地域で就労選択支援事業を考える-札幌市での就労選択支援モデル事業の取り組みから-

「新ノーマライゼーション」2025年9月号

特定非営利活動法人きなはれ 就業・生活応援プラザとねっと センター長
重泉敏聖(しげいずみとしまさ)

北海道での就労選択支援事業に関するモデル事業(以下、モデル事業)は、札幌、江別、小樽、帯広、釧路、函館(事業所約20事業所、対象者24名)がモデル事業に参加・ご協力いただき、2024年10月から12月まで行われました。今回のご報告に関しては以上の地域の中から、筆者が取り組んだ札幌を中心に述べさせていただきます。

札幌でのモデル事業は当初から検討会議を参加者で行い、アセスメントの方法、ご協力いただく対象者の方についての話し合いをしてきました。アセスメントの方法については、障害者職業総合センターの「就労支援のためのアセスメントツール」を参考にし、共通のシートを活用しました。また、対象者の方に関しては、今回のモデル事業所の対象者が、福祉サービスの選択で迷っている方だったので(例えばA型かB型か、就職か福祉サービスか等)、2年生を対象にし、市立の高等支援学校(以下、支援学校)2校にご協力いただき、7名の生徒がモデル事業に参加。この他にも札幌では、就労移行とA型の方にもご協力いただき、3名の方が参加してくださいました。

実際のモデル事業所では、支援学校に関しては学校に伺い、1日目に生徒と担任・進路の先生との面談、2日目・3日目で作業アセスメント、4日目で関係機関での振り返りを行いました。一つの事例としては生活介護かB型事業所か学校側が迷っている生徒で、その方に実際に面談と作業場面を通じて1.本人の就労意欲が高いこと2.ワーキングメモリーが他の生徒と比較しても高いことが本人の強みであること2.通学の不安定性はこれからの課題であること、そこから3.福祉サービスではなく、一般就職を検討し、企業実習なども検討してもよいのではないか、また地域の資源として4.必要であれば、札幌市が各就業・生活相談事業所に配置しているジョブサポーターの活用も検討してみることの4つの点を中心にご本人さん、学校に提案させていただきました。その後の振り返りの中では、学校から、福祉側と2年時から選択事業を通じて関わることで、学校も、生徒も選択支援が広がるのではないか、学校側にもアセスメントの勉強になるのではないか、という肯定的な感想をいただきました(現在その方に関しては就職を検討中)。

その後、モデル事業の結果を基に札幌市では就労支援推進部会運営委員の方と行政の担当者を中心に就労選択事業(以下、選択事業)に関する説明会や指定申請に関して協議などを行い、協議の結果、選定に関する基準を設定することになりました(資料に関しては「札幌市 就労選択支援の事業者指定」で検索すると資料が閲覧できます)。

今回モデル事業を行ってみて、参加者それぞれから選択事業所には総合的なアセスメント力、地域の社会資源に関する知識、中立公平性に対する意識など、さまざまな知識・意識が求められることが共有されました。一方で、受け手側―例えば就労系事業所等―にも、当然のことながら、選択事業所からの所見を受けてそれを実施していく力量が求められますし、その質を向上させていくという意識も求められます(質の向上については「札幌市 指定就労継続支援B型における条例遵守の徹底」で検索すると資料が閲覧できますので参照ください)。こうした力量や意識は一事業所や一法人で取り組むのには限界があると思います。その限界を乗り越えるには、地域にある自立支援協議会のような行政を含む官・民が一体となり、地域一体となって選択事業だけではなく、就労系サービスや企業等も含めて、今後障がいのある方の就職を含めた選択の幅が広がるよう取り組むことで、地域にとってよりよい選択事業になっていくと思います。