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シンポジウム「もっと知ろう、デイジー教科書を!」
シンポジウム記録編

パネルディスカッション:デイジー教科書の普及に向けて

河村宏●

皆さん、こんにちは。これからかなり長時間ですが、パネルディスカッションの司会をさせていただきます河村です。よろしくお願いいたします。皆さんをご紹介する前にちょっとだけお話したいことがあります。

実は今年の6月にWIPOという著作権とパテントを扱っている国際団体、国連の機関ですが、そこが外交官の外交会議というものを開催して国際的な障害のある人のための新しい著作権条約の結論を出そうという会議を予定しています。ずっと長い間検討されてきたことですが、日本からは今、外国にデイジー図書を貸し出すことはできます。外国の日本の著作権37条で規定する障害をお持ちの方であれば、日本からは合法的に貸し出すことができます。ところが外国から借りられないことになっている国がすごく多いんです。例えばアメリカです。アメリカにはデイジーのタイトルが10万タイトルくらいあるのに借りられない。アメリカの著作権法が禁じているんです。いろいろな国の著作権法がそれぞれの国の中のことだけを考えていて、せっかくあるものを国際交換できなくなっている状況がありました。デイジーというのは、もともと国際交換をするために国際規格を作っているので、おかしいじゃないかと世界中のみんなで運動してきました。その結果、今度の6月にまとめの会議をやることになりました。それができ上がりますと、ご存じのようにデイジーはダウンローディングができます。ですから借りたい本がアメリカやイギリスや世界中どこかにあれば、そこから検索してすぐ借りられるという日も遠くありません。

それを実現するためにはやはり国際規格というものがきちんと守られている必要があります。今WIPOが検討している国際交換のためのシステムがあるのですが、それはデイジーとこの次のEPUBを前提として今、構築しつつあります。条約の結論が出ると比較的早い段階でそのシステムが動き始めるということが予想されています。あと半年くらい最後のダッシュが必要なんですけれども、この条約はほぼ日本の著作権法37条と同じ範囲の利用者が使えるようになります。

もともと今の37条は、例えば両手がうまく動かなくて本が持てない人が、今の著作権法だと一見、デイジーが使えないみたいに文章が書かれています。ところがこれは立法の経過を見ると違うんです。そういう人たちも含めて、あるいは、目はしっかり見える、でも手足が完全にロックしていて本を操作できない、ALSの方もそうですが、そういう人たちも一緒に使える法律を作ったはずなのに、法律の条文として書くときに、技術的な問題としてこういう表現で合意してくださいということになっていたものです。私たちは堂々と、そうした人たちも使えるんだということで、これまでもやってきましたし、全国の図書館の貸し出しの基準というのは、そういう立法の経過を踏まえたものになっているはずです。

それを含めて国際的に、普通の本を読むことができない人たち全てを含んだ、「障害を持った」という前提になりますが、障害者権利条約の実施としてWIPOがそういう条約を最終的な段階までもってきている。そういう今の時期という共通の認識を持ちながら、それではこれからどういうふうに進めていこうかと、少し国際的な広がりも考えながら今日の討論を進めたいと考えています。

前置きが長くなり恐縮ですが、パネルディスカッションのパネリストの方から最初、大体5分くらいの非常に短い時間でお願いしていますが、長くても10分までの間でポイントを最初述べていただいて、これからのディスカッションの口火を切っていただきたいと考えています。

そのあと、午前中いらっしゃらなかった方もいらっしゃると思いますので、今日の資料にあります現在の利用者の状況を示すアンケート結果の要旨を紹介していただいて、それからパネルディスカッションを行いたいと思います。今日のパネルディスカッションは、かなり皆さんから発言をいただく時間があります。聞くだけではなくてぜひ討論に参加していただきたいと考えていますので、よろしくお願いいたします。

パネリストの順番は、プログラムにあります順番でお願いします。最初の発表者、片山敏郎様。新潟市立上所小学校の先生で、社会科を主にご担当と伺っています。日本デジタル教科書学会の会長をされています。では片山様、よろしくお願いいたします。

片山敏郎●

皆さん、こんにちは。日本デジタル教科書学会というところで会長を仰せつかっています片山と申します。とは言いましても小学校の教員で、今も6年生の担任をしています。そういった視点からも私の考えを最初にお話しさせていただきたいと思います。

片山敏郎氏 スライド1(スライド1の内容)

デイジー教科書は、すばらしいものだなと私は常々思っています。ただ、普及していくにはすごくハードルが高いのが残念というか、何とかしていきたいと思っています。大体今、1,000人くらいが利用しています。けれども資料の最初を見ると2.4%の子どもたちが必要というか対象になる。そう考えますと40人学級だと1人ぐらいはこれを必要としている子どもたちがいるということです。今日のテーマである普及ということがすごく大事なんだろうなと思っています。

いくつかハードルがあって、申請を楽にすることが必要だとか、それから今日、操作講習がありましたが、ICTを使うときに、ファイルがもっと容易に入手できたり、もっと使いやすくなることが必要だと思います。あるいは教室で使うためには、1人1台、他の子どもたちも普通にiPadやパソコンを使う状態の中であれば教室に普通に持ち込んで、違うソフトを起動していても気にしなくていい、子どもの気持ちも多分楽になっていくんだろうなとか、そういうような視点が必要かと思っています。

今回私の方では、一番の問題としてまだ一般の教育現場でほとんど認知されていないということを挙げたいと思っています。私はデジタル教科書普及、推進をする活動をしていますが、その私でもデイジーは何となくわかるという感じで、同じ推進している仲間たちでも、名前は聞いたことあるけどもとか、どういうものなのかをあまりきちんと理解している人は少ないのです。また、そういうところに興味のない一般の先生方はまだ、ほとんどご存じのない状態という、残念な状態だと思っています。まずは、普通の先生方に知らせていく広報活動を第一に置きたいと提案をいたします。

誰でも思いつくような簡単なアイデアで申し訳ないんですが、すばらしいホームページが今、デイジーさんの方にはありますが、字がたくさんあってなかなかパッと視覚的に飛び込んでくるものとしては少し難しいという印象をどうしても持ってしまいます。一般の教員ってそういうのを、正直、あまり読んでいきませんので、まず視覚的に、子ども向けのページのつもりで、ここを見るとデイジー教科書が何となくわかるよというようなアニメーションだとか、あるいは実際の画面が出るのもの。少し階層を下にたぐっていくとあるんですが、「教員の方はこちら」というところから入ると、こういうふうに使えるものなんだということがわかりやすくあって効果が明確であるということが書いてあると、一般の先生方にも入っていくかなと思います。

片山敏郎氏 スライド2(スライド2の内容)

一般の先生方の間で本当に必要感があるとなっていきますと、そこから校長に話がいき、そして教育委員会に話がいき、ボトムアップでだんだんと必要感が出てきて、実際の教室の中に入れていこうという動きが起こってくるのではないかと思っています。

もう一つは、私が仲間とやっています学会だとか、あとデジタル教科書の研究会もございます。それらをぜひ上手に活用いただいてアピールしていただいたり、あるいは多分学術的にも、特別支援の学会ではたくさん発表もされていて、そちらの先生はわかると思いますが、デジタル教科書のいろんな教科をまたいだ先生方が発表できる場がうちの学会です。そういった場でいろんな先生方にアピールしていただけるといいかなと思っております。簡単ですが、よろしくお願いいたします。

河村宏●

片山先生、どうもありがとうございました。続きまして、埼玉県坂戸西高校の先生でいらっしゃいます井上芳郎様に次の発表をお願いいたします。

井上芳郎●

皆さん、こんにちは。井上と申します。時間も短いので、自己紹介は簡単にいたします。本業は高校で情報という教科を担当しています。学習指導要領が変わりまして、出来てから10年ほどの教科です。今日主催の日本障害者リハビリテーション協会さんとは、デイジー教科書や著作権法のことなどで、いろいろとお付き合いをさせていただいています。

中身に入ります。それから、別紙資料もお配りしています。まず資料1ですが、先ほど来、2.4パーセントという数字が出てますけれども、その根拠となっている文科省の調査結果抜粋です。それから資料2が、午前中にお話が出てきた教科書バリアフリー法関係。資料3はDiTT(デジタル教科書教材協議会)という民間団体で、デジタル教科書を推進する協議会ですが、そこが出しました政策提言の抜粋です。そして同じくDiTTが出しているデジタル教科書法案をご参考につけました。

私の発表では、今ここにお示ししたスライドの1から4まで、自問自答というわけではないですが、私なりに考えた問題点をあげてみました。

井上芳郎氏 スライド1(スライド1の内容)

まず1番目は、デジタル教科書などなくても、現実に学習できている児童生徒がいる。今、デジタル教科書というのはキーワードになっていまして、新聞、テレビ、インターネットなどでデジタル教科書の話題が飛び交っています。しかし現実にはデジタル教科書はまだ存在しません。というのは、いわゆる文科省の検定教科書のことを指しますが、文科省では紙のもの以外は検定教科書として認めていませんので、デジタル教科書というものはないのです。だからカッコつきで書いてあります。デジタル教材の扱いで、教科書会社が製作しています。実際にいくつかの学校で使われているとも聞いています。実物はいくつも私は見ております。そういうデジタル教科書が無いと困るのか。現実問題として、私が教えている高校生も含め、紙の教科書で勉強しているケースが大部分ですね。ほとんど100%です。ならば必要ないという話になってしまいます。

では2番目、紙だけではなくデジタルにした方がよりよく学べるのではないかということです。最近の若い人たちは、紙の新聞は読まない人が増えている、そもそも紙の新聞を取っていません。もはやスマートフォンで読む時代になってきています。コミック雑誌も携帯端末で読む時代です。ペーパーレスになってきています。学校の教科書だってデジタルの方が良いのではないか、よりよく学べるのではないかということです。私も片山先生と同じくデジタル教科書学会に所属しています。これだけ世の中がデジタル化しているのですから、いつまでも「学校だけは紙で」というのはあり得ないとも思っています。

3番目、デジタル教科書でないと学びにくい、あるいは学べない、そういう子どもがいるのではないかということです。これも最後に「?」がついていますが。ここで言うデジタルというのが実はくせ者で、逆にデジタル化したことで使いにくくなることもあるかも知れませんね。

最後に4番目です。ここだけ「?」がありません。これは自信を持って言えることだと思います。例えば録音や点字版の教科書がなければ全盲の方は読めません。弱視の方のための拡大教科書やデイジー版の録音教科書、古くはカセットテープでしたが、紙の教科書ではダメですが、こういうものがあれば学べる、デイジー教科書があれば学べるという子どもたちは確実に存在するわけです。ただ残念ながら、なかなか社会としての認識が進んでいないということです。

そして、※印を付けたところです。デジタル教科書は当時の民主党政権の施策で、当初は2015年までに配備という話でしたが、その後トーンダウンして、2020年までにとなりました。果たしてそこで考えられているデジタル教科書というものが、プリント・ディスアビリティという、通常の印刷物にアクセスしづらい方にも使えるのか、考慮がされているのかという疑問なのです。実は最初はあまり考えられていなかったようです。その後の審議会のまとめなどでは、配慮すべきと書かれるようになってきましたが。それでは全く新しいものを、ゼロから作らなければいけないのかということです。実はデイジー教科書がすでにあるではないか、それを使えばいいのではないかと思うのです。

井上芳郎氏 スライド2(スライド2の内容)

今お見せしているスライドは奈良県議会の意見書です。同様のものが全国の自治体議会から挙がっています。全部調べたわけではないですが、北海道、九州、沖縄まで多くの自治体から出されています。意見書は出ていないが、議会での質問で取り上げられているところも多いです。奈良県議会の意見書には、とても良いことが書いてあります。これだけデイジー教科書への期待があるのに、きちんと予算措置がされていない。最後には「強く要望する」と書いてあります。国の取り組みは今ひとつですが、地方自治体レベルではこういう意見が出ているわけです。

