ワクワクを仲間と分かち合う~遊びが育む豊かなつながり
「新ノーマライゼーション」2025年10月号
NPO法人laule’a 副理事長/遊びリパークLino’a 施設長
大郷和成(だいごうかずなり)
1. はじめに
「医療的ケア児の居場所をつくってほしい」「社会体験を積む機会をつくってほしい」
こうしたご家族の切実な声を受けて、私たちは2015年より児童発達支援・放課後等デイサービス「遊びリパークLino’a」(以下、リノア)を運営しています。リノアに通う児童の多くが重症心身障害児や医療的ケア児です。
リノアという名前は、ハワイ語のlino=「輝く」と、mooa=「未来」という2つの言葉を組み合わせたもので、誰もが自分らしく「輝ける未来」を目指したいという思いが込められています。
2. 遊びを通して育む「社会で生きる力」
重症心身障害児や医療的ケア児の多くは、自ら体を動かしたり環境に働きかけることが難しく、刺激や経験が不足しがちです。そのため、私たちは彼らが自分らしさを発揮できるよう「4つのコンセプト」を掲げています。
1.ありのままを受け入れる『居場所』であること
2.安心してチャレンジできる『安全基地』であること
3.子どもから大人まで楽しめる『遊び場』であること
4.社会で生きる力を身につける『学び場』であること
リノアでは、遊びや社会体験などワクワクする体験を通して「社会で生きる力を育む」ことを目標としています。一人ひとりの「やりたい!」「できるようになりたい!」という思いを形にするべく、ICFにおける「活動」と「参加」に比重をおいた活動を展開しています。
3. 仲間とともに楽しむ余暇活動(写真1)
※掲載者注:写真の著作権等の関係で写真1はウェブには掲載しておりません。
私たちが活動を行う時には、本人や家族では実現が難しいことにチャレンジすること、そしてボランティアや地域の方々など、活動を通して人と人が出会うことを大切にしています。
1.海遊び
事業所が海に近いこともあり、夏になると海遊びが本格化します。最初は車いすで海を眺めていましたが、「やっぱり海で遊びたい」という気持ちから波打ち際での遊びがスタートしました。次第に遊び方が広がり、海遊びはサップ&カヌー体験へと発展しました。大きなサップに乗り、波に揺られながら大海原へ出ていく子どもたちの表情は、いつもと違う輝きを見せます。風を感じ、水しぶきを浴びながら、自然と一体になる体験は子どもたちにとって特別な時間となっています。
2.気球イベント
「呼吸器をつけた児童が空を飛べたらワクワクするんじゃないか」。そんな話から生まれた気球イベントは、バルーンクラブや地元大学のボランティアサークルとの協働で実現しました。午前中は風の関係で気球を上げることができず、気球の中に入るという体験を行いました。「車いすで気球の中に入るのは日本初ではないか」という話も出ていました。午後は無事に気球を上げることができ、多くの児童が空の散歩を楽しんでいました。子どもたちにとって、初めての空からの景色は忘れられない思い出となりました。
4. 地域とともに育む環境(写真2)
※掲載者注:写真の著作権等の関係で写真2はウェブには掲載しておりません。
リノアでは地域との関わりも大切にしており、2022年3月より、施設の敷地内をインクルーシブ公園「リノアパーク」として一般開放し、地域の誰でも自由に遊べる場を提供しています。車いすに乗ったまま乗り入れが可能な回転式遊具や体をしっかり支えられる大型ブランコ、ワイドサイズのシーソーなど、欧米諸国で標準とされる身障者対応遊具を設置しています。時間帯によってはリノアに通う児童と近所の児童が同じ空間で遊ぶ姿も見られ、地域の中で自然と交流できる機会につながっています。
障害のあるなしにかかわらず、同年代の児童同士が活動する機会は少ないのが現状です。放課後という自由な時間・空間を活用して、児童同士が交流できる機会をつくっていくことも大事です。
また、近隣の学童保育の児童たちと「公園で共に遊ぶ」という機会を定期的につくっています。共に遊ぶといっても、合同イベントとして企画して児童たちに事前周知して実施するという形にはしていません。お互いが公園へ出かけて、たまたま一緒の場所になったのでなんとなく遊びが始まるという流れです。一緒に遊ぶ児童もいれば、車いすの児童をじっと見つめる児童もいるし、まったく関わらない児童もいます。支援者がお膳立てして交流を企画するのではなく、その場にいる児童たちが自分の興味関心の範囲で自然に関わりあうことこそ大切だと感じています。このような関わりが社会性を育む機会にもなっています。
5. 18歳以降も続く居場所~PLAY WORKS リノア
活動を始めて10年が経ち、放課後等デイサービスを卒業した後もリノアのような場所に通いたいという声が多く寄せられるようになりました。そこで、18歳以上の方を対象とした生活介護事業所「PLAY WORKS リノア」を開設しました。
ここでは、自分たちで作った染め物やバッグなどの製品を地域のショップに置いていただいたり、イベントに参加したりと、社会との接点を持ち続けています。しゃべることができない重度障害のある方が電車に乗って外出し、多様な人がいる場に出ていくという経験なども積んでいます。外に出ること、誰かの視界に入ることで認識されていく。そうした積み重ねが、本人の経験値を上げ、地域での暮らしを豊かにしていくと考えています。
6. 今後の展開~遊びを届ける活動へ(写真3)
※掲載者注:写真の著作権等の関係で写真は3ウェブには掲載しておりません。
現在、新たな取り組みとして「出張遊び場」をスタートしています。インクルーシブ遊具を持って外に出ていき、病院や地域のイベントなどで、誰もが遊べる場を提供する活動です。医療の依存度が高く長期入院している子どもたちに、普段できない揺れたり跳ねたりする体験を届けたり、地域の大きなイベントで障害のある子もない子も一緒に遊べる機会をつくったりしています。
2024年10月には神奈川県と協働で「インクルーシブ移動遊園地」を開催し、3,000人もの参加者が集まりました。エアトランポリンやインクルーシブ遊具、ゴーカート体験など、誰でも遊べる場をつくることができました。今後もこうした出張遊び場を各地で展開し、より多くの子どもたちが仲間と一緒に遊ぶ機会をつくっていきたいと考えています。
また、現在運営している4つの放課後等デイサービス事業所と1つの生活介護事業所での活動をさらに充実させ、地域とのつながりを深めていく予定です。「すべての人は、ワクワクしたほうが幸せに生きられる。だって一度きりの人生だから」。この思いを胸に、これからも障害のあるなしにかかわらず、誰もが自分らしく「好きなこと」を仲間と楽しめる機会をつくり続けていきたいと思います。