セッション4 障害者の生涯学習支援の実際 パネルディスカッション1 相模女子大学と相模原市との連携によるインクルーシブ生涯学習プログラムの開発と実際

話題提供者:
武部 正明、日戸 由刈 相模女子大学人間社会学部

インクルーシブ生涯学習プログラム開発協力チーム
岩本 健吾、大場 千嘉、岡田 結衣、加登川 俊太、
今藤 孝拓、下村 爽香、丹沢 桜子、常盤 茜、
長谷川 璃子、水野 克隆

川口 信雄 (株)はまリハ、
インクルーシブ・プログラム開発事業連携協議会会長
コーディネーター:
藤野 博 東京学芸大学 教授

松矢

こんにちは。

実行委員長の松矢です。セッション4のコーディネーターを藤野委員と一緒に担当します。

セッション4のテーマは「障害者の生涯学習支援の実際」ですが、このことには長年熱意をもって携わっており、私は後半のパネルディスカッションで取り上げる、学芸大学附属特別支援学校の同窓会による若竹ミュージカルの後援会長を、30年間務めています。

またオープンカレッジの取り組みにも1995年からずっと携わっています。

生涯学習については、障害者権利条約第24条でも位置付けられていますが、この総合リハビリテーション研究大会でぜひ取り上げたいと思っておりまして、今回、こうしてセッションを行う運びになりました。よろしくお願いします。

それでは、まずパネルディスカッション1として、藤野委員より、よろしくお願いいたします。

藤野

たびたび失礼いたします。

セッション4のパネルディスカッション1でコーディネーターを務めます藤野です。

セッション4は、2つのパネルディスカッションで構成されますが、少し時間が押していることもあり、私からの趣旨説明などは省略しまして、抄録集をご参照いただければと思います。発表資料も載せています。

では、ここから先の進行は、武部先生にお願いします。

武部

皆さん、こんにちは。

相模女子大学の武部です。

本日は発表の機会をいただきました松矢先生、藤野先生、事務局の皆さまに厚く御礼申し上げます。また、プログラム開発チームのみんなと事業の連携協議会の川口会長、同じく相模女子大学の日戸先生に感謝申し上げます。

相模女子大学では、相模原市と協働で、文部科学省の委託を受け、知的・発達障害のある若者と本学の学生がともに学ぶ「インクルーシブ・プログラム開発事業」を実施しています。

プログラムは現在、インクルーシブ生涯学習プログラムとエンパワメントプログラムが、車の両輪のような形で活動しています。

本プログラムの参加募集についてです。

毎年、何回でも自由に参加できる「オープンセミナー」を起点として、より自己理解を深めたい方にはゼミ活動へ、そして自分だけでなく、より主体的な調査・研究・啓発をしたい方にはリサーチ活動へと進む仕組みにしています。

最初の起点となるオープンセミナー「大学で学ぶ楽しみ発見セミナー」は、3部構成です。

第1部は大学の先生の講義、第2部は就労ワンポイント講座、そして第3部が「私の趣味自慢タイム」です。

第1部では、当事者と学生が共に大学の先生による講義を受講します。内容は哲学、心理学、情報学などさまざまです。

第2部の就労ワンポイント講座は、仕事とライフキャリアをテーマに、元特別支援学校教員と当事者による講座です。

第3部の「私の趣味自慢タイム」は、小グループに分かれて、当事者が司会進行を行い、各人の趣味を披露しながら楽しむセッションです。

オープンセミナーの年間参加者数は、概ね延べ120人ほどです。今年は少し増えて、1割程度多くなりました。

私たちはインクルーシブリサーチの視点に立って活動しています。インクルーシブリサーチとは、2001年にウォームズレイが提唱した概念で、これまで調査対象とされてきた人たちが、研究者として調査研究を行う立場になるものです。

自身の関心を探究するための調査方法や、社会への発信方法を学ぶことによってセルフアドボカシーが可能になる、という考え方です。私たちの活動では、この考えを参考にしながら当事者主体を大切にしています。

また、私たちの活動の意義については、「サードプレイス」という概念でも意味づけをしています。家庭や職場とは別の第三の居場所、心地よく過ごせるコミュニティーの基盤となる場所です。平日は仕事をしている当事者が土曜日に大学へ来て、仲間と活動しながら地域の中での第三の居場所になると考えています。

今回は、当事者主体で開発活動を行う生涯学習プログラムの意義についてご報告いたします。

2025年度のインクルーシブリサーチチームのメンバーです。当事者が5人、在学生・大学生が3人、本学卒業生が3人、合計11名です。私はコーディネーターを務めています。