本当はエンドユーザーの方が、どしどし声を上げていただければいいと思います。なかなかそうならない事情もあるので、このあたりをしっかり踏まえた上で、進めていきたいと思っています。

河村宏●

井上さん、ありがとうございました。続きまして元公立学校の特別支援教育コーディネーターと資料には書かれていますが、現在、大学院で研究を進めておられます田中和美さんに、ご発表をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

田中和美●

支援教育に関わっておりますが、今日は大学院で勉強していることを皆さんにご報告します。

2011年度よりセンター入試で発達障害のある生徒にも特別措置が行われるようになりました。でもまだ、デイジーのような読み上げソフトを使ったテストは認められておりません。デイジー教科書で効果を上げた子どもたちが、テストなどで評価を受けるときにはデイジー版が認められない。テストでもデイジーが認められて、子どもの自尊感情があがるといいなと考えています。

そこで、テストの合理的配慮ということで、読み上げソフトを使ったデイジー版テストが、公平で、しかも個別のニーズに応じたものと言えるかという二側面から検討し、そこからデイジー教科書の普及について考えてみたい、ということで、今日、ご提案したいと思います。

田中和美氏 スライド1(スライド1の内容)

まず、テスト問題2題、1題は普通の紙のテスト、もう1題は、読み上げテスト、つまり、デイジー版テストを用意しました。デイジー版のテストは、奈良デイジーの会、今度、11日からNaD(ナディー)となられますが、そちらにお願いして作っていただき、iPadで実施しました。この紙テストとiPadテストの成績を比較しました。

通常の学級に在籍する中学3年生約150名に紙とiPadでテストをしてもらったのですが、テストの諸条件を揃えたことについてはここでは割愛させていただいて、結論だけ申し上げます。紙によるテストと、デイジー版のiPadによるテストの結果、通常の学級の生徒では、呈示条件の差はありませんでした。つまり、一般には、紙のテストでもiPadテストでも、得点に有意な差はないという結果を得ました。

田中和美氏 スライド2(スライド2の内容)

田中和美氏 スライド3(スライド3の内容)

もちろん、紙とiPadテストは、全員同じ点数だったのではなく、資料を用意していますが、個別に点数差を見ますと、(下図参照)その差は、ほぼ正規分布をしていました。その山の両サイドの裾野は、得点差の大きい生徒ということになります。

田中和美氏 スライド4(スライド4の内容)

右の方の平均より1SD以上離れたところには、紙の方が得点が高く、iPadでは得点が上がらない子どもたちの群があります。また、左の裾野の1SD以上の得点差のある子どもたちは、iPadの方が評価が高くて紙の方が低いという差のでた子どもたちの群です。

右と左の端の子どもたちを比べますと、左のiPadで点数があがった子どもたちの群に特徴がみられました。一つは、教科の先生方に伺ったところによると、読みにつまずいたり、読解の読み間違いがある子どもたちが有意に多かったのです。それから、成績の分布では、その群は、紙得点がかなり低いが、iPadでは平均よりちょっと上になるというような成績でした。

田中和美氏 スライド5(スライド5の内容)

このことから、iPad得点の方が紙よりも成績が上った子どもたちが、読みにつまずいている可能性があるのではないかと思われました。通常の学級にも、現在、いろんなつまずきを持っている子どもたちは、(先ほど井上さんがおっしゃったように)います。教室にいる子どもたちの中に、読みにつまずき、かつ、読み上げが向いている子どもたちがいる可能性があると考えられました。

また、テストの際、子どもたちにiPadテストの意識調査をアンケートで伺いました。iPadテストは、点数・評価が上がりそうですか。逆に、低くなる・自分には合わないと思いますか。あるいは、どちらも変わらないと思いますかというアンケートを行いました。

その結果、実は先ほど言った、iPadの方が紙よりも効果が出た子どもたちに効果の気づきは、はっきり出ませんでした。自分には効果があるという認識は、できなかったということです。

田中和美氏 スライド6(スライド6の内容)

もう一つ。iPadと紙得点には相関がありました。紙の高い子はiPadも高い。それから紙の低い子はiPadでも低いというのが一般的でした。

田中和美氏 スライド7(スライド7の内容)

その中で、この意識調査では、iPadで0点とか1~2点とか、点数の低い子どもたちの方がiPadテストにとても肯定的な回答でした。その生徒の自由記述を読むと、最後まで問題を読むことができてわかった、それから、読めない漢字が読めたので解けた気がすると書いてありました。

ここから考えられることとして、まず、評価が上がる子どもたちが気づかないというところから、やはり効果を本人に伝えていくことが必要だということです。それは本人にはなかなかわからないので、認知的なWISCなどいろいろ検査がありますけれども、そういう検査からどんな子どもたちに向いているかということを検証して、逆にそういう子どもたちに勧めてみるということも考えられるのではないかと思います。また、得点は取れなかったけど肯定的な子どもたちにとっては、入試問題は、正解までいくのにハードルが高かったかもしれません。でも、その中で点数には結びつかないけれど、わかるとか助かると思った子どもたちが、もっと早くからデイジー教科書と出会って学んでいたら、語彙とかいろんな面で違ってくるのではないかと思います。

田中和美氏 スライド8(スライド8の内容)

田中和美氏 スライド9(スライド9の内容)

田中和美氏 スライド10(スライド10の内容)

最後ですが、マルチメディアデイジー教科書というものがあるんですよ、使ってみたいと思いますか? という問いには、半数以上、83名が「ぜひ使ってみたい」と回答していました。わかるようになりたい、もっといろんな方法で学びたいと思っている子どもたちがいることをご報告したいと思います。以上でございます。

河村宏●

ありがとうございました。おかげさまで時間的にスムーズに、急かさなくても淡々と進んでおります。ありがとうございます。続きまして、専修大学文学部准教授、野口先生からお願いいたします。

野口武悟●

皆さん、こんにちは。専修大学の野口です。このリハ協のマルチメディアデイジーのシンポジウムでは、過去2年間のシンポジウムでも登壇しまして、学校の中でマルチメディアデイジーをどう普及させるか、学校図書館の機能との関わりを中心に話をしてきたのですけれども、今回はもっと根本的なところで、学校の先生、あるいは学校司書、もっと広くとらえれば地域の公立図書館の司書、そういう人たちの養成とか研修というところでマルチメディアデイジーをうまく取り入れ、紹介することが必要ではないだろうかと提案といいますか問題提起をさせていだたきたいと思います。

野口武悟氏 スライド1(スライド1の内容)

私は特別支援教育の中での図書館活用教育や、あるいは公立図書館の障害者サービスを専門としています。そういったこともあって学校であるとか教育委員会であるとか、あるいは各地の公立図書館などから研修の講師に呼ばれることもあるのですけれども、そういう機会にマルチメディアデイジーを紹介すると、そういうものがあるのを初めて知りました、あるいは名前は聞いていたけれども実際を見るのは初めてです、と言う先生方や司書の方が非常に多いのが実感としてあります。

今日のテーマは教科書ですが、教科書だけではなくて図書も含めて学校の現場でマルチメディアデイジーの普及を図っていくためには、やはりこれから教員になる、あるいは司書になる人の養成を担う大学での養成教育とか、あるいは現職の教員や司書の現職研修といった場でマルチメディアデイジーを学ぶことができる機会を設けていくことが重要だと思っています。

では、大学での教員養成や司書養成ではマルチメディアデイジーは取り上げられているのかということですけれども、これに関しては、担当する大学教員いかんというところが大きいと思います。私は主に司書養成に携わっておりますので、実際に司書を養成する段階で、マルチメディアデイジーを扱う機会がどれくらいあるかというと、現行のカリキュラムの中では、恐らく図書館サービスを概論的に学ぶ科目で、1時間あるいは2時間程度、障害者サービスについて概説する中で取り扱われるだけです。ですので、実際にマルチメディアデイジーそのものを見る、あるいは触れるような機会は非常に限られている状況だろうと思います。

その中で、全国的には例えば、関西ですと佛教大学、京都産業大学、関東ですと私の勤務している専修大学や明治大学などでは障害者サービスに特化した科目を図書館サービスの特論などの形で設けています。これらの大学ではマルチメディアデイジーについて、概説よりも詳しく学べるようになっています。ただし、こうした大学は、全国的に見ると数えるほどしかないという状況があります。やはりきちんと障害者サービスを1つの科目として位置づけて、その中で数時間かけてデイジーについても学ぶ、そういうカリキュラムを構成することが必要ではないかと考えています。

野口武悟氏 スライド2(スライド2の内容)

カリキュラムの事例ということで明星大学の事例を挙げさせていただいています。今日は明星大学の二村先生、平井先生がお越しになっていますが、実は私が一番注目しているのは明星大学での取り組みなのです。明星大学では、「図書館サービス特論及び演習」という科目を設定して、マルチメディアデイジーの製作を実際に授業の中で行うという取り組みをしています。

どこの大学でもそれができるかというと、確かに環境面、また指導する教員の問題もあって難しいにしても、こういう取り組みが大学教育のレベルで広がっていくことが重要なのではないかと思っています。

もう一点、今の話はこれから司書あるいは学校の教員になるという人の養成の話でしたけれども、既に現場にいる方々に対してはどうするかということです。現職の研修、教員あるいは司書対象の研修でマルチメディアデイジーが取り上げられているかというと、やはり限定的かなと思います。特別支援学校の現場に呼ばれて話をする機会があるのですが、その際、特別支援学校の先生に、マルチメディアデイジーを知っていますかと聞いても、あまり反応が返ってこないという状況が多いです。

そういう中で、私が関らせていただいた昨年度の取り組みをご紹介したいと思います。島根県は今、図書館活用教育に県知事主導のもと取り組んでいます。県教育委員会の特別支援教育課でも学校図書館活用に関する司書教諭や学校司書対象の現職職員対象の研修会を開いています。私が講師を務めたこの研修では、マルチメディアデイジーを実際に操作してもらいました。

現状では、こういうことを県レベルの研修でやっているところはほとんどないようです。やはり現職研修でこういう機会を設けることもかなり認知度を上げていく意味では重要ではないかと考えています。

最後に、これから先生、司書になろうという人や現職の人の養成や研修・養成を担う大学や教育委員会の担当者が、マルチメディアデイジーそのものを知らないと講義や研修のなかで取り上げることにはなりません。大学や教育委員会への働きかけが不可欠です。

これは誰が行うのか。まずは、マルチメディアデイジーを必要としているお子さんがいる保護者、あるいは関心を持っている保護者が教育委員会などに対して声を上げることが重要だと思います。そして今日このシンポジウムを主催しているリハ協であるとか関連する団体・グループによる働きかけももちろん重要です。

その際に、ただマルチメディアデイジーというものがありますよ、必要としている人がいるのですよと言ってもなかなか具体的に伝わりにくいことがあります。リハ協の方ではマルチメディアデイジーのパンフレットを作っていますけれども、今日、午前中に野村さんから紹介があったような活用事例なども含めた、もう少し詳細な冊子などを大学や教育委員会に配布するということも一つの有効な手段だと考えております。私の話は以上です。ありがとうございました。

河村宏●

ありがとうございました。続きまして、ご所属は大学なんですけれどもデイジー教科書製作グループの中核メンバーとしてご活躍の青森公立大学経営経済学部の神山先生、よろしくお願いします。

神山博●

こんにちは。「あおもりDAISY研究会」の神山と申します。他の先生方は制度上の問題、養成の問題、あるいは組織上の問題についてお話しくださいましたが、私はボランティアとしてデイジー図書やデイジー教科書を作る立場から考えられる問題についてお話ししたいと思います。今日は音声についてだけお話しします。

神山博氏 スライド1(スライド1の内容)

