実践をテキストにどう生かすか―経験を共有可能な専門知へとつなぐために―
「新ノーマライゼーション」2026年3月号
社会福祉法人唐池学園貴志園
冨岡貴生(とみおかたかなり)
サービス管理責任者・児童発達支援管理責任者(以下、サビ児管)の役割は、個別支援計画を作成することにとどまりません。むしろ重要なのは、日々の支援の中で起きている小さな変化や揺らぎにどう気づき、どう判断し、どのようにチームで共有していくかという過程にあります。事業所での取り組みの経験をテキストに生かすということは、出来事を列挙することではなく、その判断の過程を丁寧に言語化し、他者と共有できる形に整理していく営みだと考えています。
現場で意識しているのは、「何をしたか」という結果だけでなく、「なぜそう考えたのか」「どこで迷ったのか」「他にどのような選択肢があり得たのか」を残すことです。支援の判断は、制度や理論の枠組みだけで導かれるものではありません。本人の希望や表情のわずかな変化、場の空気、家族の意向、職員の違和感や戸惑いなど、複数の要素が重なり合う中で導き出されています。こうした判断の背景を振り返り、記録し、共有することで、実践は検討可能なものとなり、次の支援へとつながっていきます。テキストは、その振り返りを支えるためのものでもあります。
同時に、知識と実践を切り離さず、行き来させながら整理することも大事にしています。サビ児管研修で学んだ知識は、個別支援計画に落とし込まれて初めて、日々の支援の指針として機能します。計画に基づく実践も、知識の枠組みで振り返ることで意味づけが深まります。テキストは、研修で学んだ知識と実践をつなぎ、現場の判断や個別支援計画の背景にある考え方を言語化するための整理の道具だと捉えています。
特に重要だと感じているのは、意思決定支援の実践をどう整理するかという点です。意思決定支援は、日常の関わりの中で同時に進んでいくものだと思います。言葉で希望を明確に表現することが難しい場合であっても、過去に心地よさを感じた活動や人との関係性は、感情として残っていることがあります。過去に心地よさを感じた活動や経験を生活の中で再び実践することで、「心地よい」という感情が呼び起こされ、その積み重ねが小さな選択の経験となり、やがて本人の意思として形づくられていきます。こうしたプロセスを具体的に示すことは、サビ児管の専門性を可視化するうえで欠かせない視点だと考えています。
一方でサビ児管の多くは、研修を受講した後、日々の実践で生じる迷いや葛藤を十分に語り合う場を持ちにくい現状があります。「この判断でよかったのか」という問いは、個人の内面にとどまりがちです。だからこそ、事業所での経験をテキストとして整理することには意味があります。個人の経験を外に開き、他の実践者と共有可能な形にすることで、対話が生まれます。さらに、全国的なネットワークである全国サビ児管協議会のような場において実践を持ち寄り、工夫や葛藤を率直に語り合うことができれば、テキストは共通言語として機能し、専門性の蓄積を支える基盤となります。
研修で学び、現場で実践し、振り返り、再び整理する。その循環の中でテキストは更新され続けるものです。事業所での取り組みを丁寧に言語化することは、支援の質を高めると同時に、サビ児管が孤立せずにつながり続けるための営みでもあります。実践をテキストに生かすとは、経験を共有可能な力へと変えていく取り組みだと考えています。