自分らしく地域で暮らす~重症心身障害や医療的ケアが必要な人に対応しているグループホームみらい

「新ノーマライゼーション」2025年12月号

社会福祉法人昴 グループホームみらい 管理者
吉田隆俊(よしだたかとし)

はじめに

“みらい”は医療的ケア者を含む重症心身障害の方が暮らすグループホームです。開設の経緯や医療的ケアを支える仕組み、意思決定支援の取り組みなどを報告します。

法人概要

当法人は1990年に設立され、今年で35周年を迎えました。設立当初は児童通園施設こども発達センターハローキッズを開設し、当時としては先進的に医療的ケア児を受け入れ、県内各所からの利用がありました。一方で「誰もが地域で安心して暮らしてほしい」という法人の思いに照らすと、その子どもたちは地域で暮らせる環境がないから遠くの施設に通うわけです。そこで、1992年に介護者派遣事業を開始。さらに、埼玉県障害児(者)地域療育等支援事業で、障害児を施設に集める代わりに、専門職が地域の子育て支援センターや保育所、学校などを訪問し、地域で子どもを支えられるよう支援を行うことで、2004年にハローキッズは廃止しました。当法人は「良い施設よりも良い町づくり」を目指して取り組んでいます。

グループホームみらい開設の経緯

かつてハローキッズを利用していた家族が、いつかグループホームに暮らしたいという夢を持っていました。しかし、ある時その家族が病気をされたのをきっかけに、「いつか」ではなく「今」だと思い、ご家族数名で当法人に依頼がありました。

法人としては、「誰もが望めば地域で暮らせる」を目指して、さまざまな方が暮らすグループホームを複数運営していましたが、医療的ケアの必要な方のグループホームはありませんでした。まだ制度はありませんでしたが、法人もそうしたグループホームは必要と考え、その課題も家族と共有しながら、2011年にみらいは開設しました。

みらい概要

みらいは介護サービス包括型のグループホームです。入居者7名、男性4名、女性3名、20代後半から30代後半、全員が重症心身障害です。うち5名が吸引や注入などの医療的ケアが必要で、気管切開があり夜間人工呼吸器を使用する方もいます。

開設当初は、今までの暮らしをなるべく変えずに、住む場所だけグループホームに移行する、というコンセプトにしました。日中通う場所は4か所、ヘルパーは8事業所が関わっています。グループホームに入居者の暮らしを当てはめるのではなく、今までの人間関係を継続しながら、それぞれの暮らしを大切にしています。

医療的ケアを重層的に支える仕組み

看護師は、朝と夕方、呼吸器の着脱など、福祉職には対応できない医療行為が必要なタイミングで配置しています。夜間帯を含めて、主に医療的ケアを実施するのは喀痰吸引等研修を修了した福祉職で、現在18名の職員が研修を修了しています。さらに、地域のかかりつけ医による往診や訪問看護、訪問薬剤、訪問歯科、訪問リハなど個別に利用しています。

本人の近くにいるのは福祉職で、楽しい活動や医療的ケアを含む日々のケアを担っています。福祉職は、喀痰吸引等研修を修了していますが、日々不安を抱えながら関わっています。そこでグループホームの看護師は、福祉職へのスーパーバイズや研修、マニュアル作成、そして福祉職にはできない医療行為を担います。しかし、グループホームの看護師にも不安がありますので、訪問看護や往診の先生に日々相談しています。

このように、グループホームの中だけでケアのすべてを完結するのではなく、地域の福祉と医療の専門職が連携して、重層的に支える仕組みを構築しています。

ユウキさんの物語

さて、医療的ケアを支え、グループホームに暮らして、それで本人はどんな暮らしを望むのかが問題です。入居者ユウキさんを紹介します。みらいに暮らした当初は、慣れない環境で過緊張もあり、発熱も頻回でした。お母様は寝かしつけるためにみらいに半年間通いました。半年たった頃には眠れるようになり、ようやく笑顔も見られました。開設当初はスタッフも未熟で家族の不安もありますが、やっぱり一番大変なのは本人です。

〇笑いすぎて眠れない

ようやく生活が落ち着いたと思ったら、1年たった頃、再び眠れなくなりました。ある日、生活介護事業所を暗くして、光活動をしながら、自分でいくつかのコーヒーからキャラメルラテを選んで注入したそうです。その日の夕方、あまりに大笑いして緊張が強くなり発熱する。楽しすぎて熱を出して、夜も大笑いして眠れないのです。

〇何を大切にしたいのか

看護師の私は悩みました。光活動を楽しむために、坐薬や解熱剤を使ったりしてよいものだろうか。お母様と相談しました。ユウキさんの笑顔の写真を見て、熱を出したとしてもこんなに楽しんでいる。ユウキにとっては大切なことだから、これからもいろいろな経験をしてほしい。それがお母様の願いであり、私も同感でした。かかりつけの先生をはじめ、関係者全員とその方針を共有しました。熱を出しても困らないように、対応マニュアルを作成して、ユウキさんの経験を支えることにしました。

〇地域で普通の暮らし

熱を出しながらも生活を楽しむユウキさん。みらいに暮らして3年目には1泊旅行にも行くことができました。この時はユウキさんも大喜びで、関わっている全員が大満足でした。一方、あらためて関係者で振り返った時に、もともと「地域で普通の暮らし」をテーマにしていたが、ユウキさんは24時間手厚い支援があるが故に、いつも医療福祉関係者に囲まれて、常にサービスの受け手となってしまう。ユウキさんも地域住民と関われないか、またサービスの担い手になれないか。そんな課題意識から地域の小学校の見守り活動を始めました。数年後には小学校から感謝状もいただき、現在も季節のよい日に続けています。

〇自分新聞

こうしたユウキさんのさまざまな活動を関係者で共有するために、年に1~2回程度、生活介護事業所で自分新聞を作ってくれています。写真をたくさん共有して、本人の気持ちを推察する大切な新聞です。ご家族も関係者もこの新聞を楽しみにしています。この新聞を何年も積み重ねた時に、ユウキさんの歴史が見え、人物像の輪郭が見えてくるのではないかと考えています。

〇意思決定支援?

グループホームでの暮らしや旅行、見守り活動もユウキさん本人が決めた訳ではなく、周りの関係者がユウキさんの表情や体調などを頼りにして、ユウキさんの気持ちを推察しながら支援してきました。本人が決めていないので、意思「決定」という言い方にはやや違和感がありました。私は「本人の物語を本人と支援者が共に創る」そんなふうにとらえています。

当事者家族を含めた専門職の連携が大切

もちろん、医療的ケアの課題や制度上の課題はあると思います。一方で当事者家族を含めた地域の専門職が連携することで、みらいでの暮らしは成り立っています。地域全体が一つの事業所のように連携することで、誰もが暮らしやすい地域になれるよう、これからも多くの方々と一緒に取り組んでいきたいと思います。