音声をデイジー図書に組み込むというのは、人の声を使って録音するという方法、音声合成を使って録音する方法、同じ音声合成を使うのでも再生時に音声合成を使う方法、大きく分けると三つあります。肉声を使う場合はボランティアの朗読者が録音するわけですけれども、音声合成と比べると自然な日本語の発声ができるということから、特に、小学校低学年の言語獲得時期、あるいは国語の教科書については肉声が必須だと私は思っています。もちろん異論はあるかと思いますが。

人がしゃべる場合、ニーズに合ったアクセントというのがあります。特に地方で使われるアクセントです。青森なら南部弁もありますし津軽弁もあります。また関西弁であるとか大阪弁であるとか、それぞれのアクセントがあるかと思います。どのような場合でも標準語がいいかというと、必ずしもそうではない。

それから読み方の基準です。どこで切るか。特に単語を覚える時期の子どもたちにとっては、ずらずらと読むよりは、単語や文節ごとに切って読んだほうが聞きやすい、あるいは練習しやすいという特徴があります。その際、ある程度の読み方の基準はそろえておいた方がいいと思います。

青森の場合は、朗読ボランティアも参画してくださっているんですけれども、素人、読みの訓練を受けていない人が録音する場合は、やはり朗読ボランティアの協力が必要かと思います。NHKの技術の方と話し合ったときに出たアイデアとして、NHK、公共放送のアナウンサー、あるいはアナウンサーのOBと協力関係が築けるのではないかと。音だけ彼らに録音してもらって、後から合体するという方法です。以上が肉声に関する問題とその案です。

神山博氏 スライド2(スライド2の内容)

音声合成システムについては、スライドに200万とありますが、単位は円です。100万円、200万円のお金を払わないと音声合成システムは使えません。もともと企業向けの音声合成システムですので。例えばコールセンターの自動応答音声であるとか自動アナウンスであるとか、そういった用途に販売されているものです。

いろいろありますが、ここには3つほど挙げました。HOYAの「VoiceText」シリーズ、日立の「ボイスソムリエ」シリーズ、エーアイの「AITalk」シリーズ。こういったものがありますが、ボランティアが買うにはとても買えない値段です。

一方、これら音声合成システムの技術を使って、民生レベルで販売されているソフトウェアがあるので紹介します。例えば「AITalk」でしたら「VOICEROID+」シリーズというのがあります。これが1万円台です。これの良いところは、お金の問題だけではなくて著作権法上の制限も少しゆるいという点です。音声合成システムの場合は、個人的に利用する場合はOKだけれども第三者と共有することはできないであるとか、公開することができないなど縛りがきついのですけれども、「VOICEROID+」シリーズについては、1つを除いて個人の資格で公開する場合は第三者に提供可能。逆にYouTube等でどんどん公開してくれと、そのような販売戦略をとっているソフトウェアです。

「VoiceText」のエンジンを使ったものではワープロソフトの一太郎に内蔵されている「詠太3」、それから「しゃべるんです」、そういったものがあります。「ボイスソムリエ」については、デイジーのオーサリングツールの「Producer」に組み込まれています。あとは英語音声合成でしたらTextAloud。これは英語だけでなく海外、いろんな国の音声があります。それからWindowsに関しては、これまで英語の音声しかなかったのですが、Windows 8では最初から日本語の音声も内蔵するようになりました。しかし個人がWindowsを起動している間にしか使えない。もちろん音声の共有はできないという縛りがあります。

「ドキュメントトーカ」は、クリエートシステムという会社のソフトですが、マイクロソフト社がデイジー製作者向けに無償提供している音声合成ソフトウェアです。このドキュメントトーカを使えば、ボランティアが音声を組み込むことができます。これは「Producer」に組み込まれている「ボイスソムリエ」についても同じです。一番下の「Dolphin Publisher」については、「ScanSoft Kyoko」という音声が組み込まれています。これもデイジーをつくる目的であれば使えるというものです。

以上、列挙しただけですけれども製作に利用可能な音声は意外に少ない。私はWindows8が出たときに、日本語の音声合成が使えることを期待していたんですが、残念ながら新しいWindowsでも日本語の音声の公開はできない。個人的な利用しかできない。ちょっとがっかりしたんですけど、この辺のことが、何とかなればいいなと思います。

一つの解決策としては、国がお金を出してボランティアの団体に対しては提供してくれる。あるいはリハ協さんでもいいですが、こういったソフトウェア、あるいは民生用ではなく企業向けのものを購入いただいて、我々のような製作者が使えるようにしていただく。

先ほどサイエンスの鈴木先生がおっしゃっていましたけれども、「AITalk」は非常に音がいいんです。ちょっといろいろな音のバリエーションをご紹介します。再生してみます。

(音声1)青森市には世界に誇る財産がたくさんあります。

(音声2)青森市には世界に誇る財産がたくさんあります。

これは「AITalk」です。

(音声3)青森市には世界に誇る財産がたくさんあります。

(音声4)青森市には世界に誇る財産がたくさんあります。

(音声5)青森市には世界に誇る財産がたくさんあります。

(音声6)青森市には世界に誇る財産がたくさんあります。

いろいろな音がありましたが、非常に聞きやすい音声ですね。どの音声も、アクセントの調整等を一切していません。アクセントの調整をすると、さらに自然なものになります。

(音声7)これは私が小さいときに村の茂平というおじいさんから聞いたお話です。むかしは、私たちの村のちかくの、中山というところに小さなお城があって、中山さまというおとのさまがおられたそうです。

この音声はアクセントの調整を若干していますが、非常にお勧めの声です。VOICEROID+ の「結月ゆかり」という音声です。宣伝するわけではありませんが、個人の名前で提供する場合は第三者への提供がOK の音なんですね。最後に商品名を出して恐縮でしたが、これで私のお話はおしまいとします。ありがとうございました。

河村宏●

ありがとうございました。それでは発表の最後になりますが、日本障害者リハビリテーション協会の情報センター長の野村さんからお願いしたいと思います。野村さんには時間を延長して、今日午前中にいらっしゃらなかった方も含めまして、アンケート結果を共有したいと思いますので、アンケートのことについても触れていただきたいと思います。では野村さん、よろしくお願いいたします。

野村美佐子●

先ほど、アンケートについては少しお話ししたのですが、資料を開いていただくと「平成24年度マルチメディアデイジー教科書提供者に関して」ということでアンケート結果を出しております。この中には考察はありません。

まず最初に、提供生徒数、937名になります。その中で学年別の内訳がありますけれども一番多いのが小学校4年生。その次に小学校5年とあります。これはきっと、小学校3年になるととても難しくなってきて、どうしても何か必要だというところで使う方が多いのではないかと思います。提供者数の中に高校一年の生徒がおりますが、中学生の教科書を使いたいという方です。最初、文科省とのやりとりでは対象者は「教科書に代わるもの」ということだったんですが、その後、担当の先生がその子にとって一番いい学年、適当な学年が下であると判断した場合には、その教科書を使っても良いことになりました。

都道府県別の生徒数を見ますと、一番多いのが大阪府なんですね。良く見てみますと提供者0という県もあるんですが、本事業の企画委員会においては、教育委員会の頑張りの度合いが反映しているのではないかという意見がでました。

それからデイジー教科書利用の責任者として、担任の先生、通級指導担当の先生、保護者、特別支援コーディネーター、本人の数がでております。これらの数は申請書の際に提供されたデータの責任者になります。

提供を受けた児童生徒の在籍学級についてですが、ここの表を見ると普通学級に119名いるのですが、彼らが普通学級で使っているかというと、そんなことはないわけで、この場合、最終的には保護者が責任者として申請書を出していることになります。在籍があっても普通学級の中でパソコンを使用して使っているという事例はあまり多くありません。大概は通級で使っている方が多いのではないかと思います。

また、使用しているデイジー教科書なんですが、やはり国語が多いです。どうしても読みに困難を抱えているということで国語の力が弱い、国語の本が読めないということから、国語に集中して、提供者としては製作しているという現状があります。

「デイジー教科書をどのようにして知りましたか」というところでは、「講習会で知った」、「知人から薦められた」という方は、結構多いです。

デイジー教科書を利用している機会についてですが、さっき申しましたように、意外と自宅学習が多いです。その観点から考えますと。学校というよりも、保護者が最初に子どもの読みが困難であることに気がついてて申請書を書かれた方もいたように思います。

次に、「デイジー教科書をどのぐらいの期間、使用していますか」という質問があるんですけれども、私どもは2008年からやっていますので、最多で4年になります。しかし、このデータをごらんになってお分かりのように2年以上は16人しかいないんです。ということは継続が少ないと感じています。

「どのような効果がありましたか」という質問には、「ハイライトの効果を感じた」とか、「読むことへの抵抗感、苦手感、心理的負担が減った」という効果を感じたことが、アンケート結果からお分かりになると思います。

また、「テスト問題などあきらめずに解こうとするようになった」では「大いにそう思う」人が20人いるというのはすごいことだと思いますが、実はこれはデイジーによるテストではなくて紙のテストなんです。せっかく、デイジー教科書を読んでも、最終的な効果がわかる部分がまた紙に戻ってしまうという部分で、「あまりそう思わない」という人も多かったように思います。テストをデイジー化した場合は、かなり効果があったということが別の調査研究からは出てきています。

それからデイジー教科書についてもアンケートを取りました。具体的には、音声についてですとか、音声スピード、ハイライトの長さ、コントラスト、フォントの大きさ、ルビ、行間、表示の設定についてお聞きしています。またパソコンに映し出される1ページの文字量についですが、アンケート結果によれば、大体、私たちが作った基準で使えていたのではないかと思います。ハイライトの長さについては多分、学年によって希望が違っていますが、こういうときはどうしたらいいのかなということが見えてきたところがございます。

デイジー教科書の再生に使用している機材についてですが、ほとんどの方がノートPCを使っておりまして、また、iPad、iPhone、iPod touchとかタブレットを使っている方も多いように思います。ノートPCと言いながらiPadも使っているという方も多かったように思います。

デイジー教科書を読むパソコンですが、大体の方が学校供与のパソコンを使っているんですが、個人の機材を使っている方もおります。というのは、学校のパソコンでのダウンロードを規制しているところがあるからです。学校でパソコンは使えない場合、ダウンロードには家のパソコンを使ったり、あるいは先生個人のものを学校に持ち込むという場合がございました。

最後に、図書館の部分で、「デイジー図書を読んだことがありますか」という質問なのですが、ほとんどの方がデイジー図書の存在を知らなかったと思います。例えば公共図書館、学校図書館など約136館においてデイジー図書を扱っていただいているんですけれども、そういうところに、借りに行っていないという現状が見えます。

ここからは、パワーポイントのデイジー教科書普及の課題について見ていただきたいと思います。

野村美佐子氏 スライド1(スライド1の内容)

普及を進めていくためには、デイジー教科書例えば学校の導入環境に問題があります。そこには、パソコンの再生ソフト、デイジー教科書データのダウンロードに制限がかかっているという現状があります。たぶんこのことは、先生方はすでにおわかりではないかと思いますが課題の一つだと思います。それから先生のICT知識不足ということがあります。なかなか「AMIS」のダウンロードができず、こちらの担当者に問い合わせをした先生もおりますが、それでもダメだったということがございました。こちらも課題です。

またデイジー教科書というのは本当にボランティアベースでしているということです。拡大教科書は予算措置が出ているんですけれども、意外と知られていないのがデイジー教科書には予算措置がないということです。法律の中では、教科用特定図書として「拡大教科書等」と書いてあってその等のなかにデイジー教科書がはいります。「等」と言うのは便利な言葉ですが、具体的な名前がでていないので理解されないことも多いように思います。