チームメンバーの構成は、当事者と学生が共同する形です。今年度からは卒業生も、卒業生の立場で参加しています。

障害の有無を問わず、若者が大学で学ぶことの意義や、参加したくなるプログラムとは何かを話し合いながら体験も交え、行政や大学に対して「こういうプログラムが必要です」「もっとたくさん作ってください」と提案することを目的としています。

これまでのリサーチチームのテーマは、このようなものです。2025年度からは、これまでの成果を同世代の若者たちに知ってもらうため、リーフレット作りも始めました。

私たちの活動は、仮説を立てて検証し、また仮説を立てるという形で、アクションリサーチとミーティングリサーチをPDCAサイクルで行っています。若者にリサーチを行い、振り返りをするという流れです。

アクションリサーチでは、参加者としてだけでなく、実際の会の進行も担当しています。参加者の若者たちとコミュニケーションをとり、反応を見たり、感想を聞いたりしています。

このようにして得られた情報をもとに、進行方法を再検討したり、翌年度の講義内容について「こんな講師を呼びたい」「こんなテーマを聞きたい」といった案をまとめ、事務局に提案しています。

2025年度のリサーチ・メディアチームの活動状況です。アクションリサーチでは、今年度から第1部の大学講義について、講師と事後ミーティングを行い、講義の振り返りや改善点について話し合っています。

また、ミーティングリサーチでは、若者たちにセミナーの存在を知ってもらうため、リーフレットづくりを進めています。リーフレット作成にあたっては、デザイン制作に詳しい専門職の外部講師から助言をもらっています。

また、インクルーシブメディアチームにも参加してもらっています。こちらについては今回は発表を省略しますので、本学サイトをご参照ください。

そもそも彼らは、なぜリサーチ・メディア活動をしているのでしょうか。

まず、当事者である勤労青年たちは、就学前あるいは診断前に療育手帳B2を取得し、小中学校では特別支援学校を利用し、高校は特別支援学校高等部を卒業しています。

アウトカム指標で考えると、就労、友人関係、余暇のいずれも充実している様子がうかがえます。

生活面では実家暮らしの人が多いですが、炊事の練習をするなど、自立に向けて取り組んでいる人も多いです。

彼らのWHO-QOL26の測定結果です。20代の一般成人と大きな違いはなく、領域によっては彼らのほうが良好という結果もありました。つまり、彼らのアウトカムは概ね良好です。

この活動に参加することで、自分たちの人生を「学ぶこと」「楽しむこと」という視点から、より充実させようとしている。これが活動の目的であり、QOLの向上が目的だと考えています。

さらに彼らは、自分たちが満足するだけではなく、同じ境遇の若者たちにも、その機会を保障してほしいと主張しています。

では、彼らはリサーチ・メディア活動を通して何を得ているのでしょうか。

まず当事者の側面では、趣味を通じた交流の意義の再発見、リサーチメンバー同士での課題解決、新たな知識の獲得などが挙げられます。

また、楽しかったこととして次のような声がありました。

セミナーを自分たちでつくる達成感、仲間と話し合う時間や活動する時間が楽しい、というものです。

この点については、後ほどご本人たちから詳しく報告してもらいます。

全体のまとめと考察です。

障害のある当事者も、学生や卒業生も、「学ぶこと」「楽しむこと」に対する潜在的なニーズや動機づけを持っていることが分かってきました。

インクルーシブな生涯学習プログラムとは、まず障害のある当事者が学びやすくなること。そして、それによって学生も学びやすくなるものだと考えています。

最も重要なポイントは、対等な関係での相互交渉にあると考えています。

対等な関係の形成には、安心と楽しさが必要だと考えています。セミナーの「私の趣味自慢タイム」をはじめ、お互いの立場を尊重しながら趣味を介して話し、「楽しい」という感情を共有することが、とても大切だと考えています。

また、当事者にも学生にも、いかに最初の壁を乗り越えやすくするかということも重要です。

この「最初の壁」とは、大学の敷居をまたぐ最初のハードルのことです。これが非常に高いということを、みんなで話し合っています。

この壁を、特に障害のある若者たちにとってどうすれば越えやすくできるのか、アクセシビリティをどう高めるかということを、現在みんなで検討しています。

リサーチチームは、より当事者主体の活動にしていきたいと考えています。これは私自身の思いでもありますが、その点についてもご示唆をいただきながら、今後さらに検討していきたいと思っています。

