親離れして、地域暮らしにチャレンジ
「新ノーマライゼーション」2025年12月号
池部準(いけべじゅん) (母 弘子(ひろこ))
息子のこと
息子は重度重複障害があり、現在32歳です。コミュニケーション手段は、表情や仕草と少しの言葉です。
0歳から続けてきた療育で、卒後に将来の夢を聞かれ「みんなとくらす」「しょうがいのこと、しって!」という指談(筆談)をきっかけに、障害があっても幸せな親離れ・子離れをする、そして経験豊かに暮らせるよう日々チャレンジしています。
幸せな親離れ子離れ、そのタイミング
主治医などから、親がアクシデントによりケアができなくなれば、重い障害のある子は施設入所しかなく、急な環境の変化で心身ともに病んでしまうことがあると聞いていたので、いつか幸せな親離れができるように、ヘルパーやショートステイを利用してきました。
時間がかかりながらも数年前、ついに遅い思春期?がやってきました。その頃には私たちも体力が衰え、同居の母の介護も始まりそうでした。
偶然の出会い
そこで医療的ケア対応のグループホームやシェアハウスを探すと、2023年11月頃、全くの偶然で、自宅から近い世田谷に医療的ケア対応のシェアハウスが見つかり、運よく2024年6月に入居できたのです。ここは目の前が広い公園で、生活に必要な場所が徒歩圏内に揃った緑豊かなとても環境のよいところです。
支援内容や生活
このシェアハウスは、1階に事務所があるので、入居者の様子を把握しやすく、各サービスとの連絡も取りやすいです。それに事務職のスタッフも全員ヘルパー資格を持っていることも心強いです。24時間全介助が必要な息子は、現在多数のヘルパーでチームを組んで、ケア情報を共有し対応していただいています。
日常生活は平日5日間生活介護、週末や祭日は家族が行き、行動を共にします。毎月実家近くで続けてきた活動には、可能であれば社用車でヘルパーと一緒に参加しています。
入浴は訪問看護によるバイタルチェック、2人介助で週3回お願いしています(そのほかに生活介護で週1回入浴)。
てんかん発作が夜多く、排尿コントロール、寝返り不可のため、ヘルパーは夜間も同室です(発作時は訪問看護―診療と連携して対応)。
食事は、(入居者6人のうち4人再調理、2人胃ろう)担当者が食事をつくり、ヘルパーが再加工します。その他嗜好品は自由です。
シェアハウスで暮らしてみて
何もかもが初めてのことで、息子はもちろん関わる皆さんがそれぞれ戸惑いと困惑の中、試行錯誤しながらお互いに協力してきました。
入居の際一番心配だったのが、「知的にも重度な息子がこの環境の変化に体調を崩さず、笑顔を失わずにやっていけるのか?」ということです。しかしながら「成長には時として試練も必要。息子はきっと乗り越えられる」と息子の可能性をひたすら信じ続けました。
もちろん、最初は帰りたがりましたが、今ではヘルパーさんとの時間のほうが長くなり、だんだん親が知らないことが増えてきて少し寂しいですが、体調を崩すことなく元気に過ごし、親は万年寝不足と過労から健康を取り戻しているので、次に来る母の介護に備えます。
これからのこと
地域の民生委員や地域包括支援など行政と連携して、こども食堂や嚥下食、障害や介護に関する理解と啓蒙、インクルーシブアート、防災、認知症や障害者もスタッフとして働ける「注文をまちがえる料理店」のような「場」つくり。このシェアハウスの人たちや息子とやりたいことは盛りだくさんです。
息子のチャレンジが、同じような自立を目指している方の背中を押せるよう、少しでもお役に立てたなら幸いです。