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2003年から現在までのDAISY for All (DFA) 活動の要点

河村宏 DAISYコンソーシアム代表/DFAプロジェクトマネージャー
野村美佐子 DFAアクティング・プロジェクト・マネージャー

項目 内容
会議名 DAISYコンソーシアム総会
発表年月日 2007年5月3日

スピーチ(英語による発表の日本語訳)
パワーポイントによるプレゼンテーション

スピーチ(英語による発表の日本語訳)

  これからDAISY for All (DFA)プロジェクト(http://www.daisy-for-all.org)についてお話をしたいと思います。このプロジェクトは、かつて日本障害者リハビリテーション協会で私の上司でありました河村宏さんと一緒に行なっている活動です。2003年には私どもの協会から国立身体障害者リハビリテーションセンター(http://www.rehab.go.jp/)に移っておりましたが、この活動においては、河村さんはいまだに私の上司というわけです。河村さんのイニシアチブのもとに今までに実施した様々な活動のまとめをここでお話ができればと思います。

DFAプロジェクトとは何かと申しますと、すべての人のためのDAISY(アクセシブルな情報システム)を普及するプロジェクトです。具体的には、アジア・太平洋地域における発展途上国に住む、通常の印刷物を読むことができない人々のために、DAISYを普及する活動になります。日本財団(http://www.nippon-foundation.or.jp/)の助成を受けて、5ヵ年計画として2003年に発足しました。

次にDFAの展望について申し上げますと、このプロジェクトは、DAISYの技術を効果的に利用して、発展途上国における能力開発を含む様々な目標や目的に取り組くみ、今日の情報社会において世界中の人々が知識を共有できるように、幅広い協力関係の構築を促進することを目指しています。

DAISY for All Projectの主な活動は次の4つになります。1つ目は、DAISYを普及する上でアジアの発展途上国において拠点となるフォーカルポイントの中心的な機関の確立です。2つ目は、DAISYの技術を教える人材を育成する国際的な研修の開催です。3つ目は、誰もが利用できるオープンソースのソフトウェアの開発です。具体的には、再生プレイヤーであるソフトウェアの開発とそのソフトウェアの多言語化です。4つ目は、様々な機会を利用して、DFAを広めるマーケティングの活動です。これらの活動を毎年、行なうことによって効果的にプロジェクトを実施してきました。

2003年には、アジアでのDAISYの普及を進めていくために、タイとインドに2つの地域センター(Regional Centers)を設立しました。ここには、普及のために献身的に働いてくれる2人の盲人がおりました。タイのモンティエン・ブンタンさんとインドのディペンドラ・マノーシャさんです。2004年からは、アシスタント・マネージャーとなったモンティエンとディペンドラの協力を得て、次の国々にフォーカルポイントを確立しました。2004年には、 マレーシア、スリランカ、ネパールに、2005年には、バングラシッシュ、ベトナム、インドネシアに、2006年には、 パキスタン、フィリピンにフォーカルポイントである拠点を構築しました。2006年の拠点目標であるブータンは、アプローチが難しくこれからの仕事になります。もしブータンにコネがあるかたがいらっしゃいましたらぜひ私に教えていただければ幸いです。尚、2007年度には、カンボジア、ラオス、モンゴルの国々でのフォーカルポイントの確立を予定しております。

フォーカルポイントでの研修について少し述べたいと思います。フォーカルポイントの確立、つまり拠点作りの最終段階として、前述の2人のアシスタント・マネージャーのコーディネートと協力でDFAの国際トレーナーである東美紀さんが研修を実施しています。この研修の詳細については、DFAのウェブサイト(http://www.daisy-for-all.org)に報告が掲載されておりますのでご覧ください。

地域センター(Regional Centers)は、先ほど説明をいたしましたように、タイのバンコクとインドのニューデリーにあります。モンティエンさんとディペンドラさんは、盲人でありますが、私よりもずっと有能で、それぞれが所属するタイ盲人協会(Thai Association for the Blind)(http://www.nectec.or.th/org/tab/index.html)とインド視覚障害者連盟(National Association for the Blind, India)(http://www.nabindia.org/sited/index1.htm)を通して積極的に国内の普及活動を行なっています。