それではここから、当事者、学生、卒業生が本事業について、なぜ参加しているのか、何を理解してほしいと考えているのか、そして何を得ているのかについて報告いたします。

では、勤労青年の皆さん、お願いします。

加登川

私はインクルーシブ・プログラムの勤労青年の加登川俊太です。

「知的障害者もともに学べる大学とは?」というテーマで発表していきます。

まず、特別支援学校の進路先の選択肢の少なさについてです。

私たちは特別支援学校に進む選択をしましたが、特別支援学校では基本的に就職に向けた教育が中心で、就職するという選択肢しかありませんでした。

そもそも進学に向けた教育が行われていなかったため、大学へ進学するという考えがなく、大学は諦めて就職するしかありませんでした。

知人では、商業高校などを選択した人もいます。しかし、将来働くときに、障害者手帳を使って就職し、サポートを受けながら働く方が自分に合っていると思ったため、特別支援学校を選びました。

それでも、「実は大学に行きたいと思った人は、自分だけではなく他にもいるのではないか」と考えました。中学校のころから、「特別支援学校に行ったら就職のための勉強をする場所だと聞いていたから、大学に行く気がなかった」という人もいます。また「中学は支援級だったが、母も父も大学に通っていたので、自分も当然大学に行くものだと思っていた」という人、「高校進学のときに、特別支援学校か、支援学校の分教室か、サポート校か検討したが、勉強が好きでなかったので、特別支援学校を選んだ」という人もいました。

以上を踏まえると、そもそも大学進学に向けた教育が行われていなかったことや、勉強に対して後ろ向きな思いがあったことから、大学進学は難しいのではないかと感じました。

大学進学の話の前に、まず一般級と支援級の違いについてお話しします。

小・中学校の支援級では、一般級のような授業ではなく、自習をすることが多く、プリントやドリルを使って勉強していました。しかし、それらを進めても分からないことが多く、先生に聞いても理解できないことがありました。

また、社会常識を学ぶ機会が少なかったため、支援級でもそうした内容を教えてほしいと思いました。小学校で理科や社会をやらない学校もあると聞きます。中学校の授業では小学校の知識を使うこともあるので、小学校のカリキュラムは統一してほしいと思いました。

続いて、定期試験についてお話しします。

希望する場合には、定期試験も一般級で受けられるようにしてもよいと思います。

小学校のときには、一般級で受ける授業を選択していた人もおり、試験も一般級で受けることができました。試験そのものは楽しいものではありませんが、点数が良かったときには自信につながりました。

また、特別支援学校でも大学進学に向けて、一人ひとりに合った学習の機会がほしいという意見もありました。

例えば、社会の授業では文字や情報だけでなく、実物を持ってきて教えてくれると分かりやすいと思いました。クイズやゲーム形式が多い授業も学びやすいと感じました。

数学では、問題を解きながら解説をしていく授業がありました。数学が苦手な人もいるので、自分が体感できるような指導があると、より分かりやすいと思います。

今藤

ここからは、同じく、インクルーシブ・プログラムの勤労青年の今藤がお話しします。

次に、個別にあった指導について、良かったことと改善してほしいことをお話しします。

まず、良かったことが3つあります。

1つ目は、その人の特性に合わせて、音に敏感な人にはパーティションを使って静かな空間をつくってくれたことです。2つ目は、一般級で参加する授業と支援級で参加する授業を自分で選べたことです。また、ついていけそうなものは一般級で、そうでないものは支援級で授業を行ってくれたことです。自分のレベルに合わせて、一般級で受けるか支援級で受けるかを選べたことはとてもよかったと思います。

3つ目は、支援級で支援を受けながら、一般級と同じ授業をしてくれたことです。支援級でも、難しめの一般級と同じ授業をしてくれたこともありました。

ここで、私の体験談をお話しします。

当時の私は数学が得意で、小学校のときは一般級で授業やテストを受けていました。中学校に入ると難易度が上がり、一般級のスピードについていくのが難しくなりました。

そんなとき、数学の先生にお願いをして、先生が支援級に来てくださり、私とマンツーマンで授業をしてくれたことがありました。

中学1年生のとき、連立方程式の単元までは、一般級の先生が来て授業をしてくれました。このような機会があると、より興味を持ち、自信にもつながると思います。

途中でその授業が終わってしまい、とても残念に思いました。その後は学ぶ機会がありませんでしたが、とても良い経験と学びになりました。

現実的には難しいことかもしれませんが、支援級の生徒が授業を受ける選択肢が広がるのではないかと思いました。

また、中には家庭で進研ゼミのチャレンジをやっていて、多少難しい問題にも取り組めていた人もいました。

続いて、改善してほしいことです。

それは、一人ひとりに合った難易度の問題を提供・準備してほしいということです。

学校によって違うと思いますが、私の中学校の支援級では個別で授業を受けるのではなく、一般級と同じように全員で同じ授業を受けていました。

しかし、支援級の生徒は一人ひとり障害の種類や程度が違います。できる内容と難しい内容が、人によって大きく異なります。そのため、一人ひとりに合った内容やスピードで個別に授業を行った方が、支援級の生徒はより授業を受けやすくなると思います。

