2024年1月23日、デビッド G. ヴァラダオ(David G. Valadao)下院議員(共和党カリフォルニア州選出)は、補足的所得補償給付(Supplemental Security Income:SSI)の結婚による減額を撤廃する超党派の法案として「SSIの結婚罰を撤廃する法律(Eliminating the Marriage Penalty in SSI Act:EMPSA)」案(HR 7055)を第118回連邦議会に提出したことを発表しました。
SSIは、日本の生活保護に相当するもので、働けない障害者と高齢者に対して毎月現金手当が支給されます。現状では、SSIを受給している他に収入がない二人が結婚すると、給付の合計額が25%減額されることになっています。これは障害者に対する罰則規定だと解釈し、その減額の撤廃を求めています。
法案は、2024年1月18日に下院に提出されています。
詳しくは下のサイトをご覧ください。(寺島)
ニュース:https://www.ssa.gov/policy/docs/issuepapers/ip2003-01.html
法律案:https://www.congress.gov/bill/118th-congress/house-bill/7055
2024年1月10日、イギリス国家統計局(Office for National Statistics:ONS)は、「失業を理解する:民族と障害はどのように影響するか(Understanding unemployment: what role does ethnicity and disability play?)」という報告を行いました。
ONSは、最近、2021年のイングランドとウエールズの国勢調査の結果をいろいろな角度から分析しており、この報告もその一つです。
本報告では、障害の状態や民族によって失業率はどのように異なるのかを分析しています。
分析結果としてさまざまな内容が示されていますが、例えば、次のようなものがあります。なお、失業率は、年齢、性別、地域、都市部または農村部の状況、教育、性的指向、英語能力、婚姻状況を調整しながら推定されています。
〇失業率が2.9%と低いグループから17.2%と高いグループがあった。
〇全体として、障害のある成人は、障害のない成人よりも失業する可能性が高かった。
〇白人の障害者は、他の民族の障害のない成人よりも失業する可能性が低かった。
〇アラブ人の非障害の成人は、他の民族グループの多くの障害者よりも平均して失業する可能性が高かった。
〇失業率の差には、居住地や最終学歴などの他の要因よりも、年齢と性別が大きな影響を与えている。
詳しくは下のサイトをご覧ください。(寺島)
https://www.ons.gov.uk/visualisations/dvc2281/
2024年1月18日、労働年金省(Department for Work and Pensions:DWP)は、開発中の新しい貧困測定統計を公表し、その採用についてのパブリックコメントの募集を開始しました。
この統計法は、「平均以下の資源(Below Average Resources:BAR」と呼ばれ、社会計量委員会の(Social Metrics Commission:SMC)が提唱しているアプローチに基づくものです。
SMCは、民間の独立組織で、英国のさまざまな家庭が抱える貧困の性質と経験をより適切に反映し、貧困測定と貧困対策に関するコンセンサスを構築するために使用できる貧困測定への新しいアプローチを開発するために設立されました。2023年12月18日に新しい統計法ついての報告書を公表しています。
新しい統計法では、所得に加えて、活用できる資源を貧困の評価に加えるというものです。
この統計法を使えば、例えば、2021年から22年の障害児のいる貧困家庭の割合は、3分の1近く上昇します。また、障害児や障害者がいる家庭の半数近くが貧困状態にあることになります。
このような統計の採用について、国民から意見を求めています。募集期間は、2024年1月18日から4月11日までとなっています。
詳しくは下のサイトをご覧ください。(寺島)
パブコメ:
https://www.gov.uk/government/statistics/below-average-resources-developing-a-new-poverty-measure
SMCの報告書:
https://socialmetricscommission.org.uk/social-metrics-commission-2023-report/
2024年1月31日、ランディ・ボワソノー(Randy Boissonnault)雇用・労働力開発・公用語大臣は、雇用主に障害者雇用を奨励する「インクルーシブな職場」キャンペーンを発表しました。2024年3月まで実施されるこの広告キャンペーンは、障害者が優れた重要な人材であるということについて雇用主の認識を高めることを目的としています。
このキャンペーンは、ソーシャルメディア、ウェブ、ポッドキャスト、ラジオ等での広告を通じて中小企業に情報提供するとしており、次の内容の周知が含まれます。
〇カナダのコミュニティや職場をよりアクセスしやすくするプロジェクトのためのアクセシビリティ実現基金(Enabling Accessibility Fund)