技術的な課題としては、製作者の方々は「うんうん。」とうなずいていますが、無償の製作ソフトが古くなっていまして、開発が終了してしまったものを使っていますので新しいソフト開発の要望があります。しかし、プログラム開発にはすごくお金がかかり、ボランティアベースでは作れないという状況があります。

デイジー教科書の存在を知らない行政や教育関係者が多いということも課題です。これは講師の皆さまにもおっしゃっていただきましたけれども、意外とデイジー教科書が知られていません。特殊教育学会で発表をさせていただきましたが、やはり特別なものとして見られていて、一般に普及が進んでいないことを感じております。

アンケートにもありますけれども、デイジー教科書を継続して使用していただきたいのですが、繋がっていないということも課題です。デイジー教科書の申請は毎年行わなければいけないんですけれども、そのまま教科書を使っていて申請をしない先生が結構おります。そうすると利用者の数には反映してこないんですね。毎年申請が必要だということは、申請書の要項の最後に書いてあるんですが、そこを読まない先生が多いと思われます。

野村美佐子氏 スライド2(スライド2の内容)

「普及に向けて」ですが、国の要望については、いつも言っていることなんですが、デイジー教科書に対する予算的措置と、それから合理的配慮としてのデイジー教科書の保障です。そうすると、そのための法的な後押しがあればもう少し広がるのではないかと思います。それから、先ほど申し上げましたようにダウンロードに関する環境整備とデイジー教科書提供システムの確立をお願いしていきたいと思います。

それから教育委員会の協力。これはとても県ごとに反応は違います。そのことがよく表れているのが利用者に関する県ごとの内訳です。

教育委員会の協力も必要です。教育委員会のほうで、ICT支援員の確保をしていただければというふうに思います。

「提供者として可能なこと」としては、このようなワークショッを開催するですとか、例えば「AMIS」ではなくて「Easy Reader Express」で簡単にコンテンツ読めるような提供体制を構築するか、もっと先生がフォルダ管理ができる方法を考え出すこととか、あるいは、各地で地域に根ざした私どものネットワークを通して先生や利用者のニーズに応えていくことが可能だと思います。

参加者に対する要望としては、こういったことをぜひ広めてほしいと思います。デイジー教科書のアンケート結果では、「知人に薦められた」ので知った方が多かったように思います。ということは、皆さまがそれぞれ、ぜひプロモーターになっていただいて、必ず一人には紹介していただきたいと思います。今日は110人の方が参加されていますので新たに110人の方に知っていただけることを期待しまして私のプレゼンを終わらせていただきます。ありがとうございました。


【パネルディスッション】

河村●

それでは再開したいと思います。これから討論の時間になります。

先ほど、パネリストの方からいくつもの問題提起をいただいたんですが、次の5つに絞って、ちょっと重なり合うところもあるんですけれども順番にみんなで討論を進めたいと思います。

一番最初に、まずデイジーを現場の先生をはじめとして、もっと広く知ってもらわないとまずどうしようもないんじゃないかという指摘がありました。その点について、どうやったらもっと広く知ってもらえるか。特に現場の普通の先生にも知ってもらうことができるのだろうかということについて、意見交換を一番目にしたいと思います。

その次は、ご発表の順番では井上先生と田中先生が発表されたことに関係するんですが、いわゆる合理的配慮という制度的なところで、教科書が読めない子どもに読める教科書を渡す、あるいは試験問題が読めない子に読める試験問題を提供する。そういう基盤整備ができていないときに、そこでとりあえずできることをして支援するという合理的配慮としての制度的な問題点、あるいは打開策について、そこでデイジーをどう使えるようにすべきか、制度設計などが入ると思いますが、2番目に合理的配慮としてのデイジーをどのように進めていくのかという論点を取り上げさせていただきます。

3番目は、やはり人の養成が必要なので、中心になる人材養成をどういうふうに進めていくのかというお話があったと思います。公共図書館の司書あるは学校図書館の司書の方の養成をどう進めるかということでもありますし、これから学校の先生、あるいは様々な教育機関に巣立っていく学生さんにどのように学んでもらうかということもあると思います。それから既に現職についている方やボランティア活動をしておられる方たちにどのようにデイジーを知っていただくのか。そういう人材養成、あるいは今それを必要としている人にどういうふうにデイジーを広げていくのか。支援者と言ってもいいかもしれません。そういう人材養成の課題を3番目に議論していただこうと思います。

そして4番目に、どう作るのか。やはり作るときの悩みというのは、今、私たちボランティア活動で作っていますので、作り手がもっとこうなってたら作れるんだけどというのはどうしても避けて通れない課題だと思います。どうやったらもっと作りやすくなるのか。作る方をどう考えていくのかについての意見交換を4番目にします。

最後に、教科書ということで今日は集まっておりますので、実際に必要としている子どもたちに教科書をどうやって届けていくのか。それが5番目のテーマにさせていただきます。

この5つの論点に沿って、これからそれぞれ時間を区切って意見交換をしていきたいと思います。その際に、関連する質問がありましたら、そのときに出していただきたいと思います。今までの例ですと、最初に質問を受けてしまうといろんな質問がワッと出て、時間がなくなる恐れもあります。今回、できるだけ大勢の方から発言をしていただくという思いを込めまして、今のように課題を整理させていただきました。最初にパネリストの方の中から、そのテーマについてお一人ご意見をいただき、その後、会場からご意見をいただく。その後は手が挙がった順にさせていただきます。

では今申しあげました順番に沿って、認知度をどうやって上げていくかということについて、こうやると認知度が上がるのではないか、今のやり方だとここが問題だということでご意見ある方、ぜひご意見いただきたいと思います。何か名案ありませんか? 先ほど、片山先生からご提案がありましたけれども、それも含めてご意見がいただければと思います。

会場●

教員です。教員は10年たつと免許の更新があります。そのときに必ず30単位、授業を受けなければいけないんです。各学校がそれを開いています。各学校じゃなくて、いろんな大学が門戸を開いていろいろ講座を作っています。私も去年受けたばかりです。その中に一つ講座を入れていただけたら、先生たちは必ず受けなきゃいけないわけですから、それを選択なさった先生たちに普及できるんじゃないかなと。それだったら協力してくださる大学を探せば、それなりにできるんじゃないかなと今ふと思いました。

河村●

大変具体的な提案をどうもありがとうございました。今のご意見についてのご意見でも結構ですし、その他の別の角度からのご意見でも結構ですが、どうでしょう。会場の方もパネリストの方も。

会場●

特別支援学校と大学で非常勤をやっています。教科書無償でやっているのは検定教科書と、星本と、107条本という形がありますが、その中で教科書として検定本が今回は上がっていると思って言います。その中でも紙媒体のものと拡大教科書、点字図書、そしてデジタルとあります。要は媒体がどういうものであるかということを保護者や本人が選択できるようにすればいいんですよ。そうすれば、本人が選択すれば、学校の教員は使わざるを得ませんから。そうしたら学ぶんですよ。一番のユーザーである子どもたちが選択できて利用されれば教員は学ばざるを得ない。それが一番だと思います。

井上●

お配りした資料3のところに、施策提言とデジタル教科書法案があります。DiTT(ディット)という民間団体が提言したものです。このなかで、まさに今ご意見いただいたことと同様なことが書いてあります。ちょっと抽象的な書きぶりですけれども。

実は、以前DiTT事務局で慶応大学の中村先生にお会いして、お話ししたことがあります。以前から片山先生が主宰されている、インターネット上のデジタル教科書の研究会のミーティングが名古屋でありまして、そのときにお会いしてお話ししたのです。それでというわけでもないですが、ここに書かれているような方向性が既に出てきているのです。これは2年前ですね。だからいろいろな方が、考えてはいると思うのですね。ただし、著作権法や教科書制度などのしばりが厳しく、大変なようです。ですからいろいろな方が、ニーズを叫んでいかないと、実現していかないと思います。

それから、教員養成や免許更新のときのカリキュラムに組むと良いのでは、というご意見についてです。学会などがやっている教職員向けの資格があります。例えば特別支援教育士などです。そういうところでぜひ組んでほしいということで、実は私もそういう学会の関係者だったので提案したことがあります。2~3年前、やっと遅ればせながらと言ってはなんですが、ICTの活用ということで資格認定のカリキュラムに入るようになりました。ただデイジーそのものがそこに入っているかどうかの詳細は、わかりません。まだそういう段階です。先ほどの方のご意見の方に私も賛成です。いろいろなカリキュラムに組み込むべきと思います。

河村●

ありがとうございました。今、みんなでデイジー教科書として配布しているもの、実は日本障害者リハビリテーション協会が中心になって苦労して届けているわけですけれども、この配布にすごい労力がかかっているんです。今ご提案がありましたように、選択できるというふうになると、無償教科書を提供するのは各教育委員会の責任になりますよね。配布する代わりに、作った後は流通して必要な生徒に届けるところは教育委員会がやってくれるということになると、ボランティアグループの負担は随分減ると思いますが、なかなか、そこがすっとはいかないんです。今の教科書バリアフリー法の規定や著作権法の規定を見ますと、文科省は、教科書のデジタルデータという一つのカテゴリがあってPDFデータがそういうふうに扱われているわけですが、よく考えてみるとこれもデータです。デイジーになっているものもデータだと考える立場もあるみたいです。そう考えると、PDFデータを配るのと同じような形でデジタルデータとしてのデイジーを都道府県教育委員会が、教科書と一緒に、必要があれば提供するというふうになるということも、制度的にはそんなに難しいことではないだろう。恐らく次の一歩として、配ればどうやって再生するんだということを必ず聞かれる。そうなったときにどうしたらいいのか。教育委員会として頭を抱える。予算面、人員面、それをどうするんだということがあって二の足を踏んでいるという。逆にやれることもやらないでいる。そういう場面があるのではないかと思うんですが、その点、どうなんでしょうか?

教育委員会は、そういう提案をすれば、すっと「やりましょう」と言ってくれる感じなんでしょうか?いかがでしょう。何か、特に教育委員会関係の方、ご意見ありますか?

実は、西宮市の教育委員会からはかなり熱心にサーバに置けないだろうかというご意見があって、法令を見るかぎりではやって問題なさそうだし、特に市にある市立図書館が、著作権法37条を使ってやれば市立図書館と学校図書館のネットワークで管理して、全部37条の範囲で管理できますので、それで必要のある子どもに渡すというのは法規的にはできるだろうと考えていたんですが、なかなか実現していないんですね。いろんな打開策に繋がるのではないかと思われます。

その他に、認知度を上げる、もっと先生達、教育委員会や校長先生、親の方にもに知っていただくにはどうしたらよいでしょうか?ご提言ないでしょうか?

