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第3回アジア太平洋CBR会議

医療・介護・福祉の視点からのまちづくり
~高齢者や障がい者の生きがい・役割づくりに必要なこと~

志村大宮病院・茨城北西総合リハビリテーションター
常陸大宮市地域活性化プロジェクト「フロイデDAN」
寺門 貴(作業療法士)・西村 和也・木戸田 真・鈴木 邦彦

Ⅰ.はじめに

常陸大宮市は茨城県北西部にある人口約43,000人、高齢化率32%の中山間地域である。高齢化率の上昇に限らず、労働人口減少も顕著である。このように人口減少社会において地域包括ケアシステム構築や地域活性化が重要な取り組みとなる。そのためには医療・介護・福祉の枠組みにとらわれず、商業や農業など他産業との協働が重要になる。その課題を解決するために医療法人と社会福祉法人から有志を募り「地域活性化プロジェクト・フロイデDAN」を2010年に設立し、制度だけでは対応できない様々な課題に取り組んでいる。今回の報告は高齢者や障がい者の生きがい・役割づくりに焦点を当て、地域活性化も視野に入れて活動している「フロイデDAN」との関わりを中心に報告する。

Ⅱ.志村フロイデグループの紹介

当グループ(医療法人 博仁会、社会福祉法人 博友会、学校法人 志村学園)は、母体の志村大宮病院(一般病棟、回復期リハビリ病棟、緩和ケア病棟等)を中心に、介護老人保健施設、在宅医療サービス、通所系サービス、特別養護施設、グループホーム、就労支援施設、看護専門学校を有している。地域包括ケアシステムの実現に向けて、フォーマルサービスにとどまらず、地域住民を巻き込んだインフォーマルサービスの充実を目標に活動している。

1.フロイデDANの理念

①当地域において、人と人のつながりを創り出していきます

②もっと素敵な生き方にチャレンジするきっかけを提供します

③誰でも気軽に寄れて、何でも気軽に相談できる場所を創り出していきます

④まちと人を大切に思い、地域の幸せ創りを目指していきます

2.フロイデDANの目標

①地域が衰退傾向にある中で、高齢者や障がい者が地域活性化に参画しインクルーシブなまちをつくる。

②他産業とのネットワークを構築し最期まで安心して暮らせるまちを目指す。

3.メンバー

作業療法士、福祉用具専門相談員、介護職、介護支援専門員、管理栄養士、看護師等

Ⅲ.実施していること

1.地域活性(コミュニティカフェ活用)に関わること

①空き店舗をコミュニティカフェに改装し居場所づくり

常陸大宮駅前の空き店舗をコミュニティカフェに改装して、管理栄養士考案のランチ販売、定期的なイベント開催、学習会の開催など行っている。

②就労支援で作っているラスクの販売

店舗販売に限らず、まちのイベントや病院祭において対面販売も行っている。

③障がい者がリハビリテーションの一環で作成した作品の展示

作業療法で作製した作品を店内に展示している。製作者が友人を連れてきて社会参加の場にもなっている。

④認知症カフェの開催

地域包括支援センターと共に、認知症高齢者の社会参加と介護者の息抜きも兼ねて月1回開催している。認知症に関連することで「認知症サポーター養成講座」も開催している。

2.地域住民との協働

①「常陸大宮市まちづくりネットワーク」に参画させてもらいインクルーシブ社会の啓発

常陸大宮市では、農業・商業・文化・芸術・教育など、多分野の人々で構成されているまちづくりネットワークが存在する。数年前から参画して、高齢化率の推移や障がい者の社会参加について話す機会を得ている。

②農家への就労実習

障がい者の雇用拡大を狙い、地元農家で実習を試みている。今まで農家の方々は障がい者と関わったことが少なく、想像以上の能力に感心する場面も見られる。また、農家で栽培している野菜や果物をコミュニティカフェで調理して、商品として販売もしている。

③官民協働への参画

市主導での「市民協働のまちづくり指針策定委員会」で委員に任命され政策提言ができた。

3.高齢者の生きがい・役割づくり

①高齢者による料理教室(地域イベントへの出店)

通所リハビリの利用者主体で「男の料理教室」を作った。趣味程度で始めたものだが、夏祭りやイベントで出店するまで成長した。

②高齢者の特技を活かして子どもたちへの文化伝承

通所介護利用中の高齢者は、サービスを受ける側として受身的な姿勢が目立つ。自らの趣味や特技を活かして、世代間交流を行っている。

③高齢者のものづくり

通所介護の中でアクティビティーとして作製した作品を単に作るだけでなく、販売まで考えて製作している。

Ⅳ.変化したこと

①職員の変化

フロイデDANの活動を通して職員の意識改革につながっている。高齢者や障がい者に役割を提供することで主体的に動けることを目の当たりにすることができた。そこには「作業」という媒体が存在し、高齢者や障がい者の可能性を信じることができた。

②対象者の変化

受身的な姿勢から主体的に社会と関わろうという意識に変化しつつある。役割を持つことで、通所介護利用時には見せない生き生きとした表情を出すことができる。

③地域(住民)の変化

病院の職員としてではなく、まちづくり団体として認識してもらい、さまざまな活動を一緒に行うことができた。

Ⅴ.考察

①医療・介護・福祉の視点からのまちづくりが必要な理由

少子高齢化、人口減少、社会保障抑制などの社会問題がある中で、医療や介護だけでは解決できない課題が存在している。医療介護といったフォーマルサービスだけでは住民の生活を支えることが困難になり、住民組織(ボランティア)やNPO等さまざまなインフォーマルサービスとの協働体制構築が重要になると考える。国の医療政策も「治す医療」から「治し支える医療」へパラダイムシフトが起きている。個人の価値観が多様化する中で、その人の生活にとって何が必要なことか情報収集することが必要になる。そのためには、個人を取り巻く地域資源を把握することが重要であると考える。

②作業療法士的まちづくりの視点

作業療法士は病気や障がいだけに目を向けるのではなく、地域住民の健康をどう守るのかという視点がより強く求められる。作業療法士は「人-課題-環境」の相互作用をみており、地域課題の解決にこの視点は役立つと考える。また、高齢者や障がい者の「意味ある作業」を引き出し、主体的に関われる環境を作りだすことが重要である。今後、QOLを中核とした健康の考え方が浸透してく可能性が強いと考える。

【WORLD FEDERATION OF OCCUPATIONAL THERAPISTS Definition 】

Occupational therapy is a client-centered health profession concerned with promoting health and well being through occupation. The primary goal of occupational therapy is to enable people to participate in the activities of every life. Occupational therapists achieve this outcome by working with people and communities to enhance their ability to engage in the occupations they want to, need to, or are expected to do, or by modifying the occupation or the environment to better support their occupational engagement.

Ⅵ.CBRマトリックス

図(図の内容)


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