就労支援系サビ管のフォローアップ
「新ノーマライゼーション」2026年3月号
社会福祉法人維雅幸育会 統括管理者
奥西利江(おくにしとしえ)
地域で就労支援に関わるサービス管理責任者(サビ管)約40人が集まり、「令和7年度 就労支援スキルアップ研修会」が1月17日~18日に全国障害者総合福祉センター(戸山サンライズ)で行われました。
この研修会は、国が実施する「サービス管理責任者等指導者養成研修会(以下、国研修)(就労コース)」のフォローアップとして令和5年度に始まり、今回で3回目です。
研修では、国研修で伝えきれなかった情報の共有、国研修で強調したポイントの再確認、最新の地域の動きについての情報交換、各都道府県での専門コースの実施状況の確認を目的に、参加者同士が交流しながら学べる内容になっていました。
就労選択支援事業が始まり、制度の変化が進み、利用者のニーズも多様化し、さまざまな事業者が参入する今、サビ管同士が学び合い、つながる場はますます重要になっています。本稿では、その研修の様子をお伝えします。
制度の“今”を読み解く行政説明からスタート
最初のプログラムは、厚生労働省障害福祉課の就労支援専門官・荒井康平氏による講演でした。テーマは「障害福祉サービスにおける就労支援施策の最新動向」で、主に次の5つのポイントについて説明がありました。
1.就労系サービスの利用が増えており、特に就労継続支援B型の伸びが大きいこと
2.サービスの質を確保しつつ、制度の持続可能性を確保する観点から、令和8年度に臨時応急的な報酬の見直しを実施すること
3.報酬制度とあわせて、事業運営やサービス提供の適正化を図ることも課題となっていること。(昨年11月には、就労継続支援事業所の新規指定や運営状況を確認するためのガイドラインが出され、今後は指導・監査も強化される予定)
4.昨年10月に始まった「就労選択支援」は、本人が希望や適性等に合った就労先・働き方の選択をできるように支援をしていくものであり、その中心は本人と支援者が一緒に行う「協同アセスメント」(本人の希望や適性を共に確認するプロセス)、「多機関連携によるケース会議」、改めて「地域づくり」を考えていく機会であること
5.障害者雇用政策との連携の中で、福祉と雇用の両面から支援を進める必要があること
荒井氏の講演は、新制度である「就労選択支援」を軸に、本人参加型のアセスメントや多様な働き方を支える支援の方向性を示す内容でした。
就労選択支援事業の「地域実情」シンポジウム
続いて、厚生労働省障害福祉課の就労選択支援専門官・鈴木大樹氏の進行で、北海道・青森県・東京都・大阪市・大分県の就労選択支援事業の状況について報告がありました。
まず札幌市では、教育・福祉・労働・行政が連携し、自立支援協議会の就労支援推進部会が中心となって、就労選択支援事業所指定の「独自基準」を作っています。質の高いアセスメントを重視し、「所見シート」を作成するなど、全国でも珍しい協同の取り組みが進んでいるとのことでした。一方で、地域全体での共通理解がまだ十分ではなく、仕組みづくりや専門性の向上が今後の課題とされています。
大阪市でも、事業所指定の際には22ページに及ぶ事前協議書類の審査、市職員による面談、有識者会議での確認を経て指定する仕組みが取られています。しかし、全国と比べて事業所数が多いことや地域偏在があることから、適正な運営が難しくなる可能性が指摘されました。そのため、大阪市では障害者就業・生活支援センターが中心となり、就労選択支援事業所の連絡会を立ち上げ、現場同士で情報共有や議論を進めているとの報告がありました。
その他の地域では、まだ準備段階のところも多く、人材不足や連携不足、適正化の課題が共通して挙げられました。今回の報告を通して、就労選択支援事業は「地域ごとに育てていく必要があるサービス」であるという認識が共有されました。
支援の“これから”をつくる現場の学び
2日目の午前中は、事例「戸山太陽さんの『より良い選択』を支援するために」を使ったグループディスカッションを行いました。
就労支援では、利用者だけを見るのではなく、地域を理解し、地域に働きかけることが大切です。そこで「地域をアセスメントする」「地域にアプローチする」をテーマに、三重県サビ児管更新研修で作成された「地域資源マップ」を使い、気づきやアイデアを広げるブレーンストーミング形式で話し合いました。
「地域をアセスメントする視点」では、地域にどんな資源があり、どんな働き方ができ、どんな課題があるのかを整理しました。地域の特徴を知ることで、利用者に合った働く場や支援の選択肢が見えてくることを確認しました。
「地域にアプローチする視点」では、支援者が地域の資源に積極的に働きかけ支援の輪を広げることで、利用者が安心して働ける環境が整うことを共有しました。
また、「あったらいいなと思う資源や事業」を話し合う中では、個人では思いつかない新しいアイデアも生まれました。「同じケースでも、地域や人によって見えるポイントが違う」「他の人の意見を聞くことで、自分の支援を見直すきっかけになった」などの声もあり、会場はとても活気にあふれていました。
今回の演習を通して、これからの就労支援には「地域を読み解く力」と「地域を動かす力」の両方が必要であり、支援者は利用者と地域をつなぐ“橋渡し役”として、地域の資源を見つけ、つなぎ、広げていくことが大切だと再確認する時間となりました。
就労系サビ管の役割と支援の未来へ
2日目の午後は、「就労選択支援が始まって地域はどう変わるか 地域が変わる中で就労系サビ管に求められるもの」をテーマにシンポジウムとグループワークが行われました。
シンポジウムでは、北海道・埼玉で実施された就労選択支援モデル事業を進める中で、アセスメントの標準化や地域格差といった課題も見えたが、本人理解と地域連携を両輪とする支援の方向性が明確になった等の報告がありました。
グループワークの発表では、就労選択支援が始まることで、地域の就労支援は「本人中心の支援」から「地域全体で働く場をつくる支援」へと大きく変わりつつあります。本人が自分に合った働き方を選べる仕組みが求められており、支援は一つの事業所だけで完結するものではなく、“ネットワーク型”へ移行しているとの意見が多く出されました。
地域が変わっていく中で、就労系のサビ管に求められる役割も広がっています。これからは、本人のアセスメントや計画づくりだけでなく、地域の企業や支援機関に働きかけて協力をつくる力が大切になります。サビ管には、地域の資源を見つけて必要な支援につなぎ、いろいろな関係者と一緒に支援を進める「地域のコーディネーター」としての視点が不可欠であることを再認識しました。
支援の未来は、今日の学びの先にある
就労選択支援が始まることは、地域の動き方を変え、支援者の役割を広げる大きな転換点になります。その役割と責任はとても重要です。支援の仕事は目立つものではありません。でも、制度を扱うだけでなく、人の人生に深く関わる仕事であり、いつも誰かの大切な節目に寄り添う、かけがえのない仕事だと思います。
制度の向こうにいる“人”をしっかり見つめ、支援者が学び続ける限り、地域の就労支援は必ず前に進んでいく。そんなことを強く感じた2日間の研修でした。