野村●

教育委員会からは結構問い合わせが多いのですが、教育委員会自身が提供するというところにはいきつかなくて、無料であるというところに「いいですね」と言われるぐらいなのでなかなか難しい問題だと思います。やはりそこのところは、国が指導しないと何も変わらないと思います。

それから、媒体を本人が選択できることは、本当にいいことだと思うんですが、媒体が何であるか、どういうものであるかというガイドラインを作らないと、なかなかできないという話を文科省から、私がデジタル教科書を国の予算でと申し上げたときに言われました。

スウェーデンの国立点字録音図書館で略称がTPBというところがあるんですが、最近、名前が変わりまして、略称はMTMになりました。これはスウェーデン語なんですが英語訳はSwedish Agency for Accessible Media(スウェーデンアクセシブルメディア局)になります。媒体であれば点字教科書でも拡大教科書でもマルチメディアデイジーでも、利用者のニーズに合わせて何でも提供するというサービスがこの点字図書で始まっています。但し、スウェーデンでは小学校から高校までの代替教科書については、点字図書館ではなくSPSMという特別支援教育庁が管理していますが、高等教育の教科書については必要な媒体を点字図書館により無償で提供できています。

そういったふうに、いろんなメディアを提供できるセンターがあれば、対応できると思います。また、国が管理するというふうにもっていきたいと思っているのですが、そこまでどうやればもっていけるのかというのが、私たちには大きな課題です。何度かそういう話をしているのですが、なかなかそこまでいかないという現状がございます。

会場●

製作講習会を大阪教育大の教授と特別支援教育担当の教授と連携してやっていました。年5回くらい、1回10人くらいの製作講習会なんですけれども、2日間で大体12時間くらいの講習会の、参加者10人のうちの5名は実際に特別支援をやっている教員の方、あと、学生の方。あとはの半数は製作を実際にやりたいと考えてらっしゃる参加者で、年5回で教員の方とか生徒の方とか25人くらいでやっていたときがあります。

連携というか、学校とボランティアグループ、実際に田中先生とコーディネーターと生徒さんと親御さんとボランティアグループとも連携です。それからボランティアグループとの連携とか。1人でも幸せなお子さんがいて、幸せだったら、その1人の幸せな生徒さんを担当した教員の方とかコーディネーターとか。1人の幸せな先生がいたらその周りの方々とか。その辺の連携が。1人の幸せな生徒さんが連携をもっとうまい具合に回転させて、それが大きな動きになっていくのではないかと思っています。

河村●

ありがとうございました。今、大阪での連携の実例をご紹介いただいたんですが、今日の資料14ページの都道府県別の一覧を見ると、確かに大阪は177と非常に多い。東京は77であるのに比べると断然、差があると思います。やはりそういう連携活動の積み上げの反映もあるのかと思います。その点でいうと、宮崎県が人口比でいきますと目立って多いんですよね。必ずしも実数はここに表れただけではないというご意見もあるみたいなんですが、でも少なくとも宮崎県が他県と比べても多いのは、やはり何かそこにあったんじゃないかなという、今後のヒントがあるような感じがします。こちらに宮崎の方はいらっしゃいますか?…さすがにいらっしゃらないですね。では、今いろいろご意見いただいたんですが、この後、テーマを移しまして、また重なり合うところでご意見いただきたいと思います。

続きまして2番目のテーマ、これもとても大事なんですが、合理的配慮として学校でとにかく何とか配慮をしてくれないのか。それから試験のとき、入試のときに配慮ができないのか。その中にデイジーの教科書、教材、あるいは試験問題というものが必要なのではないかということです。この点をめぐりまして制度的な問題、あるいは今切実な切迫した問題等ありましたら、ぜひここでご意見をいただきたいと思います。まずパネリストの方、どなたかいらっしゃいますでしょうか?

田中●

合理的配慮って、難しいことだと思うのですが、やはりエビデンス、根拠を明確にしておかなきゃいけないというのはあると思うのです。「いいわ。よさそう。」という感じだけでは説得力がないので、いかにして根拠があるかということや、どうしてそれが合理的配慮なのかということを積み上げたりすることが大事だと思います。

今日お話ししたデイジー版テストと紙のテストは、通常はどっちでも得点に差がない。テストなので公平性という意味である程度見られなければならないところがあると思うんです。普通には両方どっちでも一緒だ。けれども、その子はiPadを使うと、あがる。効果があるということは、メガネをかけたらよく見えるというのと同じことだと思うんです。発揮できない紙のテストを押し付けられているのは、公平といえるか。また、その問題は、何を聞いているのか。問いの中身でなく、読み困難のために答えられないなら、それは、問いの内容の理解を聞いていないことになる。合理的配慮というものに関して、どういうふうに考えるか、どんなエビデンスを持って伝えたらいいかを考えたらいいと思うんです。

国立特別支援教育総合研究所で、テストアコモデーションに関する研究も行われています。外国でもテストのアコモデーションはいろいろあり、読み上げソフトもあるんですけど、効果があったりなかったりというような結果が出ています。それは条件がいろいろ違うようです。どんな条件だとこういうことが起こったとか、使ってみたらこんなふうになりましたというのを積み上げれば、そういうところから見えてくるものが、訴える力になるのではないかと思っています。

会場●

保護者です。今、うちの子は小学校5年生で、読み書きに問題があるのではないかとずっと疑っていたんですけど、はっきりおかしいと感じたのは小学校1年生でした。いわゆる作り読み、飛ばし読みのオンパレードで、音読をこちらが聞いているのも涙が出そうなくらいつらいという状況でした。彼の場合、IQは特に問題ありません。なので内容がわかれば全然問題なく暮らしていけるという状況です。ですが読むのに障害があるということです。大体、彼が持ってくるテストの点数は、国語だと60点取れてればいいほうなのですが、年に数回、100点を取って帰ってくることがあります。自信満々にテストを見せてくれるんですけど、そのときに必ず書いてある、問題文の言葉があります。

「CDでお話を聞いて、その問題に答えましょう」

問題文が読めればちゃんと解けるんです。そういうことで、そういう部分からでも音声言語が有意であるという確認はできるのではないかと私は考えています。

会場●

現場の中で気になっているのは、実際にデイジー図書、デジタル教科書が入ってくる中で、今度は我々教員は、それをもとにワークを作ったり資料を作ったりテストを作ったりするわけです。今の方のようにテストもデジタルでできればいいと思うんですけれども、そうしたときに二次的利用ですね、教育における特例がありますから、そういうのが使えるのかも含めて、少し教えていただければと思います。デイジー図書を二次的にも使えるのかどうか。お願いします。

河村●

どなたか法律的に今のご質問に答えられる方いますか?多分ここには法律家の方はいないと思うので、厳密に法律的立場でなくても結構ですので、ご意見いただきたいと思います。…では私から。

実はずっと著作権の交渉をやっていてもいつも問題になることなんですが、まず著作権法違反で問題になるのは複製権と、著作者人格権です。著作者人格権というのは著作者の人格をおとしめるようなこと、これは何年たってもやってはいけないという意味で守られるというのは当然だと思います。もう一つ、複製権というのは得べかりし利益、得られたであろう利益を損なわない範囲だというのが大前提であるわけです、どんな場合にも。要するに、それが大前提でそれを侵した場合には、刑事・民事それぞれ罪に問われるわけです。民事で問われれば、いくらの損害があったから、いくら損害賠償をしろと。それに精神的な損害賠償も含められることになります。

これは得べかりし利益の損害が絶対ないという場合には、基本的に問題ないというのが民事の世界であるわけです。

刑事の場合はどうなのか。先生が生徒のアクセスを保障するために、それを二次利用して何の刑事的な問題があるだろうか。刑事、民事の上でも、これで著作権者が一体どんな損害を被るだろうかというときに、それがないように十分配慮して著作権法の35条、先生が教室で著作物を利用する場合というのは非常に広い範囲で認められています。それを活用するということで、自信を持って進めていただいていい。

問題はそれをまたコピーして、またどこかに広く流すことがあると、これは責任の範囲ではなくなりますが、授業が終わった時点では、それは基本的に利用は終わったということで消滅しているということであれば、基本的に問題はないんだと思います。

ただ、私どもはもっとこれを進めて、すべての先生がいちいち自分で、また繰り返し、何百回も何千回も作るのかと。そんなことでいいのかというのがもう一つ、法律上の問題とは別に、教育上の問題としてあるんだと思うんです。それは法律問題ではない、と私は理解しています。

法律上の問題としては、とにかく著作権者に損害を与えないという配慮。その上で、せっかくできたものを、みんなが繰り返しやるのは何とも無駄なことだろう。その間、子どもたちは待たされる。これを何とかしよう、そういうふうに法律を改正しようということ。あるいはそれが今の法律でも解釈して著作権者も文句がありませんということで、特に法律改正をしなくても、そういう解釈でみんなでやっていこうという合意ができる。そのどっちかでしか解決できないと思うんです。

ただ、もっと根本的には、もとから教科書を作る段階でそのことに配慮していれば問題ないのであって、私どもの合理的配慮というのはその場しのぎの解決の話なんです。

合理的配慮というのは基本的なものができていない、ユニバーサルデザインになっていないので、そこで何とかみんなで工夫して解決する、それが合理的配慮です。でも本来は教科書をアクセシブルにするというのは基本的条件整備のはずなので、それは国の仕事としてきちんとやっていただきたい。

そういうふうなことで、教室での先生の活動としては、いわゆる二次利用と考えるよりは、著作権法35条で認められている教育活動の中での著作物の利用という範囲に大きく含まれていて、経済的な不利益を与えないことという配慮をすればできるということでいかがでしょうか。今の解釈はおかしいという方がいたらぜひ、ご意見をお願いします。

会場●

大学で図書館情報学を教えております。今、河村さんがおっしゃったとおりで、補足を私の立場からさせていただきます。

実は私も専門家ではないんです。私の師匠が、図書館における著作権法の第一の権威者です。彼の主張なんですけれども、わざわざ著作権法で例外として図書館と学校を1条挙げている。それはなぜかというと、著作権法ができたのは18世紀の半ばです。学校や図書館ができたのはそれよりずっと以前です。それらは正当な文化の伝承・発展のために働いてきたわけです。ですから図書館と学校だけは著作権法の聖域だったというのが、著作権法ができたときのゆえんです。そういう意味で、わざわざ別としているわけです。

皆さんが今のデジタルの時代になって商業的な理由というための道具として著作権が使われていますが、著作権は本来は文化の発展のために使われる道具だったわけです。その本旨にかえって萎縮とか過剰対応とか、それについてむしろ警戒するのが、学校や養護、更生などに携わる方々に認識していただきたいことだと思っています。

井上●

私は高校で教えておりますが、教科書会社の関係者の方、実は学校に来るのは営業の方ですが、いつも伝えていることがあります。情報の教科書だというのに紙の教科書しかないのですね。これこそ真っ先に、デジタル版を作るべきではないかと。それがないのは非常に奇妙な話だと。営業の方も「まったくそのとおり」とおっしゃってはいます。実は、正式な教科書ではないですが、いわゆる教師用の指導書の付録にCD-ROMがついています。その中にPDFで作ってあるものが多いですがデジタル版がついています。ある大手の教科書会社のものはかなり早くからHTML版も出しています。これはデイジーほど良くはないですが、合成音声でなんとか読み上げられます。もうそういうものがあるのです。価格は何十万円もするかというと、そんなにはしません。1万円ぐらい。多少は採算を度外視しているのかも知れませんが、現にあるのですね。

最近は教科書会社の編集の方と会えるようになりまして、いろいろ話を伺ってみますと、もちろん教科書会社といえども、営利企業ですから、利益が出る見通しがなければ進めません。なかなか動きがとれないそうです。なぜかというと、肝心のデジタル化の仕様そのものや、見通しが今ひとつ定まっていないから。だったらあるものをまず使ってみれば良いのではないか。デイジーは以前からあるのですから。

これは結局は国の施策としての、「やる気」の問題だと思うんですね。現実に諸外国ではもう進んでいます。去年の夏休みに韓国に行ってきました。韓国のデジタル教科書にはまた別の問題があるようですが、それぞれの国がそれぞれにスピード感を持って進めているようです。中にはデイジーを国策の一つとして進めようとしているところもあると聞いています。日本という国の後押しをするのは、有権者である私たちだと思うのです。

会場●

現在は一般企業に勤務しているんですけれども、将来は教員になりたいという思いがあって本日は参加させていただきました。私の意見というか、経験というか、デイジーからは少し離れてしまうかもしれないんですが体験談をお話ししたいと思います。

私は視覚障害を生まれつき持っていまして、小学校までは弱視だったので拡大教科書です。最初は普通の教科書を使っていましたが、徐々に視力が落ちていったので両親にコピーしてもらって最初は学んでいました。それでも追いつかなくなってきたので、どうしたらいいかなと両親が思い、私もすごく困っていたので、筑波大学附属盲学校の方に教育相談に行きまして、そこで、拡大教科書に出会いました。それで自分に見やすい教科書が存在するんだなと初めて知りました。でもその当時は、今から12年くらい前の話になるんですが、まだ今みたいに無償にはなっていなくて、ほぼボランティアの方に頼んで自分たちで自己負担という状況でした。

