楽しく、ラクに。みんな一緒のお食事を目指して―愛知県医療療育総合センター中央病院 胃ろう・栄養外来グループ外来の取り組み―

「新ノーマライゼーション」2026年4月号

あいち小児保健医療総合センター小児外科 医師/愛知県医療療育総合センター中央病院小児外科 非常勤医師
毛利純子(もうりじゅんこ)

愛知県医療療育総合センター企画事業課 管理栄養士
橋本航典(はしもとこうすけ)

当院の紹介とグループ外来開始の経緯

愛知県医療療育総合センター中央病院(以下、当院)は病床数267床の県立病院であり、主に障がいのあるお子さんから成人の方に対して医療と療育を提供しています。入院、手術、レスパイトなどの受け入れを積極的に行っており、胃ろうや経鼻胃管を使用している方は入院・外来を合わせて約250名にのぼります。

胃ろうや経鼻胃管を使用している方の中には、著しいやせや体重増加、栄養剤では不足する栄養素による重症な合併症、水様便が続く一方で排便がうまくいかなかったりなど、さまざまな課題がみられます。かつては、こうした経管栄養を必要とする多くの方が、毎食同じ栄養剤を滴下で注入する方法で栄養管理を受けていました。

もともと食べることが大好きな小児外科医(私です)と、食べることにそれほど関心がないからこそ病院での栄養管理に熱心に取り組む当時の管理栄養士が、「障がいのために口から食べることが困難な方のために、食事と栄養について相談できる場所を作ろう」と考え、2017年1月に医師と管理栄養士が協働して診療を行う「胃ろう・栄養外来」を立ち上げました。

外来を続ける中で強く感じたのは、ご家族が食事と栄養の問題に対して、つらい思いを抱えながら孤軍奮闘されているということでした。中には、食事の準備、食事介助、注入、片付けなどに1日5~6時間を費やしている方もいらっしゃいます。食事の話題になると、抑えきれない思いから診察室で涙を流されることも、当時も今も決して珍しいことではありません。一方で、食事にかける力を少し抜くことができたことをきっかけに、親子ともに笑顔が増えていく様子も多く見せていただきました。

しかし、胃ろうから注入できるペースト食(ミキサー食とほぼ同義であり、当外来でも混在している状況ですが、本稿では 「ペースト食」で統一します)の作り方については、写真や動画で説明しても、外来診察室では十分に伝えきれないという課題がありました。そこで2019年より、調理実習と患者さん・ご家族同士の交流を目的としたグループ外来を開始しました。

これまでの取り組みと最近のグループ外来

これまでグループ外来ではさまざまなテーマを取り上げ、ミニレクチャーや調理実習を行ってきました(表)。しかし2020年、新型コロナウイルス感染症の流行により、病院内での「調理」や「試食」を伴う集合型イベントの継続が困難となりました。そのような中、「医療的ケアを必要とする障がい児者のための情報共有システム(このはネット)」が当院に導入され、オンライン診療が可能となりました。このシステムを活用することで、グループ外来もオンライン形式で継続することができました。

表 今までのグループ外来のテーマ

 開催日テーマオンライン開催
12019/8/15ミキサー食調理のコツ 
22019/11/29ミキサー食調理のコツ2. 市販品をミキサーにかけてみよう 
32020/3/5とろみ剤、ゲル化剤あれこれ
42021/8/6ミキサーミルサーハンドブレンダーの使い分け・栄養剤で足りなくなる栄養素!?
52022/2/4便秘対策!
62022/9/2ペースト食・胃ろう注入関連役立ち情報/ペースト食のはじめ方、進め方
72023/2/3おうちで作ろう!注入できるペースト食ー家庭に訪問されている管理栄養士さんより 
82023/7/7実験!とろみ剤粘度調整剤マスターになろう 
2024/2/2新規格の洗い物、ラクになるグッズ集まれ! 
102024/7/12胃ろうから注入できるペースト食をつくろう!基礎編 
112025/01/30胃ろうから注入できるペースト食をつくろう!応用編・外食と災害時の栄養について 
122025/08/14胃ろうから注入できるペースト食をつくろう!基礎編 
132026/02/26胃ろうから注入できるペースト食をつくろう!応用編・体組成計について 

