セッション2 発達障害の理解と支援の実際を考える ~本人主体によるサードプレイス(第三の居場所)の実践を通して~
- 話題提供者:
- 関根 礼子 当事者、NPO法人ネスト・ジャパン
- 綿貫 愛子 当事者、NPO法人東京都自閉症協会
- 世田谷区受託事業みつけばハウス
- コーディネーター:
- 藤野 博 東京学芸大学 教授
- 藤野
-
皆さん、おはようございます。
今日は2日目という方も、初めて参加される方もいらっしゃると思います。
これからセッション2を始めたいと思います。
昨日も口頭でご説明しましたが、改めてパワーポイントを使いながら、本日の趣旨と流れをお話しします。
まず、抄録集をお開きください。
本日の進行ですが、最初に私から企画趣旨の説明を5分ほど行い、その後、実践例の紹介として、本日ご登壇いただいている関根さん、綿貫さんに、それぞれ30分程度お話しいただきます。
その後、意見交換の時間を長めに設けています。ご感想でも結構ですし、どのようなことでも構いませんので、フロアの皆様からぜひ積極的にご発言いただければと思います。
それでは、趣旨の説明に入ります。
発達障害のある児童・生徒の学校生活における課題として、さまざまな側面での難しさや困難さが指摘されています。たとえば、学習面の困難、対人関係の困難があります。
また、感覚の問題も非常に大きなテーマです。感覚の過敏性があったり、逆に鈍さ(鈍麻)があったりと、通常の発達とは異なる特性をもっています。
さらに、今回の大会とも関係の深い話題として、QOLに関わる精神的健康の問題があります。不安や抑うつといった課題です。中高生を対象とした国際的な調査では、自閉スペクトラム症など発達障害の特性と、不安・抑うつ症状との間に強い相関がみられることが報告されています。
また、ADHDと診断された児童は学校を拒否する確率が約3.5倍、ASDとADHDでは約5倍高くなるとされています。昨日の不登校のセッションとも関係する内容です。
そして、「条件付きの自尊感情」という問題があります。
例えば、「テストの成績が悪いから自分はダメだ」「成績がよければよい子になれる」といったように、ある条件によって自分の価値を感じてしまう状態です。
また、「過剰適応」の問題も見られます。他者との比較や、集団においては周囲に合わせるために自分を過度に抑制し、その結果、精神的疲弊や健康の低下につながることがあります。
こうした過剰適応によってストレスを抱え、人と関わること自体が容易ではなくなるということですね。
本セッションに関わる大きなテーマとして、発達障害のある方の「孤独感」の問題があります。
発達障害のある方の精神的健康やQOLの低さをもたらす要因として、孤独感があります。研究として知見がたくさんありますが、孤独を訴える割合が高く、また友人と過ごす時間が少ない傾向があります。
ゲームやテレビで過ごす時間が多いことも報告されています。もちろんゲーム自体が悪いわけではありませんが、人と関わる機会が少なくなりやすいという側面があります。
これは、私が個人的に関わっていた余暇活動支援サークルに参加していたお子さんたちの声です。
「学校にはまったく友達がいません」「休み時間は図書館でいつも本を読んでいます」。
別の子は、「学校ではみんなから阻害されるだけ」と話していました。
友達とは本来、気の合う人との関係ですが、その「気の合う仲間」をなかなか見つけにくいのです。
そのサークルを卒業した方に、大人になってから振り返っていただいたのですが、「学校では、友達ができても、うまく付き合えず、ただその場所にいるというだけで、休日に遊ぶこともなく寂しかった」とおっしゃっていました。
しかし、そのサークルに通うようになってから、仲間と休日を楽しめるようになり、「居場所ができたことが本当に楽しかった」と語ってくれました。
ここで重要なキーワードが「居場所」です。
別の調査で、発達障害のある中高生に余暇に関するアンケートを行い、「やってみたいけれどできないことはありますか」と尋ねたところ、「友人と遊ぶこと」という回答が挙がりました。
自閉スペクトラムの方は「友達はいらない」と言われがちですが、実際には友達を求めています。
「遊びに行きたいけれど友達がいない」「同じ趣味の友達がいない」など、通常の学級の中では波長の合う仲間を見つけにくいのです。肩肘張らずに関われる仲間が欲しいのです。
WHOが提唱している障害のある人のQOLに関して、特に自閉症の人に特化したQOLについての論文から引用してご説明します。ここでは、自閉症の人にとって重要なQOLとして9か条がまとめられています。中でも、2番目に挙げられている「友人や親しい人といるときに『あなた自身』になれますか?」という質問は、大事だと思います。
先ほどの過剰適応とも関わりますが、周囲に合わせすぎず、肩の力を抜いて関われる仲間がいるかどうかは、非常に大切です。「あなた自身になれるか」というのは、今日のセッションのテーマと深く関わってくると思います。
児童精神科医で発達障害に関わる第一人者である本田秀夫先生は、本日の登壇者の関根さんが活動されているネスト・ジャパンの創設者ですが、発達障害とコミュニティについて提唱されています。
包括的なコミュニティシステムが必要であり、居住地域にその人を取り巻く心理的ネットワークがなければ、コミュニティは存在しません。自閉症の人たちがいかにコミュニティーに参加できるかが重要で、そのカギとなるのがサブコミュニティー作りだとおっしゃっています。
ごく平たく言うと、波長が合う人同士、つまり、認知的な特性や行動上の特性が共通する方々同士で、同じ関心事について集える場があると、とても幸福度が高まり、生活に張り合いが出てくると思います。
本田先生が提唱されているサブコミュニティというのは、言い換えれば、今回のセッションのテーマにもある「サードプレイス」と言っていいと思います。
社会学の概念では、家庭が第一のプレイス(場)、職場や学校が第二のプレイス、そして、第三の場とは、家庭と仕事の領域を超えた、個々人の、定期的で自発的でインフォーマルな、楽しみのための集いのために場を提供する、さまざまな公共の場所、と定義をされています。あまり上下関係などなしに、中立で平等に肩の力を抜いて楽しみごとに従事できる、遊び心があるといった場なんですね。
孤立感に襲われている方々が、家庭、学校、職場から離れて、利害関係のない場で、ほかの仲間と一緒に、楽しみごとに従事できる場、そうしたサードプレイス大事だということです。
本セッションでは、発達障害者の方が安心して集えるサードプレイスの実践例を、発達障害の当事者と一緒に、参加されている皆さんと意見交換したいと思います。
今日ご登壇いただくお二人をご紹介します。
最初にお話しいただくのは関根礼子さんです。NPO法人ネスト・ジャパン代表理事を務められています。心理士の資格ももっていて、(ご自身が当事者でありながら、)支援者なんですね。ピアサポート、つまり同じ特性のある方々に対して、同じ楽しみごとにも従事しながら、サポートをされています。
もう一人は、綿貫愛子さんです。世田谷区で運営している、みつけばハウスにお勤めです。
綿貫さんは今回の大会の実行委員のお一人でもあります。東京都全域で大変活躍されていて、(やはりご自身が当事者でありながら、)特別支援学校の外部専門家としても、十数校で活動されています。東京都の特別支援学校への貢献度はとても高いと思われます。しかし今日は、学校の話ではなく、第三の場としての、みつけばハウスについてお話いただきます。
最初に関根さんからお願いします。
- 関根
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発達障害当事者にとっての余暇とは、ピアサポートの実践と意義、ということでお話をさせていただきます。
本日の内容は、ネスト・ジャパンを紹介して、余暇活動の紹介をしてから、サードプレイスの意義とか、運営や育成の難しさについてもお伝えできたらと思っています。
まず自己紹介です。
私は自閉スペクトラムを自認していて、実は綿貫さんとは大学生時代からの当事者仲間です。綿貫さんは誰がどう見ても真面目でちゃんとしていて、ちょっと抜けたところもありますが、私はタイプが違いますね。ちゃらんぽらんと思われて、わりとペラペラしゃべっているけど中身はなさそうに見られますが、でも結構真面目なんです、これでも、というところです。
視覚優位で言葉を扱うのが苦手なので、基本的にこういう場ではかなり準備が必要です。質問とか、とっさに変な言葉遣いをしてしまったらすいません、と先にお伝えしておきます。
あと、積極奇異で、気になると他人に話しかけてしまうところはあるのですが、だいぶここは改善されてきています。