その後、私は点字に切り替えたんですけれども、両親の思いがあったので、私の経験も踏まえて弱視者問題研究会という会が全国にありまして、それぞれの地域に設けられているんです。その場でそれぞれの地域の子どもたちや保護者が拡大教科書を無償にしてほしいという運動をし始めて、最近、無償になったということがあります。

そういった長い年月をかけないとなかなか国にわかってもらえないとは思いますが、こういったシンポジウムですとかデイジー製作に携わる方々が地域に行っていただいて、地域ベースでどんどん広げていただけば、国もデジタル教科書が必要な子どもがいるんだと存在をわかってもらえるかと思います。教員の方々に知っていただくのも大切なんですけれども、当事者、子どもたちですとか保護者の方もどんどん声を上げていく必要があるかと思います。例えば、実際にデイジー教科書を使う方で集まって、国に提案していく、要望書など、そうやって集まる機会をどんどん設けていくことで予算に含まれていったりとか、今後、デイジー教科書が無償化になっていくのではないか、広く全国に広がっていくんじゃないかなと思います。

会場●

今のこととも関係しますし、今のテーマの合理的配慮。最初に話題になったのは試験のことだと思うんですけれども、教科書を提供できるようにしたい、それはもちろん今、努力していますが、同時に今、学校では最終的にはあまりいいことだとは思わないけど試験とは自分たちの教育効果の確認でもあり、生徒たちの指導に重要な役割を果たしているわけです。試験問題を少なくとも音声を併用した形でできればデイジーでと思いますが、できるようにしていくことが重要だろうと思います。

例えば大学入試とかセンター試験とか、そういったところで配慮できないのか。音声を使えないのかということを関係者に聞いたことがあります。実際、私、センターで音声問題等を障害者教育の専門にしている先生と非常に親しいものですから、音声の研究はあるんです。既に準備はされているんです。音声を使った試験ができるようにしたいと。そのためにどういうことが必要かと、ずっと研究してらっしゃるんですけれども、それが実現されない。実際に採用されない。

その最大の理由が、ニーズが伝わってきていないというんです。センターの方にそういう要望が来ていない。

例えば視覚障害者に対しては点字教科書が無償で提供されたり、拡大教科書が作られたりと、今言われたようなことがあるわけです。それは長い年月かけて、視覚障害者の団体が支援者と当事者と双方で長い歴史をかけてつかみ取ってきた権利というか状況なんですね。

私が発達障害、ディスレクシアの関係に関わるようになったのはごく最近なんですが、すごく感じているのは、保護者が組織化されていない。ユーザーが組織化されていないんです。保護者の声がこういうところになかなか伝わってこないです。その努力をもっとすべきだなと思います。

特別支援学校で視覚障害関係しか私は関わりがありませんが、特別支援学校の先生方を随分、多くの方を知っていますが、ずっと弱視できて拡大文字できても、点字が読めなかったらダメだよって言うんです。確かに視覚障害者にとっては目が見えなくなってきたら点字は重要で、それは当たり前のことですけれども、弱視者の教育はできないと。本を読むスピードが速くならないので、拡大だけだとなかなか読めないから、例えば大学入試でもできないので、高校のものでも、ともかく点字を教えるんだと言われるんです。

一方で点字が重要なことは確かにわかるんですけれども、中学ぐらいで失明ならある程度間に合うかもしれないけれども、高校に入ってから急速に目が悪くなったら、とても間に合わないです。やはり音声でそういう道が開けるようにするということがすごく重要だと思います。

その両方が関わっているんです。保護者のほうから声が上がらないから、大学やらセンター試験等が対応しない。それが対応してないから音声による教育に消極的になる。両方に関わっていると思います。やはり、こういうところに皆さん関わった方たちで声を組織化していくということが重要ではないかと思います。

河村●

ありがとうございました。国の資格試験の中で、あん摩・はりきゅうの試験は点字と音声、両方とも受験が認められていると思うんですけれども、ちょうどここに国立障害者リハビリテーションセンターの現職の教官の方がいらっしゃいますので、その辺りの事情を教えていただけないでしょうか。音声による、確かデイジー形式の音声だったと思うんですが、どのようにして国家試験で認められるようになったか、経緯などご紹介いただければ参考になるかと思います。

会場●

国立障害者リハビリテーションセンター函館視力障害センターで教官をやっています。うちは中途失明の方がほとんどなので、先ほどおっしゃられたように皆さんが点字をできるわけではないんですよね。今、あん摩・はりきゅうの国家試験は拡大文字、超拡大文字、点字、デイジーCDが認められています。デイジーCDが認められた経緯というのはあっさりした理由で、テープがなくなるからなんです。今、ほとんどテープは使われなくなってしまっていて、メーカー側ももう作らないと言ってきていまして、テープがなくなってしまうということです。あと、実際、視覚障害の世界ではマルチメディアでなくて音声のデイジーが本当に一般的になっています。うちの利用者もクラスの半分くらいがデイジーCDを使って教科書を読んで、勉強もPLEXTALKに録音してそれを繰り返し聞くというやり方をしています。

一番問題になってくるのは、そこまでいくと、先ほど言った試験問題。私たちの教官側の問題でもあるんですけれども、普段の模擬試験や中間・期末試験、それから提出する資料をデイジーで渡さなきゃいけないんです。本人たちはみんなそれを求めているわけです。ですから教官側が作れるようになるというスキルが求められてくるのが、やはり一番大変ではないかと思います。私も試験を作るんですけも、1つの試験を作るのに当たって拡大文字、超拡大文字、点字問題、デイジーCDの問題、4種類作ります。これがすぐできるのか、先生側のスキルというのも今後求められていくのではないかと思います。

河村●

ありがとうございました。合理的配慮についてそろそろ閉じたいと思いますがどうでしょうか、他にご意見ありますか?

会場●

まさにニーズを感じているので、お伝えしておきたいと思ったんですが、奈良の小学校の例なんです。5~6年の2年を通じてテストのデイジー化を活用している生徒さんがいらして、この春、中学に上がるのですけれども、小学校のときは業者テストで私たちに事前にテストがいただけてデイジー化をすることが可能だったんですけれど、中学校に上がると先生が製作されるので直前にならないとデータがなくて、デイジー化する暇がないということで、中学に上がるとどう支援しようかと、先生が今とても悩んでらっしゃいます。まさにぜひご相談したいんです。お金がかからずに音声化できる方法をぜひ教えていただきたいと思います。確実にその子どもさんは、初めはテストが3割程度の点しか取れなかったのが、デイジーを使って8割くらい取れるようになった。しかもクラスに2名おります。そういうニーズがありますので、その辺をつなげていけたらなと思います。

河村●

ありがとうございました。中学でも高校でも、合理的配慮を要望すると必ず、「今までどうしていたんですか」と聞くんですね。今までやっていたことがベースになって、「じゃあ検討しましょう」となりますので、今まで支援してきたお子さんが中学に行くときちゃんとそれが継続できるかというのは本当に重要だと思います。

会場●

学習論と情報教育論を専攻しているんですが。今の話とも関係するのかもしれませんけれど、あることを進めようと思うと、そのことに対する結果というのが要請される。例えば成績が上がるとかデイジー教科書を使ってもそれなりの成果が上がるとか。

だけど考えてみると、学ぶということは別に知識が獲得されたかという以前の問題で、例えば特別支援教育にデイジー教科書や拡大教科書や点字教科書というものが必要とされるというのは、教育の公平性とか基本的人権とか、そういうような問題であって、そもそもテストの点がよくなるとか何とか、それは当然、制度にもっていくためには必要かもしれないけれど、その以前にある問題じゃないかと思うんです。学ぶということ自体、知識伝達がうまくいったかどうかとか、知識を獲得するとかそういうことではなくて、文化を共有するとか、そういうこととしてとらえ直す必要があるのではないか。そういう前提に立たないと、いつまでたっても結果が出ないという話になる。恐らく一番解決しなくてはいけないのは制度だと思うんです。制度と広報だと思うんです。僕も知らなかったんです。井上先生に教わってこういうデイジー教科書があることを知ったくらいで全然知らなかったんです。それはずっと遅れることなので、今やれることは、僕は小学校の教育実習を担当していますが、教師の教育だと思います。教育実践者は、子どもたちをよくするためにはどういう方法をとるかを考えるべきだと思うんです。だから、自分の中にそういう子がいたら、そういうことが必要だと思ったら何でも使う。それは別に点を上げるということではなくて、知識を共有するということだと思うんです。点を上げるためではない。そういう教師を育てる。私だったらそれしかできないなということなんですが、そういう前提に立つべきだと私は思います。

河村●

ありがとうございました。次の人材養成のテーマにちょうどつないでいただくご発言だったと思います。それからもう一つ、今おっしゃられた大事なことは、格差の解消が合理的配慮であって、差別を解消することなんですね。ですからその結果、必ず成績がよくなるとかそういうことではなくて、今、現実に差別がある、それを解消する。また、先ほどエビデンスとおっしゃっていましたが、それも、こういうことが差別なんだということのエビデンスが必要ということだと思います。

合理的配慮については、これで閉じさせていただいて、次に人材養成と政策というところに入ります。時間が押してまいりましたので、人材養成と政策も結構人材養成が大変なので両方併せてご意見をいただきたいと思います。

片山●

今のお話に関係して、そして人材育成の話につなげて考えていました。私、小学校の教員をやっていまして、子どもが音声有意だとか文字が読めないためにテストができないとか、理解ができないとか、そこを見取るというのは、実は、正直わからないというか難しいです。先ほどのお母さんの話で、いいお母さんに恵まれたお子さんだなと思ったんですけれども、それに気づいてもらえる子ども、音声のテストだったら100点取れるんだと。この子は聞くのだとよくわかるんだと。我々教師ももちろん専門職として気づいていかないといけないのですけれど、そのへんは実は非常に難しいところです。ですので、人材育成というお話ですけれども、そういう研修というものはもっとあるべきだと、今この場に来て強く感じました。

特別支援の研修にはいろいろありまして、自閉症傾向のお子さんなどいろんな問題行動にどう対応するかという研修は多いのですが、こういう読みの問題だとか、この辺りの研修というのは公的な研修でも意外と少ない。意外と少ないということは、教育委員会レベルの教育センターといったところの方々もそれほどご存じでないのかなという思いがあります。

ですので、今いくつかの自治体で実際にデイジーについて理解があるところがあるわけですので、そういった先行事例というか、先行しているモデルケースというものを他の自治体さんにも伝えていくことをしていかれるといいのかなという気がしています。多分、この会を主催されている側の方で、あそこの自治体はちょっと進んでいるとか理解があるというのがいくつかわかると思うんです。そういう例を見える形で伝えていって、ぜひ行政の研修の中にもどんどん増えていって、理解が深まっていくといいなと思っています。

神山●

研修についてですが、私は個人的にある特別支援学校で2年続けて、年1回の研修会の講師としてデイジー製作講習会をやりました。1年目は1人だけ、続けて製作して実際に児童に使ってみようという先生が出たんですが、2年目の今年は早速翌日から3人の先生が、自分のパソコンにもインストールして作りたいとおっしゃったので、研修会を続けるのは良いことだと思いました。ですから教育委員会、あるいは学校教育センターの研修会以外に、我々のようなボランティアが学校に出向いて研修会で講師を務めさせていただくとか、あるいはLD・ADHD通級指導教室の先生方の研究会がありますので、その夏期研修会のようなところでお話をさせていただくなり、研修の場、あるいは製作講習の場を設けさせていただくと効果があるのではないか。一番目のテーマの啓発という部分にも関わってきますけれども、実際に作り手の先生方が増えるための後押しになっているだろうと思っています。

