大学と支援機関が連携した取り組み~関西学院大学における修学・就労支援~

「新ノーマライゼーション」2025年8月号

社会福祉法人すいせい
塚田吉登(つかだよしと)・島津悠貴(しまづゆうき)・西岡崇弘(にしおかたかひろ)・生野茜(しょうのあかね)

はじめに

我々社会福祉法人すいせい(以下、「すいせい」)と関西学院大学総合支援センターキャンパス自立支援室(以下、「支援室」)は障がいのある学生の修学支援、就労支援に関して2012年から現在に至るまで、さまざまな連携・協働を重ねてきました。今回はその経緯と障がいのある学生のキャリア支援について紹介したいと思います。

すいせいの歴史

すいせいは、1984年に「共に生きる」をスローガンに神戸市垂水区で精神障がいのある方への支援から始まった社会福祉法人です。現在は、就労移行支援事業所、就労継続支援B型事業所等の通所事業、神戸市発達障害者西部相談窓口などの相談事業、そして今回の関西学院大学との連携を行っている法人独自事業の3つの主要な事業を通して、「居場所がほしい」「就職したい」といったニーズに応える多岐にわたるサービスを提供しています。

すいせいでは設立当初から社会課題として、幼少期や学生時代に生きにくさを感じ、それが社会に出てからも続く結果、支援機関へとつながるケースが多いということを認識していました。その中で、2009年頃から発達障がいのある大学生からの就労における相談が増え始めました。

そのため「大学における障がい学生の就労支援の現状と課題」について調査をすべく、法人内プロジェクトチームを発足し、全国のさまざまな福祉サービス事業所や大学を訪問調査し、近隣大学でのモデルケース支援を実施していきました。

その結果、障がいのある大学生を支援する公的サービスや社会資源が一切ない状況を目の当たりにし、さらに調査を進めていく中で「うちの大学にそのような学生はおりません」という大学側の言葉に衝撃を受けたことは忘れられません。このような背景から「無ければ、創り出す」という考えのもと、障がいのある学生の就労支援ニーズに対応する公的サービスや、社会資源を自ら構築することを目指してきました。上記のような背景と問題意識から、2010年より独自事業として「学生・就職困難者キャリアサポート事業+U(プラス・ユー)」を立ち上げて、障がいのある学生に対するキャリアサポート事業を開始しました。

関西学院大学との連携

一方、大学では障がいのある学生の修学支援の体制は整備されつつあったものの、就職支援に関しては多くの大学で手探りの状態が続いていました。専門性や人的資源の制約、卒業後の長期的視点に立った支援の必要性から、大学単独での就職支援には限界がありました。

関西学院大学とは2012年に、障がい学生支援専門部署である「総合支援センターキャンパス自立支援室」と、就労支援を必要とする障がい学生の個別ケースの連携(面談や情報提供等)を開始しました。その後2014年からは、より多くの学生に就労支援を提供するための仕組みとして「キャリア教育支援プログラム」を導入しました。このプログラムは、学生が就労場面を体験できる実習機会の提供と、関西学院大学の修学支援コーディネーターとすいせいの就労支援員による行動観察に基づくフィードバックを軸として展開しました。また2016年には「キャリア教育支援プログラム」の準備段階として対象学生層を拡大し、修学支援から就労支援への段階的な移行を目的とした「プレキャリア教育支援プログラム」を導入しました。

その後2018年からは、障がいのある学生の進路支援を強化するため、就労支援コーディネーターの業務がすいせいに業務委託(週3日)され、すいせいの職員が支援室に常駐することになりました。2019年には学生のニーズの増加に合わせて、就労支援コーディネーターが週4日配置に増え、同年には関西学院大学雇用の修学支援コーディネーターの任期満了に伴い、修学支援コーディネーターの業務もすいせいに業務委託されました。これによってすいせいの専門スタッフが関西学院大学の修学から社会移行まで、一貫した支援を行う体制が構築されました。

この体制が構築された背景には、単純な業務委託化ということではなく、増加の一途をたどる障がいのある学生からの修学・就労支援の多様化していくニーズに対してより良い支援を実施するために、大学と地域支援機関が緊密な連携・協働が可能な体制を構築したい、という学内における支援の質を高めるための方法を模索したことが大きな契機となっています。

就労支援コーディネーターの主な役割としては、学生の症状や特性、アルバイト経験、就職希望時期、家族の意向などをアセスメントし、障害者雇用枠(オープン)就労、一般枠(クローズ)就労、社会資源の活用など、多様な就労に関する情報(機会)を提供します。また、履歴書作成や面接対策の補助、インターンシップの紹介、進捗状況の確認なども行います。

支援室で対応してる発達障がいのある学生の推移

このように体制が整っていった背景としては、年々障がいのある学生が増加し、多様な支援のニーズがあるからといえます。全国的には、令和5年度(2023年度)のJASSO調査では、障がい学生の総数は58,141人に達し、全学生数の1.79%を占めています(1)

関西学院大学でも全国的な傾向と同様に、障がいのある学生の在籍数は年々増加していっています。発達障がいのある学生数に注目すると、2020年は全体の30%、2021年は34%、2022年は32%、2023年は30%、2024年は24%です。常に3割ほどを占めます。全体の障害種別から見ると発達障がい学生数は2番目に多く、1番多いのは精神障がいのある学生となっています。