オンラインでは患者さんが自宅から参加できるため、病院では見ることのできないリラックスした表情や、実際の生活の中での食事の様子を見せていただきました。情報交換の中では、後輩ママの質問に対して先輩ママが「ちょっと待って」と言ってキッチンからおすすめのグッズを持ってきて紹介してくださる場面もあり、家庭同士の自然な交流が生まれました。

2023年に新型コロナウイルス感染症が5類感染症に位置づけられたことを受け、感染対策を行ったうえで再び病院内での調理実習を中心としたグループ外来を再開しました。現在は年2回、夏と冬に開催しています。

2026年2月に開催した回では、ご家族や親子に加え、他施設のスタッフにも参加いただきました。最初に当院に導入された体組成計の紹介と、重症心身障がいのある方の健康的な体型についてのミニレクチャーを行いました。続いて調理実習では、計9品の料理を参加者と一緒にペースト食に調理しました。特に自宅では扱いにくい肉や魚などの食材を中心に取り上げました。実習を行いながら、ゼリー粥やお粥水の活用、ミキサーはしっかり時間をかけて回すこと、加水は少量ずつ行うこと、水の代わりにだしや豆乳、牛乳などを用いることなど、ペースト食作りの工夫も紹介しました。(これらの内容はセンターのYouTubeでも紹介しています)その後、保育士企画のお楽しみコーナーをはさみ、完成したペースト食を小分けにして試食会と交流会を行いました。「思っていたよりおいしい」「注入もできる」といった感想が聞かれ、先輩ママ・パパから日常生活の工夫や便利グッズが紹介されるなど、和やかな交流の場となりました(写真)。
※掲載者注:写真の著作権等の関係で写真1はウェブには掲載しておりません。

目標と今後の展望

私たち胃ろう・栄養外来の目標は「ラクで楽しい健康的なお食事」です。

「You are what you eat(あなたはあなたの食べたものでできている)」という言葉が示すように、食生活は健康にとって重要です。一方で、ご家族は食事以外にも多くの介護を担っており、食事が過度な負担となることは避ける必要があります。家族と同じ食事をペースト食にできることは理想的ですが、そのために無理をする必要はありません。外食や冷凍食品、いわゆる「手抜きごはん」も歓迎しながら、ラクにペースト食を作る方法を共有していきたいと考えています。

また、当外来では、胃ろうがある方に対して毎食ペースト食のみを注入することをお勧めしているわけではなく、ペースト食と栄養剤を併用することを提案しています。栄養剤で安定したエネルギーと栄養素を確保しつつ、ペースト食によって栄養剤だけでは不足しがちな栄養素の補給や排便面での利点を得ることができ、楽しみながらも健康的なお食事となるためです。この両立により、ペースト食の楽しさやおいしさを大切にしながら健康を保ち、忙しい日々の中に少し余裕が生まれることを願っています。何より同じメニューを家族みんなで楽しむことは、子育てであり、家族とご本人の人生の楽しみでもあります。

今後も、重い疾患を抱える方とそのご家族が「楽しく、ラクに。みんな一緒のお食事」を実現できるよう活動を続けていきます。また遠方の方にも情報を届けるため、センターのYouTubeチャンネルから各種コンテンツを配信しています1)。ご興味のある方はぜひご覧ください。


【参考】

1)https://www.youtube.com/channel/UCaLq0W8A3Pjlkn6N0VJgmsQ(愛知県医療療育総合センター YouTube)胃ろう・栄養外来(QRコード)からもご覧いただけます。

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