河村●

ありがとうございました。文科省が今年度、先ほど配られた資料の中に、その一部がありますが、活用マニュアルというのと今年度中に製作マニュアルという、ちょうど今、神山さんがおっしゃったような研修のときに配ってできるだけ広げるというものを文科省が今、日本障害者リハビリテーション協会に委託して製作しているところです。そういったものが整っていくということも重要なことかと思います。他にご意見いかがでしょう。質問でもいいです。どうぞ。

会場●

これは質問なんですけれども。例えば弱視だったら、医師が客観的に判断できますよね。いろんな検査をして視野狭窄とか。そういう専門の方が見える形でどこにでもいますよね。読みに困難のある子たちの診断というのは、ちょっと変だなと思っても、どこに行ったら客観的にわかるんだろう。普通の人は知りません。私も知らないんですけれども。そういうのを見えるようにしていく。専門家がどこにいるかということを見えるようにしていくことがすごく重要ではないかと思うんです。今、その辺りはどうなっているんでしょうか。教えてほしいのですが。

会場●

眼科医です。眼科医に行ってもなかなか診断されないですね。よくあるのは、眼科医を受診して評価してほしいと患者さんが行って、実際、何も異常がないということで帰されるということは結構あるみたいです。大阪ならLDセンターといって、大阪医大にあります。どういう医者に行けばいいかというと、小児科の発達障害を専門にしてる先生のところというのが妥当な線なんじゃないですかね。

中には眼球の、目の機能障害で読みにくくなっている方もいらっしゃいます。本当は眼科医がカバーしなければならないところもあるんですけれども、それを本当にわかって治療提供しているところはほとんどないのが現状です。今のところは発達障害を専門としている小児科医が紹介先ということになると思います。

会場●

私は発達障害児の父です。メルマガか何かでこの会を知りまして、初めて来させていただいて、わけのわからないことを言うかもしれませんけどちょっとお伺いしたいんです。

ここのホームページでサンプルみたいのを見せていただいたんですけれども、端的に言うと、書いてある本を読んでいるというスタンスで、読んでいるところが色反転しているだけのものかなという感じなんです。素人から見ると。確かにさっきから皆さんおっしゃっているように、ディスレクシアの方とか、さっきのお母さんのお子さんみたいに読めればできるんだという人に対して、あと、目が不自由な方に対しては素人考えでも、これは有効なんだろうなと思うんです。ただ話の中で、LDとか広汎性発達障害とかにもいいようなお話がさっきから出ているんですけれども。それはどういう効果があるというか、理屈はどうなっているのか、誰か教えていただきたいのですが。

河村●

今の質問の方向とはちょっとずれるんですが、もうお一人の方も手が挙がっていたので、そちらのご意見も伺ってから、一緒に議論させていただきたいと思います。

会場●

この会にはたびたび出させていただいて、1回ごとに理解が深まりまして、勉強させていただいていることに関してすごく感謝しています。音訳者のネットワークを作っております。

教科書をボランティアが作るということは、本来でしたらこれはボランティアが手を出すべき分野ではないと私は思います。ただ目の前に困っているお子さんたちがいるからには、誰かが作らなければならない。誰かがやらなかったら子どもたちは行政を待っていたら永遠に学べないという現状があるわけですから、それを否定するわけではありませんけれども、先ほどからお話にも出ているとおりに、両輪のごとく、これを作りながら行政にも働きかけていくことを絶対に忘れてはならないと思いますし、こういう会にも、そういう方たちにぜひ出ていただきたいと思います。

もう一つは、神山先生が先ほど、プレゼンでおっしゃった肉声というか、朗読ボランティアとの連携、それから元アナウンサーとの連携ということをおっしゃいましたが、私はそのとおりだと思うんです。マルチメディアデイジーを一般に作ろうと思うならば、非常にハードルが高くて、今、ネットワークの方々が作ってらっしゃるのは、もう本当に大変な努力をなさって作ってらっしゃると思うんですね。ですから、これは何とかして分業ができないものかと常々思っています。神山先生が、朗読ボランティアだとかアナウンサーだとかとおっしゃったのはまさにそういうことだろうと思います。私どもは、ここにもいらしていますけれども伊藤忠記念財団の方たちと一緒に教科書ではありませんが、マルチメディアデイジー図書を作らせていただいています。音声を提供しています。こういう協力ができれば、もっともっとたくさんの教科書もそうですし一般の本もそうですが、作られていくのではないかと思います。

くれぐれも、ここに集まった熱心な皆様で、行政に働きかけていくことができたらいいなと思います。ありがとうございました。

河村●

いわゆる読みの障害以外の障害。読みの障害のお子さんはたいてい他の障害も持っていることが多いかと思いますが、ご自身のご体験、支援の方で、こういうお子さんにはこういうのが有効だというお話があると先ほどのお父さんのご質問にも答えられるんですが。それから他の方でも結構なんですが、大阪の方だと大阪医大という、かなりの時間待たないといけないとも聞くんですけれども定評あるセンターがあるのですが、関東だとどうなのかという情報提供もいただけたらと思います。いかがでしょうか。二つです。

会場●

今の学校の前に通級指導教室の指導員をしていましたので発達障害の子どもを担任として教えていました。その経験で言いますと、パソコンというもの自体がとてもとても受け入れやすい媒体です。教材と言ったらいいんでしょうか。他のテストで×をもらうと、とっても嫌な気分がして、ワーワーわめいたりする子でも、パソコンで×をもらったら平気。パソコンはそういうものだから。人間から×をもらうのだって、パソコンが「合ってないよ、ブー」と言っても平気なんです。ですから機械対自分ということで、人間と一緒に勉強することですごくストレスを感じる子でもパソコンなら受け入れやすいという子がいます。ですので、ディスレクシアだけではなくていろんな障害のある子にいいと思います。

今、私がやってみようと思うのが、今いる学校で多動で教室にいられなくてなかなか居場所がない1年生が何人かいるんですが、その子たちもきっと、このデイジーシステムであれば同じ勉強をしているところの教科書を座って見ることができるんじゃないかなと思っています。早速、明日から担当の先生とやってみようかななんて、今日の会に参加したためにそんなことを考えています。

ただし、逆もあります。私が今担当している子で、私はクラスの子たちに授業で毎日使っていますが、合わない子もいます。逆に。いろいろな条件があると思います。ですから、100%ではないんですが、試してみる価値はあるかなと思っています。頑張ってください。

田中●

関連しているかどうかわからないんですが。私はADHDや聴覚障害、知的障害のお子さんにもデイジーを勧めたことがあります。とてもよかったお子さんがいらっしゃいます。やはり、個別のニーズなのでその子に合えばどういう障害だからいい、ということでもなくて、その子に合うんだったら使ったらいいと私自身は思っています。

それから、先ほど質問が出ていましたけれども、お医者さんの先生から聞いた話ですけど、読み書きは、LDは診断が難しいんだよねと伺いました。どうやって決められるかは、DSM-Ⅳというアメリカの精神医学会が出しているものを、基準にされるそうです。それをちょっと読んでみたいと思います。「Aその人の生活年齢、測定された知能、年齢相応の教育の程度に応じて期待されるものより十分に低い。B基準Aの障害が読字能力を必要とする学業成績や日常の活動を著明に妨害している。C感覚器の欠陥が存在する場合、読みの困難は通常それに伴うものより過剰である。」というものが、診断基準だそうです。

ちょっとわかりにくいのですけれど、要するに、例えば知能検査をしたら、その検査の値よりも十分に読みが下がっているという言い方が適切かなと思います。知能検査が、平均の100だったら、読み書きも100を期待します。基準としては、100の知的な力があるけど、学年相応のものがまだ読めなくて、読みだけ2学年低いというふうになると判断するんです。ただ医師はどのくらいが2学年遅れた読み困難であるかかが難しい。難しいところもありますけどねと言いながら診断するお医者さんがいらっしゃる。伺った話ですがお伝えしておきます。

会場●

目のトレーニングなんかでも、やってみないとどれが不得手でどの機能がノーマルなのかわからない。診断するよりもまず、読めないのであれば読める道具を渡して、使えるかどうかやってもらって、使えなかったらしようがないし、使えれば非常にハッピー。そこにいる子がハッピーだったらいいんじゃないかなと思っています。それだけの話じゃないかと思ってるんですけど。

医者がどう診断するか。読み書き障害は30%くらいは目の機能障害を伴っていてトレーニングすればある程度追いつくというかハッピーになる子がいると言われているんですけど、デイジーに関しては、読めなければまず使ってみるのがいいと思っています。

河村●

ありがとうございました。なかなか医学的診断については、いくらでも議論できる余地があると思いますし非常に難しい問題だと思います。今後の研究課題ということで、これまでとさせていただきたいと思います。

最後に会場の皆さんから、今後、デイジー教科書普及に向けて子どもたちの手に届けるために、これが肝心だというご意見がありましたら、ぜひそれをいただいて、その後でパネリストの皆さんから本当に一言、二言になりますが、まとめの発言をいただきたいと思います。

まず会場から、デイジー教科書、今日はテーマが教科書ですから、教科書にさせていただきますが、教科書を子どもたちの手に届ける上でこれが肝心なポイントだという、まだあまり皆さんで確認していないことがあればご意見をお願いします。

会場●

教科書のマルチメディアの製作を始めてまだ1年ほどで、経験は浅いのですけれども。素朴な疑問がずっとありまして、バリアフリー法を読みますと、提供の流れは、まず国が毎年度購入して学校の設置者に無償で給付すると。カッコして「教育委員会は給付に関して必要な事務を行う」と書いてあります。何でこのサイクルがマルチメディアデイジーに関しては回っていないのか。日本障害者リハビリテーション協会さんが取りまとめて、教科書を教師なり保護者なりに直接、提供されている流れになっているのがなぜなのか。なぜ国はこういった法律にのっとったサイクルを回していないのかが気になっております。パネリストの方にぜひ聞きたいのは、文科省などに折衝に行かれて、国は一体どう考えているのか。マルチメディアデイジーに関してなぜこういった法律にのっとった流れにしないのか。何がネックなのかを聞きたいと思います。これが解消されれば法律どおりの国の責任のもとに提供される流れになると思っています。

河村●

ありがとうございました。大変いいご質問を。後でパネリストの皆さん、お答えを用意しておいてください。では最後のご発言をいただきます。

会場●

普段は視覚に障害のある方を対象にあん摩・はりきゅう師の養成施設ということで教える仕事をしております。よろしくお願いいたします。

普及のポイントというところで私が考える意見というか、質問でもあるんですが。子どもたちが通う教室のデザイン。学校に本当に通わなくちゃいけないのか。箱の部屋があって机が並んでいて、白いチョークで書く。これが本当に教室のデザインなのか。歩けなくて学校に通えない子もいると思います。そういう子がデイジーを使って病院で勉強できる。あるいは家で勉強できる。普通の子でも今、学級崩壊があって学校に行きたくない子どもたちもいるので、別に学校に行かなくてもいいんじゃないかと。デジタル教科書って多分、物ではなくて、教室や学校に通うというデザインのところから変わっていくと、もっともっと、デイジーも読みに障害のある子どもたちでなくて、いろいろなたくさんの子どもたちにとって便利な楽しい教科書になるのではないかと考えています。以上です。

河村●

ありがとうございました。それでは、またパネリストの方には今日のご登壇順にお一人ずつ、まとめの言葉をいただきたいんですが。大体2分をメドにお願いしたいと思います。

片山●

今日はありがとうございました。私はデジタル教科書推進の活動をしておりますけれども、今日のお話を受けてますます思ったことは、2020年までに1人1台のデジタル教科書端末をこれから入れていくということで国は動いていますが、そうなっていくときに、そのままデイジーになるかわかりませんが、そのような部分をすごく大事にしていくことが大切だと思っています。音声の調節だとかハイライトするとか、それらが必要な子がそれを選んで使えるようになっていくべきだろうと。その機能が盛り込まれていて、自分はハイライトが必要だから使いたいとか、音声が必要だから使いたいということを、その子その子が自分で選んでいけるような選択肢のあるデジタル教科書端末、あるいはソフトウェアの開発を進めていく必要があると思いました。私も自分にできることをやっていきたいと思います。今日はありがとうございました。