当事者の感覚として一番あるのは、感覚過敏があるところですかね。
幼少期に囲碁を覚え、20歳頃までは囲碁棋士を目指していました。棋士になることはかないませんでしたが、その後、興味のある臨床心理学の道に進み、囲碁の経験を生かして「でこぼこ囲碁教室」を主宰しています。
学生のときの実績では、女子学生本因坊を三連覇しています。
ネスト・ジャパンには2014年から勤務しています。2025年4月から代表に就任しました。
趣味がアニメ、マンガ、アイドルで、これを生かして余暇活動の企画を立てています。
続いてネスト・ジャパンの紹介です。
ご存じの方もいらっしゃると思いますが、本田秀夫が立ち上げたNPOです。ネストには英語で動物の巣という意味があり、発達特性のある人などを対象として支援を行っています。
ネスト・ジャパンの活動は、保護者や本人の支援をはじめ、余暇活動支援にも力を入れています。
余暇活動というと、他にやることがあって余った暇な時間にするという印象を持たれがちですが、ネスト・ジャパンが考える余暇というのは、それがなくてはならないもの、それ自体が生活や人間の主成分となる位置づけで考えています。
発達障害のある人のコミュニケーションの問題、その支援には研究や実践が行われてきています。
私はネストでの支援を通して、発達特性のある人は自分の趣味や特性を共有したい、他者と交流したい気持ちを持っている人が少なくないと感じています。ただ過去の経験から、大人数での交流に苦手意識があったり、集団の中で自分が浮いてしまうのではないかという不安を抱えていたりする当事者は多いかなと思います。
また、交流することを目的とした集まりでは、何をどう話して振る舞うべきかが分かりにくいという不安を感じる人も多いと思います。
当事者は他者と交流したいのに、一般集団ではうまくコミュニケーションがとれないという背景には、発達障害のある人のコミュニケーションと、いわゆる一般的なコミュニケーションのスタイルが質的に異なっているのではないかと考えています。
一般的なコミュニケーションは、コミュニケーションを取ること自体が主な目的になることが多い一方、発達障害のある人は情報を交換することが目的となりやすく、コミュニケーションを取ること自体が目的にはなりにくいです。
私はこのようなコミュニケーションスタイルの違いは、正常か異常かで判断されるものではなく、多数派か少数派の違いというだけだと考えています。
少数派の人たちが多数派の人たちの中で居場所を見つけにくく、そのため発達障害支援では、少数派が多数派になじめるようなコミュニケーションスタイルに変える支援が多く行われてきています。
そのような支援でなじめる人も出てきたと思いますが、一方で当事者の中では過剰適応で二次障害を引き起こしていると予想しています。
発達障害のある人のQOLを下げないためには、少数派の仲間同士で気兼ねなく交流する機会が必要と考えます。ネスト・ジャパンの目的は、発達障害のある人たちのQOLを下げないため、少数派の仲間同士で気兼ねなく交流できる場が必要と考えているため、同じ感性や悩みを共有し、自然と受け入れられるような仲間づくりを目指しています。
社会に合わせて本人を変えるのではなく、その人のままで楽しく過ごせる、その人のための支援を行っています。
ここからはネスト・ジャパンの具体的な活動を紹介します。
これは活動全体の概要で、余暇活動ごとに月1度くらいの頻度で行っています。1回の時間は1~2時間。来所、オンライン、来所とオンラインを混ぜてやることもあります。
メンバーは固定のものもあれば、都度参加の活動もあります。
利用者のニーズをくみながら、毎月10種以上の活動をしています。
臨床心理士や公認心理師が行っていますが、余暇活動にはピア・サポーターが入ることも多いです。
これは余暇活動を分類したものです。作業型、会話型、活動共有型と分けていて、これからお話ししたいと思っています。
まず作業型の活動がどのようなものかご紹介します。
作業型は活動の場を共有する、並行遊びに近い形で、みんな作業に集中して無言になる時間もあります。
イラストを描いたりプラモデルを作ったりしながら、自然発生的に会話が生まれることもよくあります。
スタッフがタイミングを見ながら話題を振りますが、会話をしなきゃいけないというわけではない、そういう空気は感じさせないようにしています。
会話を強制しない、作業スペースはそれぞれ、という形です。
こちらがモデルクラフトという活動の様子です。来所とオンラインのハイブリッドでやっています。
以前は黙々と作業する時間が多かったのですが、みんなでガンダムのゲームの話をしたり、「今日はこれを作ります」と参加者が教えてくれることが定番になってきました。回を追うごとに参加者同士の仲間意識が増えていっています。
次に会話型の紹介です。
話題を共有する活動です。
1回1時間、多くても10人程度で、例えば鉄道、アニメというような大きなテーマにして、1人5分から10分の持ち時間の中で自分の好きなことを順番に話す会です。
ポイントは、持ち時間の間は自分が主役となり、好きな話をすることが保証されること。もう一つは、お互いのペースを守れるルールを作っておくことです。
会話型の活動はネスト・ジャパンで一番多いです。
今日は会話型のやり方の詳細な説明はしませんが、会話型では各自、ライブ配信をするような感じで順番にお話をするようにやっています。YouTubeなどのライブ配信を思い浮かべていただくと分かりやすいかなと思います。
発表する人は、誰かがコメントをしたときにそれを拾って返してもいいし、コメントせずに話を先に進めてもいい。聞く側の人は発表する人の邪魔にならない限り、どのようにしても構わないとなっています。
ライブ配信型にすることで、他者に気を遣わず自分の発信したいことを発信できたり、発達障害の人が不安なく他者と好きなことを共有できる居場所として認識できるようになります。
次に、活動共有型です。
その名のとおり、ゲームなどの活動を共有する会です。
ただし、知的能力の得意・不得意により、同じゲームをやるにしても能力に差があると楽しめないこともあります。もちろんゲームのルールや枠組みの中でやるので、ルールを覚えられない、負けて悔しくてもある程度自己コントロールできる人でないと、この会に入ること自体が難しい面はありますが、能力に差があるから楽しめないということはないように心がけています。
マイクラの会では、各自が離れて自分の世界を作り、画面共有してお互いに見せ合ったり、自分の工夫したところを発表し合うなど、並行遊びに近い形でやっています。
この写真は囲碁の写真です。ただ囲碁を打つだけでなく、各自で自分専用のすごろくを作ったり、「囲碁アート」と称して碁盤に碁石で絵を描いたり、囲碁の能力に差があっても楽しめることをしています。
番外編です。
通常の活動とは別に、お出かけに行ったり、一緒にゲームをする特別企画をしています。これは参加者が「やりたい」「行きたい」と思う、当事者の興味と主体性があって成立しています。
鉄友会では年に1~2回、鉄道に乗ったり、アニメ漫画クラブでもアニメの展示会やイベントに行っています。
あとは、いつもの活動とは別に「このメンバーでゲームする」といった形で集まることもあります。
こちらは、タチバナ財団からの助成を受けて、今年9月に行ったネストフェスの写真です。ネストの利用者さんには、絵を描いたりそれを披露する場がいつか持てればいいと思っていました。ネストの利用者さんだけでなく、一般に広くイベント告知をして、たくさんの人にお越しいただき、みんなの好きなことを集めた作品展を開くことができました。
この冊子はここを出たところに置いてあります。60冊しか持って来ていませんが、ぜひ手に取っていただければ嬉しいです。
展示作品の一部をご紹介します。
こちらは利用者さんが自分の手で作ったものです。右上のイラストは実物がかなり大きかったのですが、電車とポケモンという、発達特性のある人が大好きな二大巨頭で、たくさんの人だかりができて交流が生まれていました。直接、描いた人に質問する人もいました。
ここからはサードプレイスの意義について話します。
はじめにお伝えしておきたいのは、ネスト・ジャパンは自分の好きなことを主体として余暇活動を作っていますが、それと同じくらい専門職であるスタッフが好きなことも大切にしており、自分たちが楽しんでできることを企画しているということです。そのため余暇活動の場は、スタッフも含めて全員がピアであると考えています。
もちろん、支援者としてそのグループの全体を俯瞰して見たり、利用者ひとりひとりがどんな気持ちで参加しているか、困っていることはないか、など常に全体と個のアセスメントをしながらも、スタッフ自身も楽しめる活動を作っていくことで、スタッフのモチベーションも保てる仕組みになっています。
