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平成18年度厚生労働科学研究
障害保健福祉総合研究成果発表会報告書

調査地域の各事例に見る「地域力」の状況
当日資料

2.「外出や余暇のために確保できる資源や時間」との関係

  1. ガイドヘルパーと週末に買い物へ出かけるといったエピソードは、まず親と離れた時間を持つこと、街で買い物をするといった行為の定着と、その地域とA君の関係を育むといった、エンパワメントを高めるものである。(事例1)
  2. 本研究で取り上げた知的障害の方において外出が多い(事例4、5、6)
  3. ただし、渋谷区の事例4、5では、かなり活発な外出が見られるが、その中身を見ると作業所などに通う以外に知的障害者をサポートするサークルなどへの参加や同じ障害友達と街に遊びに行くというものであり、同じ地域に住む同年代の健常者や他の障害をもつ者との外出や一般の趣味サークルなどへの参加は見られないという偏りがある。
  4. 郡山市では、「あいえるの会」により、ILPプログラム等が展開されており余暇の機会は確保されているが、今回取り上げた、3事例すべてにおいて、これらのプログラムへの参加が見られない。それぞれのニーズに応じたプログラムを各種そろえることには物理的な困難を伴うものであるが、このような思いを受け止め、将来的にプログラムに広がりを持つように工夫していくことが重要。
  5. 尾道市の場合、必要な通院の帰りに商店街にある「サロン」(地区社協、町内会、住民の自主的なグループ活動が行う地域住民を支える活動であり、対象はそれを必要とする住民すべて。高齢者支援が数的には多い。市の単独一部補助がある。)に必ず立ち寄っている。余暇とは言い切れないが、この「サロン」といった空間が存在することの意義は大きい。

3.「生活を成り立たせるために必要な知識や技能を確保できる機会や場」との関係

  1. 渋谷区の事例3、4の場合、青年教室などが、知的障害者の社会参加に関してはそれなりに場の提供がされている。
  2. 児童の場合、保育所や学校が基盤となっている。(事例1、7、8)しかし成人となるとこの資源は少ない。特に知的障害をもつ人にとって、如何に卒業後から成人期を繋ぎ、知識や技能を確保させるかが課題である。
  3. 事例5、和泉村のBさんの場合は、就労に関しジョブコーチを受けているのは事例5のみ。
  4. 事例9尾道市のK氏の場合、尾道市以外に存在する基盤との関係において知識などを得ているところが大きい。マイノリティーである障害者が、同じ障害をもつ仲間どうして地域を越え繋がりあい、悩みや課題、そして生きるための情報を交換し合う広域的な共助は、今後も必要である。

4.「生活を成り立たせるために必要な情報を得ることができる機会や場」との関係

本研究で事例としてピックアップした人々は、地域支援に関わる本研究の協力者から紹介された人々であり、支援者との関係はできている。そのため、すべての事例においてこの資源は存在していることが前提となっている。しかし・・・・・

  1. どの事例を通しても基本的には市町村の窓口が一義的な機会の場となっている。(とにかく困ったときには先ず市役所へ)
  2. そこから派生して、相談支援事業者やサービス事業者と関係を持つ中で各事例に差が出てきている。ただし事例10尾道市のK氏の場合には自ら情報を得る機会を持っており、若干異なっている。
  3. 事例12狩俣地区のTさんのように、生活行動にあまり積極性が見られない場合は、情報を得るために自らが資源と関係性を持とうとする姿勢が見られない。
  4. 事例4渋谷区のcさんの場合、青年教室など積極的に活動に参加していることから、情報を得る場や機会はあると思われる。しかし、ヘルパーを利用したいが、誰に相談してよいかがわからないといった不満を持っている。
  5. 郡山市には、3障害それぞれに相談支援機関が存在するが、相談支援機関や市役所が普段から地域で生活する障害者と接点を持ち、情報を伝えるようなアウトリーチ機能を有しているか否かが重要。
  6. ただし、相談機関や市役所と当事者の間に何らかの支援者が介在する仕組みが必要。
  7. 例えば、事例3郡山市のCさんの場合の父親の知り合いであった「おばさん」。事例9尾道市のAさんの場合の、発症前からの知り合いであった民生委員や郵便局長の存在。これら互助による普段からの関係性が重要であるとも言える。

5.「社会的な組織・ネットワークの存在とアクセスの可能性」との関係

生活を楽しむための仲間同士の集まりなどがあげられ、後者は、意味ある情報を入手したり、必要な支援の提供ができる合同体などが挙げられる。

(1)「社会的組織」

  1. 生活を楽しむための仲間同士の集まりという点で渋谷区の2事例で報告があった、青年教室や当事者組織などが該当する。他の地域の事例ではこれに該当する報告がほとんど見られない。
  2. しかし、郡山市の状況でもわかるように、組織は地域に存在している。本人のニーズにあった活動となっていないかあるいは、それらの情報が本人に届いていないか、参加する手段に制限があるかいずれかの問題がある。
  3. 事例10尾道市のK氏のエピソードにある「サロン」の存在は、地域全体として価値のあるものである。

(2)「社会的ネットワーク」

主体別で互助、共助、公助それぞれに分類できる。

  1. 互助
    A) 事例8十津川村のK君の場合に見られる、彼を見守る近隣の住民体制。
  2. 共助
    A) 事例10尾道市のK氏の場合に見られる障害種別の当事者間の組織である広域的な頸髄損傷者ネットワーク。
    B) 事例11善通寺市のKさんの場合に見られる学生ボランティア組織。
  3. 公助
    公助は、市町村主導によりできた組織と共助組織がその必要性に基づいて作り上げた組織の2者が存在した。今回は、それぞれの組織に公的な団体が参画していること、支援費制度を含む公的サービスの調整を行うこともあることなどに着目し、公助として分類している。
    A) 事例2、3郡山市の各生活支援センターが関わるネットワーク。
    B) 事例7和泉村のA君の場合に見られる「障害児療育連絡事業」
    C) 事例9尾道市の「福祉サービス利用援助事業」
    D) 和泉村の「障害児療育連絡事業」については、市町村合併のため、この組織が解散するという事態となっており、市町村合併のデメリットとなっている。

※これらのネットワークは、障害者ケアマネジメントと共に存在する必要性がある。→地域で生き続ける力と体制を高めるエンパワメントを進めるために必要。

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