ディペンドラ・マノシャ氏とディペンドラ・マノシャ氏の写真

ここにご参加の皆さんはフォーカルポイントが構築された国々では、現在までにどのぐらいの数のDAISYのタイトルが製作されたかに興味があるかと思います。今年の2月までには、フォーカルポイントの国では次のような数のDAISYタイトルが製作されました。タイ は1,500タイトル、インドは1,000タイトル、ベトナムは10タイトル、ネパールは37タイトル、バングラデッシュは20タイトル、スリランカは85タイトルが製作されました。製作の数が少ないところは、技術者の不足、ITのインフラが進んでないといったことがあげられると思います。

国際トレーナーのための研修は、1年に1回タイのバンコクで行なわれていますが、ここでは、将来、各国のDAISY製作技術の指導者として活躍する人を育てる研修を行ないます。ここでお見せしている写真は2006年の国際研修の時に取ったものです。研修参加者は、とても楽しそうに見えますね。この研修に東さんと共に講師として活躍してくれたのは、前に国際研修に参加したインドからの研修生でした。

トレーニングの様子の写真

オープンソース・ソフトウェア開発について少しお話をしたいと思います。DFAは、DAISYに関わるツールを開発するDAISYコンソーシアムのプロジェクトに多大な協力を行なっています。たとえばDAISYの製作ツールをCWI(オランダ国立情報工学・数学研究所)(http://www.cwi.nl/)、INRIA(フランス国立情報・自動制御研究所)(http://www.inria.fr/index.en)、NRCD(国立身体障害者リハビリテーションセンター)(http://www.rehab.go.jp/)、そしてDC(http://www.daisy.org/)のメンバーと共同で開発をしております。このプロジェクトは、立ち上げを北海道の浦河(うらかわ)で行ないましたから浦河プロジェクト(http://urakawa.sourceforge.net/)と呼ばれています注釈1。またSDK(http://urakawa.sourceforge.net/sdk/)と呼ばれる開発ツール一式の開発やObi(http://urakawa.sourceforge.net/obi/)(音声のみのデイジー3仕様の製作ツール)と呼ばれるソフトウェアの開発です。Obiは日本語では着物を着るときに締める帯を言います。そしてTobi(フルテキストを同期するDAISY3仕様の製作ツール)の開発に関わっています。

再生プレイヤーのアミ(AMIS:Adaptive Multimedia Information System)の開発注釈2は、もともと日本障害者リハビリテーション協会によって始まり、2003年からDFAのプロジェクトに移行していきました(http://amis.sourceforge.net/)。今後、CWIとの共同で、アミ/アンビュラントプレーヤーの開発も期待されております。
またW3C/SMIL(Synchronized Multimedia Integration Language)のワーキンググループ(http://www.w3.org/AudioVideo/)にも、アメリカに住むマリッサ・デマリオさん、英国に住むダニエル・ウェックさん、フランスから日本に住み始めたジュリアン・キャンさん、そして河村さんなどDFAのメンバーがこぞって参加し、SMIL3.0にDAISYのプロフィールを組み込みたいと意欲的な活動を続けております。

アミは, プログラマーのマリッサさんによるコーディネートで開発が進んでおります。最近のアミのバージョンは次のウェブサイトからダウンロードができます。http://amis.sourceforge.net/

2006年度のアミの多言語化のワークショップは、5月2~3日にかけてバンコクで開催されます。今日は、5月3日ですので、現在すでに始まっていますね。アミの開発は、DAISY NISO/ANSI Z39.86-200x (http://www.daisy.org/z3986/2005/z3986-2005.html)注釈3のサポート、リナックス・バージョンに対応すること、 マッキントッシュOS X バージョン に対応することも視野に入れております。今後、モジラ財団のファイヤーフォックスとの共同プロジェクトの可能性もあります。 アミの多言語化に関して翻訳プロセスの自動化への開発も進めているところです。アミというソフトウェアの開発を通して様々な試みが始まろうとしています。