まずはサードプレイスの意義として、当事者同士の関わりや関係の変化について話します。
発達障害のある人の中には、自分の趣味を他者と共有したり交流したい人が少なくありません。ですが先ほどお話ししたように、過去の経験から大人数の交流に苦手意識があったり、集団の中で自分が浮いてしまうといった不安を抱える人が多くいます。
そのため活動参加前は、みんな期待がありつつも、緊張や不安の方がむしろ強い、という状態だったりします。
特に思春期以降に初参加した人は、経験上、自分の好きなことを話しても理解してもらえないと感じていることも多く、好きなことを共有したくてもその仕方が分からないといった悩みを持っている人も多いです。
このようなことから、社会で孤独感を持っている人も多くいます。
では参加後、当事者はどう感じたのか。ここに書いているのは、実際に2017年にアニメ漫画クラブの参加者にインタビュー調査をしたときに教えてくれたことの一部です。
参加してみたら、自分が思った以上に他の人もこの話題に詳しかった、という声がありました。
「自分が思った以上に他の人もこの話題に詳しかった」
「自分の話したことを肯定的に受け止められている感じがした」
「好きなものを通じて交流することが楽しい」
「他の人の話をもっと聞きたい!」
このことから、余暇活動が自分の好きな話ができる場所であると同時に、他者がいる喜びやメリットも感じていることが分かりました。
この研究は8年前のものですが、当時は鉄友会とアニメ漫画クラブしかなかったものの、今、余暇活動に参加している当事者からも日々同じように感じています。
先ほどお伝えしたのは個人の気持ちの変化ですが、継続的に参加している人たちを見ていると、当事者同士の関わり方や関係の変化がいろいろ見えてきました。
例えば毎月定期的に会っていることで、誰がどの話題を特に好むかが分かってきて、「これは○○くんに共有したい」とか、「いつも○○くんの話を楽しみにしているんだよ」と、メンバーのことを考えて話題を選ぶようになったり、参加者のメンバーを尊敬している姿勢や発言が出てくるようになりました。
また、「ここで話すためにここに行ってきたんだ」「ここに行ってきたからみんなに話したくてたくさん写真を撮ってきたよ」と、活動以外の時間でもメンバーのことを想起して楽しみに過ごしている様子を話してくれたり、このメンバーでここに行きたい、これをやりたいという、活動外での交流意欲が出てくる人もいます。
実際にメンバーの提案でみんなでゲームをしたり、メンバー同士で連絡先を交換して鉄道に乗りに行ったりしています。
ちょうど昨日、アニメ漫画クラブのメンバーでネスト・ジャパン内に5人くらい集まり、マリオパーティの会をしたのですが、3階建ての建物に響き渡るくらいの大声で楽しんでいました。
好きなこととは違う話題、例えば仕事や旅行の話も、「このメンバーには共有したい」「拒絶されない」という安心感が出てくるようです。
はじめは「アニメと関係ない話はしてはだめ?」と聞いてきたりしますが、他の話をしたいという意欲や、それを話しても大丈夫という感覚が得られると、自然に話してくれるようになります。
聞く側も、基本的には雑談が苦手で、自分の興味のない話題は聞くこと自体に苦痛を感じる人が多いのですが、相手のメンバーに仲間意識を持てていると、好きなこととは違う話題でも聞いて反応している姿が見られます。
以前、アニメ漫画クラブで「来月から就職します」という報告をした人がいましたが、そのときはみんなで「すごい、頑張ってね」と自然に拍手が起きていました。
こういう行動は一般的なコミュニケーションでは普通のことだと思いますが、本気で思っていなくてもできる行動でもあります。ただ、発達障害の人たちにとって、こういう行動が自然と湧き上がるのは簡単ではなく、本当に仲間だと思って心から応援しているのだろうなと伝わってきました。
ここからはネスト・ジャパンのピアサポーターについての話をします。
ネストには、雇用契約をしているピアサポーターが1人、ボランティアが数人います。雇用契約の方は東京都の養成を受けて修了しています。みんな元々ネストで個別支援や余暇活動に参加していました。ネストの活動や余暇活動に対して理解のある人です。
ピアサポーターの役割としては、利用者の好きなことに共感する活動に入ってもらうことを伝えています。ピアサポーター自身が好きなことや得意分野の活動にのみ入る形です。
利用者にとってピアサポーターの存在は、専門職より身近な存在であり、より自分に近い存在として将来像を想像しやすく、ロールモデルになりやすい、ということをピアサポーター自身にも伝えています。
右上がオンラインで鉄友会をやっている様子です。少しぼやけていて見づらいのですが、そしてゲームを語る会の様子です。
ピアサポーターもネストの利用者として余暇活動に参加していましたが、参加者からサポート側になることで、それぞれに苦労や葛藤がありました。
参加者にとってピアサポーターが余暇活動にいる意義は、鉄道やゲームなど分野の話がかなりマニアックでも理解できるということ。参加者にとって絶対に話が通じる人で、「この人がいれば安心できる」という存在になります。
そもそもネストでピアサポーターになる人は、話を聞くことも好きな人が多いので、好きな分野の話をみんながしてくれるのを聞くこと自体を楽しみにしています。
例えばアニメ漫画クラブを例に挙げると、ほかの参加者が、たまたま誰も見ていないアニメの話をしたとします。そうすると、みんな反応が薄いんですね。「ああ……」みたいな感じだったりします。そういうときは、ピアサポーターが上手に話題をひろげたり、質問してくれたりします。
説明の仕方が難しくても、ピアサポーターがわかりやすく言い換えて説明し、仲介者になってくれることもあったりします。ピアサポーター自身が「役に立てている」感覚を得ている一方で、ピアサポーター自身も「知らなかった」という知識に出会うことはもちろんあります。
発達障害の人たちは、基本的にまじめな人が多く、完璧主義になりがちでもあるので、そういうときは「もっと勉強しなきゃ」「みんなすごいな」という感じになって、ピアサポーターである以上「みんなが知っていることは知らなくてはいけない」「自分が役に立てなかったらいけない」と思い込みやすい。そうした極端な反応が、ピアサポーターの初期のころは見られがちだと思いました。
なので、余暇活動の後は、最初のころは丁寧に活動の振り返りや肯定的フィードバックをするようにしています。次回に向けての明確な指示もしていきます。
ピアサポーターは「先生」ではない。だから知らないことは仲間に教えてもらえばいい。心から興味をもって聞けるということは、とっても大切なことだ――そう伝えていくことで、「すべてを知っている必要はない」という観念を持ってもらいます。
こちらはTRPGの様子です。
これはテーブル・トーク・ロールプレイングゲームの略で、テレビゲームのRPGが元になっています。進行役に聞いて、会話をしながら物語を進めていきます。
ネスト・ジャパンでは本人の希望で、ピアサポーターがゲームマスターを務めています。会話をしながら物語を進めるので、発達特性があると、うまくコミュニケーションをしながら会話をすることが難しい。だからゲームマスターが舵を取って、参加者一人一人と会話をし、ほかの参加者にもわかりやすい形で説明しながら進めていったり、物語やルールの内容を参加者によって調整したり――ゲームマスターの臨機応変さが求められるゲームです。
ピアサポーターがはじめてこのゲームを知ったのは、ある人がTRPGをネストでやってくれたことがあり、そこに一参加者として参加したことがきっかけでした。そこで「作りたい」「自分もやりたい」と言い出しました。自分で物語を作れるところに魅力を感じた、と。
それから個別支援で、毎週TRPGを作ります。準備期間は1年くらいかけて、はじめてスタッフ以外の参加者に実践するステップを踏みました。準備期間中は、スタッフがプレーヤーの役割をし、ある程度、自分が満足できるマニアックなゲームを作ることができたのですが――実際に利用者を迎えると、ピアサポーターの思うように進みませんでした。
例えば、初めて参加するメンバーがいると、参加者側の子が緊張してしまってしゃべれなくなってしまう。あるいは謎解きみたいなのがあるんですが、そこに力を入れて難易度を上げると、理解できなくなる子がいます。
ピアサポーター自身は「この場面、この仕掛けに力を入れたら、きっとここで盛り上がるはずだ」と思っています。でも参加者は全然違うところで楽しんでいる。こういうふうに、プレーヤーの特性や能力が違うので、ピアサポーター自身がやりたいことを反映させただけでは意味がない、ということをリアルに体感するようになりました。
