2024年3月12日、米国運輸省(Department of Transportation:DOT)は、新しい航空規則案のパブリックコメントを開始しました。
米国の車椅子使用者は、推定550万人とされており、多くの人が飛行機で旅行していますが、多くのトラブルが発生し、2023年には、11,527台の車椅子とスクーターが事業者により誤って取り扱われたという報告がDOTにあったとのことです。車椅子を使用する乗客が安全かつ尊厳を持って航空機による旅行ができることを保証するための新しい規則案が提案されました。
提案されている新しい規則案の主な内容は次のとおりです。
1.車椅子の誤った取り扱いに対する罰則と救済措置 (a)車椅子の誤った取り扱いは自動的に「航空会社アクセス法(Air Carrier Access Act: ACAA)」違反となる 航空会社による車椅子などの補助器具の誤った取り扱いを、航空会社アクセス法への自動的な違反とし、これらの機器が破損した場合にDOTがより簡単に航空会社を罰し、乗客の移動に関する責任を追及できるようにする。ここで「誤った取り扱い」とは紛失、遅延、破損、盗難などと定義されています。 また、影響を受ける乗客に対し、航空会社にクレームを申し出る権利、航空会社から一人用車椅子を受け取る権利、機器の修理や交換の際に希望する業者を選択する権利、苦情解決担当者(Complaints Resolution Officer)を利用できる権利があることを通知することを航空会社に対し義務付ける。 (b)破損した車椅子の迅速な修理または交換 航空会社による誤った取り扱いがあった場合に、車椅子を修理または交換するための次の2つの選択肢を乗客に提供することを要求。 ・運送業者は、修理または同等以上の機能と安全性を備えた車椅子への交換を合理的な期間内に行い、関連費用を支払う。 ・乗客は、希望する業者を通じて修理または同等以上の機能と安全性を備えた車椅子の交換を手配し、航空会社が関連費用を支払う。 (c)貸し出し用車椅子の設備 障害のある人が、車椅子の修理や交換を待っている間、航空会社に貸し出し車椅子の提供を義務付ける。 2.安全・丁寧・迅速な対応 (a)航空会社従業員訓練の強化 身体障害のある乗客の身体介助や乗客の車椅子の取り扱いを行う航空会社従業員および請負業者に対する実地訓練を含む年次トレーニングを行う。 (b)遅延した車椅子の速やかな返却 航空会社に対し、可能な限りあらゆる手段を用いて、遅延した車椅子を乗客の到着後24時間以内に乗客の最終目的地まで輸送するよう要求。 (c)安全かつ威厳のある支援 航空会社が障害者に提供するすべての支援が安全かつ威厳のあるものであることを要求。 (d)迅速な支援 飛行機に乗ったり、降機したり、空港ターミナル内を移動したりする際に、障害のある乗客に迅速な支援を提供することを航空会社に要求。搭乗用車椅子による降機の際の迅速な支援とは、次のことを意味すると定義しています。 ・支援を要求していない最後の乗客が航空機から降機する時に、担当者と搭乗用車椅子により乗客を降機させることができる。 ・要望があれば、客個人の車椅子を可能な限り航空機のドアの近くでご利用できるようにする。 3.航空機基準の改善 (a)機内車椅子の新基準 二通路航空機および小型航空機の機内車椅子についても現在の125席以上の単通路航空機の性能基準を満たすこと。 (b)積み降ろし後の通知 車椅子が航空機の貨物室に積み込まれたり、貨物室から降ろされたりしたときに乗客に適時に通知し、また、乗客の車椅子が飛行機に適合しないことが分かった時は直ちに乗客に通知することを要求することを航空会社に対し求める。 |
詳しくは下のサイトをご覧ください。(寺島)
https://www.federalregister.gov/documents/2024/03/12/2024-04729/ensuring-safe-accommodations-for-air-travelers-with-disabilities-using-wheelchairs