プログラマーのマリッサ・デマリオ氏とジュリアン・キャン氏の写真

DAISYの普及を行なう上では、持続可能なDAISYの製作やサービスのためのDFA マーケティングの戦略は非常に重要です。DAISYが「より良い読み方とより良い出版 」注釈4であることを多くの人たちの認識してもらうこと、DAISYを利用して国際問題が解決できること、特に発展途上国における印刷字の読めない障害に関する意識の向上を目指すこと、DAISYの成功事例を開発・共有すること、WSIS(国連世界情報社会サミット)への参加 などが戦略として考えられます。 WSIS(国連世界情報社会サミット)に関してはどのくらいの方がお分かりでしょうか?WSISについて知っている方はお手をお挙げください。お分かりにならない方もいらっしゃいますね。WSISは、世界の国々の代表の方が集まって情報社会におけるデジタルデバイドを解決する方法について討議する場でした。サミットは2つの段階に分かれており、第1段階は、2003年にジュネーブで開催され、第2段階は、2005年にチュニスで開催されました。この2つのサミットのプロセスにおいては、河村さんとモンティエンさんが障害者コーカスのリーダーとなって積極的に参加しました。WSISでは、ICTは障害者の自立のために非常に役にたつツールなのに、WSISに参加する多くの人が障害者に配慮したITについては何も認識していなかったことからその認識を改めさせる活動が始まったわけです。 それぞれのサミットと平行して「障害に関するグローバルフォーラム」が開催され、障害者のための情報伝達技術(ICT)に焦点を当てた発表がDFAとDCのメンバーだけでなく世界中の障害関係者や当事者によって行なわれました。 障害者コーカスのサミットのプロセスでのロビー活動やサミットでの活動が実り、ユニバーサルデザインの概念や障害者に配慮した支援技術の開発に関する文言は、サミットの公的文書に組み込まれました。このことは、障害者コーカスの活動の大きな成果と言えます。

また、障害者の津波への備えに関する国際会議は、2007年1月11~12日にかけてWSIS行動計画の実践のためのネットワークの構築を目的として、モンティエンさんと河村さんによって企画され、タイのプーケットで開催されました。プーケットは、2004年の12月に津波が起こり多くの住民の命が奪われたことは皆さんご存知かと思いますが、このような悲劇は二度と起こらないようにという思いからこの思い出の土地での開催が決まりました。この会議の中では防災に関する様々な事例の発表と参加者を含めた熱心な討議が行なわれました。この会議の成果としてプーケット宣言が発表されました。

会議の様子

開発に関わる国連の活動にもDFAとして積極的な参加 をしております。WSISのフォローアップ や情報通信技術(ICT)および開発戦略会議のための国連の国際協定や-開発のための科学技術会議には河村さんが参加しました。また、ニューヨークで開催されましたG3ictグローバルフォーラム(Global Initiative for Inclusive ICTs)には、ディペンドラさんが参加しました。またそのフォーラムの開催と同時にジュネーブで開催されました国連人権理事会による障害者権利条約に関する特別イベントには、モンティエンさんが参加して障害者の情報に対する権利をアピールしました。以上のような会議やイベントの参加だけではなくて、国連が抱えている国際問題への取り組み、たとえば、障害者の災害への備え およびHIV/AIDSの予防に対してDAISYの技術を利用することで何らかの貢献ができると考えております。 最後に、アミの開発者であるマリッサさんにインドで行ないましたインタビューを皆様にご披露します。(ビデオを流す)このインタビューから、彼女がDFAのプロジェクトに生きがいを持って従事していることがお分かりになったかと思います。 アジアのみならず、世界中にDAISYを広めるためにこのプロジェクトに皆様の参加のお願いをして私のプレゼンを終わりにいたします。ご清聴ありがとうございました。

  • 注2:AMIS(Adaptive Multimedia Information System)の開発について
    日本障害者リハビリテーション協会では、平成14年度に社会福祉・医療事業団の助成により「障害者と高齢者に使いやすいインターネット対応マルチメディアプレイヤーの開発事業」を行いました。その事業で、パソコンをキーボードやマウスで操作するだけではなくタッチパネルやジョイスティックを使用してマルチメディアDAISY図書にアクセスが可能になるインターフェイスとして開発したのがAMIS1.3です。現在、AMISの開発は、DAISY for All projectに引き継がれており、2007年6月現在AMIS2.6がリリースされています。
  • 注3:DAISY NISO/ANSI Z39.86-200xについて
    DAISY3仕様は、2002年にANSI/NISO Z39.86-2002として米国情報標準化機構(National Information Standards Organization:NISO)によって米国の標準規格の一つに認定されました。その後、2005年に改正されたため、現在はANSI/NISO Z39.86-2005となっています。今後も改正の可能性があるため、200xと表記しています。
  • 注4:「より良い読み方とより良い出版 」について
    DAISYコンソーシアムのキャッチフレーズは、”A Better Way to Read. A Better Way to Publish.”です。

パワーポイントによるプレゼンテーション

DFAとは?