毎回、スタッフと相談を重ねながら試行錯誤を繰り返して、利用者ができそうなことや楽しめることを考えたり、ゲーム中に利用者が理解できているかを見ながら難易度を調整することが、徐々にできるようになっていきました。
文字にすると簡単なようですが、実際これができるためには、相手を観察して、的確にアセスメントしながら、状況に合わせて臨機応変にする必要があります。相手が楽しめないと自分も楽しめないことを実感し、相手をちゃんと理解しようと努力できる。この素直さが、まさにピアならではだと思います。
支援者は「今より何でもできるようになったほうがいい」という思いから、支援者が求めるレベルまで上げる指導をやりがちです。ですが、ピアだからこそ、純粋に「まずはそれぞれが楽しめることが大事」ということができたのです。そのことをお伝えしたくて、TRPGの例を挙げました。
活躍例の最後ですが、ピアサポーターには主に余暇活動に入ってもらうことが多い一方で、座談会や親が参加する会にも、当事者の立場として入ってもらうことがあります。
ピアサポーターが、当事者として言葉で気持ちや経験を語ることで、ピアにとっては通じる感覚、親や支援者にとっては通訳者になっています。親や支援者からは、「子どもが何を考えているか分からなかったが、それが知れた気がする」とか、「当事者の考えを言葉で聞ける機会があまりないので貴重」という言葉をいただいています。
ピアサポート、サードプレイスの意義について、実践を通した考えのまとめです。
まずは、この集団の中では自分が否定されない、浮いているという感じを持たなくて済む、同じ種族と時間や空間をともにしているという安心感があります。
自分の好きなものや好きな分野を、同じように好きでいる人たちと出会うことで、「この世に自分と同じものを好きな人が実在するんだ」という感覚を持つことができます。
また、自分の経験や悩みを共有する会では、「自分と同じような経験をしている人がいる」という、いわば「自分と同じ種族がいる」という安心感が、当事者から伝わります。これらは実存的なものにつながっていると感じます。
私たち、発達特性のある人たちは、社会の中では自然とマイノリティーになり、「自分だけ何か違う」という孤独を感じやすくなります。よく見ると同じように感じている人を身近に見つけることはできますが、視野が狭くて自分のことでいっぱいいっぱいになりがちですし、社会の中で生き抜く中で過剰適応しがちです。自分で仲間を見つけてつながることが難しいです。
その中で、「同じ種族の中では安心して自分らしくいられる」「羽を休められる」――そんな場が当事者にとってサードプレイスになるのではないかと思っています。
現代はSNSでサードプレイスを探したり、SNS上で仲間が見つけられることも多いですし、リアルに会っていなくても良い関係を築けている人もいます。
ただ一方で、SNSのデメリットもあると感じています。ネストでは@ネストというオンラインコミュニティーを昨年から始めましたが、こちらに参加している利用者の多くが、一般のSNSで傷付き体験がある人たちでした。
SNSは知らない人と気軽につながれる反面、気軽にいろいろなことが言えたり、批判的な言葉を目にすることも多くあります。発達特性のある人は繊細な人が多いので、一般的には運営側が禁止していないような言葉などでも、嫌な気持ちになってしまう人がいます。
そんなこともあり、今ネストが実践している@ネストでは、投稿をスタッフの承認制にしていて、それにより安心して見られる人の参加が多いです。
もちろんこれはSNSだけに限らず、当事者会などで当事者だけで対面してお話しする場面でも同様で、ファシリテーターが不在だとうまくいかないケースもよく聞きます。ピアサポートの意義を感じながら、発達特性のある人同士でいい仲間関係を築いていくには、支援者の存在も大きいと感じています。
次に、運営、育成の難しさについてです。
いつでもうまくいくとは思っていなくて、利用者同士の難しさを感じることは多々あります。
例えば@ネストでは投稿承認制にしてもなお「この人のコメントで不安になった」といった意見が出たり、対面で行っている余暇活動でも自分が認められたいという思いから逆に他の人に批判的な発言をしてしまう、といったこともあります。
発達特性のある人にも二次障害のある人や、いろいろな人がいるので、個々のニーズなどをアセスメントすることも大事だと思っています。
今日、ピアサポーターについてお伝えしましたが、当事者だからといって必ずピアサポーターになれるかというと、難しいところです。ピアサポーターには、自分のことも含めて客観的に見たり、振り返る力が必要です。
人の役に立ちたい意欲があっても、思いが強すぎて相手が喜んでくれないと落ち込んでしまったり。当事者の中にもいろいろな考え方、感じ方があることが分かっていないと、自分の考えを主張しすぎたり、勝手に嫉妬したり、劣等感を持ったりします。
なかなか増やしたいけれど、一筋縄ではいかないこともあります。
このほか、運営面での大変さとしては、ネストの利用者さんの特徴として、所属がなかったり、あっても行けていない人、いろんな場所に行ってみたいけど、うまくいかなくて最後にネストにたどり着いた人たちが、全体の半数ぐらいいます。
ですので、集団参加をするとしても、なるべく少人数で、かつ支援者の目が常に届いている状態じゃないと、何かあったときにすぐに対応できません。そうでないと、かなりリスクの高い利用者さんもいます。
そのため、場所や時間、人手の確保が必要ですが、これらをそろえるためのお金が、今とても足りていない状況になっています。
今日、一番話したかったのは、ピア・サポートやサードプレイスがあることが、当事者にとっての生きる意味や、実存的な問題とつながっているということです。
これからもネスト・ジャパンは、発達特性のある人にとって「ほっとできる場所」であり続けられるように、頑張っていきたいと思っています。
ピアサポーター・トークライブもやりますので、案内を入り口に貼りましたし、小さ目なチラシもあるので、ぜひ持って帰ってください。
ありがとうございました。少し長くなりましたが、以上です。
- 藤野
-
関根さん、ありがとうございました。
それでは引き続き、みつけばハウスの綿貫さんにお話しをいただきたいと思います。
- 綿貫
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立ってお話させていただければと思います。
というのは、自分のADHD特性から、座っていると覚醒レベルが下がってしまって、ボーッとしたり眠くなったりと、申し訳ない事態になるからです。
今回、配布はしていませんが、入り口に展示させていただいたリーフレットや、公式ホームページにも具体的な情報が書いてあります。もしご関心のある方は、そちらを見ていただければと思います。
私のほうからは、「発達デコボコ特性のある若者とサードプレイス ― 世田谷区受託事業みつけばハウスの実践から考える」ということでお話をさせていただきます。
実践から考える、というところで、みつけばハウスの取り組みを知っていただくだけにとどまらず、その中で起きていることや成果を、一般の教育や支援の場でどういうふうに活かしていけるかを一緒に考えていければと思っています。そういった趣旨の話題提供だとご理解ください。
みつけばハウスの実践を説明する前に、前提となっている知見について触れ、最後にこのセッションのテーマであるサードプレイスの意義を簡単に述べさせていただきます。
自己紹介です。
今回、大会の実行委員も務めさせていただいていますが、私自身は、一つには臨床発達心理士や公認心理師、学校心理士、キャリアコンサルティングなどの資格を持っていて、それを使って普段は教育・福祉の現場で発達障害の人たちが自分らしく生きることを支援する、支援者としての側面があります。
もう一つは発達障害の当事者であり、自閉スペクトラム症をはじめ、読み書きを含めた学習障害があります。診断は受けていないのですが、最近アセスメントを取ったところ、発達性協調運動症、体の不器用さや協調運動の苦手さがあることが分かりました。そういったところもオープンにしながら、普段は啓発活動もしています。
最近だと、今回のテーマに関わるので載せていますが、現在大学院の博士課程に在学していて、特に自閉スペクトラム症のある方のウェルビーイングや特別な興味に関する研究を進めています。
ここで、みつけばハウスの実践の前提になるところを説明します。
ニューロダイバーシティという概念も、だいぶ社会的に広がってきていると思います。
ニューロダイバーシティという言葉、概念を聞かれたことのある方はいらっしゃいますか?
