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本は友だち

障害をもつ子どもと本の出会いのために

著:トーディス・ウーリアセーター

訳:藤田 雅子・乾 侑美子

表紙の写真


「本は友だち」のDINF掲載にあたって―「本は友だち」の30年を受け継ぐ―

藤田雅子

ノルウェイ人であるウーリアセーターさんの著書「本は友だち」(原題、障害児を日常生活に統合する児童書の役割)に出会ったのは、1980年代半ばパリにあるユネスコ本部であった。児童書と障害ももつ子の関係をさりげなく書ける人物ってどんな方なのかと、翻訳の目処がついてから、私はオスロまで会いに行った。フィヨルドが晩夏の太陽に輝き、彼女は真っ赤なダリアの花を手にして迎えてくださった。

この本の源泉は彼女がそれ以前に出版した「マイ・サイレント・サン」(日本の書名)にあることが分かった。自閉症の息子さんの20年間の成長記録であると同時に、施設解体から地域生活への移行を綴った内容である。夫をはじめ、文学に関して造詣の深い家族たちだったことも、「本は友だち」が世に出た背景にある。何回目かの訪問の時、グループホームから帰宅していた息子さんに、ウーリアセーターさんの自宅で会った。ベッドの横に本が数冊積まれ、彼は大事そうにページをパラパラとめくっていた姿を思い出す。

1981年のボローニア児童図書展に出されてから数えると、30年の時を経て、よい本が電子媒体で読み継がれる。翻訳という形で仲介できて嬉しい。なお内容は翻訳時のままのものを使用し、原形を失わないようにしている。ITあるは福祉機器など現在の状況とは異なる部分があるかも知れないが、ご容赦いただければ幸いである。


掲載者注:本作品は、著者、翻訳者、出版社の許諾により、ウーリアセーター・トーディス著・藤田雅子・乾侑美子訳『本は友だち:障害をもつ子どもと本の出会いのために』(偕成社/1989年刊)の全文(126p)を掲載しています。

原文は以下に掲載しています。

Ørjasæter, Tordis. The Role of Children's Books in Integrating Handicapped Children into Everyday Life. Unesco, 1981, 46p. (Studies on Books and Reading No. 1)
http://www.dinf.ne.jp/doc/english/access/tordis/index.html


カバー前袖

障害(しょうがい)をもつ子も健常児(けんじょうじ)とともに″と言われて久しいが、まだその(みぞ)は深い。

その大きな()(はし)となる本のために

障害をもつ子の(ゆた)かな読書体験のために

私たちは何をなさねばならないか―

著者の提言(ていげん)は、率直(そっちょく)で具体的である。

カバー写真/西村燎子、伊藤英治


本は友だち
障害をもつ子どもと本の出会いのために

中表紙 挿絵

装幀 関野邦章

カット 木村かほる


はじめに

はじめに 挿絵

1979年の国際児童年は、ユネスコにとって、子どもの生活における本の重要性に人々の関心を求めるよい機会となりました。また、1981年の国際障害者年には、ユネスコは障害をもつ子どもと本の問題をとりあげ、この子たちが日常生活にとけこみ、それぞれにふさわしい発達をとげるうえで、本が()たす決定的な役割を、広く一般に知ってもらうことを、重要な課題のひとつとしました。

この本は、子どもの本にかかわる人すべて―編集者、作家、画家、図書館員―に、障害をもつ子どもと本をめぐる問題を正しく知ってもらうために書かれたものです。

障害をもつ子どもたちは、しばしば友だちから遠ざけられ、社会の流れからはずれた片隅(かたすみ)の生活に追いやられて孤立し、さびしい思いをしています。その壁をとり去るためには、障害をもつ子どもが使える本、障害をもつ子どもが登場する本が必要です。障害をもつ子どものために、よりよい本がより多く出版されることが望まれているのです。

著者のトーディス・ウーリアセーター女史は、ノルウェー国立特殊教育研究所(こくりつとくしゅきょういくけんきゅうじょ)の準教授であり、この本の中で、障害をもつ読者のために、何を、どのように出版すべきかを、豊富(ほうふ)な知識の裏付(うらづ)けをもって示しています。女史の願いは、世界中の障害をもつ子どもたちによい本をたくさん読んでもらうために、国際障害者年が、長期的な計画と実行をめざす飛躍台(ひやくだい)になってほしい、というものです。

ユネスコ 「本と読書の研究」編集委員会


目次 挿絵

本は友だち 目次

表紙

カバー前袖

*はじめに・・・ユネスコ 「本と読書の研究」編集委員会

1 障害をもつ子ども 一つの挑戦(ちょうせん)

2 障害をもつ子どもとは?

3 本と日々の生活

4 施設の子どもたち

5 障害をもつ子どもにふさわしい本

6 他の活動の出発点としての子どもの本

7 本に登場する障害児

注釈

*まとめ

*訳者あとがき・・・藤田 雅子

*あとがきに()えて・・・乾 侑美子

奥付

カバー後ろ袖

裏表紙

原本書誌情報

目次 挿絵2