井上●

さきほどの文科省はどう考えているのかというご質問ですが、実は私もそれを一番知りたいぐらいなのです。文科省の方にも何回かお会いしたり、メールしたり電話したりしましたが、つまるところはお金の問題なのかと思います。視覚障害のための点字教科書や弱視の方のための拡大教科書は、製作費はすごい高いのです。1冊何百万円するものもあるそうです。デイジー教科書の製作費の詳細を私は知りませんが。さきほどの2.4%という数字は文科省が出した数字です。小中学校の児童生徒数が約1,000万人ですから、2.4%というと24万人。それなりに大きな予算が必要かなと思います。ある文科省の人が言うには「数が多いので困難」と言うことのようです。日本のGDPの順位は確かに下がってますけど、まだ経済大国です。そういう国のお役人が言うべきことかとも思います。教科書の無償給与にかける予算は、小・中学校で400億円くらいです。400億円というと、文教予算が約5兆円ですから、1パーセント以下の額ですね。何でそのお金にプラスで出せないのかという気がします。でも皆さんが声を上げていかないと、この問題は解決しないのかと思います。

私のお隣の席に、デジタル教科書教育研究会の会長の片山先生がいらっしゃいます。私も会員です。この学会の前身と言いますか、母体となったのは「みんなのデジタル教科書教育研究会」と言います。今もインターネット上でのバーチャルな研究会として続いています。私はこの「みんなの」というネーミングがすばらしいと思います。「みんな」を付けた理由は何ですかと片山先生に聞いたのです。「それはみんなが使えるデジタル教科書、それをみんなでよく考えて、いいものを作りましょうということ」だそうです。

これはいい考えだと、私もすぐに入会して今もいろいろお世話になっています。去年の夏、韓国に行きました。韓国のデジタル教科書は実は苦戦しているそうで、事業仕分けの対象になりかけたようです。私は韓国のデジタル教科書の関係者と話をしました。デジタル教科書のメリットが活かせる道は、アクセシビリティやユニバーサルデザインの確保にあるのではないか、デジタルでなければできないことは、まさにそのことだろうと。そしてデイジーというのがあるとお話ししたら、「そういえば日本にそういうのがあると聞いています」とのお答えでした。帰国後早速資料をお送りしておきました。このようにこれからも、いろいろな方面に働きかけていきたいと思っています。

田中●

最近、8人以上の前で話すことがないので、今日はドキドキして話をしました。今日、お話を聞いてるとまた勇気が湧くようなこともございました。子どもの笑顔というのが一番大事で、あの子がどうかな、ニコニコしているかというのがとても大きいことだと思います。ボトムアップとトップダウンがありますが、私は、ボトムから、デイジーが向く子どもたちに、このツールはきっといいよ、応援するはずだよということを伝えていきたいと思っています。いつも、自分に、今、何ができるかということを考えたい。また、そう思ってると、教育委員会でデイジーの話をやってくださいということになったり、教育委員会がダウンロードできるようにやっていこうと考えて下さったり、つながっていると道が開けるということがあって、とても不思議だなと思います。

私がテストの合理的配慮を考えたのは、子どもの自尊を考えて、デイジー版での評価も入れてほしいなという願いからでした。デイジーは、言語理解がある程度あってワーキングメモリーや処理が低いお子さんにはきっと役立つというふうに感じております。

まだこれからも検証しながら、どういう子どもたちに届けたら、より笑顔が見られるかを考えていきたいと思います。ありがとうございました。

野口●

今日はありがとうございました。私は人材の養成や研修ということで先ほど話をさせていただいたんですが、今日のやりとりの中で、教員免許の更新講習でマルチメディアデイジーについて取り上げることが可能ではないかという話がありました。すっかり更新講習の視点が私自身抜けていまして、なるほどと思いました。専修大学でも更新講習を行っていますので、うまく取り入れなれないものかなと思ったところです。

あともう一点、やはり人材の研修のところで、井上さんからだったと思うんですが、特別支援教育士の認定カリキュラムにデジタル教材について組み込んだという話がありましたが、マルチメディアデイジーに限らず読みの困難さとその支援方法について体系的に研修が受けられるようなカリキュラムのモデルをリハ協が中心になって構築するということも必要なのではないかと思います。

神山●

おそらく今日の会場の皆さん方の共通認識になったと思うんですけれども、デイジー教科書を提供するというのは人権問題なんです。合理的配慮というよりも基礎的環境配備の範疇。合理的配慮の方は個別にさらに調整する必要がある場合に必要なものです。ですから人権問題、人権が侵害されている状況に子どもたちはあるということです。そういう状況でボランティアは本来は作るべきではないというご意見、まさに私もそうだと思うんですが、そうは言っていられない状況。それでも進むんだというのがデイジー教科書ボランティアグループのスタンスだと思っています。先ほどの音訳ボランティアの方にも協力してくださるというありがたいお言葉をいただきましたのでまた明日から進んでいけるかと思います。ありがとうございました。

河村●

野村さんには最後に閉会の言葉も一緒に、まとめてお願いしますので、私の方でここでパネルディスカッションの取りまとめのような区切りをさせていただきます。今日、司会をさせていただいて大変有意義なご意見をいただいたと思います。特に最後のほうの質問で、今の形のものを続けていっていいのだろうかということに関わるご質問があったと思います。文科省はどういうふうに、なぜこうなっているんだということです。実は数年前、私はそのことを直接、文科省の当時の特別支援教育課長とお話しする機会があって、多分、本音だと思うんですけれども、公式の会議の場ではありませんがこういうふうに言われました。「拡大図書の場合は最大の受益者が数千人と考えられる。だから受け入れられた」と。これは教科書バリアフリー法成立後の話です。「予算措置もできるという見通しももって、受け入れることができた。ところが、読みの障害の生徒は数が多すぎる。教科書、教材だけを提供しても必ずそれが、その次にどうやって再生するのかという再生機の手当が求められる。それを考えるとものすごい規模の財源が必要になる。だから、今のところは受け入れることが難しいんです」というご説明を受けました。これは公式の会議ではありません。恐らく文科省の中にも、いろんな立場の方がいるんだと思います。1人の方の考えというふうに受け止めていただいていいんですが、でも事態を全体としてよく見ると、なぜ研究をくり返すのかと言うくらい研究をずっと続けているんです。エビデンスが必要と言いながら、エビデンスはとっくに出ているでしょう。あるいはユーザーにエビデンスを求めるということ自体が無理なんじゃないか。国際的に見てもそうなんです。これで困っている、これで何とか解決できそうだというユーザーの声に対して「エビデンス持ってきなさい」なんて話はないんです。実際に困っているんですから。どうも全体を見ると、やはり予算の問題だろうと思います。

予算の問題というのは当然、財務省が、財布の紐を締めていますから、文科省とだけケンカしてもどうしようもないんです。つまり財務省に財布の紐を開けて、これは大問題だからちゃんとやらなきゃというふうに文科省も一緒に運動を広げないことには打開できないだろう。文科省が「いいよ」と言えばできる範囲内の予算規模ではないということが多分、一番大きな問題だと、私は今、思っています。ですからできるだけ文科省にも協力をするし、だけどあまりに変じゃないかというところもありますので、それについては率直な意見を申し上げますけれども、文科省が主敵ではないと考えています。

こういう今のボランティア任せの形というのは、本当におかしいと思います。本当におかしいんですけれども現実に子どもたちがどうなるのか。それはみんなでできる限りのことはせざるを得ないので、こうやってみんなで集まってやっているんだと思います。

それを抱えながら、だけどグローバルに同じ問題が実はありまして、それを世界中で協力して解決しようと、規格を開発したりツールを開発したり、あるいは国際条約を作ったり、とにかく世界中で手をつないで何とか解決するということを一方でやりつつ、目の前の一人ひとりの子どもの支援をする。それをしばらくは続けざるを得ないのではないかと思います。

今日は、こういうとりまとめをさせていただく立場で、皆さんに大変いいご意見をいただいてありがとうございました。私、大変時間の管理が不得手で、オーバーランしたことをお詫びして、とりあえずここで司会の任をおりて、野村さんのほうに、最後のまとめのご意見と閉会の辞をお願いしたいと思います。野村さん、よろしくお願いします。

野村●

私にとっても、このシンポジウムがいろんなことを学ぶ機会になったと思います。デイジー教科書の提供は、2008年から始まりまして、多分、2009年には国が提供していただけるようになるのではないかという甘い考えで始まったのですが、なかなかそのようには進まないところで直面している問題がいっぱいあります。その結果として、今回のワークショップの開催となり、パネルディスカッションでのパネリストや皆様のご意見を伺うことになったわけです。

皆様にはいろんな提案をしていただきました。そのうちのいくつかは既にしているということもあるんですが感謝申し上げます。ただ、4年間この活動を行って、確かに進んできてはいると感じております。文科省ともなかなかうまくいかなかった部分もありましたが、やりとりをすることで、どうしたら一人ひとりの「子どもの学習の用に供する」かという観点で、ご理解と調整ができるようになってきましたけれども、やはり私たちが求めているのは、もちろんボランティアとしてできることはありますが。ボランティアでやるのではなくて、国が保障することだと思っております。

そのためにはどうするかというと、会場から教科書バリアフリー法についておしゃっていた方がおりましたが、教科用特定図書のデイジー教科書というのはあくまで「等」なんですね。「拡大教科書等」ではありますが、無償給与ではないのです。この法律は、無償給与の場合のみにすべて適用される法律だと思います。無償給与でない教科用特定図書であるデイジー教科書の場合の適用範囲は、拡大教科書と同等ではありません。多くの方に「えっ、デイジー教科書って無償じゃないんですか」と聞かれるのですが、確かに教科書バリアフリー法に基づき、法律上は作成して提供はできるのですが、保障はないわけなんです。国の仕事を代わりに行っているとネットワークの皆様は、思っていいと思うのですが、文科省はそういうふうには思っていないのだろうと思います。

しかしながら、この活動は、やはりいろいろな形で前進していると感じております。そのことを一番感じることができるのは、人との出会いです。この事業を通して多くの方々に支援、それから提案、また利用者の要望などをいただきました。その中でできることを私たちは、ネットワーク団体とともにしてきたのではないかと思います。

日本障害者リハビリテーション協会の情報センターとしては、ウェブ(DINF)でデイジー教科書に関連する著作権の問題について、そして発達障害者の抱える問題などについて、あるいは当事者がどういうふうに問題に対応しているかなど、そういった情報提供を行ってきております。これはできることだというふうに思っております。皆様にはそちらにアクセスしていただきたいと思います。国際的にはどうなっているかもカバーしています。このようにしてデイジー教科書について理解していただくことで少しずつでも、前に進んでいきたいと思っております。

今回、参加者の皆様にパネリストになっていただいたことが少し進歩を意味しているのかなとも思います。いつもですと、パネリストだけでお話が終わって、意見交換もなく終わってしまうという、これまでのシンポジウムでございましたけれども、今回は皆様に忌憚のない意見をいただけたと思いますので、感謝申し上げます。

このシンポジウムは、要約筆記の皆様、ワークショップのお手伝いをいただいたネットワークの皆様、そして私どものスタッフ、みんなで作り上げたシンポジウムだと思っております。ご参加の皆さまには本当に長時間、お疲れかと思いますが、ここで何かを学んで、あるいは自分は何ができるのかという観点から、ぜひぜひご支援いただければと思います。本日はありがとうございました。