だいぶ広がってきているかなと思いますが、これは神経学的な差異を、障害や機能不全としてだけでなく、人の多様な変異の在り方として認識し、尊重する概念・立場です。
こういった概念を背景に、研究動向としても、自閉スペクトラム症など発達障害の概念を多角的に検討し捉え直そうという研究が出てきていて、そのあたりの知見をご紹介させていただきます。
一つは、二重共感問題です。
自閉スペクトラム症の社会的コミュニケーションの難しさは、従来、「心の理論の欠如」と言う形で説明されてきました。
そうした一方向の説明だけでは不十分であり、そうではなく、自閉スペクトラム症の人とそうでない人との間に存在する相互理解のずれが問題であり、コミュニケーションや共感を一方向ではなく双方向の問題として捉えるべきで、その構造的な問題が本質だと提唱されています。
これについても科学的に論拠が出来てきています。自閉スペクトラム症の人は、従来他者に共感することが難しいといわれてきたわけですが、青山学院大学の米田先生の研究によれば、そうではなくて、人は自分と類似した他者に対して共感するということが示されています。自閉スペクトラム症的な人は、自閉スペクトラム症の人に共感するし、定型発達的な人は、提携発達の人に共感するというだけで、自閉スペクトラム症のだけ人が共感出来ないわけではない、ということを、神経学的に脳の活動を測定し、明らかにしています。
こうした自閉スペクトラム症の人同士のコミュニケーションや共感に注目した研究は多分野で進んでいます。
例えば言語人類学の研究では、自閉スペクトラム症の人々は社会性やコミュニケーションが欠如しているのではなく、本人たち独自のコミュニケーションスタイルがあり、それが認められた場合、障害状態は解消されるとされています。
10年にわたる緻密な研究で説明されています。
また、自閉スペクトラム症の人同士だけでなく、自閉スペクトラム症の人と定型発達の人がペアで関わる場合でも、コミュニケーションスタイルが相互に違うということを前提に関わると、ラポールが成立する、という知見も出てきています。
自閉スペクトラム症の人同士のコミュニケーションだけを強調したいわけではありませんが、認知スタイルや感覚スタイルの類似性に注目したアプローチは有効ではないかと考えられます。
もう一つ心理面の概念として、社会的カモフラージュがあります。
カモフラージュやマスキングという言葉で説明されるものです。
カモフラージュ、マスキングを知っている方はいらっしゃいますか?
ニューロダイバーシティに比べると少なめですね。
これは、自閉スペクトラム症の人が社会的な場面で自閉スペクトラム症に関連する行動を隠したり、社会的に有能であるように見せる明示的な方法を用いたり、また、他の人に社会的な困難さを見られないように努めたりする戦略のことです。
多くの自閉スペクトラム症の成人がこうした戦略を持っていることが調査で明らかになっています。
短期的にはその目的を達成できたとしても、極度の疲労や不安がもたらされます。
このようなカモフラージュの状態が長期にわたると、メンタルヘルスや自己認識、適切な支援資源につながることにも深刻な影響が出るとされ、自閉スペクトラム症に関わる分野では近年大きく注目されている概念です。
これに類似したものとして、燃え尽き症候群の研究もあります。
自閉スペクトラム症のある成人が、過剰な社会の期待に応えようとして、日常生活で無理を重ねて疲れ果ててしまう現象です。
この研究での重要な指摘は、支援者が提案する方法に適応する過程で、自分本来の幅広いスキルを喪失する経験をしているいう点です。
実際、本人たちと話すと、それぞれが自分なりの工夫をしたり、いろいろな方略などを持っています。
それは自分の認知スタイルや感覚のスタイルにも合わせて作られていたりするのですが、支援者がよくわからずに提案する支援内容に適応していく中で、そういったものを喪失しているかもしれないというこでです。これはすごく重要なことだと思っています。この論文の結論としては、自閉スペクトラムのある人が、自閉的な方法で物事を行えることは、燃え尽き症候群からの回復につながるのではないかと言われています。
カモフラージュやマスキングのほか、最近では、レビュー経験もまとまって出てきていますので、ご関心のある方は自閉スペクトラム症、マスキング、と検索していただくと、海外の知見が多いのですが、たくさん出てきますので、見ていただけたらと思います。
こういった背景を受けて、みつけばハウスではニューロダイバーシティの実践というところに力を入れています。
みつけばハウスは、学校や仕事先などでモヤモヤしている、ASD、ADHD、SLDなどのニューロマイノリティ(神経学的少数派)が好きなことや、夢中になれることで遊びながら、「自分の世界を表現するヒント」「楽しく実力を発揮する方法」「不得意なことや凸凹をカバーする裏ワザ」「面倒な世間との折り合いのつけ方」「ハッピーなライフスタイルを手に入れるコツ」「できるだけラクに生きるノウハウ」などなど、世の中を自分のペースで、ゆるーくサバイバルするためのスキルを、「みつける」場所です。
「みつけば」とは見つける場所のことですが、私たちのほうから、これを見つけてほしいと言うことはなくて、本人がいろんなことを自己表現したり体験することで、自分にとっての何かを見つけていく場を提供するのが基本的なコンセプトです。
先ほど関根さんからもピア・サポートの説明がありました。
ピアサポートの在り方は、施設や団体によっていろいろ違うと思いますが、みつけばハウスの場合は、スタッフが全員ピアサポーターになっていまして、職員がピアサポーターなんですね。
発達障害はじめ不登校、引きこもり、ジェンダーのことだったりとか、いろんなことを含めたピアサポーターとなっています。割合としては発達障害の診断のあるスタッフが多いかと思います。
区の事業としてやっております。ここが、他からすごいですねと言われるところです。世田谷区が従来の法律で定めている発達の支援の枠組みではできないことであっても、ニーズがあることはちゃんとやっていこうということで、独自事業として議会を通して位置づけられています。
スタートとしては、2012年に先行的な取り組みがあり、その後「みつけばルーム」ができて、そこから「ルーム」から「ハウス」へと展開していったという経過になります。
それぞれの時期に実績を重ねながら、段階的に展開してきているというところです。
もともとは東京都自閉症協会が受託している事業ですが、東京都自閉症協会では2003年から「高機能自閉症アスペルガー部会(通称アスペ部会)」があり、そこに本人部会として、親の会だけではなく、親と当事者の会という形で活動してきました。
その中でのピアサポートの下支えがあり、そこに世田谷区の方が関心を寄せてくださって、一緒に取り組んでいき、現在の形になっているという歴史があります。
これも入り口のところにリーフレットがありますので、細かい記述はそちらで見ていただければと思います。公式ホームページにも同様の説明がありますので、ここではざっくり聞いていただければと思います。
場所は世田谷区の梅ヶ丘という、福祉施設が集合しているようなエリアにあります。
裏が児童相談所で、目の前にショートステイやグループホームなど、いろいろな施設がある場所です。
