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平成18年度厚生労働科学研究
障害保健福祉総合研究成果発表会報告書

調査地域の各事例に見る「地域力」の状況
当日資料

6.「就労や生活するための資金の確保」との関係

この基盤の構成要素は、生活資金と就労。

(1)生活資金

  1. 取り上げた14例のすべてにおいて生活資金に困っているという報告は見られない。(年金、各種手当、生活保護といった公的支援があること、地域によって生活費が高くないところがあること、他に資産を有していること等が理由となるか?十分な分析はできていない。)

(2)就労

  1. 事例4、5が作業所へ通っていることを除くと、就労しているのは、事例6和泉村のBさんのみである。
  2. 障害をもちながらも就労経験があったのは、知的障害で事例4渋谷区のcさんと事例14狩俣地区のMさんの2人である。
  3. 事例13狩俣地区のSさんが受傷により離職している。
  4. との報告があったが、ほかの方については不明である。
  5. 就労を継続している事例6と現在は就労していない事例4,14の違いは、事例6においてジョブコーチとその後の就労にかかる支援を受けることができたところにある。
  6. わが国における障害者のジョブコーチは、これからの発展が期待されるものであり、すべての地域で利用できるようになるにはまだ時間が必要と思われる。
  7. 事例14のMさんは、人がたくさんいてにぎやかで楽しいからアルバイトをしたいと思っている。就労の確保という目的には社会との関係性や自己実現を果たすという意味も含まれていることがわかる。

まとめ

  1. 基本となる居宅介護などのサービスが提供される基盤の整備が重要なのは言うまでのもない。この点「障害者自立支援法」による介護給付として新しく整理されているが、介護給付のみが整っていれば、自立生活を継続できるかというと当然そうではない。
  2. 今回の14事例の中で、比較的その人らしく地域の中で生活していると思われる人には、サービスの主体を問わず、誰かしら本人の「生きる」ことを代弁または支援する者が存在している。それは親、商店街の人たち、民生委員、相談支援員、当事者仲間、学校の教員等さまざまであった。
  3. 当然困った時の支援者であり、関係する障害者にとってはとても重要な存在であるが、それ以上に本人の思いを受け止め、その人が望む活動の場を提供している事を忘れてはならない。
  4. 逆にこういった人との接点がない事例の場合、本人が抱える願いや希望が、半ば諦めと共に語られており、生活状況が孤立しているように見える。
  5. 一人一人の思いや願いを受け止め、その個人を支援することが、結果としてエンパワメント過程のⅠ型モデルを引き出している。
  6. 「地域力」を測るときの一つの物差しとして、このような個人の力を引き出すことが出来るシステムの優劣を調べることが役に立つと考えられる。
  7. 事例9尾道市のK氏に見られるように、先ず自らが発信し、輪を広げていく中で、支援してくれる人や利用できる資源と繋がっていく事が重要である。
  8. 自己主張が苦手と思われる、事例5渋谷区のbさんの場合でも外に普段から出て、社会と接点を持つことにより、靴屋さんやマンションの管理人さん等に理解と支援を得ている。
  9. 地域の中で生活を継続するには、当事者も自分自身の存在を地域の中で示し、自己を主張することが大切である。
  10. 周囲は自己の存在をアピールする障害者を受け止め必要な支援を提供する。この相互な関係性を高めていく中で必要な資源も開発されるものと考える。
  11. 資源の主体の違いが出てくるが、それは各々の地域が持つ性格の違いや、課題の性質の違いにより結果として違っているものであり、はじめに「互助」、「共助」、「公助」といった仕切りがあるわけではない。
  12. 先ずは主張し、それを受け止め共有し、互いに課題解決に向かうことがポイントであるということを事例を見る中で確認できたといえる。

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