〇雇用主が高等教育後の学生を雇用し、仕事に統合された学習体験を生み出すことをサポートする学生就職プログラム(Student Work Placement Program)
〇雇用主が障害者を含む熟練した労働力を募集し雇用できるよう支援する部門別プロジェクト(Sectoral Workforce Solutions Program)
〇若者の雇用とスキル向上のための非営利団体、公的団体、フルタイム従業員50人以下の企業に資金を提供するカナダ夏季雇用プログラム(Canada Summer Jobs program)
〇熟練した、資格をもった、インクルーシブな産業労働力を支援することを目的としたカナダの見習い戦略(Canadian Apprenticeship Strategy)
〇雇用主が障害のある従業員を採用および雇用し、インクルーシブでアクセスしやすい職場を構築するのを支援する障害者機会基金(Opportunities Fund for Persons with Disabilities)
詳しくは、下のサイトをご覧ください。(寺島)
https://www.canada.ca/en/employment-social-development/news/2024/01/government-of-canada-announces-the-inclusive-workplaces-campaign-to-encourage-employers-to-hire-persons-with-disabilities.html
2024年1月1日、「2023年障害者サービスおよびインクルージョン法(Disability Services and Inclusion Act 2023:DSI Act)」が施行されました。
この法律は、「1986年障害者サービス法(Disability Services Act 1986:DSA)」に代わるもので、既存の支援とサービスに継続的に資金を提供すると同時に、障害のある人々、その家族、介護者をより良く支援するための枠組みを提供します。
具体的には、例えば、DSIを通じて資金提供を受けているすべてのサービスプロバイダーに次のような行動規範に準拠するよう求めています。
〇関係法律および慣例に従って、表現、自己決定および意思決定の自由に対する障害者の個人の権利を尊重して行動する
〇障害のある人のプライバシーを尊重する
〇注意と技術を持って、安全かつ有能な方法で活動を提供する
〇誠実さ、透明性をもって行動する
〇障害者サービスの提供の質と安全性に影響を与える可能性のある事項についての懸念を提起し、それに対処するための措置を迅速に講じる。
〇障害のある人々に対するあらゆる形態の暴力、搾取、ネグレクト、虐待を防止し、それに対応するためにあらゆる合理的な措置を講じる
〇性的違法行為を防止し、対応するためにあらゆる合理的な措置を講じる
詳しくは下のサイトをご覧ください。(寺島)
https://www.dss.gov.au/disability-and-carers/disability-services-and-inclusion-act-2023
令和6年1月16日、ダボスで開催された世界経済フォーラムで「アンロック・ザ・エブリイボディ(Unlock the Everyday)」という支援技術へのアクセスを改善するための新しいグローバルキャンペーンが立ち上がりました。
このキャンペーンは、車椅子、眼鏡、補聴器、義足、デジタル機器などの支援技術を使用する権利がすべての人にあることの認識を高めることを目的としています。
世界には、支援技術を必要としている人が少なくとも25億人いるといわれていますが、高所得国では90%の国民がそれらの機器を利用できているにもかかわらず、低所得国ではわずか10%しか利用できていません。
適切な支援機器を利用できなければ、何百万人もの人々が生計を立てたり、教育を受けたり、自立した充実した生活を送ることができず、既存の社会的・経済的不平等をさらに悪化させています。持続可能な開発目標(SDGs)を達成するためには、高品質な支援技術を手頃な価格で利用できることが不可欠であり、支援技術を国家計画やSDGs戦略に優先的に組み入れることを求めています。
世界保健機関(WHO)、ユニセフ(国連児童基金)、国際障害同盟(International Disability Alliance)などのパートナーと共同で、グローバルパートナーシップ「ATscale」が立ち上げられました。
キャンペーンが求めている主なものは次のとおりです。
〇世界各国の政府は、より多くの人々が必要なときに支援技術にアクセスできるように、適切な製品やサービス提供への投資を含め、支援技術への投資を拡大する
〇低・中所得国の政府は、支援技術を国の保健システム/サービス、保険、社会的保護プログラム、教育イニシアチブなどの資金調達スキームの中核部分として確立する包括的な支援政策を実施する
〇二国間及び多国間ドナーは、支援機器へのアクセスの重要性を認識し、資金援助を強化する
〇民間部門を含む利害関係者が協力して支援技術のサプライチェーンを改善する
詳しくは下のサイトをご覧ください。(寺島)
https://unlocktheeveryday.org/davos/