ひと~マイライフ-個性は与えられたものでなく自分でつくっていくもの
「新ノーマライゼーション」2025年4月号
山田貴代加(やまだきよか)
クローン病(10歳の頃発症)。看護師。出産を機に、福岡IBD(炎症性腸疾患)友の会の世話人として患者会活動に関わる。現在は難病全般の支援活動、ピアサポート、難病カフェなどの活動の他、NPO法人Coco音(代表:山本美裕紀)の理事として、医療者やがん、難病当事者で行うがん教育「生きることの授業」を小・中・高校において展開している。
10歳の頃にクローン病を発症し、学業に仕事、結婚、出産、介護などのライフイベントは常に難病とともにありました。腹痛や下痢、周りには分かってもらえないだるさ、食べ盛りに強いられる絶食治療の辛さなど、同年代の友達には想像もつかない日常だったと思います。現在でも、夜間の経管栄養に毎朝のストーマ貼り替え、週3回の血液透析、主婦業と朝から夜中まで結構いっぱいいっぱいにやっています。
出産を機に患者会の活動に参加することになったのですが、ある座談会で「難病であることが個性ではない。難病を持ちながらどう生きていくかが個性」という言葉に出会いました。その時、積年のもやもやが一気に晴れた思いがしました。障害や難病も個性だよと言われてもしっくりこず、「私」が置き去りにされている気がずっとしていたからです。
現在、主に活動しているのは、小中高校で実施が進められている「がん教育」です。難病なのにがん?と思われるかもしれませんが、6年前に立ち上げたNPO法人Coco音(ここっと)では、がんに限らずもっと広い視野で「生きること」を子どもたちに伝えるべきではないかという思いから、がん当事者×難病当事者による「生きることの授業」を展開しています。
いろいろなことに対して無垢な状態であるといえる子どもたちに、がんや難病の正しい知識だけでなく、病気を持ちながらでも自分らしく生き生きと生活している人がいること、いろいろな人がいろいろな考え方で生きていることを伝え、自分には何ができるか?どう生きていくか?を考えながら、自分の個性を磨いていってほしいと思っています。そのような子どもたちが増え、いずれそのような大人たちが増えていく。その先にはきっとお互いの個性を認め合える社会が待っていると思います。
Coco音の活動も6年目を終えました。子どもたちが書いた授業前後のアンケートを比較すると、生きることの授業の手応えを実感しています。
難病当事者の療養生活には、子どもたちに伝えたい語りの種がたくさん詰まっています。それらを語りとして伝えることは、私たちにしかできないことです。
難病をもつ私たちが、難病になったからこそ感じた当たり前のありがたさ、思いやりの心、感謝の気持ち、そして、難病になったからこそ気がついた本当に大切なもの。難病と共にあったこれまでの道のり、生き方が今の私の個性になっていると思います。そしてその自分らしさは、これからも強い武器になってくれると思っています。
難病当事者は、支えられる者、弱き者と思われがちですが、自分らしくあろうとする生き方や、難病をもちながらでも柔軟に生きてきた自分たちのメッセージがある人の心に届き、その人を少し元気にする。それはすでに人を支える側にいるということになります。Coco音の活動を通して、難病とともに生きることに意義が生まれ、病気との向き合い方に大きな価値が生まれる、それこそが私たちの「生きる力」となるのではないでしょうか。
Coco音の活動が、これからの私の個性をどのように広げてくれるのかは分かりませんが、難病をもちながら生きてきた思いや考えが、悩み多き現代の子どもたちの支えになり、笑顔になればと思っています。