学生が支援室につながるきっかけと、修学支援から就職支援のスムーズな移行

まず一つ目は入学前後に相談がある場合です。関西学院大学ではオープンキャンパス時に何らかの障がいや病気、特性により入学後の修学支援を希望される方を対象に個別相談を行っており、この時の相談が一番早い段階でのつながるきっかけとなります。まだ入学するかも分からない状況ですが、ご本人または親子で、保護者のみで来られることも少なくなく、入学後の支援、大学生活はどういうものかを相談しに来られます。

私たちは特にこのオープンキャンパスの相談の機会は大事だと感じていて、模擬授業やキャンパス内を歩いてみて、大学生活の具体的なイメージを少しでもつかんでもらいたいと思っています。また早い段階から相談があることで、大学の支援としてできること、できないことをお伝えし、入学したけれど思っていたのと違った…というミスマッチを減らすことにもつながると考えています。

学生の中には、得意な科目があって、特定のジャンルの授業をたくさん受けたい、研究をしたい!と思って入学される方もいますが、1年生のうちは一般教養の科目が多く、すぐ自分が受けたい授業を受けられるわけでないこと、学部によっては研究室に配属になる際に成績による選考があることなど、入学しなければ分からないことも早い段階からお伝えすることで、事前に準備、他の選択肢を考えるきっかけにしてほしいと思っています。

実際に事前に相談に来ていた学生さんは、入学後すぐに履修登録のやり方が分からない、この相談はどこに行ったらいいのか等々、相談に来てくれています。

二つ目は、学期の途中で支援につながるパターンです。この場合多くは教科担当の先生から支援室を紹介されて相談に来られます。相談内容としては、体調不良で授業の欠席が増えてきた、レポートの提出期限を延長してほしい、発表を免除してほしいなど、さまざまです。学生からではなく先生から、こういう学生がいるのだけどどのように対応したらいいか、という相談も日々受けています。

大学はこれまでの学校生活と違って、自分で授業を選んで自分で教室に行き、レポートの締切や提出方法、形式すべて自分で情報をつかんでいかなければなりません。そのような中で、重要な情報を聞き逃したり、聞いていても忘れてしまったり、レポートが重なってくるとスケジュールが分からなくなったりと、レポート提出ひとつをとっても、いくつもあるハードルを越えていかなければなりません。そんな時いつでも相談できる場所として支援室を利用してください、と入学する前からお伝えしています。

三つ目は就職活動が進んできてから、または卒業が見えてきてから支援室につながるパターンです。この場合は学内の広報やご自身で調べて支援室にたどり着く場合や、ゼミの先生に勧められて、または学内のキャリアセンターの職員からの問い合わせでつながってくる場合とさまざまあります。この時もともと修学支援を受けている場合は、修学支援を担当しているコーディネーターも一緒に面談に同席し、本人をアシストしながら話をしていき、徐々に就労支援コーディネーターにバトンタッチしていくという流れをとっています。この時初めて相談に来られた場合は、就労支援コーディネーターがアセスメントし、ニーズに合わせた支援を行っていきます。

おわりに

これまで支援につながるきっかけについてお話ししましたが、すいせいは大学における就労支援を「進路選択支援」と位置づけており、単なる「就職先の斡旋」とは異なるアプローチをとっています。学生が自身の能力を十分に把握した上で、適切な進路選択の方向性を見出すことを重視しており、卒業と同時に社会に参画していくことを前提としています。福祉サービスはあくまで選択肢の一つと捉えています。

近年の大学での障がい学生支援は、障害者差別解消法の改正により私立大学でも合理的配慮の提供が義務化されたことに伴い、多くの大学でそれぞれの形で支援体制を整え始めてきています。ですがそれはまだ修学支援に関するものであって、就労支援についてはまだまだこれからの段階といえます。在学中にいかにアセスメントし、適切なマッチングにつなげていくかという点では、全国的にまだ事例が少ないのが現状です。

すいせいでは、2020年度に兵庫県から「障がい学生支援・就労支援における兵庫県内大学のネットワーク構築」を目的とした事業を、2021年度からは神戸市から「各大学に在籍する障がいのある学生当事者に向けた機会提供の場づくり」を目的とした事業を受託しています。これらの公的な事業は、大学間における支援の質のバラつきをなくすことや、大学間のつながりを強化すること、また大学が協働して障がいのある学生に機会提供の場づくりを行うことを目的にしています。

これらのノウハウを関西学院大学での支援に取り込むことで、既存の就労支援に関連する地域社会資源(学外の多様な支援機関や企業)を大学内の支援に接続することが可能となりました。その結果、学生への就労支援の選択肢が広がり、大学内部だけでは対応が難しい多様な就職ニーズに対応できるようになりました。このように大学にいながらにして、地域の社会資源やさまざまな情報や機会を活用できることこそ、大学と支援機関がパートナーシップを結ぶことの意義であると思っています。

今後は行政・企業・大学・支援機関の連携による支援の有効性をさらに高め、事例を増やしていきたいと考えています。


【参考文献】

(1) 令和5年度(2023年度)大学、短期大学及び高等専門学校における障害のある学生の修学支援に関する実態調査結果報告書