偕成社)
人形劇は、知恵おくれの子どもたちにとても効果的であることがわかっています。また、動きの豊かな絵がたくさんある単純な絵本、たとえばエズラ・ジャック・キーツ(アメリカの絵本作家。作品に『ゆきのひ』『ピーターのいす』などがある。)やエリック・カールのものなどは、身体を動かしてみようとか、絵本のストーリーを、はじめからおわりまで、ダンスにしてみようという気持ちを子どもたちに起こさせるかもしれません。
音楽や踊りがきっかけになってことばをおぼえたり、人間どうしの
このような創造的活動をするときの、きっかけを作るものとして、子どもの本はとても役に立ちます。もし、このような活動を通じて情動的な欲求*28を満たすことができないでいると、子どもの知的発達や人格そのものまでがそこなわれてしまうかもしれません。
音楽にはまた、心を静める働きもあります。自閉症や
ラルシュ運動*30の
子どもの頃から障害をもつ人々はほとんど誰でも、身体の器官がそこなわれているだけでなく、心にも傷を負う。 |
私たちは、話せない人や、ごくわずかしか話せない人、あるいは読む力のない人を、知的、感情的、社会的に、