就労選択支援事業の概要

「新ノーマライゼーション」2025年9月号

一般社団法人福岡IPS普及協会 就労支援センターウィズダム
倉知延章(くらちのぶあき)

はじめに

障害福祉サービスに2025年10月から新たに就労選択支援事業(以下「本事業」という)が加わります。本稿では、本事業の目的、支援の流れ、導入の背景と期待されることなど、概要を解説します。

1. 本事業の目的

本事業は、働く力と意欲のある障害者に対して、障害者本人が自分の働き方を考えることをサポート(考える機会の提供を含む) するものです。現在は、就労系福祉サービスの利用にあたって、どのようなサービスがふさわしいのかの判断が現場の個々の支援担当者に任されているのが実情です。そして残念ながら支援者は、障害者の働きたいというニーズを引き出し、本人の状況のアセスメントを行い、希望を達成するための情報提供を行い、これらを協同で進めていくという本人主体の支援となっていません。

そこには、就労支援の知識と技術、障害者雇用の現状、そして地域の社会資源の状況などの専門性が求められます。何より、本人主体で伴走型の支援を行うという重要な理念が求められます。そこで、本事業を創設することで専門性のある支援者に出会い、支援を受ける機会をつくったのです。

また、就労継続支援を利用しながら就労に関する知識や能力が向上した障害者には、本人の希望も重視しながら、就労移行支援の利用や一般就労等への選択の機会を適切に提供することも本事業の目的です。

2.支援の内容と流れ

支援の流れについては図1のとおりです。標準的な支援期間は原則1か月で、図2で1か月間の流れを示しています。また、本事業の利用にあたっては計画相談が入ります。

図1
図1拡大図・テキスト

図2
図2拡大図・テキスト

本事業の中心は就労アセスメントです。本人の働きたいというニーズを引き出します。障害者の場合は、福祉、教育、医療等の支援者や家族から「企業で働くのは無理」「働くのはまだ早い」「就労継続支援事業が妥当」という否定的な言葉を言われ続けている場合が多くあります。その結果、「自分は就労継続支援B型で働く」と思い込むことになります。まずは、本当はどうしたいのか、可能性は十分にあるというメッセージを送り、動機づけを高める必要があります。

次に、ニーズを達成するための支援を検討するためにアセスメントを行います。これは、本人との面談、家族や関係機関からの情報収集、そして作業場面等を活用した状況把握を行い、本人の強みや特性、本人が望む方向に進むうえで課題となること等について、本人と協同して整理します。そして自分に合った働き方を実現したり、働くうえでの課題改善等に向けて、どんな方法で何に取り組むのか、どこで取り組むかについて、本人の自己理解を促すことを支援するのです。そのためアセスメント結果は、本人や家族、関係者等と共有し、その後の就労支援等に活用できるようにします。

このように、本事業は就労系障害福祉サービスの活用を含めた進路について本人が選び、決定していくことを支援するもので、就労の可否を判断したり、どの就労系障害福祉サービスを利用するかの振り分けを行うものではありません。

アセスメントと並行して、本人の選択肢の幅を広げ、的確な選択につながるよう、本人に対して、地域における雇用事例や就労支援に係る社会資源等に関する情報提供、助言を行います。そのため、計画相談支援事業所や市区町村、ハローワーク等の就労支援機関との連携や連絡調整が求められます。

これらを本人を中心とした多機関によるケース会議でまとめ、方向性を決めていきます。その後は計画相談支援事業所が決められた方向に沿って進めていきます。

3.期待される効果

専門的な研修を修了した就労支援の経験・知識をもつ人材の配置により、就労に関するアセスメントに関し、専門的な支援を受けることが可能となります。具体的には、本人の就労能力や適性、ニーズや強み、本人が力を発揮しやすい環境要因、職業上の課題、就労に当たっての支援や配慮事項等を本人と協同して整理することで、本人の自己理解を促進することが可能となります。

また、本人と協同して整理した内容や地域の企業等の情報を基に関係機関と連携することにより、本人にとってより適切な進路を選択することが可能となり、就労継続支援A型・B型利用開始後も、本人の希望に応じて就労選択支援を受けることができ、就労ニーズや能力等の変化に応じた選択が可能となります。

4.本事業の対象者

本事業の対象者は図3のとおりです。本来は就労系サービスを利用希望および利用している障害者にとどまらず、希望者はすべて受け入れるべきですが、まずは現行の就労アセスメント対象者からスタートします。その後は就労継続支援事業A型希望者、就労移行支援事業の更新希望者へと広げていきます。ただし、就労系障害福祉サービス利用希望および利用している障害者も希望すれば受けることができます。

図3

サービス類型新たに利用する意向がある障害者既に利用しており、支給決定の更新の意向がある障害者
就労継続支援B型現行の就労アセスメント対象者(下記以外の者)令和7年10月から原則利用希望に応じて利用
・50歳に達している者又は障害基礎年金1級受給者
・就労経験ありの者(就労経験がある者であって、年齢や体力の面で一般企業に雇用されることが困難になった者)
希望に応じて利用
就労継続支援A型令和9年4月から原則利用
就労移行支援希望に応じて利用令和9年4月から原則利用
※標準利用期間を超えて更新を希望する者

5.現状の課題と本事業への期待

本事業は、障害者雇用・福祉施策の連携強化に関する検討会において議論され、まとめたものを国が事業化したものです。検討会では、アセスメントが重要であることと、就労継続支援事業から移行できる仕組みが必要であることが認識されました。

アセスメントについての考え方を整理すると、1.本人の希望を達成するための支援方法を明らかにするために行う、2.本人と協同で行う、3.本人と環境の双方を明らかにすることとなります。これらは非常に重要なポイントで、これが本事業の大きな理念につながっています。

移行の仕組みについては、就労継続支援を利用しながら就労に関する知識や能力が向上した障害者には、本人の希望も重視しながら、就労移行支援の利用や一般就労等への選択の機会を適切に提供することが明記されました。

このように、支援の主体を支援者から本人に移し、本人の意向を大切にするという考え方が就労選択支援の理念へとつながっていったのです。

本事業は、私たち就労系支援者が障害者にとって本当に役に立つ存在になれるかどうかが試される機会であるといえます。