DAISY for All Project(すべての人のためのDAISYプロジェクト)(http://www.daisy-for-all.org)のことで、アジア太平洋地域における発展途上国に住む、通常の印刷物を読むことが不自由な人々のために、アクセシブルな情報システム(DAISY)を普及するプロジェクトのことである。これは日本財団(http://www.nippon-foundation.or.jp/)によって助成されており、5ヵ年計画として2003年に発足した。

DFAの展望

DAISY for All Projectはデイジーの技術を展開し、発展途上国における能力開発に取り組んでいる。また情報社会において、世界中の人々が知識を共有できるよう、プロジェクトが幅広い協力を促す拠点として仕えることを目指している。

DFAの主な活動

  1. 中心的機関の確立
  2. 国際トレーナーの研修
  3. オープンソース・ソフトウェアの開発
  4. DFAのマーケティング活動

フォーカルポイントと地域センター(Regional Centers)

  • 2003年 - タイとインド(地域センター)
  • 2004年 - マレーシア、スリランカ、ネパール
  • 2005年 - バングラデッシュ、ベトナム、インドネシア
  • 2006年 - パキスタン、フィリピン、ブータン
  • 2007年 - カンボジア、ラオス、モンゴル

フォーカルポイントの研修

中心的機関の研修の最終段階は、各中心的機関において実施された。東美紀の指揮の下、二人のアシスタントマネージャーにより協力を得て実施された。

より詳しい情報はDFAのウェブサイトをご覧下さい。
http://www.daisy-for-all.org

地域センター(Regional Centers)

バンコク アシスタント・マネージャー:モンティエン・ブンタン氏(Monthian Buntan)
ニュデリー アシスタント・マネージャー:ディペンドラ・マノシャ氏(Dipendra Manocha)

ディペンドラ・マノシャ氏とディペンドラ・マノシャ氏の写真

フォーカルポイントによって出版された書籍数

  • タイ  1,500
  • インド  1,000
  • ベトナム 10
  • マレーシア  120
  • インドネシア  20
  • ネパール 37 
  • バングラデッシュ 20
  • スリランカ  85

国際トレーナーの研修

将来のデイジートレーナのためのワークショップ

トレーニングの様子の写真

オープンソース・ツールの開発

  • アミ:CWIとの共同制作によるアンビュラントプレーヤーの開発
  • W3C/SMIL(Synchronized Multimedia Integration Language)のワーキンググループ(http://www.w3.org/AudioVideo/)参加:マリッサ・デマリオ、ダニエル・ウェック、ジュリアン・キャン、河村宏→SMIL3.0のデイジーのプロフィール

アミ(AMIS: Adaptive Multimedia Information System)

  • アミ:マリッサ・デマリオ(Marisa De Meglio)氏によるコーディネート
  • 入手先:http://amis.sourceforge.net/
  • アミのローカライゼーションワークショップ―2007年5月2~3日、バンコクにおける
  • アミ開発の指針
    - DAISY NISO/ANSI Z39.86-200x (http://www.daisy.org/z3986/2005/z3986-2005.html)のサポート
    -リナックス バージョン
    -マッキントッシュOS X バージョン
    -モジラ財団のファイヤーフォックスとの共同制作
    -AMISの翻訳プロセスの自動化

持続可能なデイジーの製作およびサービスのためのDFA マーケティングの戦略

  • 「より良い読み方、より良い出版方法」に関する世界的な意識の向上
    -デイジーによって解決し得る国際問題の攻略
    -特に発展途上国における印刷字の読めない障害に関する意識の向上
  • デイジーの成功事例の開発および共有

WSIS(国連世界情報社会サミット)への参加

  • WSIS(国連世界情報社会サミット)の二つの段階:ジュネーブ(2003年)とチュニス(2005年)
  • 河村宏およびモンティエン・ブンタン氏のコーディネートによる障害者コーカスはWSISに積極的に参加した。
  • 障害に関するグローバルフォーラムは、障害者のための情報伝達技術(ICT)に焦点を当てサミット開催期間中に開かれている。
  • ユニバーサルデザインの概念および支援技術の開発は障害者に配慮し公的文書に完全に明言された。

障害者の津波への備えに関する国際会議 2007年1月11~12日 プーケットにて

会議の様子

開発のための国連活動への積極的な参加