また、つまずいているところを解消してほしいと思いました。

最後に、「『いろんな道』があったら今の人生は違ったかも!」という視点から、知的障害のある人の高校入学から卒業後の主な進路についてお話しします。

多くの人は特別支援学校や分教室に進学し、障害者手帳を使って就職したり、卒業後に就労支援事業所で訓練を受けてから就職したりします。私たちは特別支援学校を卒業して、障害者手帳を使って就職したので、このケースに当たります。

私自身は、支援学校卒業後に就職しましたが、体調を崩して退職し、就労移行支援事業所に通うことになりました。このようなケースもあるかと思います。

一方で少数ですが、商業高校に進学し、高校卒業後に資格を取得して就職したり、専門学校や大学へ進学する人もいます。

大学に進学するパターンもありますが、知的障害者の大学進学率は約0.4%であり、現実的にはかなり難しい状況です。

そこで、理想の進路について考えました。

1つ目は、特別支援学校でも大学進学に向けた教育を行ってほしいということです。障害のある人の枠で大学に進学できる仕組みがあれば、より多くの人が大学に入りやすくなると思いました。

2つ目は、大学に行きたいと思わない人は、障害者手帳を使って就職するという道です。

3つ目は、働きながら就職したけれど、もっと学びたいと思った人が、大学で勉強したり、楽しみながら講座を受けられる道です。

神戸大学では、一般学生と知的障害のある学生が一緒に参加するプログラムがあります。相模女子大学でも、若者なら誰でも参加できるセミナーを開催しています。

このような大学が増えれば、大学に行ける人も増えると思うので、これからも発信活動を続けていきます。

続いて、水野さんの発表になります。

水野

同じくインクルーシブ・プログラム勤労青年の水野です。よろしくお願いします。

まずは本プログラムに参加したきっかけ、大学で学びたいと思ったきっかけについてお話しします。

私たちは高校時代、大学進学を諦めていました。ところが特別支援学校を卒業後、大学に進学したかったと先生にはっきり話した生徒がいたという情報を知り、私も高校のころ、大学に進学する選択肢があってほしいと伝えればよかったと後悔しています。

外国では障害のある人でも大学の授業を受けていると、当時の高校の進路専任の先生から聞きました。

その話を聞いて、日本でも大学で学べる機会があるといいと思うようになりました。

次はプログラムに対する思いです。

セミナーに参加する人たちや、他の大学にしてもらいたいことについてお話しします。

私たちと同じように特別支援学校を卒業した人にも、大学で学べる機会、チャンスがあることを知ってもらいたい。

そして、ほかの大学でもこのような活動を始めるきっかけになってほしいです。

セミナーに参加して、学校を卒業しても学び続けたいと思う人が少しでも増えてくれたらうれしいです。

参加者全員が、セミナーを、自宅、学校、職場とは違う、第三の居場所、サードプレイスと思っていただければ、私たちも励みになります。

次に「当事者が考える『みんなが楽しめるセミナー』とは?」についてです。まずはセミナーに参加して思ったことを話します。

講師の話を聞いて楽しく講義が受けられるという感想がありました。

特に哲学対話の反響は大きいです。

就労ワンポイント講座の講師は、仕事の不安や困りごとを当事者の経験を交えながら対話するので、将来の役に立つといった声が上がっています。

職場等では、趣味について話す機会がないため、「私の趣味・自慢タイム」で参加者たちとアイスブレイク式に話せる場があって楽しい、といった感想がありました。

特に第3部、「私の趣味・自慢タイム」では若者たちがフラットな関係で話し合えるのがポイントです。

そのフラットな関係については、後ほどお伝えさせていただきます。

次に我々、運営側が心掛けていることについてお話しします。

まずは参加者に分かりやすく説明するにはどうしたらよいのかを考えることです。初めて参加する人は、会場の雰囲気やイメージをつかむのが、まだ困難なので、私たちがセミナーの流れを具体的に説明するよう意識しています。