最寄り駅としては、小田急線の梅ヶ丘や豪徳寺、その間ぐらいの位置になります。
建物は平屋で、もともと福祉機器の展示スペースとして使われていた場所を改装して現在の形になっています。
ウィンドアートのワークショップもあり、定期的に絵が変わります。
この写真を撮影したときはクジラの絵がダイナミックに描かれていて、利用者さんと、このあとご紹介する外部講師の美術家の方と一緒に制作したものです。
内装はこのような雰囲気になっています。
心掛けていることとしては、「支援機関っぽくないこと」があります。
みつけばハウスの利用者の方々は、ここで初めて支援を経験するわけではなく、小さいころから療育を経験し、特別支援教育を利用し、現在も福祉や医療機関など複数の支援を並行して受けている方が多いです。
それでもなかなかうまくいかず、他との関わりは切れてしまったけれど、ここだけは続いている、という利用者さんも多くいます。
支援機関に対して良い印象ばかりではない方も多く、最初のハードルが高いこともあるので、支援機関っぽくない雰囲気づくりを意識しています。
また、職員もピアサポーターで、みんな自閉スペクトラム症があるので、感覚過敏の問題もあり、照明や環境など、感覚的に安心できるよう配慮しています。
ただ、自閉スペクトラム症の秩序だった環境を、ADHDの自分の特性が破壊していく、ということも日々起こるので、整理整頓が得意なスタッフが整えてくれています。
具体的な利用についてですが、区の事業なので区在住の方が対象で、メイン層は10代から30代くらいの若者世代です。
ただ現在は、小中学生のプログラムと、30代から50代のミドルプログラムも並行して実施しており、かなり幅広い世代が入り交じっている状況です。
小中学生向けの出張プログラムも月1回ペースで行っており、月1回でも大きな変化が生じていくということで好評です。
その後、そこで経験した小中学生が対象年齢になり、本家のみつけばプログラムに参加していく、という流れもあります。
利用者のニーズや特性、経験は本当にさまざまなので、個別に柔軟に対応しています。
例えば、みんなでわいわいするのが苦手という方もいて、これはホームページに詳しく載っていますが、スタッフと1対1で学びたいとか、集団参加のハードルが高い方もいます。
集団といっても多くて10人程度ですが、それでも難しい場合もあるので、個別プログラムとして「リュケイオンの散歩道」などを実施しています。
また、センサリーに配慮し、感覚刺激を減らした落ち着いた環境で参加できるプログラムも用意しています。
利用のきっかけは、自分でホームページやSNSを見て来る方もいますし、区外や近隣の支援機関・関係機関からの紹介でつながる場合もあり、地域連携も行っています。
最初は見学から始めたり、保護者が連れて来るケースもありますが、本人が来たいかどうかをとても大事にしています。
そのため、説明や確認のプロセスを経て、体験利用を行います。体験回数は個人によって異なります。
最終的に利用登録という形になります。
区の事業ですが、独自事業の枠組みもあり、受給者証は不要です。
診断がなくても利用できます。
これは、みつけばルームを立ち上げる際に区内調査をしたところ、特別支援教育と同様に、診断がなくても支援ニーズがある方が非常に多かったため、最初からハードルをなくそうという世田谷区の英断によるものです。
利用後も、休止したり、やめたり、また戻ってきたりといったプロセスがあることも説明しています。
利用者数は年々増加しており、平屋でスペースは限られていますが、現在82名が利用しています。
男女比は、男性55名、女性25名、その他2名です。
事業計画としてはワークショップが中心ですが、時間の都合もあるのでワークショップの説明は最後にまとめます。
ワークショップは活動の場です。外部講師が行うワークショップと、ピアサポーターやわれわれ職員がが企画するもの、利用者さんが定期的に企画するものの、大きく3種類があります。
外部講師の方は、自分のこだわりを社会の中で形にし発信している方々で、利用者との親和性が高く、表現方法のヒントを与えてくださる役割です。
ピアサポーターとしては、利用者が自分のこだわりを隠したり出せずにいることが多いので、スタッフ自身が積極的に表現を開示し、雰囲気づくりをしています。
予約プロセスにも特徴があります。
毎月20個以上のワークショップを企画していますが、1人が予約できる上限は10個までです。
その中から自分で選択し、自分で決定するプロセスを設けています。
この過程で、自分は何がしたいかなとか、何が大丈夫かなとか、やってみてどうだったから調整してみようとか、そんな働きかけにもなっています。
もちろん、スタッフにも相談してくれたら、「こういう雰囲気のやつだよ」などとお伝えできます。事前にこういうカタログも作っていて、毎月配布したり、利用者さんたちだけが見られる情報として共有したりもしています。そういう形で情報提供しています。
実際のワークショップの写真は、こんな感じです。詳しくはホームページやSNSでも見ていただけたらと思います。
例えば、レコードをつなぎ合わせて、自分のおもしろいと思う音だったり、好きな感覚を見いだしてみよう、とか。アロマも同じような感じで、自分の好きな香りを見つけてみよう、というワークショップです。
我々は感覚過敏があるのですが、そういったところの「良さ」――自分にとっての意味であったり、価値であったり――そういうものを再確認するようなものになっていると思います。
みつけばハウスは、自己表現に重きを置いているので、いろいろなチャンネル・アプローチで表現を保障しています。そこに美術家やデザイナーなど、そういった方々が方法を提供してくださっています。
本当にいろんな分野がありまして、運動とかも苦手な人が多いのですが、まずは「自分の体が、自分の部位が、どこにあるのか感じてみよう」というところから始めたり、安心して体を動かすところからやってみたり。それが演劇みたいな形になったりもします。
プロのダンサーや、プロの声優さんも来てくださいます。三ツ矢さんが大御所ですが、定期的に来てくださったりします。
また、興味関心としては――藤野先生がよくご紹介いただく先行研究でも、自閉スペクトラム症の成人の方の興味関心のテーマとして心理学が挙がってきますが――そういったニーズもあるので、そういう人脈を活かして大学の先生にも来ていただいたりしています。
そういうふうに、いろんな自己表現、自己理解を保障しています。
ピアサポーターも、自分のこだわりを生かしたいろいろなワークショップをしています。私も毎月やっています。私は博物学が好きなんですね。
例えば、鉱物で絵の具を作ってみよう、ということで、ひたすらみんなで、すり鉢やハンマーでずっと砕き続けるとか。メソポタミア文明のパンを作ってみて、どうだったかとやってみたり。
古生物にバスローブを着させたり、いろんなことをやっているのですが、あとは骨格標本だったりとか。こんな感じで、自分の興味関心を企画にしてやっています。
その中で、私がやりたいことをやっているだけではなくて、それぞれの利用者が自分の興味関心とか、自分の持っているものをどんどん出してきてくれます。
