就労選択支援モデル事業を実施して
「新ノーマライゼーション」2025年9月号
特定非営利活動法人ラシーネ 理事長
川内崇司(かわうちたかし)
就労選択支援モデル事業の概要
鹿児島県の令和6年度のモデル事業では、鹿児島市と出水市で主に就労移行支援事業所の6事業所で10名の実施でした。成果は、多くの人が自ら将来の就労を考える機会を得ました。支援者にとっても、アセスメントの重要性や本人中心のチーム支援の基本を再確認する機会となりました。就労選択支援は、本人の理解を深め、自分らしい働き方を選択するために有効な制度です。また、本人に応じた柔軟な支援の方法や生活状況に応じた支援についても明確になります。
モデル事業の事例
このケースでは就労移行支援事業所が実施する「就労アセスメント」実施に合わせ、モデル事業を適用しました。対象者は精神科病院退院後、就労系福祉サービスの利用を希望していました。アセスメントは、1.就労移行支援事業所、2.本人が興味のある作業を行うB型事業所、3.在宅の3か所で実施しました。人的・物理的環境がそれぞれ異なることで、より多面的なアセスメントを得ることができました。対象者は、環境が変わっても対応可能な人でしたが、環境変化が心身の健康に影響を与える人は、同じ事業所で実施する等、対象者の特性に応じたアセスメントの機会設定は必要です。作業場面は、事業所内でのワークサンプルを活用した訓練、B型事業所でのパソコン作業、在宅でのパソコン操作やオンライン特有のコミュニケーション訓練を行いました。在宅における支援では、「就労系障害福祉サービス(就労移行支援、就労継続支援A型・B型) における在宅でのサービス利用の取扱い」に基づいて実施しています。加えて、対象者の興味や得意分野を確認し、今後の就労希望につなげるための情報収集も行いました。こうした取り組みにより、本人の能力や可能性を正しく把握することができ、より本人らしい働き方の選択が可能となります。
多機関連携会議
アセスメント結果をもとに多機関連携会議を開催しました。参加者は相談支援専門員、訪問看護師、病院ソーシャルワーカー、本人と家族です。おおむね1時間の会議で、それぞれの立場から意見を出し合い、支援内容や方針を確認しました。本人や家族が理解できる表現を用い、自己決定を尊重することに配慮しました。対象者は「就労について考える機会になった」と述べ、家族からは「当初は、ひきこもりなので在宅でB型事業所を利用したいと考えていたが、選択支援を受けたことで、通所の可能性も見出せた。将来的には外に出て働くこともできるのではないかという希望を持つことができた」と前向きな感想が聞かれました。就労選択支援は就労の可否の判断やどの就労系福祉サービスを利用するのか振り分けるものではないため、会議内は、具体的なサービスや事業所の決定については話し合われていません。この後、別の機会に本人と家族と相談支援専門員でサービス等について話し合われました。会議を通して、関係者間で情報が共有され、支援内容や方針の統一が図られることも大きな成果となりました。
支援者と関係機関の役割
関係機関には制度理解を深め、協議会等で地域事情に合わせた制度活用を検討する姿勢が求められます。また、相談支援専門員は計画作成研修や業務量の調整、支援学校は事業利用のタイミングや保護者への説明、行政は指定申請や地域資源や事情を踏まえた制度活用の検討が必要です。
支援者や関係機関の皆さまは、日常の関わりを通じて、対象者に適したサービスや就職につなげる重要な役割を担っています。制度を活用することで、対象者の力を正しく評価し、本人らしい働き方を支援できます。さらに、地域全体で支援者が協力し、情報を共有することで、より安心して働くための環境が整うことも期待されます。こうした連携は、支援者の支援スキル向上や地域支援体制の充実にもつながります。皆さまのご協力により、対象者が安心して自分らしい働き方を描ける社会を共に目指してまいりましょう。