自分も分かります、そうですよね、と相づちを打つことで、互いに共感性が持てます。

運営側は「私の趣味・自慢タイム」で司会、書記、感想を含め、タイムキーパーも担当しています。

回数を重ねて試行錯誤して、みんなが安心して楽しめるようなセミナーづくりに努めています。

その中で大切なのは、客観的な視点を持つ、すなわち参加者の気持ちになって考えることです。

私もまだまだ客観的な考えを持つのは難しいですが、たくさんの人と関わり、そのスキルを磨いていけるよう努力しています。

次に、セミナーの運営側としての感想です。

自分たちでセミナーの講師を選んだ結果、観察力が向上したほか、我々もセミナー運営として携わることができ、自信につながりました。

セミナー終了後は、講師の先生とミーティングをし、感想などを話します。お忙しい中、貴重な機会を与えてくださった先生方には、感謝の気持ちでいっぱいです。セミナーの運営ができたという達成感を大切にし、これからもリサーチ活動を続けたい気持ちが高まりました。

ここで先ほどお話しさせていただいた、フラットな関係について、リサーチメンバーの一部の意見をまとめました。

まず1つ目、対等な関係。

次に、率直に話し合える関係。

次に、自然体な関係。

中には家族でも言いづらいことや、困りごと、悩みを相談できるという意見も出ました。

私たちが理想としているフラットな関係は、こちらの4点です。

最後に、当事者として若者や社会に発信したいことについて話します。

私たち、勤労青年がプログラム全体に参加して感じたことです。

ミーティング時に、みんなでお菓子を食べながらコミュニケーションをとり、課題に向かって頑張れることが楽しいと思うので、自分にとって意義がある活動と思っているほか、この活動は心のリフレッシュ、つまり自分のもう一つのよりどころと感じています。

学会発表の資料作成を夜遅くまで残り、活動終了後はみんなで夜ご飯を食べたり、帰り道で趣味などの雑談もできたので、この活動を通して勤労青年や大学生と仲良くなれたことがすごくうれしいです。

これは私たちだけが思っているかもしれませんが、ここまで親睦を深めて活動することは、なかなかできないと思うので、すごい経験をしていると感じています。

今後も相模女子大学の活動で青春していきたいと思います。

みんなで「さがみはら・学ぶ楽しみ発見プログラム」をともに広げていきましょう。

以上で発表を終わります。

ご静聴ありがとうございました。

武部

次は、学生の発表に入ります。

長谷川

こんにちは。

私たちはインクルーシブリサーチの学生メンバーです。

長谷川璃子こと、りこぴんです。

大場

メンバーの大場千嘉こと、ちかちかです。よろしくお願いします。

長谷川

続いてリサーチ活動を通じた特性の学びについて発表します。

現在、インクルーシブリサーチには人間心理学科の学生が3名、卒業生が3名、所属しています。

私たちがこの活動に参加しようと思ったきっかけは、社会に出る上で、たくさんの人といろいろな経験をすることで将来役に立つと思ったから。

また、人や社会の問題を学べる新しいことに挑戦することは成長につながり、世の中を見る視野が広がると思ったからです。

最初にこの活動に参加したときは、障害を持つ当事者と関わったことがなかったため、距離感がうまくつかめず、どう接していいかわかりませんでした。しかし、趣味の話や雑談を交わしていくなかで、勤労青年たちは人より困りごとが多いだけで私達と変わらないと、打ち解けることができました。また話し合いの休憩中にお菓子を食べて談笑したり、あだ名で呼び合ううちに学生と勤労青年が自然に混合し、席に座るようになり、仲が深まったのを実感しました。

小中学校時代に普通級、支援級に分かれていたので、当事者とかかわる機会がなかったという学生も多くいました。

そのためこの活動を始めるまでは壁を感じていたと感じる学生がほとんどでした。

大場

しかし、この活動を行って当事者の方たちとフラットな関係性を築けたことで、自分たちの考えていた壁はほとんど存在しないものだと感じました。

またセミナー運営、リーフレット作成などさまざまなことをメンバーと話し合ってきましたが、自分にはない考え方・意見に触れることのできる大変貴重な機会でした。

私達は当事者の困りごとについて、これまではどこか他人事に思っていた部分もあるかと思います。

しかし、今では学生のほうからどんなことに困っているのか歩み寄ったり、どうやったら解決できるか、積極的に意見を出しています。

仕事のこと、独り暮らしのことなど、学生から勤労青年に相談して教えてもらっていることも多いです。リサーチに参加して、このプログラムは勤労青年のためだけではなく、私たち学生にとっても、大きな学びがあることを改めて実感しました。

このインクルーシブ・プログラムがこれからも続いていき、必要としている方たちへと広がっていくことを願っています。そして、活動にかかわる人全員が、笑顔で幸せであればいいなと思います。最後にお知らせがあります。

