行政の動き-災害中間支援組織を核にした被災者支援のあり方を考える~災害NPO・ボランティア団体と行政の顔の見える関係づくり~

「新ノーマライゼーション」2025年10月号

内閣府(防災担当)普及・防災教育・NPOボランティア連携担当 参事官補佐
澤邦之(さわくにゆき)

1. はじめに

今般、被災者に対する福祉的支援の充実、広域避難の円滑化、被災者援護協力団体の登録制度の創設等を内容とする、災害対策基本法・災害救助法等の改正がなされました。

令和7年7月1日には「被災者援護協力団体登録制度」の運用を開始しました。本稿では、登録制度の創設を一つの契機として、NPO・ボランティア団体と行政とが連携して、被災者に寄り添った支援につなげるには何が必要かを考えます。

2. 法改正の背景

令和6年能登半島地震は、石川県能登地方を中心に甚大な被害をもたらしました。政府では、令和6年5月に中央防災会議防災対策実行会議の下にワーキンググループを立ち上げ、同年11月に「令和6年能登半島地震を踏まえた災害対応の在り方について(報告書)」を取りまとめました。この報告書では、

  • 政府の司令塔機能の強化、国による応援組織の充実・強化
  • 災害関係法制における「福祉」の位置付けの検討
  • 広域避難者や自主避難所の避難者を含め、情報把握の在り方の検討
  • NPOや民間企業等が災害対応に積極的に参加できる環境の整備

等の方向性が示されました。この報告書を踏まえて法案審議が行われ、本年5月28日に災害対策基本法等の一部を改正する法律が成立しました。

この改正の取り扱う領域は広いため、ここでは主に避難所の運営に注目して、被災者に対する福祉的支援等の充実と「被災者援護協力団体登録制度」について見ていきます。

3. 改正法の概要

(1)避難所の運営等

避難所は、さまざまな立場の方が同じ場所で過ごすため、日常とはまったく異なる生活の場となります。避難所運営は、避難所のレイアウト設定、簡易ベッドやパーテーションの設置、防寒や暑熱対策の実施、支援物資の仕分け、トイレ清掃など、さまざまな業務が必要です。

また、避難生活のフェーズが進むと、避難生活の困りごとや、日常生活を取り戻す生活再建に関する悩みなどの相談を受け付け、支援につなげる必要も生じます。また、在宅避難者への戸別訪問を含む、要配慮者に対する体調管理の助言等、被災者一人ひとりに寄り添ったきめ細かな対応も必要です。

(2)改正法における福祉サービスの提供

今回の改正では、災害時に要配慮者や在宅避難者など多様な支援ニーズに対応するため、災害対策基本法及び災害救助法に「福祉サービスの提供」が位置付けられました。これにより、福祉関係者との連携が強化され、在宅や車中泊の被災者の方々を含めて、要配慮者への支援の充実が期待されます。

(3)「被災者援護協力団体登録制度」のねらい

避難所や在宅の避難者の支援ニーズは多岐にわたり、災害の規模が大きくなると公的機関だけでは十分な支援が難しくなります。とりわけ福祉的支援においては、公的機関に加え、NPO・ボランティア団体等によるきめ細かな支援が重要です。

能登半島地震では、発災直後から今に至るまで、専門技能を有するNPO・ボランティア団体等が、避難生活、福祉支援、被災家屋の保全等、さまざまな分野の支援で重要な役割を果たしていただいています。

この登録制度のねらいは、実績ある団体の情報(団体名、活動内容、活動実績、活動エリア等)をデータベース化して全国の自治体等と共有し、普段から官民の「顔の見える」関係をつくって、発災直後から質の高い被災者支援が行えるよう、平時から準備を進めることにあります(図1)。
※掲載者注:写真の著作権等の関係で図1はウェブには掲載しておりません。

どの団体が、どこの地域でどのような支援ができるかを「見える化」することがその第一歩であり、さまざまな分野の支援団体に登録していただきたいと考えています。

(4)災害中間支援組織を核にしたNPO等との連携

被災者の多様なニーズに対しては、公的サービスと民間の活動をつないで、モレとムラなく支援を届ける必要があります。そのためには、災害の状況や被災者のニーズ、ボランティア活動の全体像を関係者と共有し、調整する情報共有会議等の場づくりが不可欠です。

この「つながり」の場づくりには、行政だけではなく、災害中間支援組織(NPO・ボランティア等の活動支援や活動調整を行う民間組織)を含めた官民の連携が重要です。

しかし、混乱している被災地にとって、初めて会う支援団体と信頼しあえるまでには時間を要します。発災してから初めて関係をつくるだけではなく、平時から災害中間支援組織を核にした信頼関係づくりに、この登録制度を活用したいと考えています(図2)。

図2
図2拡大図・テキスト

(5)登録制度とピアサポートの重要性

改正災害対策基本法では、登録制度の欠格要件として「心身の障害により被災者援護協力業務を適正に行うことができない者として内閣府令で定めるもの」が規定されました。内閣府令では、「被災者援護協力業務を適正に行うに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者」とされました。

この内閣府令を定める際のパブリックコメントでは、「被災地では心身に障害のある役員がいる団体も当事者として重要な役割を果たしている。障害を理由にこれらの団体を排除すべきではない」等の貴重なご意見をいただきました。

この欠格要件の趣旨は、被災者支援を行う団体は厳しい環境にある被災者に寄り添う必要があることから、登録しようとする団体の活動方針を決める役員に対して一定の欠格要件を設ける趣旨であって、障害のある当事者の方を排除する趣旨では全くありません。

障害を有する者が役員に含まれる団体であっても、介助者等による必要なサポートを受けて、役員として必要な判断や意思疎通を行える者は欠格要件には該当しません。また、この要件の適否の判断は申請団体が提出する誓約書を確認して行うため、特定の障害や症状のある方を排除する仕組みではありません。

内閣府としては、要配慮者への支援には、当事者の方々によるピアサポートも重要な手法の一つであると考えています。能登半島地震でも、障害のある当事者を含むさまざまな団体が被災者支援にご活躍いただきました。今後、こうした団体についても被災者援護協力団体に登録いただけるような制度運用を行おうと考えております。

4. まとめ

この制度は今年始まったばかりです。被災者支援を担うさまざまな団体とともに、これから一緒につくりあげる制度だと考えています。今後、内閣府としても、訓練や研修等を通じ、行政と民間とがともにスキルアップして「育つ」機会を増やしていく予定です。豊かな支援経験を持つ支援団体の積極的な登録をお願いします。