職人肌の利用者さんも何人かいて、すごく緻密に図形を計算してやっているんですが、それが本人にとっても意義を感じるようです。これはほかのスタッフのワークショップですが、「わら人形をつくり続けるだけ」のワークショップもあります。これは利用者さんの中に、すごく好きな方がいて、最近その方が「わら人形伝道師」として、利用者企画でやったりしました。結構、作り方が難しいんですよね。
日本神話が好きなスタッフが、日本神話を表現する。これは須佐之男命なんですが、そんなことをやったり。
あとは、自動車が好きなスタッフが、自動車パーツを延々と磨き続けるとか。
こういったものが、すごく好評なんですね。
区内の関係機関に最初こういうのを知らせたとき、「もっと普通の内容をやってほしい」と言われたのですが、見事に申し込みがなくて。結局、こういったものの中で、みんなやっていく、というのが好きみたいです。
実証的・検証的にもやっていますが、こういった仮説を我々は持っていまして。
好きなもの、興味、夢中になれること――自閉スペクトラム症の中で「特別な興味」と言われたりしますが――そういったものがベースにあって、それを表現したり、シェアしたりするという経験がある。
そのうえに、主体的なコミュニケーションだったり、自分なりに社会にコミットする意欲だったり、そういったものが来るのではないか、という仮説です。
従来の支援のアプローチって、上のところ――コミュニケーションとか社会参加とか――をスキルみたいな形で知識として提供して、「それを使ってみましょう」とやりがちです。
でも、この土台のところがないと、自分事として使えない。
そこが、みつけばだと、うまく出来ているのかなと思います。
「自己理解が最初」ではなくて、「自己表現から自己理解が育ってくる」というところです。
時間が来てしまったのでざっくりですが、みつけばハウスを利用してのアンケートも利用者さんたちに取っています。
「自分の悩みが少なくなった」という項目では、依然として悩みはあるんですが、興味関心が広がったり、自分を表現する機会が増えたり、安心してコミュニケーションがとれる場面が増えたり、楽しみが増えたり、前向きに生活できるようになった、人生がおもしろくなった――と回答している方が多かった、という結果でした。
みつけばを利用して自分が変わったこととして、「逃げ場が増えた」と書いている方もいて、すごくいい表現で素敵だなと思っています。
自分のいろんな変化が、みつけばハウスの中だけではなくて、自分のふだんの生活の中でもいろいろ変わってきた、と答えてくれている方が多いです。
最後、ざっくりしたまとめになりますが。
もともと私自身にも、自分のサードプレイスというか、好きなコミュニティがありまして、それは博物学や趣味のコミュニティでした。
うまくいかないことも多くて、学校に自分の居場所がなかったのですが、そのときに地域の博物館とか図書館とか、そういった場所での交流という、自分にとっての居場所があったなと思います。
さらに趣味のコミュニティーを大事にしていて、その中で自分のスタイルが洗練されたり、共有できる体験が増えたりします。
「こういう大人、いいな」みたいなモデルに出会えたりとか、エンパワメントを感じたり、肯定的なアイデンティティーが形成されていくな、ということを自分自身感じるところがあります。みつけばや、このあとのセッションで生涯学習の話もありますが、そういった中で、こういうことを支えていただいているのかなと思います。
これは私がイベントに参加して優越を覚えているところなので、ここはカットします。
最後に、みつけばハウスにおけるニューロダイバーシティとピア・サポートの支援アプローチとしては、次のようなものがあります。
・“自分のまま”安心して過ごせる居場所づくり(心理的安全性)
・特性や経験を共有し、肯定的・共感的に関われるピア交流(孤立の軽減)
・非強制・選択制の運営により、本人の主体性(エンパワーメント)を支える。
・自己表現を尊重し、健全な自己理解と自己物語(ナラティブ)を促進する。
・相互理解と所属感が、ASDを含む肯定的なアイデンティティの形成を後押しする。
これらの実践が、本人の生きやすさやウェルビーイングに寄与して、地域で自分らしく生きることも支えられているのではないかなと思います。
ここは省略しますが、こういった取り組みについては、それぞれ最近の自閉スペクトラム症の研究知見でも裏付けがあるのではないかなと思っています。
最後にサードプレイスの意義として、
・“自分のまま”安心して過ごせる空間は、家庭(第一の場所)や学校・職場(第二の場所)とは異なる、評価や役割から自由な第三の居場所と して機能する。
・当事者同士が自然につながり、無理なく交流できる環境は、孤立の軽減に役立ち、社会とのほどよい弱いつながり(weak ties)を形成する。
・選択制・非強制の関わりは、個人のペースを尊重し、自己調整や心身の回復を可能にする“気軽に立ち寄れる場所”の特徴に合致する。
・表現を評価しない対話のあり方は、安心感と包摂感(belonging)を生み、自己理解の深まりを促す。
といったことがあります。
こうした環境が発達デコボコ特性のある若者が自分らしく生きるための心理的・社会的な基盤となって、ウェルビーイングの維持に寄与していければいいなと思っています。
少し時間をオーバーしてしまいましたが、以上です。
- 藤野
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ありがとうございました。
理論と実践の両面からお話しいただけたような気がします。
みつけばハウスは、掘り下げ方が半端ないんですよね。
あるワークショップでは、チョコレートドリンクをカカオ豆の状態から作ってしまったんですよね。
- 綿貫
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「神々の飲み物」というワークショップなんですけれども、漢方的な位置づけで、カカオ豆から苦いチョコレートドリンクができるんですが、レシピの詳細が分かっていないので、みんなで検討して自分なりに作ってみたら、「まずい」という、そういうワークショップです。
- 藤野
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ここからはフロアからのご質問やコメント、感想でも結構ですので、いただければと思います。ご所属とお名前も頂戴できればと思います。いかがでしょうか。どんなことでも感想でも構いません。
- 会場
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東京都下の小学校で通級の教員をしています。面白いお話で勉強になりました。ありがとうございます。お二人に質問です。自己理解はみんなにとって大事だと思うのですが、「自分を当事者と思うこと」は大事なのか、あるいは必要なことなのかという点をお伺いしたいです。当事者という捉え方は人ごとに違うと思いますが、例えば学校に行っていないのであれば、不登校の当事者であることには間違いないと思うのですが……。
- 綿貫
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1つ確認させてください。ここで言う当事者というのは、「自分が発達障害である」という理解、ということで大丈夫でしょうか?