1月31日に相模女子大学で、成果報告会があります。

チラシは受付に置いてありますので、興味のある方はぜひ手に取ってみてください。

これで発表を終わります。

長谷川、大場

ありがとうございました。

武部

引き続き、川口先生の発表に移ります。

よろしくお願いします。

川口

相模原市と相模女子大学を連携させる組織に関わっています。座って話させていただきます。

横浜市教育員会の指導主事として立ち上げに関わらせていただいた学校が「横浜わかば学園」です。先ほど発表してくれた3人も、そこに関係しています。横浜市立としては初めての学校で、知的障害の部門は高等特別支援学校の位置づけです。

今日、この研究会の鼎談にも参加された菊地先生が、私のコーチとして入ってくださり、「今までにないキャリア教育をしよう」、つまり就職させて終わりではない学校をつくろうということになりました。

ちなみに、私が顧問をしている「はまリハ」は若葉台団地の真ん中にあります。そこでは重度の方や医療的ケアの必要な子どもたちのケアをしたり、訪問看護ステーションなどの機能も担っています。

現在、わかば学園の1期生は28歳になりました。正社員に登用されている人も多いですし、途中で辞めて就労移行支援に行き、また働くという人もいます。これもすごく大事なことです。

障害のある方は「一度働いたらそこにずっといなければならない」と思われがちですが、それは誰が決めたのでしょうか。本来は仕事を変わる自由があるはずです。その点も含めて、それぞれの人生を歩んでいます。結婚された方もいます。

卒業生と会うたびに思うのは、就労は大切だけれど、それは決してゴールではないということです。ゴールは豊かな人生です。それは誰にとっても変わらないものだと、つくづく感じています。

一方で、世界の状況を学ぶ機会もありました。大学におけるインクルーシブ教育は、世界ではどんどん広がっています。欧米だけでなく、お隣の韓国でもそうです。知的障害があっても、学ぶ意思を受け止めるという考え方です。

ここで大事なのは、学位を取るかどうかではありません。大学の中で、大学生として学べるということです。

その背景には、国連の障害者権利条約が大きく影響しています。24条に教育のことが書かれており、成人教育や生涯学習についても触れられています。

しかし、日本は条約を批准しているだけで、具体的な法改正はあまり進んでいません。一方、アメリカでは法改正が行われ、経済的支援を含めて知的障害のある学生の高等教育の機会が広げられました。

かなり重い知的障害のある方でも大学で学んでいます。2024年の時点で、348の大学で学んでいます。

日本では法改正がまだなので、現状ではアメリカのようには進めにくい状況があります。そこで「法改正を待つのではなく、生涯学習の枠でまずやってみよう」と、2019年から日戸先生と2人で、ある意味ゲリラ的に活動を始めました。

そこから数えて、もう7年目になります。

ともに学ぶことで、ともに変わるということが起きてきたと思います。

まず勤労青年、つまり当事者の方々ですが、大学で自由でおおらか、だけれど少し難しい学びを経験できたことは、とても大きいことでした。学びというのは、いくつになっても人生を豊かにしてくれます。

そして、もっと大事なのは、同年代の大学生と一緒に学ぶことです。

特例子会社などでは、同年代の障害のある人たちと関わることはありますが、大学生とフランクに接して学ぶという機会はほとんどありません。

面白いのは、大学生はこれから社会に出る人たちですが、彼ら勤労青年はすでに社会に出て働いている。つまり、その点では大学生より先輩なんです。

そうすると、大学生からある意味憧れの目で見られることもあります。この構造がとても大事です。

インクルーシブというと、何でも一緒にすればいい、ごちゃまぜにすればいいという理解もあります。しかし、それは違います。今、神奈川県の知事も「インクルーシブ」と言っていますが、単に一緒にするだけではインクルーシブとは言えません。一部の学校のように、ただ入れるだけではインクルーシブではないですよね。

大事なのは、お互いが学べる環境をどう作るかです。

社会人としての誇りを彼らが実感できること、そして休日の過ごし方にメリハリがつくことも重要です。大学という場があることで、生活にゆとりとリズムが生まれます。これはとても大切だと思います。

