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事例報告

山下 公司(北海道札幌市立北九条小学校 発達障害通級教室教諭)

 改めましてよろしくお願いいたします。山下です。先ほどの野村さんのお話にありましたが、通級指導教室の担当をしています。よろしくお願いします。

 初めに通級指導教室って何なのというお話もさっきあったんですけれども、どういうことをやっているか、簡単にお話ししたいと思います。

 大体、二点。自立活動ということで、お子さんの障害の状態の改善または克服を目的とする指導。困難にしている根幹の部分の指導ということですね。それと併せて、どうしても学習面が難しくなってくるので、教科の補充指導ということで指導しているのが通級指導教室だと私は理解しています。

DAISY活用事例報告

資料01

通級指導教室での指導

資料02

 うちの教室では三つの柱で考えています。お子さん自身への支援・指導ということ。あと在籍学級。先ほどの話にもあったように、どのお子さんも通常の学級に在籍していらっしゃいますので、在籍学級への支援がもう一つの柱。最後に保護者支援ということで、そのお子さんを取り巻く環境ひっくるめてすべて支援していくということが、通級指導教室かなと理解しています。

教科の補充指導としてのDAISY活用

資料03

 今回、事例を出させていただきますが、そのお子さんについても、お子さん自身への指導・支援ということでお話しさせていただければと思っています。さらに今回、教科の補充指導ということでのDAISY 活用ということでお話しさせていただければと思っています。具体的には、国語における指導事例ということでお話しさせていただきます。

 読むことの苦手な児童への指導、読み取りの苦手なお子さんへの指導。併せてカッコということで、まだ試案の段階なんですけれども、どうしても読みに伴う書きというところが苦手なお子さんも多数いらっしゃるので、そのお子さんへのやっていることについてお話しできればと思っています。

 今回、数名事例として挙げさせていただきますが、あくまで一例としてとらえてもらえればと思っています。先ほどもお話ししたように教科の補充指導以外に、うちでは自立活動の指導も行っていますので、他の指導も合わせて効果を検討しなければならないと思っているのですが、今回は取り上げて読みのところを抽出して出したいと思います。あくまでも一例としてとらえていただければと思っています。

 1例目、読むことの苦手な児童への指導ということで、A 君、4年生の男の子です。読みに関する実態です。読むと文節で区切らないことがある。いわゆるたどたどしい読み方になったり部分的に逐次読みになるお子さんでした。教科書を読んでいくときはどうかというと、さらに逐次読み以外に困難なのは、勝手読み。文末のところを勝手に読んだりすることが割と多いお子さんだという印象がありました。

 一斉音読の時はどうなのかといったら、周りのスピードにもついていけなくて、要するにワーワーと言っているだけというタイプのお子さんだと思って見ていました。

読むことの苦手な児童への指導

資料04

 ではそのお子さんの苦手さを考えていきたいと思います。このお子さんへの仮説ということで、実際にはA君がどういうところが苦手かを考えて、そこに対してどこに指導のポイントを置いて、DAISY をどのように活用していったかということをお話しさせていただきます。

Aくんの読みの苦手さ(仮説)

資料05

 一つ目。文を一つのまとまりとして読むことがなかなか難しいお子さんで、1~2年生の頃は教科書も分かち書きになっていたりしますが、どうしてもその辺が苦手なのかなと仮説として立てました。もう一点、衝動性ということがあるのかなと思って見ていました。あとは読みのスピードと周りのリズムに合わせていくこと自体が苦手なのかなと。この三点に絞って指導していこうということで、読みに関しての指導をやっていきました。

DAISYを活用した指導

資料06

 実際にはどんなことをやったのかというと、まず文章単位の理解を進めないといけないと思いましたので、先ほどのデモであったように、一時停止はできたりするので、文章の区切りを意識させようということで、いったん一時停止して読ませて、文章の区切りを意識させるということで指導をしていきました。

 その際にDAISY を活用しながら読んでいくんですけれども、併せてそれをやった後に紙の教科書で実際に意識させて読ませるということで、「こういうことを頑張るからね」と事前にお話ししながら意識させて読ませるような指導を徹底していきました。

 これに関しては、予習というところで効果が高いのかと思っています。通常の学級にどうしても般化していかなければならないところでもあるので、予習というところでの効果が大きいのかなということで狙っていきました。

