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平成18年度厚生労働科学研究
障害保健福祉総合研究成果発表会報告書

調査地域の各事例にみる「地域力」の状況

まず特徴的に言いますと、①に書いてあるように市町村の窓口がほとんどの方にとって一義的な情報を得る機会となっています。つまり相談支援というものがここ数年、国も含めて重要だということをケアマネージメントを含めて言ってきていますよね。その相談支援の窓口というのは、地域の住民からすると障害を持たない限りにおいてはいらない情報なんですね。つまり、障害を持って初めてどこに相談したらいいかというときに、それはあそこに「きらリンク」があるよとか、ILの会があるよといった具合にすぐ気づくような情報として地域住民の中で日常的に共有されていないのですね。それは当然のことかと思いますが。そうすると、どこに行くかというとやはり市役所なんですよ。つまりやはり市役所の機能として、一義的に相談を受ける機能というのは今後もやはり重要になってくるだろうというのが、今回の結果で出てきております。

②に行くと、ではそこで全部受けるの? ここが違うのだろうと思います。どこで相談していいかわからない、だから市役所へ行きました。では市役所で全て必要な情報が得られるのかというと、それはできません。そのときに相談支援とうまくつながるかどうかですね。この辺の流れが、郡山ではかなりスムーズにいっていると私は思っております。

尾道のKさんの場合は、自分でインターネットを利用して「頸髄損傷」をキーワードとして検索し、つながりを持ったのですが、そういう方というのはそういう力が準備されていた方なので、ある意味では地域の中ではそれほど多い例ではないのかもしれません。やはり、市町村が窓口になり、そこから相談支援につなげていくことが非常に重要になってくるのだろうなと思います。

次に5の「社会的な組織・ネットワークの存在とアクセスの可能性」に移ります。

まずここを2つに分けて考えました。「社会的な組織」、ここは仲間同士の集まり、こういったものとか、支援団体等を考えております。それから「社会的ネット」それぞれを、互助、共助、公助によって分けて考えております。

公助の充実については、郡山の例でもわかるのですが、当初の共助の充実が影響しているのですね。自分たちの必要性からネットを作り出してきて、それを地域の中で共有していくというのが共助ですね。でもそういう中で、市町村との関係ができる経過をたどって公助も入ってくるわけですね。だから生活支援事業をネットワークで考えると、これは公助と共助の混合型になってくるんですね。それが公的に最初作りだされたものなのか、郡山のように当事者運動という共助の運動の中から引き出してきたのかということが、実は地域の中ですごく違いになってくるのです。ここが一つのポイントになるかなと思います。

6番の「就労、生活の資金確保」です。実は今回の事例ではあまりお金に困っているという話題が積極的には出てきていないのですね。ここは地域性もあるのだろうし、それぞれの制度を使っているのだろうなというところも考えられます。ただ、裕福な生活をしているという事例はほとんどなかったと思っております。

就労については、これもいろいろ問題があるのですが、本来的な意味で就労している方少く、事例6の和泉村の方だったと思いますが、この方がジョブコーチを受けて就労を続けていることに対して、他の事例ではそういう支援を受けられないために職場を解雇された方が実はこの中にはいらっしゃる。つまり就労という基盤、これがすごく地域の中では薄いのですね。今回の障害者自立支援法で就労をということにかなり力を入れているように見えますけれども、ご本人が力をつければ就労というのは成り立つわけではなくて、やはり受け手である企業や地域の中でサポートする仕組みが絶対的に必要なんですね。そこについての踏み込みというのが、今回の障害者自立支援法でどこまであるのか、私も心もとない思いを持っているところです。

以上のような状況でまとめてみますと、この1から12までの点になるわけですが、いくつかポイントはありますけれども、非常に重要だなと思ったのは、郡山で見た運動もそうですし、渋谷で見た普段から歩きながら地域の方と関係を持つ例もそうですし、あるいは受障前にその地域の中で何らかの役割を持っていたために、受障後手助けしようという事例もある等、こういった関係性を持つということをどのように進めていくかということが非常に重要であり、当事者の方達が積極的に自分というものを地域の中でアピールしていくことも非常に重要なのだろうと思います。結果としてそういう中で思い悩んでしまって殻に閉じこもっていったり、あるいはしばらく地域を離れて20年ぶりに戻ったら、ご近所が知らない人だらけになっていた等の状況に至ってしまうことがご近所と関係性を持てず、どんどん孤立していってしまうのですね。やはり、そうであっても自分という存在をアピールしていくことが、実は近隣、つまり互助というものを引き出すことにもなるし、そういう中で情報を得て共助とつながっていけることもある。そうすると、地域のネットワークの中でその人の支援が成り立ち、その人のエンパワメントがされていくということになるわけです。

そのためにはやはり、自ら声を出していく。でもそうは言っても声を出しづらいタイプの方もいらっしゃる。そうすると当然その人を支える、児童であれば親御さんになるでしょうし、今回の14事例の中の成人の方をみると、近所のおばさんであったり、あるいは管理人さんであったり、こういう方たちが声を出していってくれる。そういう媒介者がいるかどうかということが非常に重要だと思います。

つまりは相談支援事業、あるいは相談支援を行っている地域の方たちにお願いしたいこととして、そういう方がアドヴォケーターになり、地域の中にどうやってその人というものをアピールして行くのか。こういったところから始めてもらうということが非常に重要だと思います。それがないと、いくら地域の中で資源が整っていても、結局はその人のニーズなり、その人の生き方というものがどんどん孤立して潜在化していってしまうというところが一番大きなポイントとして私は押さえて、今回分析をしたところであります。

谷口 ありがとうございました。

小田島さんに一つだけうかがいたいことがあるのですが、この表で、横軸に見て、丸がたくさんついている人が幸せだと考えていいのですかね。

小田島 「関係性」と「課題や要望」という分け方をしております。「関係性」が、たとえば旭川のA君で言うと、関係は持っているのですが、その関係が十分うまく機能しているかというと実は課題もあったりするのです。そうすると、横軸に全部丸がついているからいいかというと、必ずしもそうではない。ただ、アクセスをしているかという意味では、「している」ということになります。つまり必ずしもそうではないと言った部分は、その人がその人らしく生きているかというレベルで考えると、必ずしもそうでもない、アクセスしている質も量も十分かどうかというところに課題がありますよ、ということだと思います。

谷口 ありがとうございました。

続きまして、武田さん、よろしくお願いします。パワーポイントをちょっと替えますので、お待ちください。

武田さんのパワーポイント、ちょっと数が多いもので、手短にお願いしたいと思いますが(笑い)、よろしくお願いします。

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