大阪国際大学における発達障害のある学生の就労支援の取り組み

「新ノーマライゼーション」2025年8月号

大阪国際大学・大阪国際大学短期大学部 キャリアサポートセンター
高木知香(たかぎちか)

1.大学概要

学校法人大阪国際学園は大阪府北河内地域にある守口市に位置し、今年で創立96年を迎えた幼稚園、中学校、高等学校、短期大学部、大学を擁する総合学園です。大学は経営経済学部、人間科学部、国際教養学部の3学部7学科(定員2120人)、短期大学部は栄養、ライフデザイン、幼児保育の3学科(定員440人)を設置しています。

2.障害学生支援のための学内体制

『障がい学生の修学支援に関する指針(ガイドライン)』を定め、「教職員が連携して全学的な支援を行う」体制を整えています。具体的には、セミナー担当教員(大学、短大とも全学年にセミナー科目あり)と関連部署が情報共有しながら支援を進めます。障害学生の修学支援は学生相談室、就労支援はキャリアサポートセンター(以下「CSC」)が担当します。

3.修学支援

修学支援は入学前から始まり、入学決定後、学生本人、保護者から障害を理由とする修学上の配慮の相談・申請があった場合には、学科教員、学生相談室が本人、保護者との面談を実施します。

4月の新入生オリエンテーションでは「大学生活を送るにあたり、健康管理室、学生相談室に把握しておいてほしいこと」の質問項目がある調査を実施し、記載があった学生には「学生相談室との面談希望の有無」を確認のうえ面談します。また、授業における合理的配慮を希望する学生については、学科長、学生総合支援部長、学生相談室長の連名で履修科目担当教員へ『配慮願い(講義中に配慮をお願いしたい学生について)』が出されます。

学期中は前期、後期の開始から数週間後、セミナー担当教員に『要支援学生調査』を配布し、記載があった学生はセミナー担当教員と協議の上、学生相談室での相談につなげます。

4.就労支援

CSCは学生本人の同意のもと、関連部署やセミナー担当教員と連携を密にとり支援を行います。一例として、学生相談室を利用している学生がCSCを初めて利用する際は、学生相談室カウンセラー、CSC面談担当者、学生の三者で初回面談を行い、その後のCSC面談につなげています。また年1回、学生相談室との情報交換会を実施しています。

具体的な就労支援は、1キャリア教育授業、2行事、3面談を通して行います。

1.キャリア教育授業

大学2年次前期から3年次後期までの各半期4科目のキャリア教育科目は全学部必修です。2年次では社会・職業理解、自己理解、3年次は就職活動を円滑に進めるための履歴書作成、面接練習など実践的な内容に取り組みます。CSCに所属している教員が授業担当しているため、授業内で気になる学生がいる場合、就職活動が始まる前にCSCの面談担当者へ申し送りをします。

2.行事「コミュニケーションが苦手な学生のための就職準備講座」

2016年から夏休み期間中の9月に発達障害やコミュニケーションに困難さがある学生を対象に「コミュニケーションが苦手な学生のための就職準備講座」(以下「コミュニケーション講座」)を実施しています。

【講座の内容】

  • ゲームやワークを通じて、コミュニケーションの取り方を実践する。
  • シチュエーションに合ったマナーやルールを知り、面接で自信をもって受け答えできるように練習する。
  • 自分の得意なこと、苦手なことなど自己理解を深め、自己紹介文を作成する。

【講座のねらい】学 生:・他者との関わりを通して就業に向け必要な能力開発を行う。・CSC、学生相談室職員との距離を縮め、親しみをもってもらう。・参加学生同士のつながり(友人関係)を醸成し、大学内での居場所づくりに役立てる。保護者:・保護者の参観、面談可。大学での様子をみてもらうため、CSCから参観を呼びかけることもある。希望する保護者にはCSCとの面談時間を設ける。職 員:・発達障害への理解をすすめ、就労支援の知識と技術を身につける。・講座前に参加学生情報を共有、講座後に意見交換を実施し、今後の支援体制について話し合う。

【募集方法】

  • 学内WEBサービスシステムでの掲示案内。
  • セミナー担当教員、学生相談室カウンセラー、CSC面談担当者より該当する学生に個別に参加を呼びかける。

【留意事項】

  • 出席を強要しない。発言を強要しない。
  • 学生の相性を見てペアやグループを変える。攻撃的な発言を繰り返す、進ちょくが遅い、極度に緊張しているなどの学生は職員とワークを行う。
  • 見通しを持たせるためスケジュールをしっかり説明し、休憩、終了時間は時間厳守。

【講座参加学生の感想(2024年度)】

  • 自分のことについてしっかりと考えることができて良かった。(大学3年生男子)
  • 今回、いろんな人と話して、自分と同じ考えを持っている人でも掘り下げるとまた違った考え方があるということを知り、自分を知るならもんもんと一人で考えず、誰かと話してみるということも大切だと学びました。(短大2年生女子)
  • 疲れた。人とコミュニケーションを取るのはやはり得意ではない。(大学4年生女子)

3.面談

CSCは学生との個人面談を最も重視しており、国家資格を持つキャリアコンサルタントが面談を担当、学生との信頼関係を構築しながら、学生本人のレディネスや将来への思いを踏まえ、卒業後の進路決定まで支援します。必要であれば保護者への連絡を行い、学生、保護者、セミナー担当教員、学生相談室カウンセラーの四者で面談を実施します。

5.認定特定非営利活動法人大阪障害者雇用支援ネットワークとの連携

2022年より認定特定非営利活動法人大阪障害者雇用支援ネットワーク(以下「雇用支援ネットワーク」)との連携を開始しました。雇用支援ネットワークは、障害のある人の就労支援と雇用拡大を目的に、支援を要する学生のためのさまざまな支援プログラムを実施しています。本学では2023年卒1名、2024年卒2名の学生が『支援を要する学生のためのインターンシップ』プログラムに参加させていただきました。

インターンシップ後、参加学生3名のうち2名はプロブラムで体験した「特例子会社での事務職」を志望することに決め、その後、就職に向けた実習を経て内定を獲得しました。実習のコーディネートもご尽力いただき、目標を達成することができました。

残りの1名は卒業後、雇用支援ネットワークと関連のある大阪市職業リハビリテーションセンターでの職業訓練を経て、1年後就職が決定しました。

また2025年卒の学生1名は、就活準備講座「スキルチェック(事務作業・PC操作)」を受講しました。この学生の保護者は「卒業と同時に大手企業の事務に就職」という意向があり、本人の特性や現時点での能力について理解していただくための客観的な材料として、スキルチェックの結果を利用させていただきました。保護者との面談を重ね、最終的には就労移行支援事業所利用という進路選択につなげました。

6.最後に

本学では、教職員の連携からなる全学的支援体制を敷くことで、入学から卒業まで、障害学生への修学支援、就労支援を途切れなく実施しています。これは学生だけでなく、担当する教職員にとっても大きな支えになっています。担当者を孤独にさせないことで良い支援ができます。

障害のある学生にとって「学校」という慣れたシステムから、つかみどころのない「社会」に歩みを進めることは、あまりに高い壁に立ちふさがれる感覚なのではないか、と想像します。在学中に支援を受けながら壁を越える人もいますが、越えられない人もいます。越えられなかった場合は、卒業後、背中を押してくれたり、手を引っ張ってくれる「次の存在」につなぎ、託します。「就労」だけでなく、これからの人生を続けることを目標にしてもらうため、孤独にさせません。これからも一人ひとりと向き合う支援を続けていきます。