一方で、私たちが始めたときに予想外だったのは、大学生側の変化でした。

最初は権利擁護の視点から始めた活動でしたが、大学生は彼らと学ぶことで、むしろ自分自身が解放されていくんです。解放されることで自己理解が広がっていきます。

自分のことを語るようになり、彼らとの出会いを通して新しい気づきが生まれていきます。

さらに、障害理解も根本的に変わりました。高校以降は分離教育が進んでいるので、同年代の人と語り合う機会はほとんどありません。

しかし、この機会を通して大学生は気づきます。

障害のある・なしに関係なく、人は誰でも苦手なことに対して工夫をし、対策を考え、行動している。これは障害の有無に関係ないことだと実感するのです。

さらに、大学生の就職にも面白い変化がありました。大学生のコメントですが、「就職に悩んでいた時期、この活動でいろいろな人と関わったことが、福祉系という進路選択につながった」と言っています。キャリア教育としても影響があったことが分かってきました。

最近では卒業生の参加も増えています。卒業生にとっても、学び続ける場が重要なのではないかと感じています。

今日はせっかくなので、卒業生にも来てもらいました。少しお話を聞いてみたいと思います。

下村さん、こちらに来てください。

下村

相模女子大学卒業生で、インクルーシブ・プログラム協力者の下村です。

私はこのプログラムが始まったときから参加しています。最初は障害当事者の方と関わったことがなかったので、一緒に授業をするとなったときは「どう話したらいいんだろう」と構えてしまう部分がありました。

でも活動を始めてみると、特に構える必要はなく、普通に話せばいいんだということがよく分かりました。

苦手なことを相談したり、好きなことを見せ合ったりする中で、苦手なことを話すと「そういうことあるよね」と共感してくれたり、「自分もそうだよ」と言ってくれたり、アドバイスをしてくれたりしました。

その経験を通して、「苦手なことがあってもいいんだ」と思えるようになりました。

大学時代は将来のことについて悩む時期でもありましたが、この活動は自分自身の成長につながった活動だったと思っています。

川口

インクルーシブゼミでは、最初に好きなことや得意なことを開示していきます。

彼女の自己開示は、いまだに忘れません。

下村さん、趣味の話をしてください。

下村

私は仮面ライダーが好きで、変身ベルトを買ったり、アイテムを集めたりしています。勤労青年の方たちも「それ知ってる!」とリアクションしてくれて、とてもうれしかったです。

そういう趣味を同世代の人に打ち明けることは、それまでほとんどありませんでした。受け入れてもらえたことで、「自分自身を認めてもらえた」という気持ちになり、とてもうれしかったです。

川口

最後に聞きます。社会人になって土曜日にここへ来るのは大変ではありませんか?

下村

私は福祉系の生活介護の職場で働いています。平日働いた後の土曜日の活動は大変ですが、来てみると楽しいですし、皆さんと関われることがうれしいです。

私にとってもサードプレイス、第三の居場所になっています。セミナーを受けることで休日を充実して過ごせているという実感があります。これからも続けていけたらいいなと思っています。

川口

先ほど急にお願いして話してもらいました。

最後にまとめです。

相模女子大学では、最初は2人で始めましたが、今では全学的な支援体制があります。最初は心理学科の学生だけでしたが、今年からは子ども教育学科、つまり将来教師を目指す学生たちも参加しています。

このプログラムは、すべて学生が自分で手を挙げて参加しています。

ゼミの会場も今年から附属図書館を使い、大学の雰囲気を感じてもらえるようにしています。また大学は単位認定が厳しい場所ですので、ゼミ生には大学生と同じように出席の意識づけも行っています。

このように、毎年試行錯誤を重ねながら活動を続けています。

ぜひ、インクルーシブな学びがさまざまな場所で試みられ、本当にキャンパスライフを楽しみたい、もっと学びたいと思う若者に学びの場が広がっていくことを願っています。

大学生にとっても、かけがえのない学びの時間になるはずです。

私は、インクルーシブが生み出す新しい大学の形に大きな期待をしています。

ご清聴ありがとうございました。

武部

先ほど出たインクルーシブゼミは相模女子大学の子ども教育学科の宮野先生が担当されています。1月に報告会がありますので、詳しく知りたいという方はぜひお越しいただければ大変ありがたいです。

藤野

川口先生の言葉には力がありましたね。川口先生と共に、このインクルーシブ教育プログラムを中心となって立ちげられた、相模女子大学教授の、日戸由刈先生からも一言いただきたいと思います。

日戸

相模女子大学の日戸由刈と申します。

今、大学に移って8年目ですが、それまでは、横浜市総合リハビリテーションセンターの現場で、心理職として長らく仕事をしていました。

今日、当時のセンター長の伊藤利之先生が前に座っていらっしゃって、緊張しています。

大学に移ってすぐに、川口先生がやってきまして、自分の教え子や卒業生たちが、本当は大学で学びたかったという気持ちを持っているので、「日戸さん、一緒にやらないか」と言われて、このプログラムを立ち上げました。

