トピックス-女性差別撤廃条約への取り組み報告

「新ノーマライゼーション」2024年12月号

DPI女性障害者ネットワーク
藤原久美子(ふじわらくみこ)

はじめに

第89会期女性差別撤廃条約(以下、CEDAW)において、第9次日本審査が、国連欧州本部(ジュネーブ)で開催されました。DPI女性障害者ネットワーク(以下、DWNJ)から4名の障害女性とその通訳者・介助者5名の計9名が参加しました。私と住田さんには視覚障害があり、住田さんは知的障害と肢体障害もある車いすユーザーです。

前回2016年と同様、DWNJも加盟する日本女性差別撤廃条約NGOネットワーク(以下、JNNC)の一員としてパラレルレポートを提出。今回は、個別レポートも提出しました。そして、障害女性の困難をわかりやすくまとめたリーフレットを作成し、出発ギリギリまで準備に追われました。

CEDAW委員は日本の秋月弘子(あきづきひろこ)さんを含む23名、国別報告者は、ネパールのバンダナ・ラナさんであることは知っていましたが、委員はメールアドレスを公開していないため、事前のアポをとれませんでした。

現地でのロビイング

国連入りした10月14日、カフェ近くのロビーで、スペインのアナ委員長とバッタリ会うと、ハグをして大歓迎してくれました。彼女は視覚障害者で元障害者権利委員会委員でもあり、彼女に会いたいという思いが、現地へ行く原動力の一つだったのです。障害のない人たちの中で、車いすや視覚障害のある私たちは、委員に近づいて話をすることも困難です。そのことを理解してか、効果的にロビイングを行う方法を教えてくれました。これまでのブリーフィングの時に、日本に対して誰がどのような質問をしたかを把握し、日本審査担当の委員10名と、その担当条文を踏まえてアプローチすることが必要であること。そして来年、CEDAWが「障害女性」の一般的意見を策定する予定であるとの情報もいただきました。一般的意見はすべての締約国に対して出されるもので、各条文の解説書のようなものです。しかし、1979年に採択されたCEDAWの条文には、障害女性の条文はありません。一般的意見が出されるということ、今期の委員長が障害女性であるという点でも、委員会が重要視しているからだと捉えられます。

審査前日の16日午後のランチブリーフィングで、個別レポートを出した団体に約1分の発言時間が与えられました。障害女性の複合差別をあらゆる法律に明記すること。複合差別を認識し、公的な性別クロスデータと参画が必要であること。また強制不妊手術を禁止し、インクルーシブ教育への移行の上で、包括的性教育が実施されることを求めました。

また、委員から出された質問への補足レポートとして、日本にいるDWNJメンバーの協力も得て、文章を作成、通訳者に訳してもらって、事務局へメールを送信しました。

日本審査と総括所見

17日の日本審査では、複数の委員から障害女性に関する質問がされました。内閣府障害者政策委員会(以下、政策委員会)の障害女性の人数を問われた内閣府は、「女性は40%。障害女性は重要な意思決定に関わっている」との回答。これに限らず、ほとんどが的を得ない回答だったため、落胆した委員からは「そんなことを聴いているのではない」と、突っ込みが聞こえてきました。NGOからの情報を読み込んで、具体的なデータを示しながら質問していた委員たちとは対照的でした。

そして、10月30日に公表された総括所見では、懸念と勧告に、私たちが求めたことがほとんど盛り込まれています。中でも「知的障害者を含む」と特筆し、すべての障害女性への性と生殖に関する健康・権利に関する保健サービスを拒否した医療機関の責任を追及すること。また改正障害者差別解消法が複合差別を禁止し、罰則を設けることを指摘しています。その他、選択議定書の批准、国内人権機関の設置など、重要な勧告が出されました。これまでDWNJが行ってきた政策委員会委員へのロビイングや、優生保護法の全面解決に向けた取り組みにおいても、追い風となるものです。

ジェンダー規範や家父長制など多くの女性たちが抱える困難は、より深刻に障害女性に影響します。障害女性の課題は縮図であり、私たちの課題を解消することが、あらゆる女性の困難を解決していくことになるのだとあらためて実感しました。

おわりに

今回の渡航に際し多くの資金と人的協力が必要でした。日ごろから応援してくれている人たち以外にも応援してもらうため、メディアにも取り上げてもらいました。複合差別を知らない人からも、励ましのメールをいただき、私たちもよりエンパワメントされたのです。ご支援、ありがとうございました!

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