- 会場
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そのあたりも、ちょっと自分の中で分かっていないところがあります。
- 綿貫
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分かりました。ありがとうございます。 まず「自己理解」という言葉が、発達障害者支援のキーワードとして出てきています。今、東京都の学校の方とのことでしたが、中学校の特別支援教室のガイドラインの中にも「自己理解」と書かれているかと思います。ただ私の中で、この自己理解というのが、イコール「障害特性の理解」になってしまっているのではないかという懸念を、いつも方々で感じているところです。
自己には色々な自己概念があり、自分の「自己資源」はたくさんあるのです。ただ、支援の文脈になると、どうしても発達特性ばかりがフォーカスされすぎてしまうことがあり、そこについて「違うな」という違和感を覚えることもあります。
最近の具体的なエピソードを共有させていただきます。先日ある学会でお話しした際、私を含めた登壇者は全員、大学生以降に診断された方々でした。その時にフロアの方から「困り感を長年放置したことについてどう思うか」という質問をいただいたのですが、それは私にとって、すごく意外な受け取られ方だなと感じました。別に自分が発達障害であるかどうかにかかわらず、その時々で自分を理解して助けてくれた大人は普通にいましたし、発達障害でなければ支援ができないということではないと思うのです。
ですので、皆さんが「特性」を支援する支援者なのか、それとも「人間」を支援する支援者なのかによって、発達の理解の在り方が違うのではないかといつも思っています。これが前提となりますが、そのうえで本人が障害について理解したほうがいいかという点についてです。私としては、自分が発達障害のことを知る以前に、「発達障害以外の言葉」で自分を説明できる状態があったことが、結果として良かったと思っています。
つまり、「自分の得意なことはこれで、苦手なことはこれ。こういうところは弱みだけれど、こういう強みもある」というアイデンティティーが既に形成されていて、その上に発達障害という指摘が入るのであれば、ダメージはそれほど大きくありません。しかし、そこが上手くいっていないときに発達障害という言葉が出てくると、スティグマになってしまうことがあります。ですから、別に発達障害ということを前面に出さなくても、その人自身について説明したり、支援の観点について説明したりすることは十分に可能です。希望としては、ポジティブに伝えていただければと思っています。例えばコミュニケーションの課題に取り組む際も、ST(言語聴覚療法)的に行うのではなく、こちらが困っている支援のテーマをそこに組み合わせていくことは、アプローチとして十分に可能であり、ありがたいなと思っています。
- 関根
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綿貫さんがたくさん喋ってくれるので、私はいつも少なめなのですが、いいでしょうか。喋る担当は綿貫さんに任せます。
「自分を当事者と思うことは大事か、どこでそう思うか」というご質問ですね。どこからお話しすればいいでしょうか。
私は大学で臨床心理学を専攻していた際、授業で発達障害について学びました。そこで「あ、私、これだ」と感じ、その時はすごく安心したのです。それまでに「自分はこういうところが苦手だ」と理解したうえでその概念を知ったので、準備が整っていたのだと思います。その概念を理解したときに、「自分と同じだ、自分に当てはまるな」と納得して安心しました。何となく今まで、他人と違う自分を感じつつも、なぜかは分かっていなかったところがあったので。ただ、私は「囲碁」という特殊な世界で生きてきたので、何とかなってきた人間でもあります。
そういう概念があることを知って安心する人は、意外と多いと思います。ただ、本人の受け入れができそうかどうかというタイミングはあると感じました。また、診断名や特性の有無、どんな特性があるかが分かったとしても、それだけでは自己理解とは違うのではないかとも思います。自己理解というものは、一人ひとりにそれぞれの過程があるわけで、発達障害があってもなくても、長い年月がかかるものだと思います。私も長くなってしまいました。
- 藤野
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ありがとうございます。他にはいかがでしょうか。
- 会場
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某市の社会福祉事業団で、普段は就労支援を担当しています。サードプレイスの必要性について、本来の自分を取り戻すことができ、そこから視野や世界が広がって他者を尊重できるようになる、というお話はよく分かりました。最初にお話しいただいた、第一、第二、第三の場所との関りで、包括的というか包摂的なコミュニティがどのように出来上がってくるのか、もう少しお話しいただけるとありがたいです。
- 藤野
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団体の設立経緯も含めて、関根さん、あるいは綿貫さんからお願いします。
- 綿貫
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ありがとうございます。私も本来は、例えばみつけばハウスで行っているような活発な自己表現や創造性が、家庭や学校といった場所でももっとできないかなと考えながら、普段学校の中で活動しています。
ただ、その中では色々な集団や社会の事情があり、さまざまなニーズを持つ人がいます。インクルーシブについては、もちろんそこでの最大公約数というか、対話や協働を通じて、昨日の話で言うところの「不断の努力」を続けていく姿勢でありたいと思っています。一方で、それを続けているうちに、そこで生きている本人たちは傷つきなど色々な経験を重ねていくことになります。ですから、サードプレイスのような「すみ分け」と、その場所の保障という役割は大事なのではないでしょうか。実際にみつけばハウスの利用者さんたちも、みつけばだけに居るわけではなく、普段の学校や家庭、職場などさまざまな場所に身を置きながら、みつけばにエネルギーチャージしに来るといった役割を持っています。また、区内の他の関係機関との連携を通じて、少しずつ包摂のプロセスを進めているところです。
私たちもまだ発展途上なのですが、どのような形を目指していけるか、取り組んでいる一つの実践だと思っていただければと思います。お答えになっているか分かりませんが、以上です。
- 関根
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もう一度質問の趣旨をお聞きしてよいでしょうか。
- 会場
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サードプレイスはあるべきものだと思っていますが、それをいかに第一、第二の場所と関連させて、その人の人生が豊かになっていく仕組みを作れるのか、という意図です。サードプレイスを作るべきだとしても、誰がどのように運営していくかには不確かな部分も出てくると思うのですが。
- 関根
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何となく分かりました。めちゃめちゃ難しい問題ですね。
ネスト・ジャパンを設立した本田秀夫は、「ネスト(Nest)」には「入れ子」という意味があると言っています。社会の中で入れ子のように位置づけていく、ということです。サードプレイスではあるけれど、社会の一部なんだよ、という思いで作ったと聞いています。それが今のネスト・ジャパンで実現できているかは正直分かりませんが、「できていたらいいな」と思っています。……なので、どうなんでしょう、ちょっと難しいですね。すみません、こんなお話で。
私は言葉を理解するのに時間がかかることがありますが、そこは綿貫さんが説明してくれています。ネスト・ジャパンがいま取り組みとして行っているのは、朝日新聞の助成を受けた「出張余暇」という活動です。ネスト・ジャパンで培ってきたノウハウを、他の場所、例えば児童発達支援や放課後等デイサービス、フリースクールなどでも活用できるように、お手伝いをする活動をしています。
- 綿貫
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そういったところからお互いに協働し、実現を進めていけたらいいなという狙いは、ネストさんもお持ちでしょうし、われわれも模索しているところです。お答えになっていますでしょうか。
- 会場
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はい、なっています。 お話がとてもキラキラしていて、素晴らしくて感動したんです。それが相乗的に第一、第二の場に影響し合って、お互いがより良い豊かな場になる。そんなコミュニティを築けていけたらいいなと思い、何か仕組みが必要なのかと考え、アイデアをいただければと思いました。
- 綿貫
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みつけばハウスにも、学校の先生方や福祉の方など、色々な支援機関の方が見学に来てくださっています。もしご関心があれば、ぜひお申し込みください。
- 関根
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ネスト・ジャパンも見学OKです。研修のような形でこちらから伺ったり、お話ししに行ったりすることもあります。
- 藤野
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そろそろ時間が迫ってきました。今回の大会は「教育」というキーワードがあります。サードプレイスは家庭や学校から離れた場ですが、学校の中でこうした取り組みは可能でしょうか。どんな可能性があるか、最後にお一人ずつ一言お願いします。
- 綿貫
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長くならないように抑制してお話しします(笑)。
実際、特別支援学校や特別支援教育、通級による指導などさまざまな現場で関わらせていただいています。先ほど通級の先生がいらっしゃったので通級の話をしますと、現在はどうしても支援プログラムとしてSST(ソーシャルスキルトレーニング)などを当てはめて提供し、その中で学習していくという形になりがちです。体制の厳しさや人員、耐久性の問題もあってそうなっているのですが。
しかし、昔の自立活動や通級は、もっと本人たちの自己表現などを大事にしていたと思うのです。自分の好きなことを話す、好きなことを見せる、それを題材にして授業を組み立てていく。そうした実践を見てきました。ですから、学校という枠組みの中でも「できる」ことだと思います。
ただ、どうしても周囲の大人が――特に相手が子どもだと――「どうあってほしいか」「どうなってほしいか」という思いを先行させてしまうため、支援の設計もそうなってしまいがちです。本人が「どうしたいのか」「どうありたいのか」という点にフォーカスし、昨日お話しした「ビュー」の視点から支援を組み立てていけば、色々な現場でやっていけるのではないかと思います。すみません、少し長くなってしまいました。
- 関根
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学校という場所は集団の場だとは思いますが、その中でも「個」を大事にする、個別に尊重してもらうことが、すごく大事なのかなと思いました。
- 藤野
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こうした取り組みを各地域で行いたい場合、講師の派遣(出前)などもされているとのことですので、ぜひ活用されると良いのではないかと思います。もっとディスカッションの時間を長く取りたかったのですが、司会の不手際で十分な時間管理がうまくできず、申し訳ありませんでした。
では、第2セッションを終わります。どうもありがとうございました。