ただ、立ち上げた当時から、私はこれを1人の教員としてやっていくつもりはありませんでした。最初から大学の上層部に掛け合いまして、「これは大学としてやるべきことでしょう」と言ったんです。

さらに、相模原市発達障害者支援センターにも掛け合って、「これは行政と大学が一緒にやっていくべきものでしょう」と申し上げました。今から思うと、なんてずうずうしかったのかと思いますが、そういうことを言って、最初からシステムとして目指す形でやってきました。

おかげさまで、文部科学省もこの動きを認めてくれまして、文部科学省としてもこの問題は課題と考えているので、事業費を出すからやってくれないか、と言っていただき、委託事業として展開しています。

最近では、文部科学省さんのほうから、ぜひ続けてほしい、来年度もまだどういう形になるか分からないけれど、事業の形になったらぜひ手を挙げてください、と言っていただけるほど、注目していただいています。

国内でも少しずつこういう取り組みが出てきていますが、知的・発達障害のある人たちに対して、インクルーシブな生涯学習の場を提供しているのは、相模女子大学と神戸大学だけだと聞いています。ですので、私たちの大学もますます頑張っていきたいと思っています。

もともと就労支援については、私たちの国はすごく力を入れてきたと思います。けれども、余暇支援については、「就労した後は自由にやってくださいね」という感じだったのではないでしょうか。行政も、余暇支援にはほとんど予算を組んでこないまま、今日に至っているのではないかと思います。

ただ、川口先生の話にもあったように、余暇をしっかりやっていく体制があるからこそ、就労で多少難しいことがあっても、心折れずに続けていけるんだと思います。余暇と就労はセットでやっていく必要があり、余暇の場を保障していくことは、とても大事なことだと思っています。

全国にある大学という場は、働きながら生きている人たちに対する余暇支援の場として、最適な場所だと思っています。なにせ、これだけ学生がいて、教員がいて、マンパワーとしても資源としても豊かです。特別なお金をたくさん出さなくてもやっていける仕掛けを作ることが、一番よいのではないかと思っています。

最近、彼らから教えてもらったことがあります。それを最後にお話しさせてください。

「余暇と生涯学習は違う」と、最近、本人たちから言われてしまいました。

余暇は、自分たちのプライベートの時間にもできる。でも、生涯学習は違うんです、と。

学校を卒業した後、社会人になると、インプット・アウトプットの機会がなくなりました。でも、この場に来ると、そういう時間が確保されている。だから、その場が自分たちにとって大事なんです、と教えられました。

実際、こういう場に登壇している様子を見ていると、彼らのセルフアドボカシーの力がついてきたなと思います。

社会人になると、誰もが、職場や地域で不当な目に遭うことがありますよね。そういうときにも、彼らは「それはおかしい」と考えて、いろいろなところに相談できるようになってきています。私が言うのもおこがましいですが、人間的にも成長されてきているなと思います。

ですので、こういう取り組みが、全国の大学を中心に進んでいくといいなと思っています。

長くなってしまいましたが、以上です。

藤野

日戸先生、ありがとうございます。

会場からのご質問については、パネルディスカッション2のあとに、時間がありましたら、併せてお受けします。

では、最後に、武部先生にお願いします。

武部

彼らの発表スライドについて、教員が手伝っていると思われたかもしれませんが、本当にスライドから、全部彼らが作っています。

少し表現が伝わりにくい個所があったかもしれませんが、そこがまた彼ららしいかなと思っています。あえて手を入れたりはしていません。そこが、すごく大事なところかなと思っています。

彼らが何を得ているのか、何を大事にしているのかというのは、実は私自身も、彼らからまだ十分には聞けていない部分があります。

これからも、いろいろな機会をとらえて話をして、次の展開につなげていきたいと思っています。

ぜひ皆様からも、またご意見をいただければと思います。ありがとうございました。

藤野

ありがとうございます。

私もこのプログラムに少し関わっていますが、つい先日、今日のようなイベントがあって、そのあとに懇親会――いわゆる飲み会がありました。

そのとき、私の近くの席に大学生と勤労青年が座られていたのですが、注文するときも、両者が一緒になって、誰が先という感じでもなく、これにしようか、あれにしようかと、本当にフラットに話し合っていたんです。

これぞインクルーシブだなと思いました。フォーマルな場だけでなく、インフォーマルなところでも肩の力が抜けて、自然に付き合いができている。これは本物だなと実感しました。

では、次のパネルディスカッション2を始めますので、少しお待ちください。