住み慣れたまちで「一人暮らし」を選ぶということ―重度訪問介護とグループホームを活かした地域生活の実践―
「新ノーマライゼーション」2025年12月号
社会福祉法人りべるたす 理事長
伊藤佳世子(いとうかよこ)
1.法人と事業の概要
社会福祉法人りべるたすは、若い世代の療養病床での長期入院や、「退院したくても地域の受け皿がない」という問題意識から立ち上げを行いました。千葉市を拠点に、訪問介護・居宅介護・重度訪問介護などの在宅サービスを立ち上げ、その後、相談支援事業、クリニック、訪問看護、福祉用具貸与、就労系事業、グループホーム等へと事業を広げてきました。現在では、障害福祉サービス、介護保険サービス、医療・相談支援を組み合わせながら、子どもから高齢期まで、その人のライフステージに応じた地域生活を支える体制を整えてきました。
法人として大切にしているのは、「誰もが地域で生活し活躍できる社会を目指す」です。重度の障害や医療的ケアがあっても、本人を支援の客体としてではなく、一人の生活者・地域の住民として尊重し、その人なりのペースで暮らしをつくり活動できることです。
私たちは、単身生活、グループホーム、家族との同居のどれか一つを選ぶのではなく、それぞれを行き来できる「連続した選択肢」として用意し、一人ひとりの状況に応じて組み合わせていくことを重視しています。
2.重度訪問介護を活用した一人暮らしの実践
最初の事例は、重度訪問介護等のサービスを利用して、賃貸マンションで一人暮らしを始めたAさんの取り組みです。Aさんは20代で、進行性の筋疾患により四肢麻痺があり、電動車いすを使用しています。日中・夜間を通じて身体介護と見守りが必要で、一部に医療的ケアも伴います。ご家族と同居しながら通所事業所を利用していましたが、「親に頼り切りではなく、自分のペースで暮らしたい」「自分の家に友だちを呼びたい」という思いを、相談支援専門員を通じて語られるようになりました。一人暮らしの検討は、まず相談支援事業所での相談から始まりました。サービス等利用計画の中で、ケア内容と想定される支援の組み合わせを整理し、どの程度の支給量が必要かを具体的に積み上げていきました。住まい探しの段階では、完全にバリアフリー化された物件は多くありませんでしたが、エレベーターがあり、多少の段差解消や据え置き型の手すりを置くことができるマンションを見つけました。Aさんの場合、早朝・夜間・深夜帯を中心に重度訪問介護を組み、日中の一部時間帯は居宅介護を活用しながら、生活リズムに合った24時間の支援体制を整えました。医療的ケアについては、訪問看護と役割分担を行い、状態の変化があった際にはすぐに主治医と連携できるよう、情報共有の仕組みもつくりました。実際の暮らしが始まってから、周囲で心がけたのは、多少の失敗をしてもご本人が生活を決めていくことです。そして、地域との関係づくりも重要なポイントです。自治会の防災訓練や地域のイベントに参加し、顔の見える関係を少しずつ広げていくことです。
3.グループホームを活用した「一人暮らしへの練習と移行」
二つ目の事例は、グループホームでの生活を「一人暮らしへの練習の場」として活用し、その中で共同生活援助の区分4以上の特例を用いながら重度訪問介護を併用し、最終的に単身生活へ移行したBさんの取り組みです。Bさんは30代の方で、脳性まひによる重度の身体障害があり、常時の介助が必要です。ご家族の高齢化や介護負担の増大をきっかけに、地域での暮らし方を見直すことになりました。最初のステップとして選んだのが、共同生活援助(グループホーム)でした。グループホームでは、職員による日常生活上の支援を受けながら、他の利用者と共に生活することができます。Bさんの場合、夜間・深夜帯に特に手厚い介助が必要であったため、区分4以上の特例を活用し、グループホームでの生活に重度訪問介護を組み合わせる体制を整えました。これにより、グループホームという安心できる環境の中で、将来の一人暮らしを見据えた支援を具体的に試していくことが可能になりました。その後、グループホームでの生活が安定してきた頃から、「自分の部屋を持ちたい」「いつかは一人暮らしをしてみたい」というBさんの思いが、支援会議の場でも繰り返し語られるようになりました。そこで、相談支援専門員を中心に、ご本人、グループホーム職員、重度訪問介護事業所の職員、家族が集まり、「一人暮らしに向けた支援会議」を定期的に行うことにしました。会議では、Bさんが普段どのような生活リズムで過ごしているか、どの場面で不安が強いか、どの部分は工夫すれば自分でできそうか、などを丁寧に整理していきました。
並行して、将来暮らすことを想定した地域での「お試し滞在」も始めました。最初は、グループホームの職員が付き添い、数時間だけ単身外出をしてみるところからスタートしました。それから、アパートタイプのグループホームを利用し、重度訪問介護を組み合わせながら一人暮らしのお試し生活を行いました。その後、一人暮らしを本格的に始めるタイミングを、Bさん自身が決めました。「何かあれば一時的に戻れる場所」「泊まりで利用できる場」としてグループホームがあり続けることは、Bさんにとっても、ご家族にとっても大きな安心材料となりました。
このように、グループホームは「地域で暮らす力を育てるステップ」として位置づけることで、単身生活への移行がより現実的な選択肢になりうることを、Bさんの事例から学びました。
4.見えてきた可能性と課題
重度訪問介護等の普及から、重度身体障害のある方の一人暮らしは現実化していますが、課題も少なくありません。ヘルパー不足です。千葉市のような人口が増えている地域でもヘルパーステーションの数がほぼ横ばいです。これでは、複数の事業所を組み合わせてヘルパーを利用してもなかなか新たに入ってもらうところを探すことは困難です。特に土日のヘルパー不足は顕著です。
また、最近、避難行動要支援者の個別避難計画の作成が努力義務化されていますが、独居の身体障害の方のプラン作成をしようとすると、地域で暮らしてはいるものの、つながりがヘルパーと訪問看護しかいない方が目立ちました。一人暮らしはしたものの、結局福祉に囲われているだけになっている方も多いです。専門職の役割はこのあたりにあり、災害対策を通じて当事者と地域住民のつながりをつくるお手伝いをすることが大事に思います。先日、民生委員の障害者部会(私の地域にはそんな部会があります)で、「一人暮らしの車いすの人がいるが災害時のこともあり、声をかけてみてよいか悩む」という言葉を聞きました。私からは「ぜひ声かけをお願いしたい」ということを伝えました。地域の人とのつながりを少しずつつくることで、災害時もより安心な暮らしができるような体制づくりをこれからも心がけていきたいです。