すべての人に星空を―星つむぎの村の活動

「新ノーマライゼーション」2025年10月号

一般社団法人星つむぎの村 共同代表
高橋真理子(たかはしまりこ)

「最近、星を見上げましたか?」

星空は、世界のどこにいても、誰の上にも平等に広がっています。星を見上げると、心が少し軽くなったり、今という時間のかけがえのなさを感じたり、「明日はがんばろう」と思えたりします。けれども、病気や障害、さまざまな事情によって、夜空を見上げることが難しい人たちがたくさんいます。私たち星つむぎの村は、そんな人たちに星空を届けたいと、活動を続けています。

星つむぎの村のプラネタリウム

星つむぎの村は、「すべての人に星空を」をミッションに、出張プラネタリウムや観望会、ワークショップを行うコミュニティです。共同代表の私は山梨県立科学館で16年間プラネタリウムに携わったのち、「本物の星空を見られない人こそ、プラネタリウムは意味がある」という思いで独立し、移動式プラネタリウムを始めました。2014年から「病院がプラネタリウム」プロジェクトとして、長期療養中の子どもや障害のある方、そのご家族のところに出向くようになり、現在では、年間250件ほどの依頼をいただき、星空を届けています。

「出張プラネタリウム」では、直径4メートルや7メートルのエアドーム、あるいは天井投影で、床にごろりと寝転がったり、バギーのまま入場したりして星空を楽しみます。また、「フライングプラネタリム」は、機材を貸し出して、コンテンツとしてプラネタリムをみていただくスタイルです。1週間毎日使っていただくこともできるので、より多くの子どもたちに見てもらうことが可能です。

星つむぎの村のプラネタリウムは単に天体の知識を伝えるものではありません。映像と音楽と語りによって、その人の「生きている今」を照らし出すような時間です。その日の星座から始まり、黄道12星座で子どもたちのお名前を呼び、地球を飛び立って、宇宙から地球を眺め、惑星をめぐり、銀河や宇宙の果てまで旅をして再び地球に帰ってくる。満天の星に歓声があがり、惑星旅行では、せまってくる火星をみんなでよいしょ!と持ち上げます。不思議な一体感も生まれます。支援者の方からは、「こんなに手が動くんだね」や「こんな表情はじめてみた」という声をよくいただきます。

語りの中では、「私たちの体の材料(元素)はみんな星がつくってくれた」「宇宙から私たちをみると、みんな違ってみんな一緒」と伝えます。子どもたちも大人たちも瞳を輝かせ、ときには「生きていることの奇跡」や「自分の悩みは小さい」と口にします。表情が乏しかった子が見せる笑顔や動きに、親御さんが涙する場面も少なくありません。あるお母さんは「一日1時間しか眠れず、限界の中で過ごしていた自分にこの宇宙を見せてもらえたら、夜は絶望の時間ではなく、星に抱かれる時間になったはず。何より、娘が嬉しそうに手話で『楽しかった、すごかった』と言っていたのが嬉しかった」と話してくださいました。その娘さんは、その後、宇宙関連の番組に夢中になったそうです。

一緒に星を見上げることの意味

活動を続けるなかで、私たちは「一緒に星を見上げること」の意味を、参加する方々から学んできました。2019年に出会った藤田さん一家は、重心児の息子・一樹くんを含む5人家族。長い間、病院と療育以外に行く場所がなく「健常者の社会から引っ越ししてしまったようだった」と語ります。そんな中で出会ったプラネタリウムで、子どもたちと寝転びながら星を見て涙が止まらなかったと言います。その後、藤田さん一家は、星つむぎの村の村人になり、みんなにこう語ってくれました。「「すべての人に星空を」という言葉は、私たち家族がこの3年間で出会ったことのない、まったく次元の違う支援の形でした。この言葉に、そして夜空の星たちに、私たち家族はもう一度、自分の力で社会につながっていきたいと思い、行動するエネルギーをいただいています。「一緒に星をみよう」と言ってもらえたこと、こんなに当たり前に社会は一つだ、世界は一つだ、みんなこの星に生きているんだよ、と言ってもらえたこと、何にも代えがたい希望です」

本物の星空も見たい

プラネタリウムをきっかけに、「本物の星を見たい」と願う方も多くいます。そんな思いにこたえるため、私たちは「医療的ケアがあっても、車いすやバギーでも、孤独を感じていても、安心して星を見に来られる場所をつくりたい」と考えるようになり、仲間と議論を重ねました。

そして2023年秋、八ヶ岳南麓に「星つむぐ家」が完成しました。車いすやバギーでも動きやすいバリアフリー設計、寝たままでも空を眺められる大きな窓、満天の星が見えるデッキ。デッキにこたつを出して、流れ星を眺めながら歓声をあげることもあります。

宿泊ノートには「初めて家族旅行をしました」「初めて川の字で寝ました」「初めて朝日を見ました」といった言葉が並びます。「ここでは何ひとつあきらめる必要がなかった」と語ってくれた方もいます。2024年からの1年半で約135組が利用し、その7割は「普段は外出が難しい」と感じている方々です。

オンラインでもつながる

病気や障害のあるなしにかかわらず子どもたちの遊びと学びの場である「星の寺子屋」も、月2回のペースで続けています。星つむぐ家近くの畑で、梅もぎ、芋ほり、栗ひろい、餅つきなど、季節と自然をオンラインでも楽しんだり、ゲームや工作などしたりと、ベッドやバギーの上から楽しんでいます。年に1回の「合宿」も山梨県北杜市で行い、一緒に遊び、食べ、星を見て…というかけがえのない時間を過ごしています。

共に生きる小さな社会として

星つむぎの村には、全国に300人近い「村人」と呼ばれる仲間がいます。下は1歳から上は70代、障害や病気のあるなしにかかわらず、多様な人たちが参加しています。共通する思いは、「同じ星空の下、私たちはみんな違って、みんな一緒」。

星と人を語る、モノづくりをする、読み聞かせをする、イベントのお手伝いをする、写真を撮るなど、それぞれが自分のやりたいことで関わりながら、誰かの背中を押したり、押されたりしている仲間たちです。

プラネタリウムを見たい、「星つむぐ家」に行ってみたい、「星の寺子屋」に参加してみたい、村人になってみたいなど、気になってくださった方は、星つむぎの村のウェブサイト(https://hoshitsumugi.org)をご覧ください。

まだ、出会っていないみなさんとも、いつか「一緒に星空を見上げる」日がくることを、心待ちしています。