なんでも創る・みんなが楽しい-新しいパラスポーツ 日常の車椅子で気軽に楽しい!「車いすファンサッカー」

「新ノーマライゼーション」2025年5月号

横浜市総合リハビリテーションセンター リハビリテーション工学技師
中村詩子(なかむらうたこ)

はじめに

普段使っている車椅子にサッカー用ガードを取り付けるだけで、気軽にサッカーが楽しめるようになるって、ワクワクしませんか? 皆さん、車椅子でボール蹴ると、どんな感覚か想像してみてください。車椅子でボールに向かって進む、ボールが当たった時の振動が身体に伝わる、その感覚は、とっても心が躍るものなんです。ぜひ体験していただきたい感覚です。実はこれ、車椅子に乗っている小学生の「僕もサッカーがしたい!」というリクエストから始まりました。そして「全国の車椅子を使うみんなが、気軽に楽しめるスポーツの一つにしたい!」という思いから、車椅子用サッカー用具「ファンガード」が商品化され、新しいパラスポーツ「車いすファンサッカー」が生まれました。この「ファンガード」の商品化までの取り組み、どんな工夫があるのか、そして、「車いすファンサッカー」の新しいパラスポーツの一つとしての可能性をお伝えします。

「ファンガード」誕生ものがたり

現在、世界的に普及している電動車椅子サッカーは、競技用電動車椅子の使用を前提としていて、それらはとても高価で、スピードが早く操作も難しいため、子どもや初心者が「ちょっと試しにやってみたい!」と思っても、なかなか機会がありませんでした。一方で、簡易形電動車椅子を使用する当事者からは、「サッカーをしたい!」という強いニーズが以前から存在していました。筆者が以前勤務していた、2011年北九州市立総合療育センターにおいて、まさにそのような子どもたちの声があり、当事者とその保護者らと共に、身近な材料を用いてDIY的な開発を始めました。現場のアイデアを即座に形にし、強度や再現性を満たす部材として、安くて加工が簡単なイレクター(プラスチックコーティングされたスチールパイプ:矢崎化工株式会社)を最終的に用いました。試行錯誤を重ね、ガードは完成し、2012年の福祉機器コンテストで優秀賞を受賞しました。その後、その子どもたちはクラブチームを結成し、継続的な練習によって、競技用電動車椅子にステップアップするメンバーもでてきて、全国大会に出場するほどの成果を上げました。

その後、筆者は開発拠点を、横浜市総合リハビリテーションセンターに移した際に、横浜市や全国の特別支援学校やチームにおいても同様のニーズがあり、商品化を望む声も寄せられました。そこで、矢崎化工株式会社さんに相談したところ、「全国の障がいのある子どもたちに、もっとスポーツの機会を届けたい!」という熱い気持ちが合致し、「ファンガード」の開発プロジェクトが2023年にスタートしました。厚生労働省の障害者自立支援機器等開発促進事業の支援を受け、横浜市の特別支援学校、障害者文化スポーツセンター、電動車椅子サッカー横浜連絡会、簡易形電動車椅子メーカーのヤマハ発動機株式会社と共に開発協議会を発足しました。このプロジェクトでは、2年間の開発期間を通して、現場のニーズや技術的な課題、安全性の確保、車椅子本体に負担をかけないままボールを蹴るための強度を両立するための安全試験、リハビリテーションの専門家や車椅子メーカーのヒアリング、当事者と支援者の皆さんとのモニター体験会(図1)を重ねて完成しました。
※掲載者注:写真の著作権等の関係で図1はウェブには掲載しておりません。

「ファンガード」のここがすごい!

一番のポイントは、普段皆さんが使っている簡易形電動車椅子などに、簡単に取り付けられることです。「ファンガード」には、さまざまな工夫が凝らされています。

いろんなメーカーの車椅子に取り付けられる!: レッグタイプとベースタイプの2種類の取付方法を用意しています。

CHECK1:取付可能なファンガードを選ぶ

1.レッグタイプ(図2):レッグパイプが固定されている車椅子の場合
※掲載者注:写真の著作権等の関係で図2はウェブには掲載しておりません。

2.ベースタイプ:レッグパイプが開閉する車椅子の場合

CHECK2:寸法を確認する

※詳しくはホームページ1)をご覧ください。取付方法の動画、説明書もご用意しています。

ピッタリフィット!: 車椅子の幅や高さに合わせて、細かく調整できる機能も付いているから、いろいろなサイズの車椅子に対応できます。初めての取り付け時にファンガードの寸法調整をしたら、2回目からは着脱が簡単です。

丈夫で安心!: ボールを蹴る時の衝撃にもしっかり耐えられるように、丈夫なイレクターパイプとジョイント部品(専用に開発した取付金具)を使っています。ボールを蹴るための安全試験も行い、安全性も確認済みです。ただし、競技用電動車椅子とのプレーはできません。

持ち運びもラクラク!: 車椅子から取り外したら、重さ約7kgで持ち運びしやすいです。

蹴りやすいって評判!: 実際に使ってみた方からは、「ボールを蹴った時の感覚が楽しい!」「安心してサッカーができる!」と、嬉しい声がたくさん届いています。

簡易形電動車椅子だけでなく手動の車椅子でも!: ジョイスティックで操作する簡易形電動車椅子だけでなく、手で漕ぐ車椅子にも取り付けて一緒にサッカーを楽しめます。

2025年4月、矢崎化工株式会社さんから「ファンガード」が約5~6万円で発売されています。購入希望者にはデモ機のレンタルサービスもあるそうなので、お問い合わせください。

「車いすファンサッカー」の未来

発売に先立ち、日本車いすファンサッカー協会(JWFFA)2)が設立され、「ファンガード」を使った「車いすファンサッカー」という新しいパラスポーツが誕生しました。「車いすファンサッカー」の体験会を開いて、気軽にみんなでワイワイ楽しめるサッカーを目指しています。練習方法の提案や将来的にはルールもつくり、みんなで新しいスポーツをつくって大会を開いていきたいとのことです。また、競技の日本電動車椅子サッカーの協会とも連携して、草サッカー的立ち位置で競技人口の裾野をひろげる活動の一助になるように考えているとのことです。詳しい情報はホームページでご確認ください。

「ファンガード」に込めた想い

「ファンガード」を通して、「僕にもできる!」っていう自信や、チームプレーの楽しさを感じてくれることが嬉しいことです。車椅子は、通常はまわりの障害物をよけて操作する乗り物ですが、「ファンガード」を装着すると、ボールに向かって操作するという積極的な動きと気持ちを引き出すことができるものだと思います。簡易形電動車椅子や手動の車椅子の操作の練習としても、「ファンガード」を取り付けると効果的だと思います。普通学校に通う車椅子ユーザーの中には、体育のサッカーの時間は「ファンガード」を装着することで、見学ではなく授業に参加できている子もいます。

「ファンガード」をつかった「車いすファンサッカー」が、車椅子ユーザーのスポーツの選択肢の一つになり、車椅子でボールを蹴る楽しさが、全国の多くの方に伝わることを願います。


1)矢崎化工株式会社「ファンガード」特設ページ
https://www.kaigo-web.info/contents/funguard/

矢崎化工株式会社「ファンガード」特設ページQRコード

2)日本車いすファンサッカー協会 ホームページ
https://sites.google.com/view/jwffa

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