指導の経過

資料07

 次の事例ですが、衝動性と併せて周囲とのリズムということが難しいタイプのお子さんだったので、このお子さんについては、先ほどのお話にもあったように、読みのスピードを変えられたりできる部分もあったので、お子さんと調整しながら一緒にやっていきました。具体的にどういうことをやったのかと言えば、読み上げてくれるので、それと合わせて一緒に読むよ、ということをお話ししながら一緒にやっていくことをお話ししたりだとか、あとは勝手読みということがあったりしたので、同じように読むんだよということを徹底して意識させながらやっていきました。

衝動性と周囲とのリズム調整

資料08

 このことについては既に習っていること、内容がある程度入っていることの方が割と進みやすいかなということで、ここへの指導を考えたときには、今まで習ったものをやっていった方が効果があるかなと僕自身は思っています。

 指導の経過なんですが、4年生の途中から始めているんですが、2学期いっぱいまで12 回指導してきました。予習での指導ということでは毎回5分くらい、本人とどこをやるのか相談しながらやっていきました。そこでは文章単位での意識化ですとか、語彙がなかなか理解できていない部分があるので、そこを確認していくことをメインに予習をしていった。併せて復習での指導ということで、リズムの調整していく、あるいは衝動性に対応していくところで、毎回5分から10 分くらい、トータルで10 分から20 分くらい毎回指導していったという事例です。

 結果を見ていくと、本人の言葉なんですが、「先生」って朝来て言うんです。「DAISY やっているから何とか読めたよ」と。本人も「DAISY」といって自分の言葉として獲得しているんですが、「DAISY やってるから何々読めたんだよ」と言ってくれたりだとか、予習もやっているので、「実は今日、読むとこ決めてきたんだ」というようにお話ししてくれて、意欲的になっているのかなと思っていました。

指導の結果

資料09

 話は戻るんですけれども、うちの教室は通級指導教室なので、このA君も週に一度、1時間しかうちの教室では指導を受けません。ということなので1週間すると通常の学級でも進度があるので進んでいくんですよね。こうやって言ってくれるというのはとてもうれしかったと思っています。

 ではなぜ意欲的になったかと考えたときには、やはり読めるという自信と意欲というところも含めてなんですけれども、自信ということが大きかったのかなと、このお子さんについてはすごく思っています。そうすることできっかけとなってうまく転がっていったケースなのかなと思っています。

 うちの通級指導教室での変容を見ていくと、先ほどからお話ししているように意欲的に取り組むということ。あとは文章単位を意識しながら読むようにやっているので、そこは意識しながらやるようになったといこと。あとは、完全にはどうしても衝動的な部分がなくなりはしないんですけれども、「今日は気をつけて読むんだ」と言いながら、自ら気をつけて読むようになったのが、まだ半年しかないんですけれども一つの成果だと思います。

 通常学級の担任の先生がどう思っていらっしゃるのか、お聞きしたいと思っていましたが、なかなかその機会がないのですが。

まなびの教室での変容

資料10

 これがうちの教室で使っている連絡帳です。通級指導教室、うちの教室ですね、あと家庭、在籍学級の担任の先生ということで、簡単に今日はこういうことをやっていますよとか、そのときの様子はどうでしたよということと、おうちでの様子はどうですか、学校での様子はどうですかと言ったときにくれたコメントです。「国語の音読も上手に読んでいました」ということで、本人もスラスラ読めたんだとうれしそうに言ってますみたいなことをお伝えしていくと、意識的にそのお子さんの読みの苦手さについても見てくれたのかなと。全員が全員そういう先生ではないかもしれませんが、好意的に見てくれている先生だということで、ありがたかったと思っています。

 次です。読み取りの苦手な児童への指導ということです。このお子さんも、読み取りが苦手なお子さんです。読んでも意味がわからないんです。読めるのは読める、音読はできるんですが、読んでも意味がわからなかったり、テストは適当にあてはめて過ごしているというタイプのお子さんかなと思っています。

 このお子さんの仮説を立てたときには、読み取り、意味の理解の弱さだとか、どこに何を書いているかわからないというタイプのお子さんかなと思っていました。

読み取りの苦手な児童への指導

資料11

 このお子さんに何をやったかということで、やはり意味理解をやっていかなければということでやっていきました。同じように一時停止を活用して、語彙の確認をしていく。あと内容理解として段落ごとに行っていくということでやっていきました。これについてはある意味、予習と復習として下学年のものを含めて、本人のやりたいことも含めてなんですけれども、やっていけたかなと思っています。

Bさんの読み取りの苦手さ(仮説)

資料12

 指導の経過なんですけれども、2学期から開始しているので今までまだ5回くらいしかやっていないんですよね。予習では大体5分ぐらい確認して、復習ということがこのお子さんにはとても大事かなと思ってやってきました。あと、テストをやり直したり、本人がやりたいことをやっていくということで、下学年のものもやっていきました。

DAISYを活用した指導

資料13

 指導の経過。簡単にいきます。本人からの言葉で今、3年生ですが、2年生の教科書でやったはずの「スイミー」をやりたいと、ある日僕に言ってきました。その中で、「え、スイミーやりたいの?」とやっていくと、「スイミーって黒い魚なんだね」って言うんですね。1年前に習ったことなのに。そこがわかっていなかったんだってちょっと驚きだったんですけれども、そこの理解もなかなか難しかったのだろうなと思いました。テストをやり直したいということで、「満点をとりたいんだ」と言ってテストを持ってきました。実際に、これがテストの様子です。なかなか難しかったかなと思います。

指導の経過

資料14

 その後、大体2週間くらい、ここと同じようなところの内容をやっていって、DAISY も見ながらテストをやっていこうという形で、時間は確かにオーバーしたこともあるんですけれども、そこでやったときには実際に満点を取れて、一個一個丁寧に確認していった結果だとは思うんですけれども、本人はこれで満足して、家に100 点だと持って帰っていきました。

指導の結果

資料15

 学びの教室での変容ということで考えていくと、やはり意欲的に取り組むようになったことと、今まで習ったものを復習しようとするようになったこと。復習も含めて、「次は何々を読むからね」と約束して帰るようになったと思います。

まなびの教室での変容

資料16

 最後です。板書の苦手な児童への指導。これはあくまで試案です。グループでの指導ということで、大体うちの教室では3人一遍に指導していることが多いんですけれども、そのお子さんへの指導をやっていきました。やはり板書するのが苦手で、文書をそのまま写していくということもまず難しいし、第一周りのペースについて書くことも難しいというタイプのお子さんでした。

板書の苦手な児童への指導(試案)

資料17

 この子たちの仮説ということで考えていったら、黒板のどこに注目していいかわからない。細部への注意がどのお子さんも割と苦手なタイプでした。スピードもものすごく遅いということで、結果的には書字への抵抗が大きくて、取り組みに消極的になっているタイプのお子さんかなと思いました。

彼らの板垣の苦手さ(仮説)

資料18

 このお子さんでやってみようと思ったのは、まず細かいところに注目するよということで、ハイライトが出てくるのでそこを板書しましょうねということ。このことを通して完全に板書できるということではなくて、先ほど言った注目するというところで活用できたかなと思っています。そのまま写すよということを言っているので、句読点とかを意識しながらやっていくようにしました。

DAISYを活用した指導

資料19

 その裏には実は、DAISY の教科書読みというのをどの子も1年間、昨年度から使用していたお子さんなんですけれども、やってきていたということで、割と抵抗なく読むことができたので、書くことにも進めたのかなと思っていました。

 あと板書スピードへの対応ということも含めて、グループで行うということで、どの子も苦手なんです。先ほどもお話ししたように板書がすごく苦手なので、周りのスピードを意識させるようにしていきました。その裏には友だちを見守ることのできるグループづくりというのも大事になってくるかなと思いました。

 こういう形でテレビに映しながらやっています。

板書スピードへの対応

資料20

 まとめにかえてということで、通常の学級の先生から、低学年でこういうものを使ってみたらいけるかもしれないねというお話しをいただいたり、今回挙げたお子さんではないんですけれども、まったく読み書きが難しいというタイプのお子さんで、こういうDAISY があるよということでちょっと介入させてもらったお子さんがいて、そのお子さんが教科書ボロボロになるまで読むようになっていった、どんな魔法を使ったの? ということもありました。魔法も何も使ってなくて、こういうのがあるという情報を提供してやってもらっただけなんですけれども、そういう声もいただいたりしました。あと、特別支援学校のコーディネーターの先生からは、当然勉強していらっしゃるのでDAISY という言葉は知っているんだけれども、どうやって使えばいいかわからないんだということでお問い合わせがあったり、指導を見せてくださいということでお話があったりも
しました。保護者のお話から言えば、これをきっかけとして、読む楽しみを知ってもらえればいいかなと思っていますという話も聞けました。

 僕らに課せられた課題というのは、これから広めていくということ。先生方に伝えていくということも含めて、どう活用できるかということをお示しできればいいのかなと思っていました。どうもありがとうございました。

まとめにかえて(今後の展望)

資料21